2023-11-21 【ライブレポ・セットリスト】フジファブリック『プラネットコロコロTOUR2023』at Zepp DiverCity Tokyo 2023年11月1日(水) フジファブリック ライブのレポート 1曲目の『STAR』が始まった瞬間、今回のライブは凄まじい内容になると確信した。それほどに最初から「これがライブのピークでは?」と思うほどに素晴らしかったのだ。 スモークの中で真っ白な照明の逆光で、メンバーのシルエットだけが浮かび上がる。そんな情景が美しくもクールで、始まった瞬間に痺れてしまった。 もちろん演奏も最高だ。いつも以上に気合いが入っているのか、山内総一郎は時折叫ぶように歌っていたし、演奏はキレがあり迫力が物凄い。 この楽曲は現体制になってから初めてのアルバムで、セルフタイトルに使われていた。バンドにとって、それほどまでに重要で大切な曲ということだろう。そんな楽曲からライブを始めたことからも、今回はいつもとは違う気持ちが込められてると感じた。 全国8都市を回った全国ツアー、フジファブリック『プラネットコロコロTOUR 2023』。ゆるゆるいっているツアータイトルだが、内容は全くゆるくなかった。むしろ真逆でキレッキレでフジファブリックの音楽の魅力を余すことなく伝えるかのようなものだった。 カラフルな照明の中で演奏された『Sugar!』も、気合い十分なパフォーマンスだ。山内が「東京!」と叫んだり、サビ前に加藤慎一が前方に出てきてGLAYのTERUのごとく両腕を広げて煽ったりと、序盤から勢いが凄い。 そこから「1、2、3、4」という山内のカウントから『ミラクルレボリューションNo.9』が続く。予習をしてきた観客や、ライブの常連客が多いのだろうか。この楽曲は振り付けがあるのだが、説明を一切せずとも観客は綺麗に揃ったダンスを踊っている。 畳み掛けるように『LIFE』が続いたりと、今回のライブは序盤から盛り上がり確実のキラーチューンが連発していた。まるでライブ終盤かのような曲順だ。 自然と観客が手拍子を鳴らす中、「プラネットコロコロツアーへようこそ!」と挨拶する山内の表情や声色はとても明るい。序盤ながらも良いライブになっていることを実感しているように見える。「ギター俺!」と叫んでからギターソロを掻き鳴らす山内の姿は、いつにも増して楽しそうだ。 「今日がツアーファイナルです!全曲やるとは言えませんが、ここまでの全てを見せるつもりで全身全霊でやっていきす」と宣言のような挨拶から続けられたのは『ポラリス』。〈全身全霊全てを掴むよ〉という歌詞を体現するかのような、勢いを感じる熱い演奏だ。 『楽園』の妖艶な演奏も良い。赤い照明の光に照らされるメンバーの姿がクールだ。そんなパフォーマンスで魅せたかと思えば、山内がギターを激しく掻き鳴らして『夢見るルーザー』へと雪崩れ込む。 序盤からフルスロットルで盛り上げてはいるが、ここまでの演奏曲を並べてみると方向性が違う楽曲が揃っている。それでも違和感なく繋がるライブをやっているのは、演奏に確固たるフジファブリックとしての軸があるからだろう。 流石ツアーファイナル、熱いですね! 20周年を控えているのに出し惜しみするのが嫌だったので、今回のツアーでは今まで作ってきた曲で、やれてないものも沢山やりたいなと思いました。 フジファブリックは季節を大切にしてきたバンドなので、秋の曲がいくつかあります。その中から何曲かやろうと思います。 山内のMCから続けて演奏されたのは『赤黄色の金木犀』。フジファブリックの赤の曲と言われて、真っ先に頭に浮かぶ人が多いであろう名曲だ。 赤と黄色が混ざり合ったような橙色の照明の中で、繊細な歌と演奏で聴かせてくれる。この楽曲はギターが複雑ではあるが、それも見事に弾きながら歌っていた。 シンセサイザーの音とドラムの重なるハーモニーから他の楽器の音が重なっていった『透明』も素晴らしい演奏だった。観客も手拍子をしたりと穏やかに楽しんでいる。心地よいサウンドで聴かせてくれて『Water Lily Flower』も良い。 だがこのブロックで自分が最も感動したのは『Light Flight』だ。 他の楽曲以上に山内は魂を込めて感情的に歌っているように聴こえたし、バンドはそれを感じ取ってしっかりと支えるような力強い演奏をしている。今回のツアーで久々に演奏された楽曲だが、改めて大名曲であることを伝えるかのような名演だ。ここ最近のフジファブリックのライブで、最も魂がこもっていたと感じるほどに素晴らしかった。 メンバーも満足な出来だったようだ。演奏後に山内は「良い演奏でしたねえ。気持ちが入ってもうた!」と嬉しそうに笑いながら話していた。そして「久々に演奏してみて『Light Flight』隠れた名曲だなと改めて思いました。これからは隠すのを止めて、たくさんやるかもしれないです」と照れながら話す。 ここでメンバー紹介がされた。メンバー紹介がされてからのフジファブリックのMCは、いつも長尺になってしまう。 金澤ダイスケは紹介されるとハンドマイクになり、ステージを練り歩きながら話していた。それに対し声援を送る観客。「こんなに僕の生を呼んでくれるとは思わなかったです!」と言って満足げだ。 金澤「このツアーでキーボードの外に出ることが許されたんですよ。でも時間が来たら元の場所に戻される。まるでシンデレラです。私のガラスの靴を知りませんか?」 女性客「あははははっはっはっは!!!」 金澤「なんか馬鹿笑いが聞こえてきたけど、なんですか?」 女性客「ガラスの靴が面白かったwww」 金澤「サイズが気になるのかな?」 女性客「あははははっはっはっは!!!」 この日は笑いの沸点が異常に低い観客がいたようだ。 調子に乗った金澤は富士サファリパークのCMソングを替え歌にして「本当に本当に大ちゃんだ♪近すぎちゃってどうしよう♪かわいくってどうしよう♪」と歌う。笑いの沸点が低い観客はまた馬鹿笑いしていた。他の会場でも行っていたようだが、スベった会場もあったらしい。東京は笑いの沸点が低い。 金澤「元気なベーシストを紹介するぜ!加藤伸一!」 加藤「いえええい!元気だよーーー!」 変な紹介をされたせいで、から元気になる加藤。金澤い「魂みたなのがいっぱい書いてあるシャツを着ている」とファッションをいじられたりと踏んだり蹴ったりだ。実際は魂ではなく孔雀の羽だという。 いつになく金澤はご機嫌な様子で、加藤が喋るターンなのに率先して喋ろうとしていた。「こんなに喋っているうちにもう1曲できるって言われちゃうよ?今回はトークをする回にする?」と、タイミング的に時事ネタのブラックジョークだと勘違いされる発言もしていた。 サポートドラムの伊藤大地は「こんなに喋らされるサポートはフジファブリックが始めてだよ」と言いつつも、紹介されれば嬉しそうに喋っていた。 そして「自分は東京出身だから他のメンバーが地方でおかえりと言ってもらえるのが羨ましい」ということで、観客に無理やり「おかえり」と言わせていた。伊藤もフジファブリックに染まってしまったようだ。 新曲を出しました。『新しい上司はど天然』というアニメの主題歌で、原作を読んでから書きました。この作品にはとても感動して共感したんです。 人と人とが出会って、誰かと出会ったことによって、新しい扉が開くということを描いている作品に思います。それにフジファブリックの活動や自分自身を重ねて共感したんです。 原作のそんな部分ををピックアップして歌にしたのが『プラネタリア』です。 山内が丁寧に説明してから演奏されたのは、もちろん新曲の『プラネタリア』。 優しく繊細な演奏だが、歌声には力強さも感じる。山内が『新しい上司はど天然』で感じ取った「人と人とが出会って新しい扉が開く」ということを、フジファブリックとファンとの関係性に照らし合わせていて、それを歌声で伝えようとしていたからかもしれない。 ライブも後半。ここから演奏の勢いが増していく。イントロが鳴った瞬間に歓声が湧き上がった『TAIFU』。志村がいた頃はライブ定番曲だったものの、ここ最近は演奏回数が減っていたキラーチューンだ。 間奏で山内が「東京!!!」と叫び、それに観客が応えるように歓声をあげる。メンバーも観客もどんどん興奮していく。 さらに激しくギターをかき鳴らしてから『Splash!!』を続ける。こちらも久々に演奏されたものの、盛り上がり確実の楽曲だ。 最後のサビで山内がマイクから離れると、客席から大合唱が響く。最高の熱気に包まれているが、まだ満足できないようで「まだいけんだろ!」とキャラに似合わずオラオラ系な煽りをする山内。 そこから歌だけでなくギターソロやキーボードソロを重ねて盛り上げるのも、演奏レベルが高いフジファブリックだからこそに思う。 近年のライブではほぼ毎回演奏されている『FEVERMAN』では、観客は当然のように振付を踊って楽しんでいた。各メンバーでソロ回しをしたり、山内は背面ギターで演奏したりと、ライブ終盤に向けてパフォーマンスでも盛り上げていく。 「名残惜しいけど最後だ!一緒に歌ってくれ!」と言ってから本編最後に演奏されたのは『虹』。こちらもイントロが鳴った瞬間に歓声が巻き起こった。最後のサビで山内がマイクから離れると、観客はこの日一番と感じる声量で合唱していた。 そういえば2022年の日比谷野外大音楽堂公演で『虹』が演奏された時も、山内が同じようにマイクから離れていた。 だがその頃はまだ感染症対策のルールが厳しく、観客がライブ中に歌うことは叶わなかった。それが1年経って歌うことが叶ったのだ。アウトロではソロ回しを含むジャムセッションをしていた。やはりフジファブリックは演奏で魅せるバンドだ。 「ありがとおおおおおお!!!」と山内が叫んでからステージを後にするフジファブリック。すぐにアンコールの拍手が巻き起こり、まだステージが薄暗いままの中、再登場するメンバー。そして呼吸を合わせるように少しの間を空けてから『若者のすべて』が演奏された。 いつしかバンドの代表曲どころか日本を代表する夏の終わりの名曲となった楽曲。ライブに行き慣れたファンならば、飽きるほどに聴いているかもしれないが、やはり少し涼しくなってきた秋に生で聴くと感動してしまう。 バンドはメンバーによって大きく方向が変わっていくことがあるし、逆にこのメンバーだから変わらないなと思うことがあったりします。 良い方だけでなく、悪い方に転がることもあります。転がっていたらトゲトゲみたいなものにぶつかって痛い時もあるし、逆に転がれない時もあったりして、そんなことを繰り返してバンドは続いてきました。でもこのメンバーと会えて一緒にバンドをできて良かったなと思っています。 応援してくれるみんなも、一緒に転がってきた仲間だと思っています。みんながいればちょっとぐらい転がって落ちたり、何かにぶつかっても大丈夫だなと思います。 そんな気持ちを歌にしました そう言ってから演奏されたのは新曲『こころころころ』。ポップなサウンドと温かい歌声が心地よい。フジファブリックはロックバンドではあるものの、優しいバンドだと感じることがある。 それはぬるいバンドだと言いたいわけではなく、ファンに対して音楽や言葉で真っ直ぐ想いを伝えようとするから、優しいと感じるのだ。自分は真っ直ぐ想いを伝えようとすることにこそ、ロックの魂を感じる。 演奏を終えるとすぐに「ちょっと喋っていいですか?」と言って、再び喋り始める山内。 ここにいるあなたがいないと、僕らのライブや音楽は成立しないです。時間とお金を作って、会いにきてくれて、ありがとうございます。 こうやってツアーができたり長く活動できていることは、奇跡的なことだと身に沁みるようなツアーでした。これだけ楽しく活動ができていることは、みなさんのおかげなんです。 最初『プラネットコロコロTOUR』ってタイトルを見た時は、ゆるい感じのツアーだと思ったでしょ?でも20周年を控えたタイミングで行われたこのツアーには、強い想いをかけていました。 さっき今日は時間を空けてきてくれてありがとうといいましたけど、来年も何日かフジファブリックにくれへんかな? 素晴らしい景色を来年、一緒に見てくれへんかな?その日程を今伝えるから! そういって来年のメジャーデビュー記念日にLINE CUBE SHIBUYAでライブを行うことと、8月4日に東京ガーデンシアターでメジャーデビュー20周年を記念したライブを行うことを発表した。この日一番大きい拍手が客席から響く。 「みんな!絶対に来年予定空けといてよ!」と言って、ファンに来年のライブへの期待とトキメキを与えてから最後に演奏されたのは『SUPER!』。〈トキメキをもっとちょうだい 飽きるほどもっとちょうだい〉という歌詞が、めちゃくちゃ響くタイミングで演奏された。 最高の盛り上がりと感動を観客に与えて「ツアー大成功!!!」と叫ぶ山内。それを否定する者など誰一人として居ないだろう。 今回も何年経っても思い出してしまうライブになった。フジファブリックはそんなライブをずっと積み重ねている。 そして来年は、もっと記憶に深く残るような、何年経っても思い出してしまう日をフジファブリックは、さらにたくさん作ってくれる予感がする。 ■フジファブリック『プラネットコロコロTOUR2023』at Zepp DiverCity Tokyo 2023年11月1日(水) セットリスト 1.STAR2.Sugar!3.ミラクルレボリューションNo.94.LIFE5.ポラリス6.楽園7.夢見るルーザー8.赤黄色の金木犀9.透明10.Water Lily Flower11.Light Flight12.プラネタリア13.TAIFU14.Splash!!15.FEVERMAN16.虹 アンコール17.若者のすべて18.こころころころ19.SUPER! 【Amazon.co.jp限定】プラネタリア (初回生産限定盤) (メガジャケ付) アーティスト:フジファブリック ソニー・ミュージックレーベルズ Amazon