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【ライブレポ・セットリスト】トーキョーギタージャンボリー2024 千穐楽 at 両国国技館 2024年3月3日(日)

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『トーキョーギタージャンボリー2024』の2日目のライブレポートとセットリストです。

 

Opening〜鏡割り

 

鏡開きに出てきたのは、山内総一郎と斎藤宏介。2人とも赤いセットアップを着ている。

 

グローバー「鏡開きの経験はありますか?」

斎藤宏介「ツアーの初日にやったことがあります。その時はめちゃくちゃツアーが上手くいったので縁起が良いと思います」

山内総一郎「なぜかはわからないんですけど、FCバルセロナと皆さんと鏡開きをしました」

グローバー「すごい経験してますね...」

 

「ヨイショ」の掛け声で鏡開きをすることが決まると「ロックバンドだから、ぶっ壊してやりますよ」とクールに決めゼリフを言う斎藤宏介。セリフだけ聞いたら壊すのは酒樽の蓋とは思えない。

 

観客と一緒に「ヨイショ!」と大きな声で叫び、見事に酒樽の蓋がロックバンドの手によってぶっ壊された。

 

崎山蒼志

 

オープニングを飾ったのは崎山蒼志。少し緊張した面持ちでステージに向かう姿は、普通の若者にしか見えない。ステージに立った瞬間に表情が変わる。なにかしらのオーラを纏っているかのような凄みがある。才能がオーラとして滲み出ているような感じだ。

 

そんなオーラで観客を引きつけてからの1曲目は『国』。丁寧で繊細な歌とギターから始まり、少しずつ演奏に熱量が込められていく。曲の中盤には頭を振りながら歌ったりと、感情がパフォーマンスに表れていた。

 

続いて披露されたのは『i 触れる SAD UFO』。音源では打ち込みのサウンドが印象的だが、今回はギターでの弾き語り。生々しいサウンドとなり、印象が大きく変わる。独特なギターの高速カッティングがクールだ。

 

ギタージャンボリーのステージはアリーナの中心にあり、360度客席に囲まれている。そのためステージ自体も回転して、360度どの方向でも向くこともできる。

 

崎山は別の方向を向きたくなったのだろう「回転をお願いします」とスタッフに告げると、ステージが回転し始めた。「こんにちは」「ありがとうございます」と頭を下げる姿が健気である。

 

180度回転したところで止まり「『呪術廻戦』の曲をやります」と言って『燈』が演奏された。アニメ主題歌ということもあり、ヒットしている崎山の新たな代表曲だ。丁寧な歌と演奏が心に沁みる。

 

「最後はゴリゴリな感じで次の方に繋げたいです」と丁寧な口調で、遠慮しがちに拳を上げる崎山。オラオラ系の煽りはできないらしい。

 

ラストは『五月雨』。アベフトシにも負けないレベルの高速カッティングでギターを掻き鳴らす。この日のセットリストは落ち着いた曲が多かった。だからか半端ない技術を見せつけてくるのに衝動的な勢いある演奏に、観客は圧倒的にされているような緊張感ある空気になっていた。

 

衝撃によるショックが治らないうちに、遠慮しがちに「崎山蒼志でした」と挨拶してステージを去っていく。トップバッターにしてトリを観たあとかのような余韻を残すライブだった。

 

セットリスト

1.国

2.i 触れる SAD UFO

3.燈

4.五月雨

 

クジラ夜の街

 

本日の出演陣の中では知名度が最も低いであろうクジラ夜の街。おそらく彼らのライブは初めての観客が多いと思う。

 

だが演奏を始めると、すぐに自分たちの空気に変えてしまった。ギターの山本薫が観客を煽ると会場は大きな手拍子で盛り上がる。1曲目の『踊ろう命ある限り』が終わった頃には、会場はしっかりと温まっていた。

 

MCでは「楽屋で崎山くんとお菓子の話をしていました」と同年代かつ同じ事務所の仲間とエピソードを語る宮崎一晴。まるで男子小学生が休み時間にしてそうな会話だ。

 

しかし小学生のようなトークで盛り上がる宮崎も終電を逃すという大人な経験をしたことがあるらしい。終電を逃して後悔したことがあると話す。

 

そして「終電が行ってしまった人を救う列車があるといいんじゃないかと思って作った曲です」と紹介して『裏終電・敵前逃亡同盟』が演奏された。ゆったりとしたリズムが心地よい。観客も心地良さそうに手拍子をしている。会場には穏やかな空気が流れていた。

 

今日は母親が来ています。子どもの頃に両国国技館に来たことがあります。祖父や祖母や叔父と一緒に。

 

祖父も祖母も叔父も亡くなってしまいました。母にきっと3人とも国技館に聴きに来ていて、国技館の中を魂が飛んでるんじゃないかなと言われました。そうだったら良いな、届いたらいいなと、思って歌います

 

宮崎が国技館の天井全体を眺めるように話してから歌われたのは『Golden Night』。観客は大きな手拍子で盛り上がる観客と、宮崎の温かくも力強い歌声が胸に沁みる。山本のギターソロも素晴らしかった。

 

バンド名を告げて去っていく二人。おそらく初めて観た人が多いであろう観客が、盛大な拍手を鳴らしている。きっとこの日のライブでクジラ夜の街の存在と魅力を知った人がたくさんいるはずだ。それぐらいにグッとくるライブだった。

 

◾️セットリスト

1.踊ろう命ある限り
2.裏終電・敵前逃亡同盟
3.Golden Night

 

Michael Kaneko

 

勢いある若手が会場を温めた後に出てきたのはMichael Kaneko。前に出てきた2組とは違い、繊細で優しいアルペジオでアコースティックギターをぽろんと鳴らす。

 

そんな演奏で『Strangers In The Night』からライブをスタートさせた。歌声もギターと同様に繊細で優しい。観客は心地よさそうに身体を揺らしている。

 

穏やかな空気が流れる会場だが「盛り上がって行きましょう!」という言葉から『GIRLS』が演奏されると、会場は手拍子で盛り上がる。彼の音楽性によって穏やかな空気が流れてはいるが、それど同時にみんなが笑顔でライブに参加している。そんな多幸感に満ちている。

 

客席全体を見回して「昔から出たかったんです」と嬉しそうに話すMichael Kaneko。それに観客の温かな拍手を送る。ずっと良い空気が流れている。

 

続けて演奏されたリリース前の新曲も、観客は温かく迎え入れて聴いていた。その新曲も繊細で優しい。音は極限まで減らしたミディアムな演奏で、ひとつひとつの音が美しく会場全体に響いていて心地よい。

 

自分は地方の小さいライブハウスや、手が届くぐらい近い距離のカフェでライブもやります。

 

でも今日は両国国技館という大きな場所でやらせてもらえて、人生色々あるなあと思いました。

 

再び会場を見回し感慨深そうに話している。そして「Are you ready!?」と煽り観客が歓声をあげたことを確認し最後の曲へ。

 

ラストは『RECIPE』。このまで心地よさそうに聴いていた観客は、大きな手拍子を鳴らす。〈青い自転車 木でできた棚〉というフレーズをコールアンドレスポンスしたりと、観客も最後の曲が一番盛り上がっていた。

 

心地よい空気を作りつつも、最後は盛り上がる。心地よさと楽しさが共存したステージだった。

 

◾️セットリスト

1.Strangers In The Night
2.GIRLS
3.maybe
4.RECIPE

 

阿部真央

 

ステージに登場するなり「おしりを向けちゃってすみません!」と後方の観客へ謝罪する阿部真央。そんな冗談を言って観客を和ませたあかくした時点で、完全に会場は阿部真央の空気になっていた。

 

そして「最初はスローな曲を」と言ってから、代表曲のひとつの名バラード『貴方の恋人になりたいのです』を歌う。

 

アカペラで歌い始めて、途中からアコースティックギターを小さな音で弾く。歌声は「この日の出演者で一番の声量では?」と思うほどに力強く迫力がある。それもマイクからかなり離れて歌っているのにだ。対してギターは繊細な音だ。力強さと優しさが共存している。そんな歌と演奏が素晴らしすぎる。

 

男性客「かわいい!」

阿部真央「かわいいいだだきました!ありがとうございます!」

 

感動の余韻が残る中、あべまにデレデレした男性客が歓声を上げ、それに喜ぶ阿部真央。またもや空気が和む。

 

今年で阿部真央はデビュー15周年。去年は所属事務所を退所し独立もした。周年にして新たなスタートを切ったわけだ。

 

次に演奏されたのは独立し再出発した時につくられた『Keep Your Fire Burning』。繊細なアルペジオの音色は美しく心地よい。だが歌声はやはり力強い。「歌を続けることへの熱い想いを込めた」と行ってから歌い始めていたが、その言葉に説得力を感じる歌声だ。

 

「独立したことで辛いこともありました。環境が変わると離れていく人もいます。それが寂しかったけれど、自分はまだやっていく力があるんだと信じて創った曲です」と言ってから演奏された『I've Got the Power』も、やはり歌声に魂がこもっている。静かに始まり段々と激しくなっていく演奏に引き込まれる。

 

「ステージを回してください!最後はみんなで盛り上がりましょう!手拍子をおねがいします!」と煽ってから始まったのは代表曲『ロンリー』。これが最後の曲だ。

 

観客の大きな手拍子に合わせステージが回転する。阿部真央は笑顔で楽しそうに歌う。聴いているこちらも楽しくて仕方がないが、やはりそれと同時に物凄い声量の迫力にも圧倒される。

 

代表曲の間に新曲を挟み、過去と今を組み合わせるようなセットリストだった。そして阿部真央は過去も今も変わらずに凄いことを伝えるような演奏と歌唱だった。

 

◾️セットリスト

5.貴方の恋人になりたいのです
4.Keep Your Fire Burning
3.I've Got the Power
4.ロンリー

 

真心ブラザーズ

 

桜井秀俊がギターをストロークしYO-KINGがハーモニカを吹く。その音色やステージの佇まいからはベテランとしての貫禄を感じる真心ブラザーズ。歌い始める前から観客を惹きつけてしまった。1曲目の『BABY BABY BABYの時点で会場に大きな手拍子が鳴り響くほどの盛り上がりだ。サービス精神も旺盛で客席全体を眺めながら2人は歌い演奏している。

 

他の出演者は数曲ごとにステージを回転させることが多かったが、真心ブラザーズは1曲ごとにステージを回転させた。西の方面に向いて「西のみなさーーん!」と笑顔で手を振るYO-KING。一流アイドル並のファンサービスである。

 

「服部良一先生のトリビュートアルバムに参加したのでブギウギに便乗できました」とJ-WAVEのイベントでNHKの話をするYO-KING。続いて披露されたのは笠置シヅ子のカバー『ヘイヘイブギー』。真心ブラザーズの色を加えつつも原曲をリスペクトするような演奏だ。観客もそんな演奏に興奮し手拍子を鳴らす。

 

だが「そろそろ桜の季節なので、桜の歌を」と言ってから演奏された『橋の上で』は、しっとりと聴かせる。照明もほんのりと桜色になっていたのも良い。2人は盛り上げるだけでなく感動もさせてくれる。

 

再びステージが回転すると、回転先の方向である”正”の座席に向かって「正のみなさん!おめでとうございます!ヒット曲です!」と叫ぶYO-KING。演奏されたのは『サマーヌード』。彼らの代表曲だ。始まった瞬間に歓声と拍手が巻き起こった。YO-KINGも気持ちが昂ったのか、目の前の譜面台を後ろに移動させ、前方に出てきて歌う。

 

だが、盛大に、歌詞を飛ばした。しかも一番重要なサビを。焦った様子で桜井を見るYO-KING。なんとか思い出そうとしたものの、かなりの部分を飛ばしてしまった。だがそんなトラブルをイジるかのように、観客は歓声と拍手と笑い声を響かせる。結果的に一番盛り上がった場面になってしまった。

 

YO-KING「完璧に歌えました!」

観客「wwwwww」

桜井「譜面台を片付けずに歌詞のカンペを見ればよかったのに」

YO-KING「完璧に覚えていると思ってたから、最初からカンペを用意してなかった......」

 

グダグダな歌唱を反省するYO-KING。ミスのせいでゆるい空気になってしまったが、このままライブを終わるわけにはいかない。最後に披露された『明日はどっちだ!』は、ミスを吹き飛ばすほどの名演だった。演奏も歌は力強く、魂がこもっている。観客の反応も良くて盛り上がりもすごい。

 

やはり最後はベテランとしての貫禄と、一流のミュージシャンであるプライドを見せつけてくれた。この日のライブはしっかりと観客の心のフィルムに焼かれた。

 

◾️セットリスト

1.BABY BABY BABY
2.ヘイヘイブギー
3.橋の上で
4.サマーヌード
5.明日はどっちだ!

 

浜崎貴司(FLYING KIDS)

 

プロレスラーが登場する時かのようなパフォーマンスをしながら登場した浜崎貴司。「我々の世代としても両国国技館はプロレスの名試合が行われたイメージが強いです。だからスタン・ハンセンのように登場しました」と、彼と同年代しか共感できな理由を語ってから演奏を始めた。

 

1曲目は『スローなブギにしてくれ』。南佳孝のカバーだ。誰もが知る名曲ということもあってか、観客の歓声がすごい。渋い歌声でクールに披露する姿に痺れてしまう。続く『ウィスキー』も渋くてクールでオシャレだ。観客が自然と手拍子をしてしまう空気感もいい。真心ブラザーズと同様に、浜崎の演奏からもベテランの貫禄と凄みを感じる。

 

浜崎「FLYING KIDSの曲をやります」

観客「おおおおお!!!!!!!」

浜崎「でもマニアックな曲です」

観客「wwwwwww」

 

そんな観客とのやりとりから演奏されたのは『境界線』。確かに代表曲やヒット曲ではないかもしれないが、胸に沁みるメロディと歌詞が印象的で、それを最高の形で歌い演奏している。マニアックかどうかなどどうでも良く、素晴らしい音楽を聴かせてくれるのだから全く問題はない。

 

「夏の名曲を2曲続けてやります」と言ってから山下『SPARKLE』が演奏されると、予想外の選曲に会場がどよめく。山下達郎よりも荒々しい歌唱だが、熱量は高くて圧倒されてしまう。そこから曲間なしでFLYING KIDSの名曲『風の吹き抜ける場所へ』を続ける展開も最高だ。「次はみなさんが歌う晩です!」と浜崎が言ってから観客が大合唱した瞬間、風が吹き抜けるかのような多幸感に満ちていた。

 

『Moon River』の日本語詞カバーを丁寧に歌ってから、最後に演奏されたのは代表曲『幸せであるように』。観客は美しいメロディと力強い歌とギターに酔いしれる。カバーも含めた様々な楽曲で、感動的な余韻が残るライブだった。

 

だが浜崎は感動の余韻を壊すかのように、退場時もプロレスラーの真似をして去っていった。

 

◾️セットリスト

1.スローなブギにしてくれ/南佳孝
2.ウイスキー
3.境界線
4.SPARKLE/山下達郎
5.風の吹き抜ける場所へ
6.Moon River/オードリー・ヘプバーン
7.幸せであるように

 

山斎 (山内総一郎 & 斎藤宏介)

 

山内総一郎と斎藤宏介によるユニットである山斎。今回が初ライブではあるが、いきなり両国国技館という大きなステージに立つこととなった。しかもリハーサルを3回しかできなかったという。

 

だが準備不足なんてことはない。1曲目のフジファブリック『ブルー』からしても素晴らしい名演だったのだから。

 

斎藤から歌い始めたが、ユニゾンやXIIXで歌っている曲よりキーが低い。そのため低い声で歌っているのだが、いつもは見せないタイプの色気が滲み出ている。本人としては声を出しづらいキーなのかもしれないが、その分だけ丁寧に歌っているように聴こえる。2番は山内が歌い後半は2人が一緒に歌ったのだが、2人の歌声やギターの相性も抜群だ。

 

斎藤「2024年は事務所が設立50周年で、フジファブリックがメジャーデビュー20周年で、ユニゾンが結成20周年なんです。それで事務所に何かやれと言われて無理やり大人に結成させられたユニットです(笑)

 

無理矢理やらされているとは思えない程に笑顔で楽しそうな斎藤。既にユニゾンのワンマンの5倍ほどの時間喋っている。

 

山内が「SMAのレジェンドと言える先輩の曲をカバーします」と行ってから演奏されたのは村下孝蔵『踊り子』のカバー。難しそうなイントロも2人でユニゾンするように綺麗に弾きこなす。

 

そういえば村下孝蔵もめちゃくちゃギターが上手く、1人でベンチャーズを再現するという独特な演奏をライブでしていたという。ギタリストとしても一流な山内と斎藤にピッタリなカバーだ。この曲は山内が1人で歌唱したが、彼の歌声も原曲の哀愁を生かす声質で良い。

 

斎藤「さっき大人に組まされたといっちゃったけれど、総さん傷ついてないですか?家に遊びにいくぐらい好きな先輩なのに....。大人に無理矢理組まされた相手が、大好きな人だったという......」

 

他のバンドでは見られない可愛い後輩キャラになる斎藤宏介。気にする様子も見せない山内。珍しく頼れる先輩オーラを出している。

 

「大好きな先輩のカバーです」と斎藤が言ってから披露されたのは斎藤の歌唱によるYUKI『JOY』のカバー。あまりにも予想外すぎる選曲だ。原曲は打ち込みの音が印象的なダンスナンバーだし、2人とは方向性も全く違うアーティストの楽曲なのだから。

 

だが歌い始めると「田淵智也が書いた曲か?」と思うほどに見事に歌いこなす斎藤。2人のギターで様々なフレーズを組み合わせた演奏もクールだ。意外な選曲は意外にも素晴らしかった。

 

山内「俺は斎藤くんと相性がいいと思うんだよ。2人ともギターを弾きまくるし。一緒に全国をツアーで回りたいね。行きたい場所ある?」

斎藤「高松はどうですか?」

山内「高松行きたいねえ」

 

斎藤はうどんを食べたいのだろうか。かつて広島FMで「好きなうどんは?」についてユニゾンのメンバーで話し合っており、最終的に「さぬきうどんで作ったカレーうどんが最強」と結論が付けられていた。誰か斎藤に高松で美味しいカレーうどんが食べられる店を教えてあげて欲しい。

 

2人がふざけ合うように「南南西の方に向けて歌うような曲を最後に」と言ってから演奏されたのは『シュガーソングとビターステップ』。〈南南西を目指して〉という歌詞がある曲だ。

 

イントロでこの日の全ての出演者の演奏で一番と言えるほどの大きな歓声が巻き起こった。あの難しそうなイントロを2人がユニゾンで弾いているのだ。歓声をあげてしまうのも納得だ。

 

中盤では超長尺のアドリブギターソロを2人が掻き鳴らし合ったりと、ジャムセッションが繰り広げられる展開も最高だ。

 

賞賛の拍手を浴びながらステージを後にする2人。最高の組み合わせの最高のセッションに、両国国技館の観客は驚かせ続けられたはずだ。

 

セットリスト

1.ブルー/フジファブリック
2.踊り子/村下孝蔵
3.JOY/YUKI
4.シュガーソングとビターステップ/UNISON SQUARE GARDEN

 

カネコアヤノ

 

春らしい緑色の花柄ワンピースを着て登場したカネコアヤノ。日本武道館2DAYSを完売させたりと、この日の出演者の中でも特に人気はあると思う。だが客層の違いだろうか。少しだけアウェイな雰囲気だ。

 

それでも本人はアウェイなど気にしていないように見える。演奏が始まれば空気が一瞬で変わることをしっているからだろう。

 

チューニングを終えアコースティックギターを激しく掻き鳴らした瞬間、ザワザワしていた会場が静かになった。1曲目は『わたしたちへ』。音源よりもずっと力強く荒々しい声でうたい始めると、会場全体が集中して彼女の歌に聴き入る。力強い歌声音楽で黙らせてしまった。

 

続く『セゾン』もギターは激しいし歌声は力強い。音源よりもずっと。感情がそのまま歌の表現として生々しく出てしまっているような感じだ。

 

だが繊細な表現もカネコアヤノが得意とするところである。チューニングした後「低音を下げてもらって良いですか?」とボソッと言ってからの『エメラルド』は、歌もギターも繊細で優しい。それでも後半に進むにつれ熱量を帯びていくのは、やはり感情が音楽として溢れ出ているからだろう。

 

『栄えた町』も繊細な表現から始まったものの、最後のフレーズをロングトーンて歌ったりと熱量は物凄い。最初はアコースティックギターのアルペジオで、囁くように歌っていた『閃きは彼方』も、後半に進むに連れだんだんと演奏も歌も力強くなっていく。

 

自分が最も感動したのは『祝日』だ。イントロを弾いて歌い始めるかと思いきや、演奏を止めて集中を高めるかのように深呼吸した。そこから歌い始めた『祝日』は、特に魂が込められていたように思う。

 

最後に演奏されたのは、まさかの新曲。しかもタイトルは未定の未発表曲だ。〈寂しくない 寂しくない〉と叫ぶように歌う歌詞が印象的で、そんな歌声が胸に響く。

 

盛大な拍手を浴びながら「ありがとうございました。カネコアヤノでした」と言って、ペンギンが走るようなフォームで走り、そそくさと去っていくカネコアヤノ。

 

MCは無し。観客に手拍子をさせる隙すら与えない。ただただ音楽だけで全てを伝える。そんな内容のライブだからこそ、カネコアヤノの歌とギターが胸に刺さるのかもしれない。

 

セットリスト

1.わたしたちへ
2.セゾン
3.エメラルド
4.栄えた街の
5.閃きは彼方
6.祝日
7.新曲

 

辻仁成

 

今回の出演者の中で、辻仁成のみ自分はあまり聴いたことがなかった。曲はほとんど知らないし、どちらかと言えば作家のイメージの方が強い。彼の小説だったら何冊か読んだことがある。だからミュージシャンのイメージはなかった。当然ながらライブも初めて観る。

 

そして、辻仁成をきちんと聴いて来なかったことを後悔した。なぜならライブがとても良かったからだ。

 

歌唱は癖が強い。口でトランペットやトロンボーンのような音を出したりと、かなり自由な歌唱だ。たがその個性に引き込まれてしまうし、ギターの腕もある。1曲目の『ガラスの天井』から、いきなりそんな凄みを感じた。ギターを時折パーカッションのように叩いていたのだが、まるでギター1本でバンドをしているかのような演奏だ。

 

ブルースの影響を感じるギターリフが印象的な『鳥の王』からもそんな凄みはあったし『どの方角から誰がくるかわからない』では、そんな演奏をより魅せるような動きのあるパフォーマンスをしていた。エンターテイナーとしても素晴らしかった。〈全部開いてる〉という歌詞を客席360度を眺めながらアカペラで歌い、観客に手拍子させた景色は圧巻だった。

 

そんなパフォーマンスの後に演奏された『アローン』は、対になるかのように丁寧な演奏でギターを弾いていた。アカペラから小さな繊細な音でギターを弾き、段々と盛り上げていくアレンジ。メロディは美しくてそれをしっかりと伝えるような優しい歌声。それは前半のパフォーマンスとは全く違う表現だった。

 

「ありがとう」と一言だけ告げて最後に演奏されたのは『ZOO』。ミュージシャンとしての辻仁成をきちんと聴いて来なかった自分でも知っている名曲だ。

 

音源とはメロディは変わっていたけれども、それは歌詞のメッセージを弾き語りのスタイルで最大限に伝えるための編曲かもしれない。だから自分の知っているメロディと全然違ったけれど、他の曲以上に心に刺さった。

 

このような音楽フェスでは知らなかった素敵な音楽と出会うことがある。今回の辻仁成はじぶんにとって、まさに新しい音楽との出会いだった。

 

セットリスト

1.ガラスの天井
2.鳥の王
3.どの方角から誰がくるかわからない
4.アローン
5.ZOO

 

森山直太朗

 

ギタージャンボリーの常連の森山直太朗。過去にもトリを任されて、その都度素晴らしい歌と演奏でギタージャンボリーを大団円で締めていた。今回も最高のライブで締めてくれるのだろう。そんな期待を観客も主催者もしていたはずだ。

 

『papa』からライブをスタートさせたが、少しだけいつもと様子が違う。

 

声がいつもよりも小さいし、少しだけ掠れている。それでも十分にうまいのだけど、絶好調の森山直太朗を知っている自分としては、力を抜いて歌っているように感じてしまった。 よくよく見ると表情も暗い。

 

歌い終わり観客が拍手しても、森山の表情は暗いままだ。拍手が収まると立ち上がり、言葉を選びながら話し始めた。

 

皆様にお伝えしたいことがあります。

 

4日ほど前に体調を崩してしまい、今も万全ではありません。

 

万全では無い体調なので、十分に満足して頂けるライブを、できなくなりました。

 

J-WAVEのスタッフや、ステージを作ってくれたスタッフの皆さん、盛り上げて下さった出演者の皆様、そして何よりもチケットを買って楽しみに来てくださった皆様、本当に申し訳ありません。

 

後悔や反省ばかりです。プロとして大丈夫だろうという驕りがありました。

 

最後に感謝の気持ちを込めて『さくら』という曲を歌って終わりたいと思います。お聞き苦しい声ですみませんでした。

 

苦しそうに咳をしながら、悔しそうに話していた。

 

いつもは冗談をMCで話したり、ステージ上でふざけたこともするミュージシャンだ。だから最初は「何かしらのオチがあるネタだよね?」と思った客もいたのか、笑ったり茶化す声もあった。だが話が進むに連れ、観客はみんな真剣に森山の話に聞き入っていた。

 

ステージに立ったことへの勇気と、無理をするなという労いと、気にするなという激励の意味が込められたであろう、観客の拍手が鳴り響く。森山は客席を見渡し、深々とあたまを下げていた。

 

最後に歌われた『さくら』は、やはり万全の歌声ではなかった。むしろ1曲目よりも声は出なくなっていた。でも魂が込められていて、心に響く歌ではあった。

 

再び深いお辞儀をして、ステージを去る森山。観客の拍手はやはり温かかった。自分の胸も少しだけ温かな気持ちになった。

 

偽りのない言葉で語った森山直太朗はカッコよかった。今度は想いの強い演奏だけでなく、技術としても凄い演奏を聴きたい。

 

だから森山直太朗よ、またこの場所で会おう。

 

セットリスト

1.papa

2.さくら

 

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