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<ライブレポ>トーキョーギタージャンボリー~弾き語りの3種類のパターンに分けられる~

こんな音楽イベントは他にはない

 

本当に素晴らしかった。そして、他では体験することができないであろうコンセプトだった。先日自分が行ったライブのことだ。

 

『TOKYO GUITAR JAMBOREE ~YOUNGBLOOD~』というライブイベント。このイベントの特徴はアリーナ規模の会場である両国国技館で、ギアーの弾き語りのみで出演者が演奏をすることだ。

 

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あいみょん / 大橋トリオ+THE CHARM PARK / 尾崎世界観(from クリープハイプ) / 竹原ピストル / 藤原さくら / ホリエアツシ(ストレイテナー) / ハナレグミ / 森山直太朗

 

出演者は上記の8組。普段は弾き語りをあまりやらないアーティストもいるし、音楽性もバラバラの8組だ。音楽性の違うアーティストの弾き語りを続けて聴いたことで感じたことがある。それは、弾き語りの方法にはいくつかのパターンがあり、それは大きく3つに分けられるのではということだ。

 

弾き語りは編方法の1つ

 

弾き語りは極の骨格がわかると言う人がいるけど、弾き語りは編曲のやり方の1つ

 

以前ギターマガジンで奥田民生が上記のように語っていた。これについて今回のライブを観てより実感した。弾き語りはシンプルなようで奥が深く、ギターと歌だけでも様々な表現ができるのだ。今回のギタージャンボリーでは大きく分けると3つの表現方法があったと思う。

 

1つは「歌のメッセージを伝える弾き語り」。2つ目は「演奏を心地よく聴かせる弾き語り」。3つ目は「エンターテインメントとしての弾き語り」だ。

 

歌のメッセージを伝える弾き語り

 

出演者の中ではあいみょん竹原ピストルがこれに当てはまるのではと思う。「歌のメッセージを伝える弾き語り」。ギターの演奏はシンプル。基本的にはコードをストロークして弾いていた。アルペジオもあったが特に難しこともやっていない。しかし、それにより客はより歌に集中して聴くことになる。

 

あいみょんも竹原ピストルもメッセージ性が強い歌詞が多い。例えばあいみょんの代表曲でもある「君はロックを聴かない」が多くの人を感動させた理由は歌詞の内容が理由の大部分を占めていると思う。竹原ピストルが紅白に出演するほど評価された理由も歌詞の言葉の素晴らしさが理由の多くを占めているだろう。

 

君はロックを聴かない

君はロックを聴かない

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

  

演奏もシンプルでステージでの立ち振る舞いも派手ではない。だからこそ歌の力を感じるし、魅力がきちんと伝わる弾き語りになっていたと感じる。

 

関連記事:『売れた音楽=良い音楽』ならば『売れない音楽=悪い音楽』なのか?~竹原ピストルをバカにした自分の親への反論~ - オトニッチ-

 

心地よく聴かせる弾き語り

 

ホリエアツシ大橋トリオ+THE CHARM PARK尾崎世界観藤原さくらは演奏と歌を含めて全体で心地よく聴かせることを重視していたように思う。この4組はギターの演奏にもこだわっていて、複雑な演奏や個性的な演奏をしていた。

 

ホリエアツシはコードをストロークして弾く場合でも音の強弱やリズムに拘っていたように思う。特に「灯り」という曲が印象的だった。「灯り」は3拍子が印象的な曲だが、弾き語りでもギターで3拍子のリズムを崩さないように表現しており、それに重きを置いた演奏にも感じた。

 

灯り

灯り

  • ストレイテナー×秦 基博
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

  

大橋トリオ+THE CHARM PARKは2人だったこともあり、ギター2本の絡み方やハーモニーが心地よく、それが歌も心地よく聴かせるような演奏になっていた。THE BEATLESやRadioheadのカバーも披露していたが、それも原曲とは違う魅力を感じるような編曲がされていた。

 

尾崎世界観と藤原さくらはストリークでコードを弾くことを殆どせず、曲ごとに演奏方法を変えていた。歌と演奏の両方が心地よく聴ける演奏や歌い方を意識しているようにも思う。ギタリストのようなギターも弾いていた。弾き語りでも歌が主役と言うわけではなく、歌も演奏もどちらも主役であるようなギターも歌も双方が引き立つような演奏だった。

 

このように、弾き語りでもバンドと同じように演奏も歌と同じぐらいに重要視し、音楽を聴かせることを意識したした弾き語りに感じた。

 

エンターテイメントとしての弾き語り

 

ハナレグミ森山直太朗は聴かせることだけでなく、エンターテイメントショーとして魅せることを意識しているように感じた。

 

ハナレグミは前方だけでなく後方や左右のお客さんにも目線を配りながら歌っていた。(ステージは中心にあり客席は360度ステージを囲むようになっている)「音タイム」では男性客と女性客に分けてコーラスを歌わせたりと観客を参加させるような演出をしていた。客もいじったりと音楽だけでなくトークでも楽しませていた。

 

音タイム

音タイム

  • ハナレグミ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

森山直太朗は1曲目の「太陽」ではステージではなくアリーナの客席を隅々までギターを弾きながら回り観客を沸かせた。たまに客に絡んだりしながら。ステージに立ってからもマイクの位置を曲ごとに向きを変え、360度すべての客席の方向を向いて歌っていた。

 

太陽

太陽

  • 森山直太朗
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 森山直太朗のステージにはゲストでハナレグミを呼び込み2曲共に歌った。そのうち1曲は今回のイベントのために2人が共作したオリジナル曲。2人で一緒に歌いながら、客にもコールアンドレスポンスを求める。弾き語りでやれる限界のレベルまで観ている人を楽しませる行動をすべて行っているかのようなパフォーマンス。

 

ハナレグミと森山直太朗のパフォーマンスは聴かせるだけでなく、”魅せる”パフォーマンスだった。

 

弾き語りで最も重要なこと

 

弾き語りはシンプルなようで人前でパフォーマンスする場合は難しい演奏スタイルであると思う。楽器と歌だけでリスナーの心をつかまなければいけない。ミスをすれば音楽や楽器に詳しくない人にも気づかれやすい。歌や楽器の演奏が上手いか下手かも簡単にわかってしまう。

 

つまり、シンプルだからこそミュージシャンの力量がためされる演奏スタイルでもあると思う。そして、その中で他とは違う個性も伝えなければリスナーの心はつかめない。今回出演した8組はそれぞれ実力もあり個性もあった。その実力や個性を生かすパフォーマンスもできていた。それは弾き語りで複数のアーティストを続けて観たことで自然と比較することで感じることができたことかもしれない。

 

過去のギタージャンボリーの出演者を観ても、しっかりと実力があるアーティストや個性のあるアーティストが出演していた。普段はバンドで活動しているアーティストも弾き語りで観ることができるので、普段見れないアーティストの一面も知ることができる。

 

毎年恒例で春に行われているギタージャンボリー。来年もきっと素晴らしいアーティストが出演するだろう。少しでも興味がある出演者がいるならば行った方がいいライブ。きっと弾き語りの奥深さを知ることができるし、好きなアーティストの気づいていなかった魅力に気付けるかもしれないから。

 

セットリスト

 

あいみょん

1.憧れてきたんだ
2.生きていたんだよな
3.君はロックを聴かない
4.愛を伝えたいんだとか

 

ホリエアツシ(fromストレイテナー)

1.彩雲
2.シーグラス
3.灯り
4.鱗(うろこ)※秦 基博カヴァー
5.Boy Friend
6.REMINDER

 

大橋トリオ+THE CHARM PARK

1.Blackbird※THE BEATLESカヴァー
2.そら
3.The Boxer※Simon & Garfunkelカヴァー
4.そんなことがすてきです。
5.High and Dry※Radioheadカヴァー
6.HONEY

 

尾崎世界観(from クリープハイプ)

1.猫の手
2.ボーイズEND ガールズ
3.商店街、手紙、天気予報
4.大丈夫
5.傷つける
6.exダーリン

 

藤原さくら

1.500マイル※作詞/作曲:Hedy West・日本語詞:忌野清志郎

2.Firewood※Regina Spektorカヴァー
3.春の歌※スピッツカヴァー
4.The Moon
5.「かわいい」

 

竹原ピストル

1.LIVE IN 和歌山
2.よー、そこの若いの
3.みんな~、やってるか!
4.ぼくは限りない~one for the show~
5.Amazing Grace
6.ママさん、そう言った~Hokkaido days~
7.ゴミ箱から、ブルース
8.ドサ回り数え歌

 

ハナレグミ

1.音タイム
2.そして僕は途方に暮れる※大沢誉志幸カヴァー
3.きみはぼくのともだち
4.いいぜ
5.明日天気になれ
6.DON'T THINK TWICE IT'S ALL RIGHT※作詞/作曲:BOB DYLAN・日本語詞:おおはた雄一
7.サヨナラCOLOR

 

森山直太朗

1.太陽
2.坂の途中の病院
3.愛し君へ
4.どこもかしこも駐車場 with ハナレグミ
5.なんだかんだなんかなかま with ハナレグミ
(※森山直太朗とハナレグミの共作による新曲)
6.さくら(独唱)