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【ライブレポ・セットリスト】フジファブリック LIVE TOUR 2023 "Particle Dreams" 振替公演 at  Spotify O-EAST 2023年9月12日(火)

自分はフジファブリックLIVE TOUR 2023 "Particle Dreams"の横浜公演の観ている。バンドの演奏も観客の盛り上がりも最高で、コロナ禍の制限が殆ど撤廃されたライブハウス公演だからこその熱気に包まれていた。

 

 

そのツアーは恵比寿リキッドルームの東京公演を経て、7月17日の服部緑地野外音楽堂の大阪公演で終了するはずだった。しかし山内総一郎がコロナに感染したことで東京公演が延期となってしまった。会場はSpotify O-EASTへ変更となり、公演日も9月に変更となった。

 

不本意な延期だったとは思うが、その分だけファンも期待が増していただろうし、バンドもいつも以上に気合いが入っていただろう。それでいてキャパが大きい会場になったことで、再販売のチケットが手に入りライブ参加が実現したファンもいる。自分もその1人だ。そんなファンも諦めていたライブに行ける喜びに満ちていただろう。

 

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だからかいつも通りに『LOVE YOU』をSEにして登場した時から、観客のテンションはいつも以上に高い。そんなフロアの反応にメンバーは嬉しそうに笑顔を見せる。

 

だが『陽炎』から演奏を始めると、観客は一瞬でステージに集中し静かになる。切なくて情緒的なメロディが心に沁みるが、演奏や歌声は熱量があってロック。そんな演奏に観客も心が震えたのだろう。まるでラストソングを歌った後かのように拍手が長い。そんな反応をするフロアをメンバーは笑顔で眺めている。

 

そして「ライブツアー "Particle Dreams"ファイナル、始めます!」と山内が宣言するように挨拶して『自分勝手エモーション』へと雪崩込む。今度は爆発するかのような盛り上がりで、観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

ここまでは横浜公演と同じ曲目と曲順だったが、次に演奏されたのは『東京』。横浜公演では『楽園』が演奏されたので、同じツアーといえどもセットリストは一部変更しているようだ。この楽曲では山内がハンドマイクで煽りながら歌い、メンバーのソロ回しで盛り上げていた。

 

『Shiny Days』では観客から自然とクラップが巻き起こったりと、みんなノリが良い。加藤慎一と金澤ダイスケの歌唱パートもあるのも楽しい。会場はぱっと明るくなり多幸感に満ちていた。

 

しかし山内はまだ物足りないようで、「まだまだはしゃぎ足りないよな?」と挑発的に煽っていた。演奏中の山内はたまにキャラ変する。今回はドSキャラになっていた。

 

「ありがとう!そしてごめんね!やっと会えたね!」と自身のコロナ感染で延期になったことを謝る山内。観客は「気にするな!」と想いを込めたかのような温かい拍手を鳴らす。

 

フジファブリックは夢を共有して一緒に叶えてきました。来年はメジャーデビュー20周年です。この曲はこれからも一緒に夢を見ようという気持ちを込めて作った曲です。

 

これからもフジファブリックをよろしくお願いします。ライブの序盤で言う言葉ではないですね(笑)

 

山内の言葉から続いたのはツアータイトルにもなっている新曲『Particle Dreams』。フジファブリックの強みが活かされたダンサンブルなロックナンバーだ。ステージ天井のミラーボールが回ったりと演出も楽曲を盛り上げている。後半は音源よりも迫力あるジャムセッションになるのも、演奏力の高いフジファブリックだからこそだ。

 

そんな演奏力を見せつけるような楽曲はまだまだ続く。山内がダブルネックギターに持ち替えて演奏されたのは『地平線を超えて』。志村正彦節と言える不思議で怪しげなメロディと歌詞に、プログレ的な演奏が重なる。特にギターの演奏が映える楽曲だ。山内は気持ち良さそうにギターソロをかき鳴らしていた。

 

かと思えば爽やかな雰囲気の『Time』を演奏したりと、また違った印象を音楽で与えてくれる。フジファブリックの音楽席は幅広い。だからこそライブでも様々な感情を呼び起こして、様々な感動を与えてくれる。

 

この日のハイライトは『ブルー』だ。山内がギターを優しく爪弾いてから金澤のピアノの音色が響く曲始まりも美しく印象的だったのだが、そこからのバンドの演奏と山内の歌声も温かくて胸に沁みる。

 

そして何よりもアウトロのギターソロが最高だった。音源よりも長尺でエモーショナルに山内は弾いていたし、それを支えるバンドの演奏も安定していて隙がない。演奏後に「良かった?めっちゃ良かったよね。史上最高の『ブルー』だだったと思う。もう今日を超える『ブルー』はないです(笑)」と山内が言うほどの凄まじさだった。

 

観客「関ジャム!」

金澤「関ジャニ∞って言った?僕のことがカッコいいからって関ジャニ∞と見間違えてます?」

観客「www」

金澤「関ジャムに出てうんちくを語ったからか、今日は手元ばかり見られてる感じがします。もっと俺の顔を見てくれ!」

 

金澤は『関ジャム』のキーボーディスト特集に出演していた。それに言及しつつ観客に苦言を言っていた。

 

フジファブリックのMCは長い。メンバーもテンションが上がってしまうからか、演奏の調子が良い時ほど長くなる傾向がある。サポートドラムの伊藤大地もハンドマイクになって喋らされていたが「色々なバンドのサポートをやってきたけど、ハンドマイクで喋らされるのはフジファブリックだけだよ」と話していた。

 

長いMCを終えるとここからは畳み掛けるようなライブ展開となる。フレデリックとコラボレーションした三原健二とのデュエットソング『瞳のランデブー』では、三原の代わりに金澤がボーカルを務めた。

 

金澤もなかなかに歌が上手い。観客は金澤が歌う都度に歓声をあげている。山内が「スーパーボーカリスト金澤ダイスケ!」と紹介していたが、その言葉に偽りないカリスマ性のあるボーカリストなのかもしれない。かつて六本木のライブでなぜか『もののけ姫』を歌っていたが、その時も見事な歌唱だったことを思い出した。

 

ライブも後半。雪崩れ込むように『WIRED』が続くと「この日1番ではないか?」と思うほどに観客が湧き上がった。山内はこの日の『ブルー』を「史上最高」と自画自賛していたが、この日の『WIRED』も史上最高と言いたくなるほどに素晴らしい演奏と盛り上がりだ。

 

リリース以降ライブ定番曲としてお馴染みの『Feverman』では、観客は当然のように振り付けを踊って楽しんでいる。今回も音源よりも長いセッションがあり山内がギターソロを弾き倒していたのも、観客と同様にメンバーも楽しくて仕方がないからだろうか。

 

そこから曲間なしで『Surfer King』を続けると、観客のボルテージは一気に最高潮に。〈ケラケラ笑っちゃうぜこのコメディアン〉という歌詞で山内が金澤を指さすと、金澤は笑顔で腕を上げながらキーボードを弾く。「手元よりも俺の顔を見ろ」と中盤のMCで言っていたからか、とても良い表情をしていた。

 

〈フフフフフフフフフ〉という歌詞をバンドは観客に歌わせ、それに観客が応えて合唱するシュールながらも楽しい空気感は、志村正彦の作った楽曲だからこそ生まれるものだろう。志村の魂はしっかり音楽として残っていて、こうして鳴らされているのだ。

 

「すぐに出てくるけど、次が最後の曲だ!すぐに出てくるけどな!」と呼ばれなずともアンコールをやることを遠回しに宣言する山内。なぜか巻き舌で喋っていた。

 

最後に演奏されたのは『ミラクルレボリューションNo.9 』。この楽曲は振り付けがあるため加藤が観客にレクチャーしてから演奏が始まったが、観客は予習をしっかりとしてきたのだろう。最初から観客は完璧に踊れていた。そんな観客の前で演奏するのだから、盛り上がらないはずがない。山内もハンドマイクになって踊りながら歌い煽っていた、山内は時折振り付けを間違えていたので、ダンスのセンスは観客の方があるのかもしれない。

 

最高の盛り上がりの中ステージを去るフジファブリックだが、山内が言った通りにすぐに出てきた。しかし登場したのは山内のみだ。

 

久々にCDシングルの新曲をリリースします。今日はその曲をやろうと思います。本当はみんなにバンドで聴かせられたら良かったんだけど、間に合わなかったです。絶賛製作中だから期待していてください。今日は弾き語りで聴いてください。

 

そう言ってからエレキギターの弾き語りで、できたてほやほやの新曲が演奏された。披露されたのはシングルのA面ではなくカップリングの新曲。美しいメロディと優しいメッセージの歌詞が良い。特に。〈心ころころ転がって〉というサビの歌詞が印象的だ。

 

新曲を気に入った観客ばかりのようだ。会場に盛大な拍手が鳴り響いている。それを聴いた山内は、観客の反応が嬉しいのか笑顔を見せていた。「次のツアーではバンドでやります」とも言っていたので、この楽曲がバンドアレンジのライブ演奏でどれほど化けるかが楽しみだ。

 

「金澤さん、加藤さん、伊藤さん、来てください!」と学校の先生かのようにメンバーを呼び込む山内。そして「夏の終わりの曲を」と告げてから代表曲『若者のすべて』が演奏された。

 

ライブで演奏されることが多い代表曲だが、やはり何度聴いても感動してしまう。特に夏の終わりに聴くとシチュエーションとベストマッチしていて最高だ。山内も自ら「何度歌っても心に響く曲ですね」と歌い終わってからつぶやいていた。その時、メンバーも観客も志村のことが頭に撃たんだかもしれない。

 

ここでメンバーに「ツアーの感想はありますか?」と尋ねる山内。事前に打ち合わせをしていなかったようで、突然の質問に驚いた金澤が「このタイミングで聞くんですか?」と言って狼狽えていた。とはいえ狼狽えつつもしっかり観客への感謝を述べながら感想をまとめる金澤は流石だ。加藤と伊藤も狼狽えつつもしっかりと感想を述べていた。

 

山内「コロナになると身体に色々と影響が出て本当に大変なんだよ。例えば物忘れが増えたりとか」

金澤「物忘れはコロナになる前から多かったですね」

 

山内は自身の物忘れが多いとという性格を、物忘れしていたようだ。

 

そして新しく作ったという白いエレキギターを山内が自慢してから『徒然モノクローム』が演奏された。特別に作られた新しいギターだからか、サウンドが独特で存在感がある。それがバンド全体のサウンドをより個性的なものにしているようだ。

 

ライブ後半ということで、観客は全てを出し切るかのように盛り上がっていた。バンドも同様に熱量がすごい。山内はテンションが上がったのかサビ前の〈徒然しちゃう〉という歌詞を観客に歌わせようとしていたが、突然の出来事だからか観客は驚き狼狽えてしっかりと歌えなかった。

 

ラストはイントロで山内が「一緒に生きていこうぜ!」と叫んでから始まった『LIFE』。タイトルも歌詞も今のフジファブリックのテーマソングにしたいような内容かつ、これまでのフジファブリックを表しているかのような楽曲だ。

 

この楽曲も当然ながらバンドも観客も盛り上がっている。「ギター俺!」と叫んでからギターソロを弾く山内が印象的だったが、それ以上に〈でもでもやっぱ寂しいな〉というフレーズを歌う前に演奏を止めて「1人の方が楽だし、料金も安いし、人と一緒だと面倒臭いし...」と台詞を言っていたことが忘れられない。

 

横浜ベイホールでも同じようなアレンジで披露していたが、今回は横浜公演よりも台詞回しが上手くなっていた。そのうち氣志團『One Night Carnival』のように台詞のある楽曲を、演技力の向上を理由に制作するかもしれない。

 

大団円でライブは終了したが、終わってからダブルアンコールを求める拍手がずっと鳴り響いていた。フジファブリックがダブルアンコールをやることは少ない。おそらく観客のほとんどがダブルアンコールはないと予想していたはずだ。

 

それでも帰らずに拍手をし続けたいと思ったのだろう。それほどに素晴らしいライブだったのだ。もしかしたらダブルアンコールを求める拍手と言うよりも、賞賛と感動と感謝を伝えるための手段としての拍手だったのかもしれない。

 

結局ダブルアンコールは行われなかった。だが観客はみんな満足して帰路についたと思う。きっとこの日のライブは全ての観客にとって、何年経っても思い出してしまうものになったはずだ。

 

フジファブリック LIVE TOUR 2023 "Particle Dreams" at  Spotify O-EAST 2023年9月12日(火)  セットリスト

1.陽炎
2.自分勝手エモーション
3.東京
4.Shiny Days
5.Particle Dreams
6.地平線を越えて
7.Time
8.ブルー
9.瞳のランデブー
10.WIRED
11.Feverman
12.Surfer King
13.ミラクルレボリューションNo.9 


アンコール
14.新曲
15.若者のすべて
16.徒然モノクローム
17. LIFE