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【ライブレポ・セットリスト】斉藤和義が『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 "202020 & 55 STONES』ツアーファイナルで見せた最終の乳首について

名義こそ「斉藤和義」と本人のソロではあるが、これはロックバンドのライブだと感じた。

 

ボン・ジョビやマリリン・マンソンがバンド名として許されるなら、斉藤和義という名前のバンドがあってもいいじゃないか。そう思うぐらいに、ステージに立つ5人はロックバンドをやっていた。

 

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そんなことを斉藤和義の東京国際フォーラムで行われた全国ツアー『KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2021 "202020 & 55 STONES』の千秋楽を観て思う。

 

彼を支えるサポートメンバーも主役と思えるほどに「このメンバーだからこそ」と思える素晴らしい演奏をしていたからだ。

 

おそらくライブ構成としても、意識的にバンドメンバーを目立たせる演出や演奏をしていたと思う。

 

1曲目の『BEHIND THE MASK』の時点で、すでにロックバンドだった。

 

この曲はほとんど歌がなく、演奏がインストに近い楽曲である。だからこそバンドの実力がハッキリと伝わってくる。その演奏を聴く限り、メンバー全員が自分の個性を出しつつも、全体として唯一無二のグルーヴを作っていると感じた。

 

バンドメンバー1人ひとりに、スポットライトの照明が当たっていた。オーディエンスに「全員が主役」だと伝え、「これはロックバンドです」と紹介するような、粋な演出である。

 

サイケな照明が映える『Strange man』でクールな演奏をして圧倒させると、続く『いつもの風景』では「東京!」と煽って盛り上げる。照明がパッと明るくなり、緊張が解されるように会場が華やかになる。

 

声を出すことは禁止されてますが、乳首と乳輪と乳頭は出しても良いです。あと亀頭は絶対に出さないでください。

 

失笑する客席など気にせずに、彼にしか言えない表現で注意事項を伝える斉藤和義。客席で乳首を出す者はいなかった。

 

『純風』『いつもの風景』とエレキギターの音が心地よい楽曲を続けて披露。ロックのカッコよさとポップスの親しみやすさが、見事に組み合わさったような2曲。それもあってか序盤から良い空気感が会場を満たしていた。

 

斉藤和義には他にも様々なタイプの楽曲がある。

 

『I want be a cat』はバーのカウンターが置かれたステージセットと相性抜群の、オシャレで大人な雰囲気の演奏で披露した。同じ楽曲でも聴く環境によって魅力が増大されるのだ。

 

ここまではコロナ禍にリリースされた2枚の最新アルバムからの楽曲が中心だったが、ここで25年以上前に発表された名曲『彼女』が演奏された。

 

松本ジュンによる繊細なピアノの旋律から始まるミニマルな演奏から始まり、そこからバンドが加わっていくアレンジ。原曲とは全く違うアレンジに驚きと感動が同時に押し寄せる。

 

次の演奏曲も過去作である『敗れた傘にくちづけを』。こちらは原曲を再現しつつも、このメンバーだからこその一体感を感じる演奏で丁寧に届けられた。

 

新曲を披露するだけでなく、過去の曲は新しい形で演奏する。ベテランになっても斉藤和義は進化し続けている。

 

とはいえ最新作のリリースツアーでもある。『Lucky Cat Blues』『魔法のオルゴール』とアルバム『55 TRONES』と同じ順番でライブでも披露された。

 

ダンスナンバーと優しくて温かなメロディの楽曲とタイプが違う2曲だが、その段丘の心地よさによって各曲の魅力が引き立っていると気づく。ライブを観ることによって、音源の魅力にも気づかせてくれる。

 

ここは元々土佐藩の屋敷があったらしいです。だからここらへんは坂本龍馬がうろついていたらしいですね。乳首の話をするような場所ではなかったです。

 

乳首の話をしたことを反省する斉藤和義。ファンの前では乳首の話をするのに、なぜか坂本龍馬には失礼と思っているらしい。

 

昨日は会場近くで骨董市がやっていました。招き猫に一時期ハマっていて、ツアー中は全国の骨董市にいったりネットで探したりと集めていました。全部表情が違ってかわいいんですよ。柄も違ったりして。

 

でも急に冷めて、今は一つも欲しくないです。

 

招き猫への愛が冷めてしまったことを伝える斉藤和義。招き猫がかわいそうである。

 

次は新曲をやります。赤いきつねのCMで使われているみたいです。俺はまだCMを観れてないんですけど、もうテレビでやってます?

 

曲の音量はどうですか?CMの曲ってめちゃくちゃ音が小さくて聴き取りづらいんですよ。CMの武田鉄矢も邪魔なんだよ。

 

・・・・・・嘘です。武田さんはとても素晴らしい人です。大好きです。

 

武田鉄矢への贈る言葉として強烈なディスを残し、新曲『Over the season』を披露。武田鉄矢をディスった後とは思えないほどに、優しくて温かい楽曲だ。

 

今回のライブで自分が最も印象に残り胸に突き刺さった楽曲は、『2020 DIARY』だ。

 

〈緊急事態宣言が 始まったばかりの頃〉とうフレーズから始まる歌詞。まさに斉藤による2020年の日記をそのまま歌にしたような内容である。

 

それは赤裸々で真っ直ぐで、怒りと悲しみを感じる歌詞だ。でも、その中に、微かな希望のメッセージもある。この曲に共感しつつ力を貰った人がたくさんいるはずだ。

 

パンデミック クラスター オーバーシュート ロックダウン
聴き慣れない横文字がパフォーマンスに使われて
夜の街やライブハウスが槍玉に挙げられる
いつも通りに官僚は杓子定規でぼんやり
真面目な顔で誇らしげにマスクを2枚配る人

(斉藤和義 / 2020 DIARY)

 

ここ最近はコロナの陽性者数も減ってはきた。とはいえコロナ禍は終わったわけではない。当時の一部の身勝手な人たちの行動やメディアや政策への不信感は拭えない。それについて改めて考える機会を与えてくれる音楽だ。

 

MCでは乳首のことや乳首のことや乳首のことばかり話すが、それは本当に伝えたいメッセージは全て音楽に込めているからこそかもしれない。乳首以外のことは、全て音楽にしているのだ。

 

この曲をライブで聴いた時の衝撃は凄まじかった。その後に披露された『レインダンス』『シグナル』が、良い演奏をしていたはずなのに入り込めなくなってしまうほどだった。

 

斉藤和義はコロナ禍になってからギター制作を始めたらしい。招き猫収集には飽きてしまっても、ギター制作は飽きずに続けているようだ。この日は制作した3本のギターを紹介し自慢していた。

 

「ギター制作の先生と作ったんですよ」と言って最初に紹介したのは、ライブでも使用しているエレキギター。

 

「これは良くできたんですよ」と自慢するが「ネックのポジションマークの場所を間違えちゃったんで、間違えた部分は黒で塗りつぶしました」とまさかの対応をしていたことを話す。

 

白と黒のポジションマークが並んでいるので、このギターの名前は「オセロ」と名付けたと言う。

 

続いて水色の綺麗なボディのギターを紹介。「かわいい色でしょ」と自慢するが、配線が2つ足りないため音がならないらしい。これでは置物である。

 

続いて「音はイマイチ」だけどと言いつつも、その荒々しい音が魅力的なギターを紹介。このギターはフェルナンデスのHIDEモデルのネックを移植したという。

 

ちなみにネックはヤフオクにて3,000円で落札したらしい。出品者は落札者の宛名が斉藤和義と知り、ビビってロケットダイブしたかもしれない。

 

そしてライブでしか聴けないであろう、ジャムセッションが始まる。

 

テーマを決めてそれを元にイメージした音をバンドで鳴らすというジャムセッションだが、テーマは「最終乳首」になった。「ツアーファイナルだから、せっかくだし」という斉藤の発案により、このテーマになった。意味不明である。

 

誰も最終乳首のイメージが沸かないのだろうか、メンバー同士で誰から演奏を始めるかで揉め始める。

 

それに対して「なすりつけるな」と怒る斉藤和義。彼の頭には最終乳首のイメージが浮かんでいるのだろうか。

 

ここからバンドメンバーそれぞれが「最終乳首」に対して思い描くイメージを音にしていく。

 

それぞれの「最終乳首」を感じる音が、少しずつ積み重なっていく。そして全員の最終乳首が組み合わさり、1つの最終乳首が構築されていく。その最終乳首は、なかなかにファンキーな音色だった。

 

たしかに乳首ではバラードにはならない。お洒落なジャズやボザノバになるはずもない。ファンクになるのも納得だ。

 

最終乳首からメドレーのように『万事休す』へと繋がる。ライブでしか聴けない特別なアレンジに、ファンは乳首が立つほどに興奮していた。

 

いよいよライブも終盤。乳首の話をする暇などないほどに、盛り上がりが加速していく。

 

真壁陽平がギターを掻き鳴らし、観客から盛大な拍手を貰うことを合図に『Room Number 999』が始まる。

 

メンバーのソロ回しもあったりと演奏の凄みで盛り上げていく。やはり斉藤和義だけでなく、バンドメンバーも主役のライブだ。

 

最高の盛り上がりを作って、その勢いのままに次の曲を始めようとするも、斉藤がイントロのギターをミスしてなかなか始められない。どうやら普段と違うフレーズを弾こうとしてしたらしい。

 

苦笑いしながら「普通にやるか」と呟いて、演奏がスタート。始まった瞬間に、客席の熱気が一気に上昇した。

 

代表曲の『ずっと好きだった』が演奏されたからだ。

 

ステージセットのネオンが輝き、「有楽町!」と叫んで煽る斉藤和義。それに腕を挙げたり手拍子をして応えるファン。

 

まだまだ熱気は上昇していく。珍しくギターを置いてハンドマイクになる斉藤和義。「ハンドマイクだぜえ」と照れくさそうに言う。乳首の話は堂々とするくせに。

 

コールアンドレスポンスは恥ずかしくて苦手で、あまりやってなかったんですけれど、やってみようと思います。

 

みなさんの中にも声を出すのが恥ずかしい人もいるでしょ。でも今は平等に全員声を出せないから、心の中で叫ぶなら恥ずかしくないです。

 

でも心の中で叫ぶと、不思議と叫びが聴こえる気がします。心の中で日頃の鬱憤を叫ぶつもりでコールアンドレスポンスをしたら、楽しいですよ。

 

乳首の話は堂々とするのに、照れながらコールアンドレスポンスをする斉藤和義。それに対して心の中で叫んで応えるファン。

 

もちろん客席からは実際の声は聴こえない。無音である。それでも確かに、心の叫びが聞こえた気がした。

 

そしてハンドマイクでステージを練り歩きながら『虹』をパフォーマンス。

 

サビでは客席にマイクを向けて、レスポンスを求めていた。もちろん客席は声を出さない。それでもやはり、心の中で歌う声は聴こえた気がした。

 

最初のサビの〈きみとギターと猫と〉という歌詞では、ステージサイドのビジョンにステージセットのテーブルに置かれた黒い招き猫が映っていた。

 

MCでは「急に冷めて、今は一つもほしくはない」と言っていたのに、なんだかんだで招き猫が好きではないか。彼はツンデレである。

 

そして再びギターを持ってライブ定番曲で代表曲の『歩いて帰ろう』へ。

 

嘘で誤魔化して過ごしてしまえば
たのみもしないのに 同じような風が吹く

 

後半のフレーズを、斉藤和義は歌わなかった。マイクスタンドから離れてファンに歌うように煽った。

 

もちろん客席から声は聴こえない。誰も実際は歌わない。それでもやはり、心の中の叫ぶような歌声は聴こえた気がした。自分も心の中で歌った。

 

斉藤和義は満足気に「サンキュー」と言って、再び歌い出した。客席からの心の声は、ステージに聴こえているのだ。このライブで最も一体感が生まれた瞬間に思う。

 

最後に演奏されたのは『BOY』。まるで若手ミュージシャンのように衝動的に演奏する。心の底から音楽を楽しんでいるように見える。そんな最高の演奏をして本編は終了した。

 

アンコールの拍手に応えて再登場すると「もうちょっとやらせてもらいます」と照れながら言ってから演奏を始めた。乳首の話は照れないのに、ここで照れるのが不思議だ。

 

『朝焼け』『I LOVE ME』でしっかりと盛り上げてから、コロナ禍に47公演行ったロングツアーへの思いを語った。

 

やっとツアーをやることができました。来た人も、来ることを諦めた人も、きっと正解だと思います。正解は自分にもわかりません。

 

ここ数日落ち着いてきているので、このまま落ち着くことを望みます。

 

次にやる時は普通にやれるといいですね。とはいえ制限がある中でしたが、本当に良いツアーでした。ありがとうございます。

 

そう言ってから『ぐるぐる』が演奏された。これがライブ最後の曲である。

 

斉藤和義がアコースティックギターをカッティングすると、それに合わせてバンドメンバーが手拍子を煽る。この日一番大きな手拍子の音が、会場に響く。

 

優しい演奏と温かな手拍子の組み合わせが心地よい。その空間が素晴らしすぎて、胸がいっぱいになる。ライブは演者だけでなく、観客も一緒に作っていると実感する。

 

曲が後半になると、バンドメンバーが演奏を止めてステージの前に出てきた。

 

するとアカペラでドゥーワップをやり始めた。突然、ゴスペラーズみたいなことをやり始めた。しかもステップを踏みながら歌っている。斉藤和義はカーリングストーンズに参加して以降、ダンスの楽しさに目覚めたのだろうか。

 

それを戸惑いながら手拍子で盛り上げる客席。乳首には動揺しないが、アカペラには動揺してしまうファン。

 

演奏後に「ラッツ&スターでした」とメンバーを紹介していた。どうやら自分は斉藤和義ではなく、ラッツ&スターのライブに来ていたらしい。

 

ラッツ&スターの素晴らしい演奏によって、感動と幸せの余韻に包まれる客席。そんな客席を満足げに見渡す斉藤和義。

 

そして、突然、おもむろに、Tシャツをまくって、乳首を見せつけてきた。

 

大きくもなく小さくもなく、ちょうど良い大きさの乳輪と乳首。色はピンクで美しい。

 

そんな綺麗な乳首と斉藤和義のドヤ顔が、ステージ両サイドのビジョンに映し出される。

 

鳴り止まない拍手が、演奏に向けられているのか乳首に向けられているのかわからなくなる。そもそも何故に乳首を見せたのか不明である。

 

最高の演奏による感動と、最終の乳首による疑問を余韻として残し、斉藤和義の全国ツアーは終了した。

 

■セットリスト

01.BEHIND THE MASK
02.Strange man
03.いつもの風景
04.純風
05.一緒なふたり
06.I want be a cat
07.彼女
08.敗れた傘にくちづけを
09.Lucky Cat Blues
10.魔法のオルゴール
11.Over the season
12.2020 DIARY
13.レインダンス
14.シグナル
15.万事休す
16.シャーク
17.Room Number 999
18.ずっと好きだった
19.虹
20.歩いて帰ろう
21.Boy

EN1.朝焼け
EN2.I LOVE ME
EN3.ぐるぐる

 

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