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【ライブレポ・セットリスト】カーリングシトーンズ『またか!いい加減にシトーンズ!』@東京ガーデンシアター 2021.3.15

いい加減にシトーンズ!

 

奥田民生、斉藤和義、トータス松本、YO-KING、寺岡呼人、浜崎貴司。

 

この6人はカーリングシトーンズという名前のバンドを組んでいる。これは物凄いことである。

 

日本の音楽シーンを長年引っ張ってきた6人だ。つまり日本を代表するベテランミュージシャンが揃った、夢のバンドとも言える。

 

ライブもきっと物凄いのだろう。そんな期待を持って、カーリングシトーンズのライブを観に行った。

 

『またか!いい加減にシトーンズ!』というタイトルのライブ。

 

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やはり物凄いライブだった。しかしロックとして物凄い演奏やパフォーマンスというのとは、少しだけ違うライブだった。

 

6人のロックがぶつかり合うキレッキレのライブというより、仲のいいオジサン6人がじゃれあって楽しんで演奏している感じ。それは発表されたアルバムなどの音源でも感じていたが、それがより強調された感じ。

 

まるでアイドルのライブのような多幸感で会場が満たされていた。終演後はコミックバンドのライブのように客席は笑顔が溢れていた。

 

それなのにロックバンドのライブとしか言い表せないような、痺れるライブだった。

 

前半

 

1曲目から既にオジサンたちは楽しそうだった。

 

『パンのうた』というふざけたユーモアあるタイトルの曲を最初に演奏するぐらいに、6人が音楽を使って本気で遊んでいるような感じ。

 

このバンドの活動時だけ、全員が名前の後ろに「シトーン」を付ける芸名にしている。これも良い意味でふざけている。

 

奥田シトーンがドラム、斉藤シトーンがベース、寺岡シトーンがキーボード、他のメンバーがギターという編成から始まったライブ。

 

何度も担当楽器を入れ替えながらライブは進んでいく。続く『俺たちのトラベリン』では各自のソロプレイがあったりと、各自の演奏が引き立つような曲構成にもなっている。リラックスして純粋にバンドで演奏することを楽しんでいるような雰囲気。

 

俺たちのトラベリン

俺たちのトラベリン

  • カーリングシトーンズ
  • J-Pop
  • ¥255
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トータス「なんかいいね。客席のマスク姿。目しかメイクしてないの?」

奥田「してないんじゃない?」

浜崎「俺たちに会うから綺麗にマスクの下もしたと思うよ」

斉藤「1年ぶりにステージに立つから着替えのタイミングがわからなかった」

 

2曲演奏し終えてからのMCも自由奔放。各自が好き勝手に喋る。

 

特に緊張感もなく楽しんでいる。それを観ていると自然とこちらも楽しくなってくる。

 

寺岡「 せっかくだから下手側から自己紹介していきましょう!」

キング「キングシトーンです!2002年生まれです!特技はあやとりです!」

奥田「長いからもういいよ。他の人は後でやれば」

 

 一人だけ謎の自己紹介をして、すぐに『何しとん?』で演奏が再開。しかし演奏し終えると再びMCは始まった。

 

何しとん?

何しとん?

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トータス「トータスシトーンです!好きな食べ物はベビーチーズです!」

奥田「朝は変な弁当食べてたよね?」

トータス「朝ドラの話はするな!現実の話をしろ!」

奥田「次はテルヲシトーンが作った曲です」

トータス「ドラマの役名で言うな!」

 

現在NHK朝の連続テレイビ小説『おちょやん』に出演しているトータスシトーン。そのことをMCではいじられ続けていた。

 

 次に演奏されたテルヲシトーン作詞作曲の『AB/CD』は、歪んだギターが印象的な重低音響くが重い演奏の楽曲。ソングライターが6人いることもあり、楽曲の幅も広い。

 

AB/CD

AB/CD

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それにしてもMCが多いライブである。1曲から2曲演奏するとすぐにMCになる。

 

奥田「次の曲もテルヲシトーンが作った曲です!」

トータス「だから役名だって!ああもういいよ!今日はテルヲで!」

 

テルヲを受け入れたトータス。次のテルヲ曲は『わかってさえいれば』先ほどとは違いブルースの影響を強く受けた渋くてクールな楽曲。テルヲは様々なタイプの音楽を作れるのだ。

 

わかってさえいれば

わかってさえいれば

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奥田「キングシトーン、ライブ前に会場横のスパに行ってなかった?」

キング「行ってないよ!」

浜崎「今日は口数少なくない?風呂に入って魂が抜けた?」

キングシトーン「抜けてないよ!」

 

風呂でトークをするための魂が抜けても、音楽に対する魂は抜けていないキング。次に演奏された『マホーのペン』はキングシトーンの作詞作曲。

 

マホーのペン

マホーのペン

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フォーキーで心が穏やかな気持ちになってくる曲。奥田シトーンのベースが印象的に聴こえる。

 

 奥田「コロナの影響で今はマイクを持って次の立ち位置に移動してスタンドに付けるけれど、これが当たり前だよね。前は人の唾がかかったマイクを使ってたってヤバいよね」

トータス(テルヲ)「あれ?前もマイク持って移動してなかったっけ?

奥田「してないよ!ヒムロックだってそんなことしないよ」

トータス(テルヲ)「なんで突然ヒムロックの名前を出した?」

 

ヒムロックの名前を出した後に、乳首について歌った『B地区』を演奏。

 

B地区

B地区

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この曲はファンクやサイケの影響を感じる楽曲。先ほどまで落ち着いた楽曲が続いていたが、いっきに盛り上がっていく。

 

盛り上がりすぎたのか「大きな声で叫んでくれ!」と曲間で言ったキングシトーン。客席が動揺する。

 

すぐに「嘘ですー魂の声を聞かせてください!」と言って、客席が誰も声を出さないコールアンドレスポンスが始まる。MCだけでなく音楽でもしっかりと楽しませてくれる。

 

寺岡「リーダーの寺岡シトーンです!」

他のメンバー全員「おめでとー!!!」

寺岡「何のことかわからないけれど、ありがとー!」

 

この日は特におめでたいことはない。何がめでたいのかは最後まで明かされなかった。

 

ゆったりとしたテンポの『タイムテーブル』を演奏すると、アップテンポなロックナンバー『ドゥー・ザ・イエローモンキー』を披露。

 

ドゥー・ザ・イエローモンキー(OT MIX)

ドゥー・ザ・イエローモンキー(OT MIX)

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THE YELLOW MONKEYのオマージュ的な楽曲であり、シトーンというよりもロビンソンといった雰囲気の楽曲だ。

 

 

 後半

 

カーリングシトーンズはYouTubeでも活動をしている。

 

そこでは「ROAD TO 老後 CM王への道のやつ」というCMソングを勝手に即興で作り、タイアップオファーが来る日を待つ企画をやっている。

 

 

そこで製作された『焼肉soul』と『ネバーエンディング・ギョーザ』を連続で披露。焼肉店と餃子店のタイアップを狙った楽曲だ。

 

餃子ソングに関しては問い合わせが1件だけあったらしい。変わった餃子屋もあるものだ。

 

そしてこの企画をライブでも行った。客前で実際に即興でタイアップソングを制作したのである。

 

くじ引きで曲のテーマと各自の制作箇所を決めた。テーマは「ラーメン」。メンバーごとの制作箇所は下記の通りだ。

 

寺岡→イントロ

斉藤→Aメロ

キング→Bメロ

トータス(テルヲ)→サビ

奥田→大サビ

浜崎→エンディング

 

しかし斉藤シトーンが〈床がギトギト 換気扇ベトベト 汚い暖簾〉とCMソングとしてはアウトな表現を使ってしまう。

 

そしてトータスは〈とにかくススれれば ええねん〉とウルフルズの『笑えれば』『ええねん』のメロディと歌詞を使ったセルフパクリをやってしまった

 

民生は〈ザーサイ ラーメンに入って良かった このままずっとずっとララララーメン〉とトータスに続きウルフルズ『バンザイ ~好きでよかった~』をパクったメロディと歌詞を作ってしまった。

 

完成して披露したものの「これはオファーが来ないでしょう」という結論で、悪いのはトータスということでメンバーの意見は一致した。

 

奥田「次はかったるい曲なので、座って聴いてください」

 

突然の自虐MCをしてから『キャラバン』を演奏。スローテンポの楽曲だが、かったるくはない。 むしろワチャワチャした「ROAD TO 老後 CM王への道のやつ」の後に演奏されたからこそ、胸に沁みる。

 

斉藤「久しぶりのライブなので、とても怖くて緊張してます」

トータス(テルヲ)「普段通りに見えるんだけど」

斉藤「いやでも久々に人前に立つから、お客さんに、お前ら何こっち見てんだよって思っちゃう」

 

 「お前ら何みてんだよ?」と理不尽に怒っている斉藤シトーン作詞作曲の『出会いたい』で会場を盛り上げる。

 

出会いたい

出会いたい

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アップテンポで客席はみんな腕を上げて盛り上がっているし、斉藤は前方まで出てきてギターソロを弾く。まるで観られたがっているようだ。

 

こんなカッコよければ見てしまう。というかライブなのだから見てしまう。客に文句を言わないで欲しい。

 

浜崎「令和のブラッド・ピットこと浜崎シトーンです」

トータス(テルヲ)「まだブラピはご存命ですよ」

 

令和のブラピ作詞作曲の『夢見心地あとの祭り』はミドルテンポのブルース。

 

しかしメンバーのソロプレイがある楽曲。ミドルテンポだからこそ、各自の演奏をしっかりと楽しむことができる。

 

しかしここから終盤戦。それを散々好き勝手喋っていたのに、そのことは言葉で伝えずに音楽で伝えてくる。

 

次に演奏された『オイ!』は盛り上がりのピークだったかもしれない。

 

オイ!(OT MIX)

オイ!(OT MIX)

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この曲はコロナ禍以前だったらファンも一緒に叫んで楽しむ曲だったと思う。しかし今日は叫べない。その代わりにメンバーが全力で叫び、それに合わせてファンが拳を上げる。

 

そして『Oh! Shirry』間髪入れずに続ける。

 

美女がパンチラした絵がビジョンに映ったりとギリギリな演出があるものの、続くアップテンポなロックナンバーでどんどん盛り上がる客席。特にトータス(テルヲ)の力強い歌声が映える曲だ。

 

奥田「テルヲ!良かったぞ!挽回したぞ!」

テルヲ「ありがとう!でも俺、挽回しなきゃいけない悪いことしたっけ?」

 

テルヲが何かを挽回したところで、最後の曲が始まる。『スベり知らずシラズ』だ。

 

バンドの自己紹介ともいえるようなロックナンバー。カーリングをするメンバーの映像が流れたりと演出も盛り上げる。

 

スベり知らずシラズ

スベり知らずシラズ

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カオスなMCや演出もあるライブではあった。しかしメンバーもお客さんも全員が楽しんでいる。良い意味で全員がリラックスして音楽やロックを楽しんでいる。

 

これがカーリングストーンズの魅力であり、長年第一線で活躍してきたロックミュージシャンが集まったからこそできた、一流の遊びなのだ。

 

しかし、アンコールは、カオスだった。カオスでしかなかった。

 

NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』にテルヲ役として出演しているトータスa.k.aテルヲ。アンコールではテルヲの衣装で出てきた。

 

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そして他のメンバーは杉咲花が演じる主人公、千代のコスプレをして登場。杉咲花に申し訳ない微妙なクオリティのコスプレである。

 

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そして5人の千代と1人のテルヲによる、シュールなコントを繰り広げる。

 

カオスはさらに加速する。『おちょやん』の衣装のまま演奏が始まったのだ。演奏されたのは『借金大王』と『ガッツだぜ』。ウルフルズの楽曲である。

 

ガッツだぜ!!

ガッツだぜ!!

  • ウルフルズ
  • ロック
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5人の千代が演奏し、1人のテルヲが歌う。歌も演奏も素晴らしいのだが、衣装のせいでカオスはさらに加速する。

 

楽器を置いて全員が前に横一列に並ぶ。そしてカラオケに合わせて踊りながら『涙はふかない』を披露。

 

もちろん衣装は千代とテルヲのままである。カオスはさらに加速する。

 

涙はふかない

涙はふかない

  • カーリングシトーンズ
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 しかし名曲だからか客席がカオスになれておかしくなったのか、不思議と多幸感に満ちた空気で包まれる。なんなら感動的にすら思えてくる。自分もなぜか感動していた。

 

そして奥田ストーンの千代コスプレが杉咲花と同じぐらいに可愛いと思えてきた。音楽の力でコスプレが魅力的に見えてきた。音楽は麻薬だ。

 

ロックは反骨精神だと言う人もいる。尖った方がロックとしてカッコいいと言う人もいる。

 

それは間違いではないかもしれないが、ロックはもっと自由なものだとも思う。

 

自由に鳴らしたい音を鳴らして、信頼する仲間と楽しそうに演奏する6人の姿は、ロックでしかなかった。反骨精神はないライブだったかもしれないが、ロックだからこその自由があった。

 

カーリングストーンズのライブは、長年日本の音楽シーンを引っ張ってロックを鳴らしてきた6人が揃っているからこそ成立したプロの本気の遊びであり、ロックの自由さを教えてくれるライブだった。

 

カーリングシトーンズ『またか!いい加減にシトーンズ!』@東京ガーデンシアター 2021.3.15
■セットリスト

1.パンのうた(仮)
2.俺たちのトラベリン
3.何しとん?
4.AB/CD
5.わかってさえいれば 
6.マホーのペン
7.B地区
8.タイムテーブル
9.ドゥー・ザ・イエローモンキー
10.焼肉soul
11.ネバーエンディング・ギョーザ
13.ラーメンの歌
14.キャラバン
15.出会いたい
16.夢見心地あとの祭り
17.オイ!
18.Oh! Shirry
19.スベり知らずシラズ

EN1.借金大王
EN2.ガッツだぜ
EN3.涙はふかない