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【ライブレポ・セットリスト】藤原さくら ワンマンライブ 2023 「週刊空港(エアポート)」Terminal2 at Shibuya WWW X 2023年10月24日(火)

藤原さくらはShibuya WWW Xで1ヶ月間毎週1回ライブを行なっていた。『週刊空港(エアポート)』と名付けられたライブタイトルで、彼女にとって同会場で1ヶ月連続で公演を行うことは初めてである。

 

自分は『Terminal1』とタイトルに付けられた初週のライブにも行った。最新アルバム『AIRPORT』を軸に構成されたセットリストと、アルバムをライブで再構築するかのような演奏が素晴らしかった。藤原さくらがシンガーソングライターとして、また一皮剥けたと感じるような内容だった。

 

 

そして縁があり最終週のチケットも手に入れて、もう一度Shibuya WWW Xでライブを見ることができた。コンセプトは初週と同じものの、『Terminal2』とタイトルに名付けられた最終週は、初週からバンドメンバーが変更されている。

 

伊澤一葉(Key)Meg(Cho)山本達久(Dr)名越由貴夫(G)Curly Giraffe(B)といった布陣だ。メンツを見るとロックな要素が強く、個人的な好みなメンツである。

 

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そんなメンツを引き連れて演奏された1曲目は『My Love』。藤原さくらと名越由貴夫が向き合い、息を合わせるようにギターをユニゾンで引きながら演奏された。藤原さくらのガットギターと、名越のエフェクトをかけたアコースティックギターのハーモニーが心地よい。

 

他のメンバーもそれに寄り添うような繊細な演奏をしている。Curly Giraffeのウッドベースの音色は心地いいし、伊澤のミニマムなキーボードも温かみがあって最高だ。Megの繊細なコーラスは美しい。

 

温かく穏やかな空気を作ってから「最終日です。楽しんで行ってください!」という挨拶か『Just the way we are』を続ける。自然と手拍子が巻き起こったりと、客席の雰囲気もいい感じだ。藤原さくらの弾くギターリフから始まった『Cigarette butts』はクールだった。原曲のアレンジを大切にしつつも、このメンバーだからこそのキレあるサウンドになっている。

 

「今日が最終日です!よく頑張った!」と自分自身を労う藤原さくら。今回のライブは相当楽しかったらしい。「連続で2DAYSなら楽なんですけど、週一回を一ヶ月続けるとなると、毎回現場をバラして組み立てての連続だから大変でした。スタッフは特に大変だったと思います。でも定番行事にしたいです」とスタッフが困惑する発言もしていた。

 

ここでギターを置きハンドマイクになる藤原さくら。披露されたのは『迷宮飛行』。アルバム収録曲の中でも新境地といえる方向性の楽曲だ。それがこのバンドメンバーで披露されると、音源をさらに進化させたのではと感じるサウンドになる。音源は打ち込みが印象的だがライブでは生々しいロックサウンドだ。ゴリゴリのベースやエレキギターのキレッキレなギターリフがカッコ良すぎる。

 

続く『Feel the funk』はファンキーな演奏で届けられる。どの楽曲も音圧が高く、音源よりも迫力ある演奏で披露されている。それもこのメンバーのライブだからこそ引き出された楽曲の魅力だ。

 

かと思えば『わたしのLife』はピアノの美しい音色が印象的なポップな演奏になっていた。そんなキャッチーなサウンドと跳ねるようなリズムに連れられ、自然と観客が手拍子を鳴らしている。続く『kirakira』も同様だ。タイトル通りにキラキラしたサウンドで、明るくポップな演奏である。藤原もハンドマイクでステージを練り歩き、楽しそうに歌っていた。

 

ここでバンドメンバーの紹介が藤原からされた。だが紹介の言葉のひとつひとつのクセが強い。

 

藤原さくら「楽屋でソファーの背もたれのクッションを上に乗せて寝てましたよね」

伊澤一葉「何か上に乗せないと落ち着いて寝れないじゃないですか?」

藤原さくら「そんなことはありません」

伊澤一葉「!!!」

 

伊澤の発言はバッサリと否定されていた。ちなみに藤原は伊澤に「テキーラを飲んでステージに行け」と言われたらしく、ひと舐めだけして出てきたという。だからか少しテンションが高いのだろうか。

 

藤原さくら「コーラスのMegさんです。今日はどんな感じですか?」

Meg「え??????」

 

無茶振りをされるMeg。それに対して「出てきた瞬間に待ち望まれていたかのようないい空気になっていたました」と気の利いたコメントを残していた。

 

藤原さくら「以前ライブでドラム叩いているのを観た時にすごい演奏をしていてこの人は何者なんだと思ったんで、PAにここに呼べと言って呼ばせました。TシャツにHoly shitと書かれているのはなぜですか?」

山本達久「特に意味はなかったですが、Holy shitなライブにしたいという意気込みです(?)」

 

無茶振りに頑張って対応する山本とPAにもドSぶりを発揮する藤原。

 

藤原さくら「いっぱいエフェクターがありますけど、これはわたしのために選んだエフェクターですか」

名越由貴夫「そうです」

藤原さくら「エフェクターを他の人のライブの時と間違えたりしませんか?」

名越由貴夫「たまに間違えます......」

藤原さくら「名越さんはギターが上手すぎます。だからわたしのライバルです」

 

名越はおっちょこちょいな性格という情報を引き出す藤原。そしてギタリストとして闘志を燃やしていた。

 

藤原さくら「バンマスのCurly Giraffeさんです」

Curly Giraffe「JKの頃を知っているぐらいに長い付き合いです」

藤原さくら「今日は開演前のBGMにCurlyさんの曲を使っていました」

Curly Giraffe「久々に聴くと自分の曲だって分からなくなったりする。なんか聴いたことがある曲が流れてるなあと思ったり(笑)」

 

Curly Giraffeはおっちょこちょいを通り越して天然キャラなのかもしれない。

 

続いて演奏されたのは『LA feat. Sakura Fujiwara』。Curly Giraffeのアルバムに収録されていた、藤原さくらとのデュエット曲だ。ライブで披露されることは貴重である。名越のアコースティックギターに合わせるように2人で歌い始め、順番に他の楽器も加わっていく。そんな繊細な演奏と歌声が心地よい。

 

『Waver』と『いつか観た映画みたいに』も繊細な演奏だった。このような楽曲と演奏は彼女の歌声と相性が特に良い。ライブによってその魅力が最大限に引き出されているような形だ。演奏スタイルの個性が強いバンドメンバーが揃っているが、全員が楽曲や藤原さくらの歌声の魅力を引き立てることを最重視した演奏をしているように感じる。

 

そんなバンドが主役になるタイミングもあった。藤原が袖へ戻りステージにバンドだけになると、ジャムセッションが行われたのだ。それぞれのソロプレイを挟みつつ、ジャズの影響を感じるような自由な演奏が繰り広げられる。それは演奏レベルの高さとメンバーの個性を感じるものだった。

 

藤原が再びステージに登場するとジャムセッションから繋がるように曲間なしで『放っとこうぜ』が続く。心地よいサウンドに自然と手拍子が巻き起こる客席。藤原もハンドマイクて楽しそうに歌っている。

 

ジャムセッションの流れから始まった曲だからかバンドもリハーサル以上に気持ちが入ってしまったのだろうか。演奏後に「リハと違う演奏をやっちゃってた。初めて聞いた演奏でした。Holy shitです」と話す藤原。

 

次はレコーディングの時のメンバー勢揃いしているので、やらなきゃいけない曲です。

 

出会いや別れは寂しい事だけれど、最近は寂しいだけでは無いなと思っています。記憶を濃縮して思い出して楽しめたら、どんな別れも価値のある時間だと思えると思います。

 

言葉を選びながら想いを語ってから披露されたのは『まばたき』。藤原のガットギターの音を軸に、それに寄り添うような優しくミニマムな演奏で届けられた。途中で歌詞を飛ばしていたが、それはミスというよりも感情が昂ってしまったからかもしれない。それほどに想いがこもった歌声に感じた。

 

『話そうよ』も同じのうに藤原の歌声やギターの音色を大切にしたような、繊細で優しい演奏だ。この2曲はアルバムでも横並びに収録されている。続けて聴くことで共に魅力がより引き立つ2曲ということなのだろうか。

 

「早いもので、もうすぐ終わります。楽しい4週間でした!」と挨拶をして、カラフルな照明の中で『Wonderful time』を続ける。ライブも後半。手拍子を煽ったりと、ラストスパートをかけるように盛り上げていく。

 

再びギターを持って代表曲のひとつである『soup』を続けると、空気がパッと明るくなった。温かみのある演奏も良い。この楽曲では藤原のギタリストとしての技量の高さも感じるようなプレイをしていた。

 

本編ラストは『君は天然色』。Megが手拍子を煽り、観客がそれに応えるように一緒に手拍子をする。最高の盛り上がりで本編を終えたが、このライブで最も盛り上がったのはアンコールだった。

 

しかもそれは、アンコールでの物販紹介である。

 

藤原さくら「グッズ紹介です。いええええい!」

観客「いえええええええい!!!」

藤原さくら「ライブ最終日だ!グッズ売り切るぞー!!!」

観客「ふぉおおおおおおお!!!」

 

演奏中には見せないハイテンションで煽る藤原さくら。演奏中には出さないテンションで叫ぶ観客。物販紹介が最も盛り上がるアーティストは、他には居ないだろう。

 

藤原さくら「グッズのTシャツを着ていたら可愛いと言われるし、着ていないとディスられます。そこ!なんで着てないの!」

古参ファン「着てます!」

藤原さくら「あ!7年前のグッズのTシャツだ!失礼しました!めっちゃ前から応援してる人じゃん!偉い!凄い!」

 

藤原さくらは掌返しが早い。お詫びと感謝の気持ちを込めてか、グッズのペーパークラフトの飛行機を古参ファンに手渡ししていた。

 

「後でマネージャーに怒られるかも知れません。まあいいや。昔から好きでいてくれてるんだし良いよね?」と話すと、客席から温かい拍手が響く いた。藤原さくらのライブは、いつも温かい空気が流れている。

 

落ち込んだ時に解決方法が分からないことが多いじゃないですか。自分のことだけでなく、特に最近は社会情勢だったりでも。

 

その糸口を見つけられるようにと思って、新しい曲を描きました。そんなこと言って全然違う曲をやったりして(笑)

 

そう言ってから新曲『daybreak』が披露された。ピアノの音色から始まり、それに合わせるように丁寧に歌っている。新たな名曲が生まれたようだ。

 

「離陸先が決まりました!え?どういうこと?」とセルフツッコミをしてから、来年全国ツアーを開催することが発表された。東京はNHKホール。彼女のワンマンライブとしては最大キャパだろうか。「頑張らなきゃねえ~♪」と言って自身を鼓舞している。

 

さらには「ツアーをやるので何かしらのブツが生まれます」と、最新アルバムリリースを匂わせていた。

 

藤原さくら「今日が渋谷でのライブは最終日なので、来週はもう会えません」

観客「嫌だー!」

藤原さくら「じゃあ来週も会おうか?鳥貴族で」

観客「おおおおおおおお!!!」

藤原さくら「冗談です」

 

ファンを掌で転がしてから、最後に『mother』が演奏された。ミラーボールが回り美しい景色が拡がる中、壮大な演奏が繰り広げられる。名越が弓を使ってギターをバイオリンのように演奏する姿が印象的だ。歌声には心地よいリバーブがかかっていて、それが幻想的で吸い込まれるような気持ちになる。

 

最後の最後に演奏された『mother』が、この日のハイライトだった。、そして藤原さくらが今回のライブでさらに進化したと感じる瞬間でもあった。

 

そんな演奏の余韻に浸り圧倒された観客に「バンドメンバーに大きな拍手をスタッフにも大きな拍手を!また来年、また渋谷で会いましょ!」と言って去っていく藤原さくらとバンドメンバー。

 

来年と言わずとも来週にでも鳥貴族で会いたいが、来年さら進化した姿が観れることを楽しみにしておきたい。

 

藤原さくら ワンマンライブ 2023 「週刊空港(エアポート)」Terminal2 at Shibuya WWW X 2023年10月24日(火)セットリスト

1.My Love

2.Just the way we are

3.Cigarette butts

4.迷宮飛行

5.Feel the funk

6.わたしのLife

7.kirakira

8.LA feat. Sakura Fujiwara

9.Waver

10.いつか観た映画みたいに

11.放っとこうぜ

12.まばたき

13.話そうよ

14.Wonderful time

15.soup

16.君は天然色

 

アンコール

17.daybreak

18.mother

 

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