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【ライブレポ・セットリスト】SUPER BEAVER『都会のラクダ 〜愛の大砲、二夜連続〜 at さいたまスーパーアリーナアリーナ』は「素晴らしかった」の一言でしか言い表せないほどに愛で満ちていた

2020年2月。コロナ禍になる直前、SUPER BEAVERは国立代々木競技場第一体育館でワンマンライブを行った。

 

そのライブのMCで、渋谷龍太がこのように話していた。

 

ライブハウスからいなくなりません。ライブハウスでもやります。ホールからもいなくなりません。ホールでもやります。アリーナを喜んでもらえるならアリーナでもやります。そういうバンドになります

 

この言葉が印象深くて、今でも覚えている。それまでは「次はライブハウスで会いましょう」とライブ終わりに言うことが多いバンドだった。ライブハウスを主戦場として大切にし続けていたバンドだった。だからこの言葉が意外でありつつも、会える場所が増える予感がして嬉しかったから、忘れられない。

 

それから1年9ヶ月。

 

コロナ禍によって予定していたライブがいくつも中止になったりと、バンドにとって苦難な出来事が多かった。それでも泥臭くもがきながら彼らは活動を続けてきた。

 

そしてコロナ禍の中で、ツアーを行った。東名阪の6公演。全てが満員御礼。

 

自分はツアーファイナルであるさいたまスーパーアリーナ公演を観た。

 

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そのライブは代々木第一体育館で発した言葉に説得力を持たせるような、アリーナ規模が見合う素晴らしいパフォーマンスだった。アリーナだからこそ体験できる感動だった。

 

それでいてライブハウスの熱気をアリーナにそのまま持ってきたような衝動もある。宣言通りに「そういうバンド」になっていた。

 

いつもと違いSEを使わずに、メンバーの演奏から始まったライブ。音が鳴った瞬間に、約1万人の期待と興奮に満ちた拍手が会場に響く。「そういうバンド」でなければ、このような歓迎はされない。

 

1曲目は『ハイライト』。まるで最初からハイライトと言えるような熱気を感じる演奏だ。

 

その音はライブハウスと変わらない、真っ直ぐな音だった。距離はライブハウスよりも遠いのに、ライブハウスと同じように近く感じるようなロックだった。

 

しかしアリーナ全体を飲み込むような力強さもある。ライブハウスから生まれたSUPER BEAVERは、正攻法でアリーナで通用するバンドに進化したのだと感じる。

 

彼らの鳴らす音はどんな場所でも変わらないが、演出は普段とは比べ物にならないほどに壮大でド派手。つまり音は変えずとも最も伝わる方法でライブを行なっているのだ。

 

最初から火花や煙の特攻演出があり、ステージ後方は全面が立体的なLEDスクリーンになっていて、そこにメンバーの演奏が映る。曲の始まりには「SUPER BEAER」と書かれたロゴのセットがデカデカと登場した。この規模でやるロックバンドのお手本と言えるようなパフォーマンスと演出に胸が熱くなる。

 

「さいたまの皆さん、お待たせいたしました!レペゼンジャパニーズポップミュージックフロムライブハウス!SUPER BEAVERです! 」といつも通りに挨拶する。約1万人の観客で埋まっているアリーナで、ライブハウス出身であることを誇るように挨拶する。

 

そして「この瞬間が、俺たちだけでなく、あなたの突破口になりますように」と言って『突破口』を披露。メンバー1人ひとり縦長のスクリーンに1人ずつ映る映像が印象的だった。この4人から慣らされる唯一無二の音の凄みを、演出で伝えているように感じる。

 

間奏では「後ろまで見えてるぞ!」「2階席見えてるぞ!」「アリーナ、当然だけど見えてるぞ!」と全ての客席に向けてメッセージを伝える。やはりこのバンドは、ライブハウスでもアリーナでも変わらない。一人ひとりに向けて歌い演奏している。

 

2曲続けてコロナ禍にリリースされた楽曲を披露し「最新のSUPER BEAVER」を見せ付けるようなパフォーマンスをしていたが、ここで過去曲である『27』を披露。

 

イントロでは大きな手拍子の音がアリーナに響き渡る。過去の曲だからとスケールダウンはしていない。むしろアリーナで披露するために作られたのかと思ってしまうほどに、大きな会場が似合う楽曲である。〈まだ僕は生きてく〉という最後のフレーズが、より力強く感じた。

 

俺の正解が誰かの不正解で、誰かの正解が俺の不正解になる時代。今日は様々な理由で来れなかった人もいると思う。仕事とか、仕事とか、仕事とか(笑)

 

でも本当に家族の事情とか、様々な理由や判断で諦めた人もいると思います。だからそんなあたなのために、WOWWOWでも中継されています。母ちゃん!観てますか?

 

来ることができなかったファンと母への愛を伝えながら、カメラに向けて手を振る渋谷龍太。ちょっとかわいい。

 

このご時世になってから画面越しでも届けられると思うようになった。でもこの場へ来てくれたのならば、ここで気持ちを受け取り合うことがライブだとは思います。だから4人でやれるライブをやるつもりは、ありません。あなたと一緒に音楽をやりたいです。

 

ライブへの想いを語ってから「愛すべきあなたのお手を拝借。声を出せなくても、受け取った気持ちは100倍にして返します」と言って客席の手拍子を煽る。

 

そして手拍子に合わせ、アカペラで『美しい日』を歌い始める渋谷。まさにファンも含めたここにいる「あなた」と一緒に音楽をやっている。

 

バンドの演奏も重なり盛り上がりは最高潮になり曲を終えると、「おはようございます。ようやく目が覚めてきました?」と挑発的に煽ってから『証明』を曲間なしで続ける。そして「いつだって始まりは青い春!」といつものライブで言う曲紹介から『青い春』を畳がける。

 

最初から熱気に満ちたライブだったが、ここに来てさらに熱気は上昇している。大きな会場なのに、小さなライブハウスだと錯覚するような心理的な近さを感じる。

 

MCでも渋谷が「俺は某コーヒーショップのグランデサイズを持ち込まなければ、新幹線に乗れない」と話し、心理的な近さを感じさせる。ちなみにグランデはスタバにしかないサイズ名だ。名前をボカす理由は不明である。

 

キャリーバックを上に持ち上げるときにコーヒーを全部こぼしちゃって。しかも新幹線の発射直前だったから、発射と同時に推進力でコーヒーが全部後ろに流れて行ったの。駅員さんと俺とで40分かけて吹いて、同じ車両の人全員に謝罪するという地獄。ライブの前日だったから良かった。当日だったらライブを一本飛ばしてた。

 

コーヒーの危険性と恐怖について語っる渋谷。彼の不幸を反面教師にして、自分は新幹線に乗るときははペットボトルの飲み物を持ち込むことを誓った。

 

最近は楽しむことが悪いことと感じる風潮があると思う。でもこの場所ではあなたの楽しいをしっかり守りたいです。でも俺たちは慈善事業ではないので、俺たちも楽しくなりたいわけ。あなたには俺たち4人の楽しいも守ってもらえますか? 

 

その言葉に応えるように盛大な拍手を贈る客席。そして「あなたの楽しいは命懸けて守りますので、安心して楽しんでいってくださいね」と言ってから次の曲へ。

 

前半はひたすらに衝動的なロックを鳴らしていたが、ここで少し雰囲気が変わる。

 

緑色の薄暗い照明の中、火柱が燃える演出から始まった『mob』。妖艶で怪しげで吸い込まれるような感覚になる。演奏によって自由自在に会場の空気を操っているようだ。

 

そして『正攻法』では会場に重低音を響かせる。一発勝負のドキュメントに感じる演奏も演出も、痺れるほどにロックバンドとしてカッコいい。

 

「後ろまで届いてますか?」と言ってステージ中央から客席に伸びた花道を歩く渋谷。花道で歌われたのは『らしさ』。スポットライトを浴びながら、ステージ全体に目線を向けながら歌う。

 

間奏で「あなた自身に拍手を贈ってください」と言うと、この日一番大きな拍手が巻き起こる。音楽は、ライブは、希望を与えてくれる。特にSUPER BEAVERのライブを見ると力が漲ってくる。それを改めて実感する瞬間だった。

 

『愛しい人』では彼らが希望を与えてくれるバンドだと言うことを、より強く感じた。

 

感情的に歌い演奏するメンバーに合わせ、ステージ後方のビジョンに一言ずつ歌詞が浮かび上がる演出があった。歌詞が文字として視覚に入ってくるからこそ、言葉が真っ直ぐ胸に刺さる。青臭くも真っ直ぐな言葉だからこそ、彼らの音楽は力強いのだ。

 

2020年は音楽ができなかったことが辛いのではなくて、あなたに出会えなかったことが辛かったです。人と会えることが、気持ちの交換をできることが、当たり前のことと思わないように、大事にしたいと思いました。

 

俺たちがどういうバンドであり続けるかを、次の曲で伝えます。

 

この日、最も赤裸々な想いを伝えたMC。その後に演奏された『人として』。〈人としてかっこよく生きていたいじゃないか〉という歌詞が胸に刺さる。

 

派手な演出や凝った演出が続くライブではあったが、この曲では映像演出や火花などの特攻演出は行われなかった。ステージ両サイドのスクリーンに、メンバーの映像も映らなかった。

 

シンプルなステージの上で、シンプルな照明の中で、4人がライブハウスと変わらない姿で真っ直ぐな演奏をしている。たとえ演出がなくても、彼らの音楽は伝わる。そんな力を持っているからこそ、17年間泥臭く続けた結果としてアリーナを完売させたのだ。

 

「鼻で笑われてからが本当の勝負だ。俺たちがあなたを、後ろから前から横から、支えられますように!」と叫んでから『名前を呼ぶよ』が演奏された。

 

最新曲でありながら、すでにキラーチューンに感じる盛り上がり。客席から声は出せないものの、心の中でサビを一緒に歌っている人がたくさんいたような気がする。そのような熱気があった。

 

ライブも終盤。「あなたの本気を見せてくれよ!」と言ってから『東京流星群』を演奏する。

 

サビではミラーボールが回り、会場に流星群が流れているかのような光で客席が包まれる。「見えてるか?俺たちはしっかり見えてるぞ!」とニヤリと笑いながら煽る渋谷。渋谷は途中から花道を歩き、柳沢亮太と上杉研太もステージサイドまで行ったりと、会場全体を使って盛り上げていく。

 

ここで渋谷以外のメンバーからも、一言ずつアリーナツアーの感想が伝えられた。

 

「無事に迎えられてよかったです。でもコロナは関係なく、毎回無事に迎えられることが喜ばしいことですよね」と感慨深そうに話す上杉。「楽しいよね?楽しそうですね。楽しそうだらか、俺も本当に楽しい」と鳴き声のように「楽しい」を連呼するドラムの藤原。

 

柳沢先生、しっかり締めてください」と渋谷にイジられてから話し始めた柳沢は「コロナ禍になってから、さいたまスーパーアリーナに1万人以上お客さんを入れたのは初めてらしいです。我々はそれを誇らしく思います。支えてくれたスタッフに向けても拍手をお願いします」と観客に拍手を催す。

 

温かくて優しい拍手が響く。当然ながらバンドの力だけではライブは開催できない。観客が入ればライブが成立するわけでもない。多くのスタッフが安全に成功させるために、工夫して努めてくれている。だから無事に開催できている。それを忘れてはならない。

 

残り3曲であることを伝えてから『予感』を披露。

 

この曲でも花道を使い、後ろまでしっかりと歌を届けようとしていた。ライブ定番曲でありながらも、ライブで観る都度に新しい景色を観せてくれる楽曲でもある。そして聴く都度に感動を与えてくれる楽曲でもある。

 

そして「青臭いと言われても、馬鹿みたいだと言われても、愛してると歌えないで、何がバンドなんだよ?」と叫び『アイラヴユー』を畳がける。

 

正直なところ、この曲がリリースされた当初は自分も「歌詞が真っ直ぐすぎないか?」とは思った。

 

でもこうしてライブで聴くと、真っ直ぐすぎるぐらいに真っ直ぐだからこそ、響くのだと気づく。飾らない真っ直ぐな言葉だからこそ、魂を込めなければ伝わらない。そうでなければ単純で薄っぺらい言葉になってしまう。

 

それを理解した上で〈アイラブユーが歌いたい〉と真っ直ぐに歌っているのだろう。SUPER BEAVERの歌う「アイラブユー」はものすごく重い。その重みをしっかりと受け取らなければと感じる。

 

ラストナンバーは『さよなら絶望』。

 

「愛しているお前の邪魔をするやつ、一切合切に中指を立てて帰ります」と中指を立てながら渋谷が宣言し、柳沢が「拳をあげてくれ」と煽り、会場全体の拳があがることを確認してから、演奏が始まった。

 

全ての絶望を吹き飛ばすような衝動性を持った演奏を叩きつけるようにして、颯爽とステージを去って行った。

 

あたなに楽しいと思って欲しいです。あなたに幸せになって欲しいです。

 

階段で一歩ずつ登っていきます。エスカレーターもエレベータも使いません。いつでも側にいるバンドであり続けます。だからこれからも、よろしくお願いします。

 

またすぐ会えるんで。なんせ今月だけでもまだ9本もライブがありますから(笑)。50人キャパから1万人キャパまでやるバンドは、俺たち以外にいませんよ。

 

アンコールでは改めてバンド活動についての想いを伝えていた。音楽だけでなく言葉も真っ直ぐだ。余談だがアンコールで渋谷龍太は髪を結んでいた。その姿は、とてもとてもセクシーである。

 

あなたの「生きててよかった」になりたいです

 

そう言ってからアカペラで『時代』を歌い始める渋谷。そしてバンドの音が重なる。声を出さずに心の中で歌っているであろう、拳をあげつづける1万人の観客。

 

序盤のMCで「4人でやれるライブをやるつもりは、ありません。あなたと一緒に音楽をやりたいです。」と語っていた。まさにここにいる「あなた」と一緒にライブをやっている瞬間に思えた。

 

アンコール前にはVTRで新作アルバムのリリースとホールツアーの開催を発表していた。だからまたすぐに、SUPER BEAVERに会えるはず。また今日のような美しい日を、すぐに体感できるはず。

 

SUPER BEAVERは『時代』で〈あなたはわたしの光です〉と歌っていた。ファンの立場としては、こちらこそ「SUPER BEAVERがわたしの光です」と言い返したい。

 

変わらないまま変わって行ったバンドは、いつしかアリーナツアーを完売するほどに愛されるようになった。これからも時代を作る活動を続けて、多くの人たちの光であり続けるはずだ。

 

■2021年11月7日(日) SUPER BEAVER 都会のラクダ 〜愛の大砲、二夜連続〜 at さいたまスーパーアリーナ セットリスト

1.ハイライト
2.突破口
3.27
4.美しい日
5.証明
6.青い春
7.mob
8.正攻法
9.らしさ
10.愛しい人
11.人として
12.名前を呼ぶよ
13.東京流星群
14.予感
15.アイラヴユー
16.さよなら絶望

EN1.時代

 

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