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【ライブレポ・セットリスト】SUPER BEAVER 『東京』Release Tour 2022 ~ 東京ラクダストーリー ~ at 東京 TACHIKAWA STAGE GARDEN 2022年4月1日(金)

開演時間を過ぎてステージが暗転し、客入れのBGMが止まった。その代わりに街の雑踏を思い浮かべるような、風の音や車の音などがミックスされた雑音が流れた。

 

最新アルバムのタイトルは『東京』。そのリリースツアーなので、東京の街をイメージした音を流したのかもしれない。

 

そんな音が流れる中、ギターの柳沢亮太がバンドロゴが書かれたタオルを広げながら登場。後を続くように他のメンバーも出てきた。

 

コロナ禍なので客席から声は出せない。だからかバンドを迎え入れる盛大な拍手の後、会場が静まり返った。期待と緊張が入り交じった空気である、

 

そんな空気を柳沢がギターを掻き鳴らし引き裂く。それに合わせて渋谷龍太が歌い始める。そして上杉研太のベースの藤原広明のドラムが合わさり、バンドの音になると、一気に熱量が上昇した。

 

1曲目は『スペシャル』。最新アルバムの1曲目と同じだ。ライブをやることがスペシャルなことだということを、音楽によって伝えるような最高のロックサウンドが鳴らされる。

 

立川ステージガーデンで行われた、SUPER BEAVER 『東京』Release Tour 2022 ~ 東京ラクダストーリー。

 

この日はバンドの結成記念日だった。結成18年目当日という、スペシャルな意味もあったのだ。

 

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とはいえSUPER BEAVERのステージングはいつも通りである。いつも通りに最高の音楽を奏でて、いつも通りに会場の一人ひとりに向けて音楽を届けている。

 

「いつだって始まりは青い春!」と煽ってから『青い春』で熱い演奏をしたのも、観客がBメロで一体感ある手拍子を鳴らしているのも、やはりいつも通りだ。

 

しかしスペシャルな演出もあった。この楽曲では、後方のステージセットが稼働し、バンドロゴが書かれたフラッグが登場したのだ。

 

今回はホールツアー。そのため演出にはホールならではの、スペシャルなこだわりがあるようだ。かといって演出に派手さはない。あくまで音楽が主役。バンドの演奏を邪魔せず、楽曲の魅力を引き立てライブを彩るものばかりだ。

 

渋谷「今日は特別な日です。何かわかりますか? そうです!今日は4月1日曜日、エイプリルフールです!」

客席「・・・・・・」

 

演奏はスベらないのに、MCは時折スベってしまうSUPER BEAVER。

 

そっちじゃないですよね(笑)今日はバンドの結成記念です。

 

自分から誕生日をアピールするタイプではないです。結成日が嬉しいのではなく、あなたと結成日に会えたことが嬉しくて、つい言ってしまいました。

 

あなたと会えたというだけで、俺たちの18年間は間違ってなかったと思います。

 

あなたがいなければ成り立たない一日を作るので、あなたもあなたがいなければ成り立たない日を作ってください。できますか?

 

渋谷の煽りに拍手で応える観客。それを確認メンバーと目を合わせる渋谷。そして『人間』から演奏を再開。

 

おそらくコロナ禍でなければ〈人間〉というフレーズを、観客も一緒に歌っていたのだろう。しかし観客は歌う代わりに手拍子や拳で応える。「あなたがいなければ成り立たない日」を、しっかりと作ろうとしている。

 

続く『突破口』でもそうだ。最初から観客の手拍子が大きく鳴り響く。その手拍子も含めてバンドの演奏になっていると感じる。柳沢が「かかってこいよ!」と言った瞬間に、会場を拳が埋め尽くした景色も最高だ。

 

アウトロで「3階席まで見えてますよ!2階席、近いですね!1階席は言わずもがな全員見えてますよ!」と客席全体を見渡し指さす渋谷の姿も印象的である。

 

 

 

熱いロックナンバーで盛り上げてきた序盤だが、ここからは様々な方向性の音楽で楽しませてくれた。

 

「身体は温まってきましたか?好きに踊ってください!」と渋谷が言ってから披露された『ふらり』では、会場の全員が自由に身体を揺らして楽しんでいる。統一感のない一体感が最高だ。

 

カラフルな照明に包まれるバンドも、自由に楽しんで演奏している。

 

続く『VS』では、また違う景色を見せてくれた。

 

柳沢が「立川、勝負できますか?」と煽り、渋谷が「立川、しっかり見せてくださいよ」と言ってから演奏された楽曲。先ほどとは違う薄暗い照明で、重低音響くサウンドを響かせる。

 

全力でぶつかってくるバンドと、それに負けじと全力でぶつかる観客。バンドとファントで信頼し合っているからこその対決に思える空間だ。

 

お客様は神様というスタンスでバンドをやっていません。

 

あなたの楽しいは約束するけれど、俺たちも楽しくなりたいです。だから俺たちが楽しいと思える空気を、あなたが作ってくれていることに感謝しています

 

渋谷がロックバンドだからこその表現で感謝を伝えると、盛大な拍手が送られた。

 

ロックだとかポップだとか関係ないし、俺たちはそんなことに興味ありません。あなたと一緒に音楽をやったという実感が欲しいんです。

 

あなたのことを絶対的に信頼してます!あなたを絶対に楽しませるんで、あなたは俺たちを楽しませてください!俺の好きな言葉は有言実行です。できますか?

 

再びバンドの想いに応えるような、盛大な拍手が鳴り響く。

 

渋谷が「愛すべきあたなのお手を拝借」と言うと、客席が静まり全員が両手を高く掲げた。そのまま始まったのは『美しい日』。アカペラの歌声に合わせて会場が手拍子を鳴らす。

 

それに合わせて東京の街をイメージしたであろうネオンのセットが、ステージに降りてきた。演出もバンドや観客を楽しませようとしている。

 

バンドの演奏が合わさった瞬間、爆発したような盛り上がりになった。バンドの爆音が鳴らされても手拍子の音が大きく響いている。「一緒に音楽をやる」とは、こういうことなのだ。

 

 

 

『318』でムーディな雰囲気を作り出してから、少しの無音を挟み「生きていなければ、この先、会うことはできません。次の曲で、これから先の約束をします」と、囁くような言葉で告げる渋谷。

 

演奏されたのは『未来の話をしよう』。

 

先ほどまで盛り上がっていた観客は、静かにしっかりと演奏を聴き、メッセージを受け取ろうとしている。ファンとバンドとで、音楽を通じて気持ちを共有し、会話をしているのだ。

 

2020年と2021年は楽しくないことが多かったですね。会えなくなってしまった人や、できなくなってしまったこともありますよね。

 

でも悔しかったり悲しかったりの感情も、大事に持っておいて良いと思います。

 

俺たちは順風満帆とは言えなかったです。誰よりも苦労したとは思ってはいないけれど、あなたと同じように、人並みには苦労したと思っています。

 

でも苦しい時間も大切にして、それをひっくり返そうと思います。ひっくり返してきる最中です。

 

そうでなければ、そんな時間に会った人たちとの日々も無駄になってしまうと思います。

 

あなたにここまで連れてきてもらったと思っています。だからあたなが望むならばライブハウスもホールもアリーナもやります。あなたが望むなら、どこにだって会いに行きます。

 

渋谷がファンにメッセージを送る。それをみんな真剣に聞き入っている。

 

しかし途中で「ボン!」という謎の騒音が2回も鳴り話が中断した。

 

渋谷「ボンって.......(笑)この会場には、何かいる......?」

柳沢「怒らないから、出てきなさい......」

渋谷「2度目までなら怒らないからね......3度目はないと思えよ.......。えーと、何を言おうとしたか忘れちゃったよ(笑)」

 

まさかのトラブルではあるが、その空気すら共有できるのがライブでもある。苦笑いしつつも話を続け、しっかりと伝えようとする姿も印象的だ。

 

それに演奏が始まってしまえば、謎の騒音など気にならない。それほどに音楽を感じさせてくれる。

 

続いて演奏されたのは『愛しい人』。この曲もファンへのメッセージが込められている楽曲に思う。

 

ステージセットは再び稼働し、煌びやかに装飾された赤いカーテンがステージに現れた。そんな美しい景色によって、楽曲も美しく彩られる。

 

渋谷が「もう4月ですね」と言うと、なぜか客席から盛大な拍手が贈られた。理由は不明である。「まさか暦を言うだけで拍手をもらえるようになるとは」と笑うメンバー。

 

謎の拍手により空気が解れたところで、メンバーがそれぞれ一言ずつ今回のライブについてのコメントを告げていった。

 

 

 

立川ガーデンシアターは中止と延期を繰り返したり、無観客配信をしたりと、思い出深い会場だと語っていくメンバー。

 

上杉は同会場で配信ライブが行われた日に、入り時間を間違え家でカレーを食べていたエピソードを話していた。マネージャーから電話がかかってきて叱られたという。

 

その話の最中に再び「ボン!」という謎の騒音が鳴り響いた。会場にいる”何か”が、上杉の過去の失態に怒っていたのかもしれない。

 

さらに「やっていいと自治体に言われたからやろうと思ったら、ギリギリでダメって言ってきたりと、本当に自治体は......」と渋谷が愚痴ると、柳沢が苦笑いして自治体をフォローする言葉を言う印象的だった。

 

そしてまた「ボン!」という異音が鳴った。この会場にはやはり“何か”がいるのかもしれない。

 

楽しむ気持ちを疎かにしたくないです。楽しいを守るのが俺たちの役目です。俺たちがあなたを支えて、あなたが俺たちを支えて、そんな関係が最高の関係だと思います。

 

こういうご時世だとルールも多いじゃないですか。でもルールとして規制されていること以外は、楽しむために何をやっても良いんですよ。楽しんで良いんですよ。

 

過去最高の夜を作りましょう。よろしく!

 

ここから後半戦。『アイラヴユー』『名前を呼ぶよ』とキラーチューンを立て続けに披露し、再び会場の熱気を上昇させていく。

 

「もっと本気でぶつかるから、もっと本気でかかってきてください!安心してかかってきてください。全部、受け取るから」と煽ってから始まった『東京流星群』では、間奏で何度も「もっと来い!」「頼むぞ!」と叫んでいた。

 

それに応えるように、観客も全力をぶつけていた。サビではミラーボールが回り、それが流星群のように会場全体を光で照らした。その景色も美しくて最高だ。

 

マスクをして声も出せないなら、ライブはやる意味がないと思っていた。

 

でも、それでもライブをやりたいと思ってしまう自分たちがいて、俺たちを観たいと思ってくれるあなたがいる。

 

ライブハウスでバーンとやなきゃ、バンドマンではないと思っていたけど、ライブをやらないことの方が、バンドマンではないと思った。

 

あなたが俺たちの気持ちを変えてくれました。だから、あなたの声を聞けるまではやらないと決めていた曲を、やることに決めました。

 

そう言ってから『秘密』が披露された。

 

この楽曲はコロナ禍以前はファンも一緒に歌っていた。

 

中盤にはメンバー紹介をするパートがあり、その部分ではファンが叫んでバンドを応援していた。ファンの声も含めて完成する楽曲とも言える。

 

だからコロナ禍で声が出せないことを理由に、人気曲でライブ定番曲だったのに封印していたのだろう。

 

当然ながら客席から声を出すことができない。しかし手拍子や身体の動きで、コロナ禍以前を超えるようにと、観客は想いをぶつけようとしていた。「あの頃を超える想いをぶつけてくれ!』と渋谷が言っていたので、その想いに応えようとしていた。

 

演奏が素晴らしかったことはもちろんだが、そんな客席の景色にも感動した。

 

あなたが報われて欲しいと思っています。あなたの生きる意味になりたいです。

 

次に会える時は、もっとカッコいいバンドになっています。それが上手くいくか、上手く行かないかも、生きていれば答え合わせができます。

 

だから、また、会いましょう。

 

力強い宣言と次の約束をしてから、最新アルバムの表題曲の『東京』が演奏された。

 

〈なんて贅沢な人生だ〉というフレーズが力強く響く。〈あなたへ〉と歌う声も力強い。この力強さがSUPER BEAVERなのだ。

 

「この空間を何度も作るバンドであり続けます。生きてまた会いましょう」と伝え『ロマン』を演奏した。

 

それぞれに頑張って また会おう

一緒に頑張ろうはなんか違うとずっと思っている

親愛なるあなたへ 心を込めて 頑張れ

(SUPER BEAVER / ロマン)

 

SUPERU BEAVERは、簡単には頑張れとは言わない。気軽に音楽で背中を押そうとはしない。だからこそ、彼らの「頑張れ」という言葉は重い。

 

「それぞれに頑張って また会おう」という言葉は、聴いた者の背中を押そうとしているわけではない。

 

これはバンドからの「俺たちも頑張るから、それに負けるなよ」という煽りであり、バンドからの挑戦状に思う。それに応えなければと思う。

 

アンコールでメンバーが出てくると、渋谷が「ライブ中に言い忘れたことがあった」と言って、マイクを通さずに、それでも会場全体に響く大きな声で話し始めた。

 

頑張り方も人それぞれだし、頑張るタイミングも人それぞれです。

 

もしも何かあったら、俺たちの音楽を聴いてください。ライブハウスでもホールでもアリーナでも、どこでも良いので、会いにきてください。

 

偉そうに聞こえるかもしれないけれど、今日までよく頑張りました。自分自身に拍手!

 

この言葉の後の拍手は、この日で大きな音だったと思う。

 

コロナ禍は2年以上続いている。この生活にも慣れてきた。しかしまだライブへ行くことに悩む人は多いし、それなりの覚悟を持って会場に来た人もいるはずだ。コロナ禍によって、生活が変わってしまった人や、夢や目標がなかわなくなってしまった人もいるだろう。

 

この言葉は、それでも今日まで生きてきて、この場所に来た人たちを救う言葉に思った。

 

いや、救う言葉というよりも、これまで頑張ってきた自分自身に改めて気づかせてくれる言葉だ。

 

今日で18年目。これまで支えてくれてありがとうございます。

 

これからも支えてください。俺たちもあなたを、これからも支え続けます

 

最後に演奏されたのは『最前線』。最新アルバムの最後に収録されている楽曲でもある。

 

〈行け 行け 行け 最前線を行け〉という言葉が、何度も歌われる。それを聴く都度に力がみなぎってくる。会場全体が多幸感に包まれている。みんな同じ気持ちなのだろう。

 

ツアーはまだまだ続く。追加公演も発表された。今年の後半にはアリーナツアーも決まっている。対バンライブや音楽フェスにも出演するだろう。

 

 

 

SUPERU BEAVERは次に会える機会を、どこのバンドよりも多く作ってくれている。今年も全国の様々な会場で、大きな音を何度も鳴らすはずだ。

 

中盤のMCで「あなたの生きる意味になりたいです」と語っていた。

 

彼らが音楽を奏でるからこそ、毎日を頑張れる人がたくさんいる。それは背中を押してもらうと言うよりも、頑張るきっかけをもらっていると言った方が正しい。

 

SUPER BEAVERのファンは、他人に依存するのではなく、自分の足で前に進むし、それぞれの方法で頑張る。自分もそうでありたい。

 

また近いうちに、自分はSUPERU BEAVERに再会したい。その日のために、それぞれに頑張ってまた会おう。

 

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■SUPER BEAVER 『東京』Release Tour 2022
~ 東京ラクダストーリー ~ at 東京 TACHIKAWA STAGE GARDEN 2022年4月1日(金) セットリスト

1.スペシャル
2.青い春
3.人間
4.突破口
5.ふらり
6.VS.
7.美しい日
8.318
9.未来の話をしよう
10.愛しい人
11.アイラヴユー
12.名前を呼ぶよ
13.東京流星群
14.秘密
15.東京
16.ロマン

 

EN1.最前線

 

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