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【ライブレポ・セットリスト】岡崎体育『実写版 クッキングばぁば』 at Zepp Haneda 2022.3.25 (金)

開演5分前。「森田七雄です!」という勇んだ声のアナウンスが、会場のスピーカーから流れた。それを聴いた観客は「ふふ......」と微妙な笑い声を出ひている。奇妙な空気で会場が満たされる。

 

森田七雄とはTBSで放送されたテレビドラマ『DCU』に、岡崎体育が出演した時の役名だ。彼はドラマのことを今でも引きずっているらしい。

 

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出演していないビッケブランカも、うっかり役名で花を贈るほどに引きずっているようだ。彼は岡崎体育の演技に感動したのだろうか。良いドラマだったことがわかる。

 

岡崎体育が久々に行った全国ワンマンツアー『実写版 クッキングばぁば』。

 

カオスなツアータイトルに負けないほどに、森田七雄とビッケブランカのせいで会場の空気はカオスになっていた。

 

開演時間をすぎると『DCU』で岡崎体育が共演した土佐兄弟の弟である有輝と、岡崎体育演じるクッキングばばぁがシチューを作る映像が流れた。やはり彼は今でもドラマのことを引きずっているようだ。

 

野菜を切るのが遅い土佐有輝の切ない様子で映像は途切れ、ライブがスタート。

 

今回はポテト探検隊と岡崎体育の2組による対バンライブだった。

 

 

ポテト探検隊

 

調子ハズレなリズムと優しいメロディに〈ウィーアーザポテト♪探検隊♪〉というシュールな歌詞が乗った楽曲がSEとして流れる中、先攻で登場したのは岡崎体育率いるポテト探検隊。

 

ポテト探検隊は“岡崎体育のコピーバンド“というコンセプトのバンドである。

 

しかし歌唱しているのは岡崎体育。前代未聞の謎コンセプトなバンドだ。

 

メンバーは野村陽一郎(Gt.)橋本幸太(Ba.)城戸紘志(Dr.)という豪華さ。コピーバンドにしておくのはもったいない。ギャラは4分割するのだろうか。バンドざまあみろ。

 

先日テレビ番組で「ブタみたい」とアンガールズ田中にディスられた時と同じ、ピンクのパーカーを着ている岡崎体育。マネージャーには可愛いと言われたファッションらしい。

 

そんなブタのように可愛い岡崎体育が「ウィーアーポテト探検隊!よろしく!」と叫ぶように挨拶してから、オープニングナンバー『やさしくなりたい』の爆音が鳴り響き、演奏がスタート。

 

コピーバンドとはおもえないハイレベルな演奏と、ステージを動き回りファンサービスしながら歌う岡崎体育。

 

そんなパフォーマンスでのっけから会場を熱狂の渦に巻き込んでいくと、1曲目にして観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

2曲目はポテト探検隊のメンバーを歌詞で紹介するオリジナルソング。SUPER BUTTER DOGを彷彿させるファンクチューンだ。客席も楽しそうに踊ってはいる。

 

前半2曲はポテト探検隊のオリジナルソングだ。のっけから「岡崎体育のコピーバンド」というコンセプトは崩壊した。

 

「ポテト探検隊も歳を取りました!老いを感じております!  」という独特な煽りから始まった『おっさん』。ようやく岡崎体育のコピーバンドとしての本領発揮だ。

 

「いくぞ!」と叫び拳を上げる岡崎体育。観客のボルテージはいっきに最高潮になり、同じように拳をあげたり手拍子したりと盛り上がっている。

 

「最初の3曲はめちゃくちゃ歌の調子が良かった」と自画自賛する岡崎。

 

そしてポテト探検隊にマニピュレーターの蛇賀という名前の新メンバーが加入したことを発表した。ちなみに蛇賀と書いて”じゃがあ”と読む名前らしい。キラキラネームである。

 

続く楽曲は『深夜高速』。フラワーカンパニーズの楽曲だ。岡崎体育がCMソングとしてしてカバーしていることで、ファンにはお馴染みである。

 

「岡崎体育がカバーしている曲をポテト探検隊がカバーします」とややこしい説明をしてから演奏されて。

 

赤い照明に包まれながらスタンドマイクでエモーショナルに歌う岡崎と、激しく演奏するバンドメンバー。フラカンへのリスペクトも感じるロックサウンドだ。後半はハンドマイクになり、鈴木圭介を彷彿とさせる歌唱をしていた。

 

今回のライブで最も意外な選曲であり、最も自分の心が動かされたのは、フジファブリック『眠れぬ夜』のカバーだ。

 

岡崎体育は女性ファッション誌『an ・an』にコラムを連載している。場違いな人選をされているが、彼は良い文章を書く。

 

以前そのコラムでフジファブリックからの影響を公言していた。そういえば岡崎体育の楽曲も、ネタ曲を除けば抒情的な表現が多い。

 

僕は叙情的な歌詞が好きです。フジファブリックの志村正彦さんだとか、くるりの岸田繁さんの歌詞にぐっときます。音楽を聴きながら街を歩いていて歌詞と目の前の景色がきれいに重なる瞬間がある。生活感とノスタルジーが混ざったこの感覚に痺れます。

岡崎体育、「かっこつけてんじゃないわよ!」と叱責される? | ananニュース – マガジンハウス

 

岡崎体育とフジファブリックが交流した話はあまり聞いたことがない。

 

共通点といえばソニー所属であることと、私立恵比寿中学に楽曲提供していることと、奥田民生に認められていることぐらいだろうか。志村正彦と直接会ったことはないだろう。

 

それでも彼の歌唱からは、フジファブリックや志村正彦への敬意を感じた。文字の一つひとつを丁寧に発音するような、志村の特徴を意識して歌っていた。

 

自身の個性よりも原曲へのリスペクト重視している。ルックスも声質も全く違うのに、岡崎体育に志村正彦を重ねてしまった。

 

このライブでドラムを叩いていた城戸紘志は、志村がいた時代のフジファブリックでサポートドラムを担当している。

 

3年半くらいかな、一緒に演奏したのは。

メンバーになってくれって何度も言われたけど、最後までなれなくてごめん。

知恵熱出たくらい悩んだよ。

なってもいいかなって思った時もあったけど、
やりたい事が多過ぎたから、結局ずっとサポートドラマーとしてやらせてもらった。

でも、いつだってメンバーのつもりで接してたよ。

天国でギターを...

 

彼は志村正彦が亡くなって間もない頃に、思いの丈をブログに綴っていた。

 

「正式にメンバーにならないか」という打診を志村からされるほどに、フジファブリックにとって重要なドラマーだった。

 

正式メンバーと同じぐらいに存在感があったし、バンドを支える演奏をしていた。大きなライブも一緒に出演していたし、大規模なツアーにも同行していた。『若者のすべて』などの代表曲のレコーディングにも参加している。

 

ファンは「正式メンバーになるんだろうな」と思っていた人も多い。

 

しかし彼はサポートを辞退し、バンドから離れていった。

 

去年の夏のフェスを最後におれは、
フジファブリックのサポートドラマーを辞めたいと言った。


何本もツアーを重ねていくうちに、
本当にみんながおれのドラムを必要としてるのかわからなくなったから。。。


ただ、その答えが知りたかったんだ。


本当はずっと一緒にやっていたかったのに。。。
フジファブリックのドラマーはおれじゃなきゃダメだと思ってたのに。


おれが子供過ぎた。


本当にごめん。

天国でギターを...

 

決してバンドを嫌いになったわけではないと思う。

 

今でもフジファブリックについてTwitterなどで言及することはある。バンドのことを想ってくれている。フジファブリックの経験は大切な思い出で重要なキャリアの一つになっているはずだ。

 

そんな城戸紘志が10年以上ぶりに、フジファブリックの楽曲でドラムを叩いている。志村の残した楽曲を再び叩いている。それを岡崎体育が歌い継いでいる。

 

こうやって名曲は歌い継がれていくし、志村正彦の才能は語り継がれていくのだろう。

 

岡崎体育が大好きなフジファブリックの『眠れぬ夜』でした。”岡崎体育のコピーバンド”としては、他のバンドの曲をカバーするなんて有るまじき行為です!

 

岡崎体育のふざけたMCによって、感動の涙がひっこむ。

 

しかし「バンドざまあみろwww」と言っていた岡崎体育がバンドでステージに立ち、敬愛するバンドの楽曲をカバーするということは、彼にとって特別な意味があるはずだ。カバーしたこと自体には、ふざけた意図はなかったと思う。

 

『眠れぬ夜』は志村が亡くなってからリリースされた、遺作と言えるアルバムの最後に収録されている。現体制のフジファブリックでは、一度もライブで演奏されたことがない。

 

だから生で聴くことができない曲だと思っていた。

 

そんな楽曲を岡崎体育が歌った。もうフジファブリックの曲を叩くことがないと思っていた城戸紘志が、フジファブリックの曲をドラムで叩いてくれた。

 

この会場にフジファブリックのファンが、どれほどいたのかはわからない。岡崎体育とはファン層があまり被ってはいないと思う。

 

つまり自身のファンにフジファブリックの隠れた名曲を伝える目的があったのだと思う。自身が影響を受けたミュージシャンへの敬意を込めて、伝えていこうとしたのだと思う。

 

岡崎体育は客席とコミュニケーションを取る事が多い。特に子どものファンとは積極的にコミュニケーションを取る。

 

この日も「今日は少年少女も来てるのかな?」と客席の子どもたちに語りかけていた。客席から何人かの子どもがステージに向かって手を振っていた。

 

そんな子供たちその一人ひとりを見て、「少年少女へのメッセージとして歌います」と宣言する岡崎体育。そして『八月の冒険者』を披露した。

 

疾走感ある演奏で、観客のポルテージは一気に最高潮になる。

 

中盤には「今年の夏もいっぱい遊べよ!絶対にいい思い出になるから!好きなものを見つけて、いっぱい遊べよ!」と叫んでいた。

 

そのメッセージは子ども達のみならず、連れてきた保護者の目頭を熱くさせるものであった。

 

少年少女もいつか働いたり大学生になったりするでしょう。陰鬱な大学生活を送るかもしれない。

 

僕が陰鬱な大学生活をしていた時に書いた曲を、陰鬱な大学生にならないで欲しいと言う想いを込めて歌います!

 

少年少女に切実なメッセージを送ってから歌われたのは『鴨川等間隔』。彼が以前「1番好きな曲」と語っていた名曲だ。

 

この楽曲は生バンド演奏で演奏されると、魅力が際立つ。陰鬱な大学生活の歌と言っていたが、音楽にすることで多くの人を救う希望の歌になっている。

 

岡崎体育「ポテト探検隊、残り2曲です!」

客席「・・・・・・」

岡崎体育「えー!って言いたくても言えないよな。だから代わりにしょぼんとした表情で落ち込んでください。そうすれば悲しさが伝わるので。早く終わってもいい人は好きにしてください」

 

いっせいに頭を下げて落ち込む客席。シュールな景色である。

 

それを見て「かわいい/////」と中島健人がファンに言いそうなセリフを言い放つ岡崎体育。ちょっと止めて欲しい。

 

そんなおふざけムードを「誠心誠意、心を込めて歌います」という言葉で変えてしまう。

 

会場が静まりかえり、音楽をしっかりと受け取れる空気感に変わる。

 

歌われたのは『エクレア』。〈いい曲といい歌はいい人といい場所で〉という歌詞が印象的な楽曲だ。

 

魂を込めて歌う岡崎体育と、それを最高の演奏で支えるバンドと、真剣にステージを見つめるファン。そんな姿を見ていると、まるでこの日のために存在している歌だと感じてしまう。

 

僕達はカッコいいロックバンドのように、誰かの背中を押すことができません。

 

落ち込んでいる人の後ろで背中を叩いて「わかる、わかる」と共感することしかできないんですよ。

 

そんな曲を今からやって、そんな気持ちを皆さんと分かり合いたいと思います!

 

そう言ってから最後に歌われたのは『なにをやってもあかんわ』。本人曰く「捨て曲」なのにTikTokでバズってしまい、代表曲の1つになってしまった楽曲だ。

 

しかしファンの反応から察すると、この曲を望んでいた人も多いようだ。ポテト探検隊の披露曲で最も盛り上がっていたし、みんな拳をあげて飛び跳ねていた。

 

岡崎体育もステージを動き回り煽りながら歌う。楽しそうに見える。実は本人も今はお気に入りなのかもしれない。

 

楽曲中盤では突然クリスハートかと思うような歌い上げるボーカルを披露。それなりに歌が上手いのに、なぜか会場から笑い声が漏れる。クリスハートと似ているのは体型だけなのだろうか。

 

「ウィーアーポテト探検隊!」と叫び、颯爽とステージを去っていくポテト探検隊。

 

観客のボルテージを一気に最高潮にしたまま、日本の音楽シーンに彗星のごとく現れたコピーバンドの圧巻のステージは幕を閉じた。

 

岡崎体育

 

ポテト探検隊の余韻が残る中、鮮烈に登場したのは、かつて日本の音楽シーンに彗星の如くやってきた盆地テクノのパイオニア、岡崎体育だ。

 

勢いよく登場して「こっからが本番です!」と叫ぶと、オープニングナンバー「Championship」の爆音が鳴り響いた。

 

のっけから会場を熱狂の渦に巻き込んでいくと、そのまま『Open』へと繋がり、観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

「ここのブロック元気!?こっちは?!?2階は!?」と全座席に気遣いを見せつつも、「飛べ!」と何度も叫び煽る岡崎。

 

さらには「歌うな!絶対にうたうな!と言ってマイクを向ける」ドSなコールアンドレスポンスを行つ。ドMなファンは歓喜しつつ、無言で拳を突き上げて応えていた。

 

「最近は色々な仕事をやりました。『DCU』は特に大きかったです」と語る岡崎体育。やはりドラマのことを引きずっている。

 

ドラマでは色々なものを盗みました。阿部寛さんからは目線の動かし方や声の出し方だったりを盗みました。

 

去年はコロナでライブやフェスの本数が減ったてしまいました。でも今年は沢山ライブをやりますしフェスにも出演します!

 

阿部寛の声真似をしながら喋る岡崎体育。やはりドラマのことを引きずっている。

 

続けて披露されたのは〈観客のボルテージは一気に最高潮に〉  という歌詞が印象的な『Quick Report』。

 

音楽サイトに掲載されているクイックレポートをイメージした映像をバックに、口パクでポージングする岡崎体育。

 

そのポーズが変化する都度にボルテージが最高潮になる観客。岡崎体育は歌わずども観客のボルテージを一気に最高潮にすることができる。

 

曲が終わりMCになっても、観客のボルテージは最高潮のままだ。ボルテージが最高潮になった観客たちはひとり、またひとりとタオルを両手で掲げはじめた。

 

しかし岡崎体育のタオルを掲げる者はほとんど居ない。他のバンドやアイドル、野球選手やお相撲さん、網走刑務所や関西電気保安協会などのタオルを掲げる者ばかりだ。

 

会場に広がる岡崎体育以外のタオルの大海原は、これからの岡崎体育の行く末を暗示しているかのようにも思えた。

 

岡崎体育じゃないタオルばかりや。それでも岡崎体育のタオルの人がいる。あなた達だけを愛しています。

 

ヤバTと打首獄門同好会のタオルが多いなあ。すぐに下ろしなさい。スリーピースバンドのタオルは全員下ろしなさい。

 

サンボマスターもスリーピースやろ!早く下ろしなさい!Perfumeは3人やけど、まあ、下ろさなくていいか......

 

エビ中も坂道も下ろしなさい。アイドルのタオルは下ろして。

 

秦基博のタオルの人、顔が似てるからって間違えてライブに来てない?

 

このタオルは、『ASKA premium concert tour -higher ground-』ですか!?

 

ASKAさんのライブいいなあ。楽しかった?

 

自身のファンが少ないとしても、めげることなく観客とコミュニケーションを取る岡崎体育。やさしい。

 

岡崎体育「ちゃんと岡崎体育のタオルを持ってきなさい!」

客席の子ども「えー......」

岡崎体育「こら!そこのチビッ子!口答えするな!声を出すな!保護者の方はちゃんと躾しなさい!」

 

しかし、チビッ子には怒った。

 

観客のボルテージを上昇させ続けた岡崎体育だが、ここで屈指のバラード『Voice Of Heat2』を披露。

 

あまりの名曲具合に感動してしまったのだろうか、曲中に感極まる岡崎体育。その美しい歌声は観客のみならず、岡崎体育本人の目頭を熱くさせるものだった。

 

それに対して天の声が流れ、「この曲で感極まるな!全然思い入れないやろ!エクレアの時に泣け!」と突っ込みを入れる。さらに感極まりチョップしながら歌ったりと奇行に走る岡崎体育。

 

その奇行はエスカレートし、曲終わりに「みんな愛してるよ♡」と言い放った。観客のボルテージは一気に急降下した。

 

MCでは『DCU』で共演した横浜流星が岡崎体育のファンで、『フレンズ』や『フェイクファー』が好きな曲というエピソードを披露した。

 

さらには横浜流星はペンギンのてっくんのモノマネが得意という、意外な裏話を紹介する岡崎体育。横浜流星とのエピソードが続々と出てくるをやはりドラマのことを引きずっているようだ。

 

そんな横浜流星のエピソードを前フリに利用して、ペンギンのてっくんが登場。

 

〈好きな食べ物は 群れからはぐれたアザラシの赤ちゃん〉という、悪い意味で胸に刺さる歌詞の『キャラクター』を披露。

 

スクリーンいっぱいに可愛らしいてっくんが歌う姿が映し出されるが、歌詞のせいでだんだんとホラーに思えてくる。最後は「Future is hell!」と言い放ち、てっくんは消えた。

 

不穏で陰鬱な空気になった会場。そんな客席に向けて「陰鬱な大学生活を送っていたことを歌った曲をやります」と次に披露する楽曲を紹介する岡崎体育。さらに陰鬱な空気にするつもりだろうか。

 

しかし披露されたのは『弱者』。観客のボルテージが最高潮になること間違いなしのキラーチューンだ。てっくんに怯えていた観客も生気が戻り、再び熱狂の渦に巻き込まれていく。

 

続けて披露された『式』はスローテンポの楽曲である。先程まで暴れ回って煽りながら歌っていた岡崎体育が、スタンドマイクで魂を込めながら歌う。

 

演出も楽曲の魅力を最大限引き出そうとしていた。真っ黒なスクリーンに、白字で歌詞が縦に出てくる。派手さはないが、歌詞のメッセージがダイレクトに伝わる演出だ。

 

岡崎体育のエンターテインメント要素が強い。それでも根本には音楽への愛があるし、音楽で勝負している。素晴らしい歌声で感動させてくれることも、彼のライブの醍醐味だ。

 

美しい歌声で観客の目頭を熱くさせたのに、MCですぐに目頭の熱さを冷ましてしまう。

 

「明日も仕事の人はいますか?いますねえwww ざまぁwwww」と仕事を頑張る観客をディスる岡崎体育。

 

しかし続けて「みんなにとって今日が楽しい日になったら、ミュージシャンとしてこれに勝る喜びはないです」と真剣な眼差しで語った。

 

彼はふざけたことばかり言うのに、音楽への想いだけは真面目にまっすぐ伝える。

 

ライブも後半戦。ここからさらに会場を熱狂の渦に巻き込んでいく岡崎体育。

 

キラーチューン『XXL』の爆音が響くと、観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

始まった瞬間に客席から手拍子が鳴り響き、サビでは岡崎体育と一緒に拳を突き上げる。ステージも客席も全てを出し切るように全力だ。

 

ツアーを完走できて、これはだけたくさんの人が今楽しんでくれている。それが嬉しいです。

 

僕には目標があります。紅白歌合戦にでることと、アルバムを10万枚売ることです。

 

誰に何を言われようと、泥臭くても、どんな手段を使っても目標を達成します!

 

ふざけたことばかり言う岡崎体育が真面目な話をする時は、音楽に関することだけではなかった。

 

夢や目標を語る時もふざけたりはしない。必ず真剣に真っ直ぐな言葉で伝える。

 

最後の曲は『Eagle』。やはりこの曲でも観客のボルテージは一気に最高潮になる。

 

飛べ!俺が岡崎体育じゃ!俺が家で作った曲!世界中に飛んでいけ!

 

曲中に叫ぶ岡崎体育。やはり音楽に対しては真剣で熱い。その想いに応えるように、さらに飛び跳ねてボルテージを最高潮にする観客。

 

岡崎体育のライブは、観る都度に笑顔になれる。ひたすらに楽しい。

 

それでいて熱い気持ちにもさせてくれる。

 

全力で音楽をやって、本気で夢を叶えようとして、実際に叶えてきた、岡崎体育の想いに共鳴し軌跡に感動するからだ。岡崎体育の音楽によって、力を貰えるのだ。

 

観客のボルテージを一気に最高潮にしたまま、「アンコールよろしく!」とアンコールを観客に強制して去っていった。

 

すぐに観客がアンコールの拍手を鳴らすと、その5秒後に再登場した岡崎体育。おそらくアンコールに応える速度が日本一早いアーティストだろう。

 

「もう2時間もやってる!まだ1時間30分ぐらいしかやってない感覚やった!」と中途半端に体内時計が狂っていることをアピールして、『私生活』からアンコールがスタート。

 

自身の中学時代を歌った甘酸っぱい内容の歌詞。そんなキュンとする歌によって、観客のボルテージは少しだけ上昇する。

 

ここ1年はミュージシャンとして成長できました。

 

バラエティやドラマにも出させてもらったけど、それも全てミュージシャンの活動に還元できる自信があります。

 

そして今年、アルバムを出します!

 

まさかの宣言に観客から盛大な拍手が贈られる。みんなミュージシャン・岡崎体育が大好きなのだ。今年もたくさんの新曲を聴けると知り嬉しいのだ。

 

ラストは『The Abyss』。

 

この楽曲はライブの重要な場面や、ライブの締めに歌われることが多い。彼にとって特別な想いを込めた楽曲なのだろう。

 

自分が家で作った曲で、これだけたくさんの人が踊ってくれている!皆さんは僕の誇りです!

 

最後に、もっとみんなを踊らせます!

 

曲の後半に叫ぶようにファンへの想いを語っていた。曲中に何度も「飛べ!やるぞ!できる!」と叫んでいた。

 

それはファンを盛り上げるためと言うよりも、自身を鼓舞しているようにも見えた。

 

最後に言霊を残していきます!

 

紅白歌合戦に出場します!アルバムを10万枚売ります!

 

岡崎体育でした!

 

改めて目標を宣言する岡崎体育。その言葉と姿に痺れた。

 

大きな目標だから、達成することは難しいと思う。

 

それでも今日のライブを観ていたら、不可能ではないと思えてしまう。素晴らしいライブだったし、「さいたまスーパーアリーナでのライブ」という不可能に思えた夢も過去に実現させた男なのだから。

 

観客のボルテージを一気に最高潮にしたまま、日本の音楽シーンに彗星のごとく現れた男の圧巻のステージは幕を閉じた。

 

岡崎体育『実写版 クッキングばぁば』 at Zepp Haneda 2022.3.25 (金) セットリスト

01.やさしくなりたい

02.新曲

03.おっさん

04.深夜高速(フラワーカンパニーズのカバー)

05.眠れぬ夜(フジファブリックカバー)

06.八月の冒険者

07.鴨川等間隔

08.エクレア

09.なにやってもあかんわ

10.Championship

11.Open

12.Voice Of Heat2

13.キャラクター

14.弱者

15.式

16.XXL

17.Eagle

 

18.私生活

19.The Abyss

 

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