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【ライブレポ・セットリスト】オカベボフジラ ※出演:フジファブリック/Base Ball Bear/OKAMOTO'S/クジラ夜の街 at Zepp Shinjuku 2023年10月21日(日)

開演時間をすぎると山内総一郎と小出祐介とオカモトショウのがステージに登場した。

 

「どうもー!オカベボフジラですぅ!」と、NSCを卒業したばかりの若手吉本芸人のように挨拶する3人。『オカベボフジラ』とは今回のライブイベントのタイトルだ。OKAMOTO'SとBase Ball Bearとフジファブリックとクジラ夜の街と、出演4組のバンド名の頭文字を組み合わせたライブタイトルである。

 

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前説として登場した3人は、このイベントがSMAに所属するバンドが4組集まった、事務所主催のイベントというのとを説明していた。

 

とはいえこれまで共演は少なかったらしい。交流もそれほどなかったらしく、仲良くなったのも最近だという。今では山内と小出はバカリズムの家に一緒に行く仲らしい。夢眠ねむと山内総一郎はどんな話をしているのだろうか。

 

クジラ夜の街

 

最初に登場したのはウェスカムアクトのクジラ夜の街。今年メジャーデビューしたばかりの新人だ。個人的に初めてライブを観る。

 

登場するや否や「皆様、これよりファンタジーを創るバンドクジラ夜の街のライブを始めます」とボーカル宮崎一晴が挨拶し、丁寧に頭を下げた。なかなかにクセの強い。

 

『マスカレードパレード』からライブはスタートしたが、確かにキラキラしたサウンドはファンタジー要素を感じるのだが、演奏の熱量は人間味があるロックの魂を感じる。ファンタジーといいつつもリアルの生々しい音楽に聴こえるのだ。

 

「とあるところに魔法使いがいました。そんなお話」と告げてから始まった『ラブマジック』もそうだ。ポエトリーリーディングを取り入れた歌唱や楽曲の世界観はファンタジーなのだが、演奏は熱いロックバンドである。

 

技術力も高い。変拍子も難なく演奏しているし、ハイレベルなプレイでもミスせず鳴らせている。初めて彼らのライブを観た人も多いであろう雰囲気のフロアだったが、自然と手拍子が巻き起こったりと、観客の心を掴んでいるようだ。

 

激しいドラムソロから「僕たちがクジラ夜の街だ!空飛びたい奴はかかってきな!」という煽りから『夜間飛行』『夜間飛行少年』を続けた時の盛り上がりも物凄い。ウェルカムアクトとして与えられた時間は短いものの、会場を熱い空気にしてトップバッターとしての役割をしっかりと果たしていた。

 

最後に「SMA期待の新人、クジラ夜の街です!覚えただろ!」と言い残してステージを後にしたクジラ夜の街。

 

その言葉は大言壮語ではなく、実力や自信に元ずいたもので、観た者はその言葉に納得してしまうほどの熱演だった。

 

セットリスト

1.マスカレードパレード
2.ラブマジック
3.夜間飛行
4.夜間飛行少年

 

フジファブリック

 

最近は『LOVE YOU』をSEにしての登場が多かったフジファブリック。しかしこの日はSEを使わず無音の中、ゆっくりとメンバーが登場した。

 

出演者の中で最も先輩であるにも関わらず、序盤に出てきたことに驚く。そして山内総一郎がギターを優しく爪弾いてから鳴らされた1曲目は『若者のすべて』。誰もが知る名曲を楽曲のシチュエーションにぴったりな夏の終わりに演奏した。ベテランの貫禄を出番前の後輩に見せつけるような選曲だ。

 

そんな演奏に感動する観客。しかし余韻を楽しむ時間を与えるつもりは無いようだ。そこからなだれ込むように『Sugar!』が続く。観客の反応も先程とは全く違う。みんな大きな音のクラップを鳴らしているし、会場の熱気は一気に急上昇した。加藤慎一はサビ前に挑発的に観客を煽ったりと楽しそうだ。

 

その勢いはとどまらない。山内の「オカベボフジラ!最後まで楽しんでください!」という挨拶から『LIFE』が続くと、さらに大きな手拍子が鳴り響く。サビで観客全員が腕を振っている景色は、ワンマンの時と同じだ。

 

さらに間髪入れず『Feverman』が続く。ライブ定番曲だからか、フジファブリック以外を目当てで来たと思われる観客もサビの振り付けを踊れていた。そんな観客の盛り上がりに比例してバンドのテンションも上がっていく。山内はギターソロを掻き鳴らし背面ギターを披露し「全員両手を上げろ!」と煽っていた。間奏で山内と金澤ダイスケが向き合って目を合わせながら演奏している姿は尊い。、

 

出番前に前説をやらせてもらっている時、横に後輩がいるのを見てと嬉しくなりました。同じ事務所に所属して一緒に音楽をやれることが嬉しいんです。

 

俺らが最後に出てくると思ってたでしょ?ひねくれた事務所なんでキャリア関係なく我々が序盤に出ました。つまり今日は俺らが最初に盛り上げなあかんのよ!

 

後輩が多く嬉しいからかテンションが高い山内。そのテンションのままハンドマイクで『ミラクルレボリューションNo.9』を煽りながら歌う。曲前に加藤の振り付け指導があったからか、観客の振り付けもバッチリだ。むしろ山内のダンスの方がところどころ間違えそうで危うい。

 

フジファブリックは事務所の中でも年上になってきました。中間管理職のちょっと上ぐらいな感じ。

 

でも今日はスタッフから「時間オーバーするな」って言われてるの。俺らオーバーしがちだから。だから時間が分かるようにタイマーを置かれてるの。出てきたらタイマーを押してって言われて。これが中間管理職にやる対応か!?

 

でもまだタイマーの時間が9分しか経ってない。押し忘れたみたい。まだ9分だからいっぱい演奏できる!

 

あ、タイマーのコード抜けちゃったwww

 

スタッフは苦労しているのだと察してしまうMCをする山内。だが本人は楽しそうだし、そんな人柄と音楽の魅力で許されているのかもしれない。

 

ラストは新曲『プラネタリア』。疾走感ある演奏と音源よりも重厚な演奏だ。ライブで映える曲でしっかり盛り上げ、先輩の貫禄を見せるライブだった。

 

セットリスト

1.若者のすべて
2.Sugar!!
3.LIFE
4.Feverman
5.ミラクルレボリューションNo.9
6.プラネタリア

 

Base Ball Bear

 

幕間MCとして登場したのはオカモトコウキと金澤ダイスケ。「髪質の一致で選ばれた組み合わせ」と語る二人。だがPUFFYのバックバンドとして共演したりと、髪質以外にも共通点はあるようだ。そんな関係性だからか仲良さそうにトークをしている。ほっこりした空気の中、二人の紹介で登場したBase Ball Bear。

 

楽器を持ち音を確認する姿は緊張感がある。一気にロックな空気へと変わった。そして3人が中心に集まり目配せをしてライブがスタート。1曲目は『17才』。ライブ定番曲だ。それもあってかサビでの手拍子は綺麗に揃っているし、一瞬で会場をベボベの空気に変えてしまった。歌詞に合わせたかのようなレモン色の照明も良い。

 

そして疾走感ある演奏で『海になりたいpart.3』を続ける。16年前の楽曲と近年の楽曲が続けて演奏されても、全く違和感がない。それは初期からバンドの軸が変わっていないことと、今も昔も普遍的なロックを鳴らしている証拠なのだろう。

 

「幕間にもMCやってるし、何回MCやるの?みんな気づいてると思うけど、言い方とテンション変えて同じこと言ってるだけだから。堀之内さん、テンションで誤魔化してるけど俺が最初に言ったことと同じことを言ってたから」とMCでは 開口一番に堀之内をディスる小出。

 

小出「事務所のイベントだから楽屋がうるさいですよね」

堀之内「言い方よ!」

小出「僕は2時間ぐらい寝てて寝起きで出ちゃったんで、その僕の空白の2時間の間に面白いことはありますか?」

堀之内「ハードル高いよ!フジファブリックやOKAMOTO'Sの楽屋はドアが空いてて交流してたのにうちの楽屋だけドアがしまってました」

小出「なんで?」

堀之内「お前が寝てたからだよ!」

 

恋小出は惰眠を貪っていたらしい。それなのに演奏も歌もキレッキレなのは流石だ。むしろ寝たから元気になったのだろうか。

 

「偉い人はお客さんが騒いでれば盛り上がってると思っちゃうから。僕らは煽ったりしないので、お客さん自身で勝手に盛り上がってください」と観客に全責任を背負わせる小出。

 

それに応えるかのように『short hair』で盛り上がる観客。責任を感じたのだろうか。それとも煽りなんて要らないほどの熱い演奏だから、自然と盛り上がってしまうのだろうか。

 

自分がベボベのライブのハイライトに思ったのは『Endless Etude』『The CUT』の流れだ。

 

堀之内のドラムからギターリフやベースが順番に加わる展開で始まった『Endless Etude』。ルーパーを使い小出がその場でギターのフレーズを録音し再生すると、音に厚みが加わりスリーピースバンドとは思えない程に複雑な演奏へと変化する。それさ現体制になってからのベボベとしては、新境地と言える演奏とパフォーマンスだ。

 

そこから曲間なしでアカペラで小出がラップをして『The CUT』が続く。DJのような曲繋ぎに歓声が巻き起こる客席。客席天井のミラーボールが回ったりと、演出もライブを盛り上げる。小出はベボベのことを「煽るようなバンドでは無い」と言っていたが、堀之内は「じんじゅぐぅぅぅうう!」と煽っていた。

 

小出が「Base Ball Bearでした」と一言だけ挨拶してからのラストソングは『Stairway Generation』。最後の最後に観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

気づけばBase Ball Bearもベテランバンド。そんな貫禄を見せつけ、トリのOKAMOTO'Sへとしっかりバトンを渡すライブだった。

 

セットリスト

1.17才
2.海になりたいpart.3
3.short hair
4.Endless Etude
5.The CUT
6.Stairway Generation

 

OKAMOTO'S

 

幕間MCとして出てきたのは加藤慎一と関根史織。ベーシストコンビである。ゆるゆるでふわふわした空気を醸し出しながら、ほっこりとするトークを繰り広げる2人。意外にも交流が深いようで、よく一緒にカレーを食べに行っているらしい。

 

だがお互いに照れ屋なのだろうか。先日青山一丁目駅ですれ違った時、会話をすることなく簡単な会釈しかしなかったらしい。

 

関根「民生さんとカレーを食べに行くけど一緒にどうですかと言おうとしたら、他人行儀でお辞儀されて......。何度も一緒にカレー食べた仲なのに......」

加藤「これからリハで行けないのに、関根さんはカレーを食べるんだって気持ちになってしまってしまって......」

関根「そういえばその日に行ったカレー屋さんが食べログカレー100名店に初めて選ばれたんです!」

 

カレートークで盛り上がる加藤と関根。

 

関根「またカレー食べに行きましょう?」

加藤「そういえば連絡先知ってましたっけ?」

関根「これだけ一緒にカレーを食べに行ってるのに、間接的な連絡しか取ってなかったですね...」

加藤「後で連絡先を交換しましょう...。では次のバンドを紹介してください」

関根「え?私が?えー。OKAMOTO'Sです」

 

2人のゆるゆるトークからのふわふわした紹介から登場したOKAMOTO'S。先輩バンドからトリを任されたステージだ。

 

気合いも十分なようで、1曲目の『90's TOKYO BOYS』からして熱量が凄い。ミドルテンポの心地よいリズムで観客を踊らせ、間奏でメンバー紹介し歓声をまきおこす。

 

「新宿から来たOKAMOTO'Sです!」という挨拶から始まったオカモトショウのハーモニカが印象的な『Border Line』や、そこからなだれ込むように始まった『Young Japanese』の流れではワンマンのような盛り上がりになっていた。

 

熱気に満ちたフロアを見て「J-WAVEライブ2023へようこそ!」と冗談を言うハマ・オカモト。TOKYO FMで2時間の帯番組を長年担当しているとは思えない発言である。半蔵門よりも六本木が好きなのだろうか。

 

ハマ「1曲目の終わりはあれで良かったんでしたっけ?最後にベースの音がはみ出ちゃういましたけど」

コウキ「俺はショウさんが照明の光で最後全然見えなくなっちゃって......」

ハマ「みんなの気持ちがバラバラですね」

 

反省会をライブ序盤で観客の前で始めてしまうOKAMOTO'S。演奏にミスがあったとしても、観客は楽しんでいたのだから元気を出してほしい。

 

スタッフが優秀だったらしく、セットチェンジがスムーズでもう1バンドできるほどに時間が間いたらしく、その時間を埋めようとトークを頑張るOKAMOTO'S。

 

加藤と関根の幕間MCのゆるい空気をイジって「100エーカーの森かと思いました。あのふたりはプーさんですか?」と言ったり「出順がおかしい。俺だったらフジファブリックとベボベも見れたら満足して帰るもん」とイベントへのクレームを言うメンバー。さらに「クジラ夜の街が全部幕間のMCを喋ればいいんだよ!今までOKAMOTO'Sとイナ戦がやってたんだから!」と後輩に公開説教もしていた。だが「呪われている事務所なのか、後輩が入っても辞めていくからずっと俺らが下っ端だったんですよね。クジラには辞めないで欲しいです......」と心配したりと、後輩への愛は持っているようだ。

 

ハマ「普段は我々は全然喋らないバンドなんですけど、今日は時間が巻いてるので珍しく喋ってます」

観客「ええええええええええ????」

ハマ「うるさいよ!」

レイジ「来月から来年までトークツアーやるんですけども

ハマ「バンドが年跨ぎでトークツアーをやるのってどうなの?」

 

時間が余りすぎて喋りすぎたためか、自分達の活動方針にも迷いを感じ始めた。

 

しかしその後の演奏には迷いがない。キレッキレでクールだ。『Where Do We Go?』を重厚なサウンドで披露し演奏力の高さを見せつけてから、「トリだからそれなりに盛り上げないとね?どうですか?Zepp新宿?」というオカモトショウの煽りから『SEXY BODY』で再び盛り上げる。何度も「行けるか!?」という煽りに対し歓声で観客は応えていた。続く『BROTHER』もそうだ。サビでは観客も一緒に大合唱していたりと、トリのライブに相応しい大盛り上がりだ。

 

「何が起こるか分からない時代になりましたが、音楽をつづけて皆さんに会えたことが美しいと思います」という言葉から最後に演奏されたのは『Beautiful Days』。自然と手拍子が巻き起こったりと、この日集まった他のバンドのファンも含めて会場を一つにするような熱気と多幸感に包まれていた。

 

そんな最高の本編を終えたからか、アンコールでは「トリを任せてもらえた自信になりました」と感慨深そうに話すオカモトショウ。

 

そしてハマ・オカモトの「新メンバーを紹介します。まだナタリーにも出てない情報です」という言葉から小出祐介がステージに登場した。加入即脱退する予感がする。

 

小出「沢山喋ったから巻いた時間を取り戻し予定通りの時間になったみたいですよ」

ハマ「取り戻したというか、せっかく巻いた時間を失ったというか......」

 

気づけば他のバンドよりも持ち時間が2倍近くなっていたOKAMOTO'S。さだまさしに匹敵するトーク量だったようだ。

 

ハマ「めちゃくちゃ久々の曲をやります。リハをあまりやってないからできるか不安な曲」

小出「曲数あるから選曲にも悩むよね。曲が多くなってかさばるというか」

ハマ「服じゃないんだから、かさばるってw」

小出「洋服と一緒でたんすの上の方から使っちゃうじゃん。たまに下の方からこんなの持ってたっけって思って久々に着てみて、逆に今着る方がいいじゃんみたいな」

ハマ「次はそんな曲かもしれません」

 

そんなタンスの奥から引っ張り出された曲は『青い天国』。小出も作詞に参加した楽曲だ。小出も歌とギターで参加している。オカモトショウの「最後!盛り上がりまくりましょう!」という言葉に応えるように、この日だけのコラボレーションに盛り上がる観客。

 

事務所が主導になって行う対バンイベントは少なくはない。今回もSMAの所属バンドが集まったイベントだ。しかし所属バンドの相性なのか。事務所の社風なのか、他の事務所主催イベント以上にアットホームな空気が流れていたように思う。そしていずれのバンドのファンも、他の出演バンドにリスペクトを持ちしっかりと聴いているように見えた。

 

同じ事務所に所属していながらもなかなか対バンが叶わなかた4組の共演。この日はまさにBeautiful Daysと言えるものになったと思う。

 

■セットリスト

1.90's TOKYO BOYS
2.Border Line
3.Young Japanese
4.Where Do We Go?
5.SEXY BODY
6.BROTHER
7.Beautiful Days

 

アンコール

8.青い天国 w/ 小出祐介 (Base Ball Bear)