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【ライブレポート・セットリスト】トーキョーギタージャンボリー2022 千秋楽 2022.3.6(日)

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『トーキョーギタージャンボリー2022』の2日目のライブレポートとセットリストです。

 

 

 

どぶろっく

 

司会のグローバーから「神聖な場所ですから、まずは神様への奉納の儀式が必要です。それに相応しい方にまずはライブをやってもらいます」というフリを受けて登場したどぶろっくの2人。

 

登場後すぐに「むっつりスケベの森です」「がっつりスケベの江口です」といつも通りに挨拶する2人。天罰が下りそうで心配である。

 

さらには「神様にイチモツを納めに来ました!」「神様!ジャンボリーなイチモツをください!」と続ける2人。天罰が下りそうで心配である。

 

しかし客席は「イチモツ」という単語を聞く都度に喜んで拍手している。客にも天罰が下りそうだ。

 

1曲目は代表曲『もしかしてだけど』。歌詞は下ネタだらけで酷いが、歌唱力とギターの腕は確かである。客席は名演と下ネタに喜び笑顔で手拍子している。これは全員天罰が下る。

 

江口「両国国技館に立てるとは感慨深いです...」

森「泣いてるんですか?何で涙を吹いてるんですか?」

江口「パンティです」

森「ダメですよ!神聖な場所では廻しを使わないと!」

 

やはり2人には天罰が下るだろう。

 

もう怖いものなしなのだろうか。「ライブが待ち遠しくて、皆さん我慢してますよね?」という煽りから『カウパー』という酷いタイトルの曲を続ける。

 

会場には子どももいるが、どうかチビッ子たちは保護者にタイトルの意味を聞かないで欲しい。

 

ラストは『ワクチン~輝く未来へ~』。

 

コロナ禍について歌ったメッセージソングかと思いきや、やらしいことを考えてチンコがワクワクしていることを歌った楽曲だった。もう天罰が下って欲しい。

 

しかし客席にはスケベが集まっているのだろう。壮大なクラップを響かせ盛り上がっている。

 

サビではギターの演奏を止めて、クラップの音に合わせ〈ワクワクチンコ♪ワクワクチンコ♪〉と歌いながら踊る2人。会場全体がチンコによって1つになった。

 

最後は「チンコ!」と高らかに叫び、やり切った表情で颯爽とステージを去っていった。これで天罰が下らなければ、神様もスケベということなのだろう。

 

■セットリスト

1.もしかしてだけど

2.カウパー

3.ワクチン~輝く未来へ~

 

 

 

斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN / XIIX)

 

どぶろっくの後はライブをやりづらかったと思う。会場がスケベな雰囲気になってしまったからだ。

 

さっきまで「ワクワクチンコ♪」と歌う曲で喜んでいた客を前に演奏するとは、斎藤宏介も予想外だったと思う。ご心労をお察しする。

 

しかし彼は歌声だけで「スケベな空気」を「音楽を聴く空気」に一瞬で変えてしまった。

 

パーカーにチノパンにスニーカーという普段とは違うラフな衣装で登場した斎藤宏介。ギターを抱え椅子に座りポロンと優しく鳴らすと、集中した表情になった。

 

1曲目はUNISON SQUARE GARDENの代表曲『シュガーソングとビターステップ 』。スローテンポで、アカペラで歌い始めた。

 

その意外な始まり方で客席の空気を一瞬で変えたのだ。歌の技術と吸い込まれるような凄まじい表現に、会場の誰もが圧倒されている。

 

数千人いる会場なのに物音が全くない。「ワクワクチンコ♪」のことなどみんな忘れ、斎藤の歌に身動きが取れなくなるほどに感動している。

 

しかし歌だけが凄いわけでは無い。『ギタージャンボリー』はギターの名手ばかりが集まっている。斎藤も例に漏れずギターがめちゃくちゃ上手い。シュガソンの後半ではギターをかき鳴らし、ギターでもしっかり聴かせて圧倒させていた。

 

『フラッシュバック』と『Hatch I need』でも、バンドでは行わない表現で演奏しファンの度肝を抜く。

 

ルーパーを使いその場で音を重ねていったのだ。ギターのボディを叩きビートを作り、様々なパターンの演奏を録音し厚みを加えていく。

 

1人での演奏ではあるが、バンドかと思う演奏で魅了する。しかもXIIXやユニゾンのバージョンとは全く違うアレンジだ。ファンも驚いただろうし、その特別感に興奮した筈 はずだ。どぶろっくのライブとは違う意味で興奮していただろう。

 

普段はバンドでやっているので、ソロでステージに出ることは避けていました。ソロで活動している人を考えると気が引けるので。

 

でも今日のような素晴らしいイベントに参加したら、自分の考えは間違っていたのかなと思いました。ギターが好きな気持ちは他の出演者と同じぐらいにあると思うので。

 

また出たいな。誰に言えばいいんだろ?とにかく、また出たいです。よろしくお願いします。

 

最後の挨拶はリップサービスではなく、本心からのものだろう。それぐらいに素晴らしい演奏だったし、表情も穏やかで笑顔も見せていたからだ。

 

ラストは『like the rain』をアルペジオの弾き語りで繊細に届け、斎藤宏介はバンドとは違う魅力を伝えライブを終えた。

 

セットリスト

1.シュガーソングとビターステップ (UNISON SQUARE GARDEN)
2.フラッシュバック(XIIX)
3.Hatch I need(UNISON SQUARE GARDEN) 
4.like the rain(XIIX) 

 

 

 

Anly

 

今回の出演陣の中で比べると、Anlyは知名度はまだ低い若手ではある。

 

しかし実力は折り紙付きだ。ギターも歌も抜群に上手い。本人も自信があるのだろう。大きな会場に物怖じせずに、堂々とした佇まいで登場した。

 

1曲目はThe Beatles『Come Together』のカバー。ブルースの影響を感じる奏法でギターを掻き鳴らし、ハスキーな歌声を響かせる。いっきに会場を惹きつけて自分の空気にしてしまった。それは誰もが知る名曲をカバーしたことも理由ではあるが、彼女の歌と演奏の凄みが最も大きな理由だろう。

 

「Anlyです。よろしくお願いします!」と簡単い挨拶をしてから『VOLTEGE』でさらに会場を盛り上げていく。

 

彼女のライブはギター1本の弾き語りではあるが、ルーパーを使って音を重ねていくことが特徴である。この曲でも音を重ねて1人でステージに立っているとは思えない、厚みのある演奏を繰り広げた。壮大な手拍子が客席で響いていたのは、そんな演奏で客席のテンションが上がったからだろう。まるでワンマンライブのような盛り上がりになっていた。

 

続く『FIRE』でも音をどんどん重ね、最高のグルーヴを作る。演奏は熱量を帯びていく。叫ぶように歌い、後半は座り込みながらひたすらにギターをかき鳴らしていた。短い持ち時間で全てを出し切り爪痕を残そうとする気合いを感じる演奏だ。

 

たくさん手拍子してくれて嬉しいです。アコースティックギターだけど、わたしはこんな感じでライブをやっています。今は47都道府県ツアーをやっているので、気になった人はぜひ遊びに来てください。

 

最後の曲は祈るように歌います。

 

最後の挨拶をしてから披露されたのは『星瞬~Star Wink~』。

 

この曲はルーパーを使わずに披露された。前半はギターも弾かなかった。ただただ祈るように、アカペラで感情を込めながら歌っていた。

 

そこから繊細にアルペジオで演奏しながら、優しく語りかけるように歌った。先ほどまでルーパーを使って迫力あるステージを繰り広げていたが、この曲はシンプルな弾き語りである。数千人いる会場なのに、まるで自分の耳元で歌ってくれているような近さを感じる。

 

たった4曲の演奏ではあった。しかしAnlyの音楽性の幅広さや個性や強みを、短い時間で全て伝えるようなライブだった。初めて彼女のライブを観た人の中にも、この日をきっかけにファンになった人がたくさんいるはずだ。

 

セットリスト

1.Come Together(The Beatlesカバー)
2.VOLTAGE
3.FIRE
4.星瞬~Star Wink~

 

 

 

大橋トリオ & The Charm Park

 

「こんにちは。大橋トリオです。じゃあ、やる?」と緩い挨拶からライブをスタートさせた大橋トリオ & The Charm Park。この余裕を感じさせる雰囲気は、約20年のキャリアによる経験がなせるものだろうか。

 

そんな空気感を醸し出してはいるものの、歌と演奏は隙がなくハイレベルだ。

 

the Milk Carton Kidsのカバー『I still want a little more』とStephen Bishopのカバー『Little Italy』を続けて披露すると、緩い雰囲気から温かな雰囲気へと変わった。それぐらいに2人の歌とギターのハーモニーが心地よいのだ。

 

上も下もヒートテックを着たからアツい......

楽屋のみなさん、聞こえてますか?ヒートテックは着たらダメですよ

 

しかしMCは緩い。ライブの盛り上がりについてではなく、自身の体温がアツいことを説明する大橋トリオ。そもそもこの日は4月並みの気温と天気予報で言っていた。ちゃんと天気予報を見てほしい。

 

前半はカバー曲だったが、ここでオリジナル曲も披露した。ゴッホ展のテーマソングでもある『Lamp』だ。

 

こちらの曲もハーモニーが心地よい。心が温かくなりような優しい音色である。ヒートテックのせいで汗だくで熱がっている大橋トリオを除き、ここにいる全員が温かな気持ちになった。

 

「貴重な場所なんでやりたいことがあるんです。やっていいですか?」とThe Charm Parkが言うと、「砂かぶり席!」「2階!」「3階!」と客席を煽った。

 

しかし今回のライブは下の階から順に「砂かぶり席」「枡席」「2階席」である。客席の名前をいくつか間違えたり勘違いをしていた。The Charm Parkがアリーナに慣れていないことがバレた。大橋トリオは「やってみる?」と聞かれたものの「俺はやりたくない」と断っていた。懸命な判断である。

 

アリーナに慣れてはいないものの、ミュージシャンとしては一流のThe Charm Park。「せっかくなので」と言って自身のオリジナル曲『君と僕のうた』。ポップで疾走感あるメロディとリズムで、会場を明るく彩る。

 

演奏を終えた後、会場を見渡して「アツいですね」とつぶやく大橋トリオ。

 

しかし彼のアツいは盛り上がりに対してではなく、ヒートテックの性能についての話である。ひたすらにヒートテックが身体を温めてくれているのだろう。彼がライブで「アツい」と連呼したのは初めてかもしれない。

 

最後に演奏されたのは『HONY』。この曲では客席も手拍子をして盛り上がっていた。大橋トリオとは意味合いが違うが、この曲では客席もアツい気持ちになっていた。会場の熱気も加わったからか、さらに汗をかく大橋トリオ。

 

「後ろの席にも挨拶を」といって振り返り頭を下げて客席へ感謝の気持ちを伝えた2人。色々な意味でアツいライブだった。

 

セットリスト

1.I still want a little more(the Milk Carton Kidsカバー)

2.Little Italy(Stephen Bishopカバー)

3.Lamp

4.君と僕のうた

5.HONEY

 

 

 

秦基博

 

やはり彼のファンが多く集まっているのだろう。秦基博は他の出演者以上に登場人拍手の音が大きかった。

 

ゆっくりと準備をして客席を見渡して軽く頭を下げ、『僕らをつなぐもの』でライブをスタート。

 

アルペジオで弾かれるギターの演奏は、1つひとつの音色が繊細で美しい。それに乗せられる歌声ば物凄い声量なのに表現豊かだ。

 

そんな歌声に吸い込まれるように集中して聴いてしまう。この求心力ある歌声とギターが、秦基博の大きな魅力なのだろう。

 

今日は晴れて暖かいので、ギタージャンボリー日和ですね。

 

......意味不明な事を言ってしまいました。無理して拍手しなくていいですよ。

 

ギタージャンボリーのイラストで自分だけ赤ちゃんみたいな顔してるんですよ。あと下半身が見えていないので、スッポンポンの可能性があります。

 

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たしかにベビーフェイスだしスッポンポンの可能性が高い。

 

1曲目で感動的な空気を作り出したのに、MCでシュールな雰囲気にしてしまった。客席は頭の中でスッポンポンな秦基博の姿を想像してしまったはずだ。

 

しかし曲が始まれば、また音楽の力で感動させてくれる。

 

朝ドラの主題歌になったことで新しい代表曲の1つになった『泣き笑いのエピソード』を披露。この楽曲も繊細なギターの演奏と優しい歌声で表現している。そんな演奏に呼応したのか、客席から自然と手拍子が鳴り響く。会場の空気が温かい。これは弾き語りだからこそ生まれた雰囲気だろう。

 

ここまで優しい演奏と歌声で楽曲を披露してきたが『Fast Life』ではクールな一面も見せた。

 

かき鳴らすようにギターを弾き、荒々しく歌う。前半で見せた姿とは全く違う表現だ。この二面性と音楽性の深さに圧倒される客席。同一人物がたったギターと歌だけでステージに立っているのに、これほどまでに違う表現ができるのかと驚いた。

 

ラストは代表曲の『鱗』。この曲を聴きたかった人が多かったのだろう。静かに曲を聴いているものの、会場が一つになってステージに集中している空気に感じた。

 

たった4曲ではあるが、秦基博が日本の音楽シーンの第一線で活躍し続けている理由がわかるようなステージだった。そういえば最大の代表曲である『ひまわりの約束』をやっていない。それでも満足させたのは、やはり彼の実力によるものだろう。

 

■セットリスト

1.僕らをつなぐもの

2.泣き笑いのエピソード

3.Fast Life

4.鱗

 

 

 

森山直太朗

 

登場してステージに上がったのに即座にステージを降りようとしたりと、歌う前からエンターテイナーとして客席を笑わせて楽しませていた森山直太朗。

 

しかし歌い始めるとアーティストの顔になる。

 

ライブ中孝介に提供した楽曲のセルフカバーである『花』がらスタートした。

 

やはり歌もギターも上手い。ゆったりとしたリズムに乗せられた美しいメロディに酔いしれてしあう。登場した瞬間にふざけたことをやっていたのに、やはり本業は一流のボーカリストでありギタリスなのだ。

 

今日は土俵の上で心の廻しをキュッと締めて、みんなを歌で投げ飛ばそうと思います。

 

それにしても豪華な出演者ばかりですね。秦基博くんとか山崎まさよしさんとか。ここはオーガスタキャンプですか?

 

話は変わりますが、今年でデビュー20周年を迎えます。この20年は早すぎて、体感20分ぐらいです。今日のライブの持ち時間よりも短いじゃないか。人生なんてあっという間なんですね。

 

では20年前にリリースしたミニアルバムの曲を歌おうと思います。

 

しかし喋り出すとふざけたことを言って笑わせる。歌とギャップが大きすぎる。しかも途中で郷ひろみのモノマネをしていた。意味不明である。

 

それでも歌い始めるとグッとくるから悔しい。歌もギターもふざけはしない。

 

フォーキーなギターと歌で披露された『いつかさらばさ』は素晴らしかった。デビュー直後の楽曲とは思えないほどに完成されている。今のキャリアを詰んだ森山が歌うからこそ、凄みが増しているとも言える。

 

彼のライブはMCでふざけたことを言うことが多いが、今回は真剣な表情で語る場面もあった。

 

最近、モヤモヤしています。コロナ禍で先の見えない状況だったり、海の向こうで起こっている争いのことだったりを考えてしまって。

 

それでもまだ、世界は素晴らしいと思いたいです。素晴らしいと言い切れる自分でありたいと思うし、そう言い切れる世界であってほしいと思います。

 

他者や環境に幸せを求めてしまいがちですが、幸せは自分の心の中にあることを忘れてはいけないなと思います。

 

もうすぐ新しいアルバムを出します。アルバムタイトルは『素晴らしい世界』です。こんな話をしておいてこのタイトルって、笑っちゃうだろ?

 

そう言って最新アルバムの表題曲である『素晴らしい世界』を歌った。今回のライブで初披露だという。彼が今の社会について想っているであろうことを表現したメッセージソングに思った。この時代だからこそ必要な楽曲かもしれない。

 

最後は代表曲であり春だからこそ聴きたい『さくら』。

 

マイクから離れ、会場全体を見渡しながら、アカペラでマイクを通さない生の歌声を会場に響かせる。両国国技館は大きな会場だ。それでも会場全体に彼の歌声が大きく響いている。客席は息を呑むように見守っている。物音ひとつ立てずに、歌に集中している。

 

森山直太朗はめちゃくちゃ歌が上手い。しかし今回の『さくら』はさらに想像を超える物凄い歌声だった。技術もあるし魂もこもっている。歌声だけで人を感動させている。

 

そんな歌声で圧倒さえていたが、最後はしっかり盛り上げたいのだろうか。「ありがとうございました!ギタージャンボリーなんで、ギターを弾きまーす!」とゆるく挨拶をして、ギターを弾き始めた。

 

同じ曲なのにギターが加わるだけで違う印象になる。パッと明るい雰囲気になる。色々とある世の中だけど、音楽によって光を加えて「素晴らしい世界」と思わせようとしているようだ。

 

最後は「お前らのこと、絶対に忘れねーからな!センキュー!」と突如ロックスターになりきった挨拶をして去っていった。

 

ふざけているのか真面目なのか、よくわからない。ただ素晴らしいライブだったことは確かだ。個人的に今回のイベントで最も心に刻まれたライブである。

 

■セットリスト

1.花
2.いつかさらばさ
3.素晴らしい世界
4.さくら

 

 

 

木村カエラ

 

「短い時間ですが、楽しんでいきましょう」と笑顔で挨拶し、会場全体にお辞儀をしてからライブを始めた木村カエラ。ギタリストに磯貝一樹を迎えた2人編成のステージである。

 

1曲目は代表曲の『Butterfly』。原曲よりもテンポを落としてしっとりと歌っている。ギターはテクニカルな演奏をしつつも音色が優しく心地よい。カエラの優しく包み込むような歌声が映えるアレンジだ。

 

そのまま曲間を開けずに『YOU』を続ける。アコースティックだからこその温かみのあるアレンジ。そこに客席の手拍子が加わり楽曲が明るく彩られる。普段バンド編成で歌う木村カエラはロックなイメージがある。もしくは華やかに盛り上げるイメージだろうか。

 

しかし今回は彼女のボーカリストとしての実力や歌声の美しさを感じさせるステージだ。これもギタージャンボリーという特殊なコンセプトのイベントだからこそ体感できたのかもしれない。

 

歌い終わると「今歌った『YOU』はJ-WAVEのクリスペプラーさんのランキング番組で始めて1位を取った曲なんです」とイベント主催者のJ-WAVEとのエピソードを語っていた。選曲の1つひとつに意味を込めているのだろう。

 

くるりの曲で『奇跡』という曲があります。聴いていると「頑張ってよかったな」と思える曲なんです。

 

今は世界で様々なことが起こっています。子どもも大人も世界中の誰もが幸せであってほしいです。そんな想いを込めて、この曲をカバーさせてもらおうと思います。

 

楽屋にいる岸田さん!今から歌うよー!

 

そういってくるり『奇跡』のカバーを歌った。くるりバージョンの壮大で包み込むような演奏や歌声とは違う。その代わり身近に感じるようなシンプルながら温かい演奏と、真っ直ぐ突き抜けるような歌声で披露した。

 

カエラのカバーも原曲に負けないぐらいに素晴らしい。岸田繁は『奇跡』で張り上げるような歌唱をすることはない。しかしカエラは張り上げるような歌声だった。この歌声だからこそ、よりメッセージが真っ直ぐ胸に刺さるのかもしれない。

 

そしてデビュー10周年の時に記念シングルとしてリリースされた『TODAY IS A NEW DAY』を続ける。ライブも後半。だからかステージの熱量をはどんどん上昇していく。それに引っ張られるように手拍子をしたりと盛り上がっている客席。『奇跡』に聴き入っていた時とは全く違う雰囲気だ。

 

「あっという間に終わっちゃいますねえ。楽しかった!最後はみんなが知っている曲をやります!」と言って披露されたのは『リルラリルハ』。カエラの初期の代表曲だ。

 

この日一番と思うほどに大きな手拍子が鳴り響く。ボーダフォン世代の自分としても嬉しい選曲だ。

 

今しかないこの時間を、この場にいる全員で楽しむようなライブだった。

 

■セットリスト

1.Butterfly
2.You
3.奇跡(くるりカバー)
4.TODAY IS A NEW DAY
5.リルラリルハ

 

 

 

山崎まさよし

 

何語かわからない言語で挨拶をする、シュールを飛び越えてカオスなことをしてから始まった山崎まさよしのステージ。

 

「今日は10時ぐらいに会場入りしたんですよ。時間も押してるし、めちゃくちゃ待ちました」とという愚痴を第一声に言うほどマイペースである。

 

しかし突然タンバリンを三回ほど叩いて、それをルーパーで録音し作ったビートを会場に流すと、いきなり表情が変わりミュージシャンの顔になる。ビートに合わせてブルースの影響を感じるカッティングでギターをかき鳴らす。

 

1曲目は『アレルギーの特効薬』。演奏前のシュールさを吹き飛ばすぐらいに最高のギターと歌声で盛り上げていく。

 

曲の途中ではRay Charles『What'd I Say』を組み合わせ、コールアンドレスポンスを求める山崎まさよし。

 

しかしコロナ禍で客席から声を出せない。コールアンドレスポンスを自分からしているくせに、人差し指を口に当てて「シー!」と言う。客席は声の代わりに大きな手拍子でレスポンスする。

 

なるほど。コロナ禍でも形が違うだけでコールアンドレスポンスはできるし、そこにユーモアを組み合わせると「コロナ禍だからこそ」の盛り上げ方ができるわけだ。

 

演奏を終えると「みなさんに歌われたらわたしが怒られます。本当にみなさんが歌わなくてよかった」と安堵の気持ちを伝えていた。自分からコールアンドレスポンスをしたはずなのに。

 

そして寅さんのモノマネをしながら「兄ちゃん、新曲をやるよお!」と宣言。なぜ寅さんのモノマネなのかは不明である。

 

そして再びタンバリンを叩いてビートを作り、それに合わせてギターを掻き鳴らし『Hello ヘヴン』を披露。本人は新曲と言っていたが、半年前の楽曲である。新曲扱いされる期間が長い。

 

今日は東京マラソンのせいで会場に来るまでに時間がかかりました。楽屋入りも遅れたんですよ。それなのに10時入り。めちゃくちゃ待ちました。

 

あと昨日兵庫県西脇市でライブをやったんですけど、トータス松本の出身地だったんですね。明日会いますよと関係者の人に言ったんですよ。トータスにはまだそのことは言っていません。

 

コロナ禍だからみなさん笑い声も出さずに静かですね。静寂が怖いです。

 

ベテランでも静寂には動揺するようだ。しかし客席にはしっかり伝わっているので安心してほしい。

 

特に『One more time, One more chance』は客席が静寂に包まれていたが、最も聴き手を感動させていたと思う。

 

繊細な歌と演奏を耳を澄ましてしっかりと全員が聴こうとしていた。音楽を聴いた感動への反応は身体ではなく心に現れることもある。そんなことを実感する名演だった。

 

再び「次にやるのも新曲です。お兄ちゃん!新曲をやるよお!」と寅さんのモノマネをする山崎まさよし。彼は寅さんにハマっているのだろうか。そう言いつつも演奏されたのは『斉藤さん』。半年前に発表された楽曲だ。やはり新曲扱いされる期間が長い。

 

タイトルは『斉藤さん』です。斉藤和義とは昔からの長い付き合いということもあって、勝手に仮タイトルに『斉藤さん』てつけてたんですよ。

 

いっそのこと正式タイトルでもいいんじゃないかと想って、斉藤和義にLINEして「タイトルにしていい?」と許可をもらって正式タイトルにしました。

 

シュールなエピソードを語る山崎まさよし。いつか斉藤和義とこの曲で共演してほしい。

 

再びタンバリンをルーパーで録音しビートを作り演奏を始める。タイトルはシュールではあるが、楽曲は名曲である。しっかり盛り上げてくれる。

 

最後は再び何語かわからない言語で挨拶してステージを去っていった。最高の音楽とシュールな行動が組み合わさった、凄まじいライブだった。

 

■セットリスト

1.アレルギーの特効薬
2.Hello ヘヴン
3.One more time, One more chance
4.斉藤さん

 

 

 

岸田繁(くるり) 

 

椅子に座り「どーも。岸田繁です」と挨拶して、リラックスした様子で演奏を始めた岸田繁。

 

1曲目は『The Veranda』。くるりの25周年ライブでも演奏されていた楽曲ではあるが、10年以上前のシングル曲のカップリング。コアなファン以外は知らない意外な選曲からのスタートだ。

 

この曲からスタートした理由は、原曲がアコースティックギターの音色が印象的な楽曲だからだろか。こうして1人で演奏されても原曲に近い雰囲気を出せるし、魅力も損なわれていない。ギターの弾き語りということを意識しての選曲なのだろう。

 

しかし2曲目の『ブレーメン』は原曲はオーケストラと共に演奏された華やかな楽曲。くるりの楽曲の中でも楽器や音色の数が特に多い楽曲の1つだ。

 

それをあえてアコースティックギターの弾き語りで披露すると、メロディの美しさや物語性のある歌詞の内容の魅力が際立つ。以前奥田民生がとあるインタビューで「弾き語りはシンプルなわけではなくアレンジの一つ」と言っていた。まさに弾き語りの『ブレーメン』は別のアレンジで披露したと評するべき演奏だった。

 

くるりには編曲や構成が魅力的な楽曲が多い。歌以外が印象的な楽曲もたくさんある。その中で今回は「歌が魅力的な楽曲」を選んでいるように思う。

 

次に披露された『Baby I Love You』は、まさに歌が魅力的だ。歌が引き立つ弾き語りだからこそ、本来の魅力が伝わりやすくなっている。

 

バンドでは複雑なギターフレーズを弾くことがあるのに、演奏はコードを弾いているだけ。だからこそ岸田の素朴で優しい歌声が、いつも以上に胸に沁みる。

 

次の『太陽のブルース』もそうだ。メロディが良いし歌が心地よい。この曲ではハーモニカも使っていた。フォークソングの影響を感じるメロディの楽曲だからか、ハーモニカの音色とコードをジャカジャカとひくギターの音が楽曲と相性が良い。

 

岸田は「くるりの楽曲を新しいアレンジで披露する」ということを意識して、ギタージャンボリーに挑んでいるのではないだろうか。だからか新しい解釈で披露されたくるり楽曲を聴いている気分になる。

 

楽屋に入って「ここにお相撲さんがいつもいるのか」と思って過ごしました。お弁当も「お相撲さんと同じやつやろうか」と思いながら。

 

あとトイレの便器が大きかったんですよ。これはお相撲さんに合わせたんやろうな。

 

両国国技館という場所柄のせいか、お相撲さんに想いを馳せる岸田繁。どれほど大きな便器なのか気になる。

 

ラストは『ソングライン』。25周年ライブでも最後に演奏されていた。

 

原曲では長尺のジャムセッションがアウトロにある。その圧巻の演奏で終わる楽曲だが、弾き語りではサビを繰り返し歌っていた。

 

色んなことを 中途半端なことを
考えて 消えてく 幸せのアイデアも
所詮 君は 独りぼっちじゃないでしょう
生きて 死ねば それで終わりじゃないでしょう

(くるり / ソングライン)

 

このフレーズを最後に優しく語りかけるように歌った岸田。そういえば25周年ライブでも同じように、最後に弾き語っていた。彼が今最も伝えたいメッセージが、この歌詞に込められているのかもしれない。

 

■セットリスト

1.The Veranda
2.ブレーメン
3.Baby I Love You
4.太陽のブルース
5.ソングライン

 

 

 

トータス松本

 

和装姿で登場したトータス松本。『おちょやん』に出てきたテルヲの服装と完全一致していた。おそらく会場にいた多くの人が「テルヲだ...... 」と思ったであろう。

 

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そんなテルヲが1曲目に選んだのは『春一番』。キャンディーズのカバーだ。

 

ギターを荒々しく弾きハーモニカを吹き、叫ぶように歌う。原曲はアイドルソングだが、テルヲが歌うとロックになる。これがカバーの醍醐味と感じる演奏だ。

 

「ここに立つと毎回緊張する」と話すテルヲ。ベテランと言えるキャリアを持っているアーティストでも、そのように思うことがあることに驚く。

 

しかし歌声も演奏も緊張を感じない。緊張を振り解くように『バンザイ~好きでよかった~ 』を叫ぶように歌う。物凄い迫力だ。やはり緊張しているようには見えない。客席も手拍子をして盛り上がっている。

 

続く『サムライソウル』は楽曲の持つ性質や歌詞の内容からしても、和装と相性が良い。この服装だからこそ選曲したのではと思ってしまう。

 

前回出た時は膝を断裂していて上手く歩けなかったでんすよ。だから着物を着れば足を曲げないし誤魔化せるかなと思って出たんですよ。両国国技館という場所だから合っているかなと思って。

 

今日も気合を入れて着てみたんですけど、テンション上がって舞い上がってしまいました。

 

どうやら皆さん、どこかでみたことあるなと思っているかもしれないです。テレビというのは怖いですね。世間に悪い人だと思われているんで(笑)

 

やはり本人も今日のルックスがテルヲになっていることには気づいているようだ。

 

「出てきた瞬間から泣きそうでした。こんなに人に囲まれている光景を見るのが久々で嬉しかったので」と言うテルヲ。それでも涙を堪えて『笑えれば』を、やはり叫ぶように歌う。

 

社会には様々な問題があり、それが全く解決していない時代。音楽を聴くことが不要不急といわれてしまうような状況。だからこそ〈とにかく笑えれば 最後に笑えれば〉というメッセージが、特別な意味を持っているように感じてしまう。この歌に励まされて力をもらった人がたくさんいると思う。

 

最後はこの曲を歌います。本当は違う曲を歌う予定だったんだけど、この曲を今歌いたくなったんで、急遽曲目を変えます!こんな気持ちでこの曲を歌うことはなかったけれど、歌います!

 

ギターをかき鳴らしながら、話すテルヲ。この日は最初から最後まで感情が昂っているようだった。荒々しく感じることもあった。その代わり魂を込めて、音楽をやれることを心の底から喜んでいるように見えた。

 

そんな気持ちが溢れているからこその、急遽の変更なのだろう。最後に演奏された『Wonderful World』は、特に素晴らしい演奏だった。物凄い熱量を感じた。めちゃくちゃ魂がこもっていた。

 

見た目は完全にテルヲだった。しかし、やはり、中身はロックミュージシャンのトータス松本だった。

 

■セットリスト

1.春一番 (キャンディーズカバー)
2.バンザイ~好きでよかった~
3.サムライソウル
4.笑えれば
5.Wonderful World (Sam Cookeカバー)

 

 

 

山内総一郎(フジファブリック)

 

フジファブリックのファンである自分だが、山内総一郎がイベントのトリを担うことは予想外だった。

 

山内よりも人気や集客力がある出演者もいる。もはや大御所と言っていいキャリアの先輩ミュージシャンまで出演している。まさかの大役を任せられたと思った。正直なところ、不安に思っていた。

 

しかしそれは杞憂だった。むしろ山内総一郎はギタージャンボリーのトリに相応しいと思った。

 

僕はギターに人生を救われました。ギタージャンボリーの大トリ、精一杯やらせてもらいます

 

この言葉からライブが始まった時に、そう思ったのだ。そして演奏を聴いて、トリが適任だと思い直した。

 

1曲目の『Feverman』で複雑なリフを弾きながら演奏し歌う姿を観て、もしかしたら今日の出演者の中で技術はトップレベルではと感じた。

 

テクニカルな演奏なのに、1つひとつの音色が綺麗に響いている。彼は元々ボーカリストではなく、ギタリストとしてギター演奏に専念していた。その片鱗を感じる凄さだ。

 

しかしボーカリストになってからのキャリアも10年を超えた。今では歌の技術も高い。弾き語りだと歌も映えるので、彼がボーカリストとしても優れていることも実感する。

 

ギタージャンボリーでは、客席の中央に設置されたステージは回転する。

 

山内は1曲ごとにステージが回転し、正面を向く方向がかわっていた。彼は回転する都度に「わぁ~い♡」と言って客席に手を振っていた。まるでアイドルのような無邪気さと可愛さである。

 

『東京』でもギター演奏の技術力を見せつける。この曲でも複雑なリフや個性的なカティングで弾き語りとは思えないフレーズが盛りだくさんな演奏を聴かせてくれた。しかも後半には長尺のギターソロまで披露した。

 

さらには足で踏むパーカッションでリズムも奏でたりと、1人とは思えないほどの凄まじい演奏を見せつける。

 

再びステージが回転し、再び「わぁ~い♡」と言って、客席に手を振るアイドルな山内総一郎。しかしすぐに真剣な顔になって、次に演奏する楽曲について語り始めた。

 

楽屋に来たら知り合いや先輩や尊敬する方がたくさんいて嬉しかったです。こうやって集まってライブをやれることを幸せに思います。

 

普段はフジファブリックというバンドをやっているんですが、今度ソロ名義でアルバムを出します。その中に大切な仲間で、フジファブリックのメンバーの1人について歌った曲があります。その曲を歌います。

 

演奏されたのは『白』。志村正彦のことを歌った楽曲だ。

 

先日LINE CUBE SHIBUYAで行われたワンマンライブでも披露されたが、声が震えて裏返ってしまったり、涙を堪えられなくなり曲を中断してしまった。

 

しかし今日は力強い声で、真っ直ぐな歌を響かせていた。

 

先日のワンマンライブで「志村くんの作った歌を初めてうたう時は、泣いてしまって歌えないんです。だから何度も練習するんです」と語っていた。

 

自身が作った曲だとしても、『白』は志村のことを想って作った楽曲。同様に泣かずに歌えるようになるまで、きっと何度も練習したのだろう。

 

世界中が今は大変なことになっています。それでも世界中の人たちに光ある未来があってほしいです。

 

トータスさんが最後に演奏する曲目を変えていましたが、僕も予定とは違う曲を歌いたいと思ったので、曲目を変えて歌おうと思います。

 

最後の挨拶をしてから歌われたのは『光あれ』。こんな時代だからこそ希望に満ちた楽曲を最後に歌いたくなったのかもしれない。本来のセットリストでは何を演奏するつもりだったのかはわからないが、この日に相応しい楽曲は『光あれ』だったと思う。

 

演奏を終えてステージを去っていく山内。すぐにアンコールの拍手が巻き起こるが、ステージに複数人のスタッフが集まり、マイクやギターを数本持ってきてセッティングしている。どうやら最後は出演者でコラボをするらしい。

 

再登場すると山内は「最後は出演者の数人とセッションをしようと思います。こんな準備されてたから、みんなわかっていただろうけど(笑)」と言って、コラボするメンバーを呼び込んだ。

 

登場したのは木村カエラと岸田繁と山崎まさよし。交流があったり共演経験がある4人だ。

 

岸田「真っ赤な服やな」

山内「赤いです//////」

岸田「赤レンジャーやな」

カエラ「私はピンクレンジャー!岸田さんは青レンジャー」

岸田「青レンジャーやで」

山崎「私は灰レンジャーです(笑)」

 

山内以外の3人はグイグイとトークを繰り広げる。全身真っ赤な衣装であることを、急に照れ始める山内。

 

そして「山内が”思い出はモノクローム 色をつけてくれ”という歌詞が良いですよね」と言って、大瀧詠一『君は天然色』を4人でカバーした。

 

山内と岸田と山崎の3人のギターによる、厚みのあるギターサウンドが会場に響く。山崎まさよしは時折ビブラスラップを楽しそうに鳴らしていた。ギターを弾く時よりも楽しそうだったのは謎である。

 

歌は1人ずつリレーのバトンを繋ぐように順番に歌っていき、サビでは4人の歌声が重なる。そのハーモニーは多幸感に満ちていて最高だ。

 

基本的にはギターの弾き語りでアーティストが出演するイベント。普段は違う形態で活動しているアーティストも、この日だけはギターと歌だけで勝負をする。それによって新しい魅力を発見できる。シンプルな構成の演奏になるからこそ、アーティストの本質も伝わりやすいかもしれない。

 

だからか目当てでなかったアーティストの魅力にも気づけるし、目当てのアーティストのことはより一層好きになれる。毎年恒例のイベントだが、去年はコロナ禍の影響で有観客での開催はできなかった。もしかしたら来年もどうなるかわからない。

 

どうかこの素晴らしいイベントが、これからもずっと続くことを願っている。

 

■セットリスト

1.Feverman
2.東京
3.白
4.光あれ


ENC. 君は天然色(大瀧詠一カバー)with 山崎まさよし、岸田 繁、木村カエラ