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【レビュー・感想】岡崎体育『劇場版ポケットモンスター ココ テーマソング集』を聴いて「ざまあみろwww」と思った

性悪ではない岡崎体育 

 

岡崎体育は変わってしまった。

 

以前の彼は1人で音楽を作っていたし、孤独だった。

 

「僕ずっとメンバーが欲しかったんだ」と、布切れに話しかけ現実逃避するほどには仲間を求めて飢えていたようだが、それでもバンドに対して「ざまあみろwww」と言って、収入の差をバカにするような性悪さを持っていた。

 

今の岡崎体育には、当時の性悪さはなくなっている。良い人ぽくなってしまった。

 

いつの間にかビッケブランカと一緒にコラボ楽曲を出したり、『おはスタ』のレギュラーになって子どもの人気者になった。

 

彼の周りには仲間が集まり、いつの間にか優しくて面白いお兄さん的なキャラになっている。貯金が8,000万円も貯まると性格も変わるのだろうか。

 

だがそのキャラ変は悪いことばかりではない。そもそも性悪なことが良いことなはずはない。むしろ良いことだ。

 

『劇場版ポケットモンスター ココ』の劇中歌や主題歌を全曲岡崎体育が手がけ、それをまとめたアルバムがリリースされたが、これはキャラ変や立場の変化がなければ生まれなかっただろう。

 

この作品には性悪な岡崎体育は存在しない。優しい岡崎体育の音楽だけが詰まっている。そして素晴らしいポップスのアルバムである。

 

過去作と違う方向性

 

今までの岡崎体育の作品と比べると、編曲や音色の方向性が変化している。

 

もともと様々な音楽を取り入れて自身のモノとして昇華するタイプのアーティストではあるが、基本的には打ち込みのポップスやダンスミュージックが軸。繊細に音を積み重ねることで、上質で明るい音色のポップスを作るタイプだ。

 

しかし今回はバンドサウンドが目立つ。『Show Window』のように「これぞ岡崎体育」という編曲や音色の楽曲もあるが、それはほんの一部だ。

 

Show Window

Show Window

  • 岡崎体育
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

おそらくバンドサウンドで活動しているアーティストとのコラボ楽曲が多いからだろう。1曲目の『掟の歌』からしても、普段の岡崎体育とは違う音色である。

 

この楽曲は岡崎体育とSiMによるユニットSiNRiN名義での楽曲。作詞は映画ポケモンの監督である矢嶋哲生だ。

 

外部からの刺激が多いからか、今までの岡崎体育作品ではなかった民族音楽をベースにした壮大なサウンドになっている。

 

掟の歌 (feat. SiNRiN)

掟の歌 (feat. SiNRiN)

  • 岡崎体育
  • J-Pop
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壮大なサウンドで言えば『ココ』も忘れてはならない。

 

Beverlyをボーカルに迎えた楽曲。彼女の表現力豊かでまっすぐ通る歌声が感動的である。壮大なバンドサウンドが、そんな歌声を引き立てる。

 

ココ (feat. Beverly)

ココ (feat. Beverly)

  • 岡崎体育
  • J-Pop
  • ¥255
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曲間のコーラスが楽曲の要だ。

 

このコーラスを岡崎体育が歌っていたら「お前はワンオクにでもなったつもりか?」と思ってしまうが、Beverlyが歌うから感動してしまう。

 

きっと岡崎体育も自分がワンオクのTakaではないことを自覚しているので、歌いこなせるボーカリストを選任したのだろう。

 

ポップスの職人としての岡崎体育

 

日本文化を継承していく上で 音楽業界が抱える重要課題。そのうちの一つに、宮本浩次氏という銘楽器をいかに伝えてゆくべきかというものがあります

 

 上記の言葉は2020年9月6日に放送された『関ジャム完全熱焼SHOW』の宮本浩次特集で、椎名林檎が語っていた言葉だ。

 

これは宮本だけでなく他の一流ボーカリストに対しては全て当てはまることに思う。

 

個性的な声質のボーカリストは何を歌っても魅力的ではあるが、一流のボーカリストが最大限の魅力を発揮するためには一流の楽曲が必要なのだ。

 

岡崎体育はトータス松本と木村カエラという「銘楽器」の魅力が最大限伝わる楽曲を制作した。

 

『ふしぎなふしぎな生きもの』は父親の目線から「子どもについて」「親子について」をテーマに歌われている楽曲だ。

 

ふしぎなふしぎな生きもの (feat. トータス松本)

ふしぎなふしぎな生きもの (feat. トータス松本)

  • 岡崎体育
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 力強くも優しいトータスの歌声は、楽曲のメッセージを伝えるには最適である。作詞作曲は岡崎体育だが、実際に子を持つ父親でもあるトータスが歌うことで歌に説得力が増し、リアルに感じる楽曲だ。

 

これはポケモンの挿入感でありつつも、トータスをイメージして製作された楽曲とも受け取れる。

 

どのような楽曲ならばウルフルズともトータス松本のソロとも違う、新しい魅力を引き出すことを意識して製作された楽曲に感じる。

 

『ただいまとおかえり』も木村カエラが歌うからこそ響く楽曲だ。

 

ただいまとおかえり (feat. 木村カエラ)

ただいまとおかえり (feat. 木村カエラ)

  • 岡崎体育
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 優しくて伸びやかな歌声が心地よい。〈ねえ 夢の中でまぶたの裏に何を書いたの〉と語りかけるように始まる歌詞も良い。

 

これも木村カエラの歌声だからこそ胸に沁みる。サビの段々と音階が上がるメロディも、彼女の歌声と相性が良くて最高だ。

 

 これも岡崎体育が歌ったとしたら、優しくて心地よい雰囲気を楽曲から出すことは難しかったかと思う。どうしても「バンドざまあみろwww」と言っていた性悪な岡崎体育が頭をよぎってしまうからだ。

 

カエラが歌うことで楽曲の魅力が最大限引き出されているし、楽曲によってカエラの魅力が最大限引き出されている。

 

岡崎体育が木村カエラをボーカリストとしてプロデュースしたと言えるような楽曲だ。

 

岡崎体育はトータス松本にも木村カエラにもなれない。その代わり2人が歌うべき名曲を作ることはできる。

 

彼は自身が表舞台に立って表現する才能だけでなく、裏方として支える職人的な才能やプロデューサーとしてのセンスも持ち合わせているのだ。

 

また『森のハミング』『心のノート』は総勢80名を超える、東京都日野市立七生緑小学校合唱団が歌っている。

 

心のノート (feat. 東京都日野市立七生緑小学校合唱団)

心のノート (feat. 東京都日野市立七生緑小学校合唱団)

  • 岡崎体育
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岡崎体育はポップスだけでなく合唱曲を制作することもできる。彼はただの太っちょマヨネーズではなち。一流の作詞家であり作曲家だ。

 

ざまあみろ

 

今作は岡崎体育の今までとは違う一面を見ることができるアルバムで、彼の音楽性の幅広さを感じることができるアルバムでもある。

 

それはコラボレーションしたアーティストの影響も大きい。今まで一人で楽曲製作をすることが多かった岡崎体育にとって、新しい挑戦でもある。

 

良い音楽のためには他社の協力も必要で妥協をしないことを証明しているとも感じる。

 

しかしだ。彼は今まで一人で活動することで「俺はバンドよりも儲けているぜ」とアピールしてきた。それは『FRIENDS』の歌詞を見れは明らかだ。

 

「体育くん、でもさ、よ~く考えてごらん?
もし君がメジャーデビューして、CDを出して80万円の利益が入るとするね?」
「うん」
「80万円は君のものさ!でももし4人組のバンドだったら?」
「4分の1?」
「それだけじゃない。グッズの売り上げ、出演のギャラ、カラオケの印税、楽曲提供ぜ~
んぶ君のものさ!
でも4人組バンドだったら?」
「4分割」
「ね?バンドざまぁみろだろ?」
「うん!バンドざまぁみろ!」

(岡崎体育 / FRIENDS)

 

それが今作はどうだろうか。

 

一人で楽曲を製作しているわけではない。80人を超える合唱団もいるのだから、関わっている人数はバンドよりも多い。岡崎体育を含むと合計89人が楽曲製作に関わっている。

 

つまり割合の差はあるとしても、80万円の利益が出たとして岡崎体育は89分割しなければならない。

 

4人組バンドの4分割とは比べ物にならない細かな分割だ。今まで100%受け取っていた印税は89分の1になる。

 

良い作品を作ることに重点を置いてしまったが故に、さんざんバカにしてきたバンドよりも収入が減ってしまう。

 

つまり、岡崎体育ざままみろだろ?

 

体育ざまぁみろwww

体育ざまぁみろwww

体育体育ざまぁみろwww

体育ざまぁみろwww

 

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