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【ライブレポ・セットリスト】THE YELLOW MONKEY『30th Anniversary LIVE -BUDOKAN SPECIAL-』@日本武道館 2020.12.28

30th Anniversary LIVE -BUDOKAN SPECIAL-

 

このライブをもって、THE YELLOW MONKEYは活動を休むことになる。

 

あくまで再開を前提とした活動休止という趣旨の発言は、ライブやインタビューなどで何度もメンバーが言っている。だから2001年に活動休止した結果、2004年に解散となった過去とは違う前向きなものだ。

 

それでも活動再開はいつになるのかわからない。だから寂しさもある。

 

そんな状況で日本武道館で行われたTHE YELLOW MONKEYの活動休止前最後のライブ。『30th Anniversary LIVE -BUDOKAN SPECIAL-』。

 

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ステージの後方にも観客が入れられ、ファンがステージを360度囲むような客席。スクリーンもないし派手なセットもない。シンプルなステージだ。

 

そのためかメンバーの演奏やパフォーマンスを重視した、ロックバンドとしての凄みを見せ付けるライブだった。

 

そしてセットリストは「コアなファンが聴きたい曲」と「メンバーが演奏したい曲」と「ライブで外せない楽曲」をバランスよく配置したもので、THE YELLOW MONKEYの裏ベスト的な選曲に感じた。

 

前半 

 

開演時間を過ぎて『竹に雀』をSEにして登場しメンバー。

 

竹に雀(チンドン屋)

竹に雀(チンドン屋)

  • ニッポン放送 効果音
  • 音響効果
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

曲の雰囲気も合間ってか、良い意味で緊張感あるいつもの雰囲気とは違うリラックスしたムードでライブスタート。

 

「楽しんでいきましょう!」と吉井和哉が言ってから始まったのは『DAN DAN』。再始動後の2019年に制作された楽曲。

 

DANDAN

DANDAN

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

〈どんな夢も叶えるバンドができたよ〉というフレーズがある楽曲を再始動後に制作したことと、活動休止前に行う最後のライブの1曲目で歌うことに、特別な意味を感じてしまう。

 

楽しそうに演奏するメンバーを診ていると、歌詞に説得力を強く感じるし、活動休止することに希望すら感じてしまう。

 

1曲目からして再始動後の曲を中心にするのかと思いきや、『Subjective late show』『Chelsea Girl』『Fairy land』と初期の楽曲を連発。

 

Subjective Late Show (Remastered)

Subjective Late Show (Remastered)

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

まだ武道館でライブができるほどの人気がなかった頃の楽曲たち。しかし今のTHE YELLOW MONKEYが演奏すると、武道館も巻き込むほどの熱量を持った楽曲として聴かせてくれる。

 

これ以降も初期の楽曲が多いセットリストだった。

 

初期楽曲の合間に再始動後の曲や定番曲を挟むような感じのライブ。過去を振り返りつつも今も、今でも最高のバンドであり続けていることを伝えているようだ。

 

次に演奏された『Tactics』も初期の楽曲。ちょうど人気が上昇し始めた頃にリリースされた名曲だ。

 

Tactics (Remastered)

Tactics (Remastered)

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「身体を揺らして、心の中で馬鹿でかい声で叫んでください」と煽り、声を出さずに腕をあげたりと身体で応えるコールアンドレスポンスが行われる。声を出せなくてもバンドとファンは心を一つにできる。そのまま歌が始まり、さらに熱気で会場が包まれる。

 

『VERMILION HANDS』とさらに初期のロックンロールを立て続けに披露するから、武道館の大きさでコロナ禍で楽しみ方に制限もあるのに、まるでライブハウスでライブを観ているような気持ちになる。

 

本当は今年の4月の東京ドーム2デイズをやって活動休止をして、次の準備期間に入るはずでしたが、このような状況になって予定が変わりました。

 

でもこうやって我々の結成記念日であるバースデーにライブをやれて嬉しいです。今夜がとりあえず最後です。

 

コロナ禍で予定が変わったことと、今日のライブができたことへの想いを語る吉井和哉。「最新アルバムの曲を聴いてもらおうと思います」と告げて『Changes Far Away』を演奏。

 

Changes Far Away

Changes Far Away

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

壮大で切ないロックバラード。〈愛だけを支えにしてここまでなとか歩いてきたんだ〉というフレーズが、ファンへの感謝を伝えているように聴こえてくる。

 

感動的な余韻が残る中で「初めての武道館の時は嬉しくて髪を切りすぎてしまいました。今日も少し失敗しました」と話しておどける吉井和哉。一部のファンから髪型について最近ネット上で色々言われていることを知っているのだろうか。

 

武道館ではメカラウロコという普段ライブで行わない売れる前の曲をやるという、へそ曲がりな企画ライブをヒーセが考案したことでやっていまして、今日も売れる前の曲をやろうと思います。

 

ここからは再び初期の楽曲が続く。「手も足も鳴らしていいよ!」と言ってグラム歌謡の『審美眼ブギ』を陽気な雰囲気で演奏。

 

審美眼ブギ (Remastered)

審美眼ブギ (Remastered)

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そしてカラフルな照明に照らされながら『Foxy blue love』と『SLEEPLESS IMAGINATION』をメドレーのように繋げてさらに盛り上げる。曲が繋を繋げるタイミングで、タンバリンを吉井和哉がキャッチしやすい位置に投げ込んだスタッフはグッジョブ。

 

吉井和哉はタンバリンをスタッフに返す時に、良い位置に投げ返せずに床に落としていた。

 

 

後半

 

今回は4公演やらせてもらって、東京ドーム、横浜アリーナ、代々木体育館と会場に合わせた曲を選んでやっていたのですが、もう在庫がありません(笑)でも、棚の奥の方に一曲挟まっていました。メジャーデビューしてから初演奏のインディーズ時代の曲を持ってきました。

 

好きなアーティストを楽しんで免疫を上げると良いよ!この曲は免疫が上がらなそうだけど。

 

棚の奥から引っ張り出された在庫の曲は『PENITENT』。

 

初めて作ったデモテープに収録されたという、現在は音源を入手することが難しい超絶レア曲。スローテンポで重低音が響くロックナンバーだ。

 

赤い照明に照らされながら妖艶に演奏するメンバー。インディーズ時代の楽曲なのにアリーナ規模を飲み込むような曲だ。それは曲が力を持っていることはもちろん、今のTHE YELLOW MONKEYが演奏するからこそ楽曲も進化したのだろう。

 

そして『ロザーナ』へと続ける。こちらは再始動後にリリースされた最近の曲。シンプルながらグルーヴ感があり、演奏が魅力的なロックナンバー。

 

ロザーナ

ロザーナ

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

次に演奏されたのは『"I"』。こちらも演奏力の高さを感じる楽曲である。彼らのロックバンドとしての凄みを感じる楽曲が続いた。

 

活動再開したときは今後どのように続けていくかを悩みながらステージに立ったのですが、自分にとっては唯一無二で他のバンドはいないと改めて思いました。

 

コロナもいつ終息するかもわからないけど、我々もさらに前進するように頑張っていきます。これからも夢を叶えたいと思います。みなさんも一緒に夢を叶えましょう。

 

声にならないぐらいにバカでかい、耳に聴こえないぐらいにバカでかい声で歌ってください。

 

ライブの定場曲でバンドにとってもファンにとっても、特に大切な曲である『バラ色の日々』が始まる。

 

バラ色の日々

バラ色の日々

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

スピーカーからはバンドの演奏だけでなく、ファンの歌声も流れる。会場で声を出せない代わりに、事前にアプリやカラオケなどで集めた歌声だ。

 

客席は声を出す代わりに拳をあげたりタオルを掲げたりと、声ではなく身体でバンドの演奏に応える。制限がある中でもロックンロールのライブは成立するし、ロックのライブを楽しめることを証明するような光景だ。

 

ライブ定番曲で盛り上がることが確実の鉄板曲『SUCK OF LIFE』とを続ける。上手から下手まで動き回って盛り上げるメンバー。さらに多幸感で会場が満たされる。

 

THE YELLOW MONKEYはロックを軸にしつつも、音楽性は幅広い。この次に演奏されたのは『Father』。

 

Father (Remastered)

Father (Remastered)

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

切ないメロディと歌詞が印象的なロックバラード。

 

先ほどまでの盛り上がりを爆発させるライブ展開からのギャップにより、演奏と歌声が余計に胸に沁みてしまう。

 

もう話すことはないや。今日を終えたらしばらく休むけれども、再集結をしてから伝えたいことは色々と話したし。

 

常に音楽は時代とともに変化していくし、我々は時代錯誤な音楽をやってきたけれども、それでも今を見据えてやってきた自負はあります。これからも時代の最先端にはいけませんが、30年つちかってきた経験や基本を忘れずに、新しい時代にフィットした活動をしていきたいと思います。

 

また新しいTHE YELLOW MONKEYが現れた時は、見守ってくれたらと思います。

 

本編最後に演奏されたのは『未来はみないで』。再集結後に最初に作られた曲だが、世間に発表されたのは今年になってから。今回の活動休止前、最後に発表された曲になった。

 

未来はみないで

未来はみないで

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

2019年に行われたライブツアー『SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-』のさいたまスーパーアリーナ公演で、吉井和哉は「THE YELLOW MONKEYは解散しません。いつになるかはわからないけれど、必ず10枚目のアルバムを出してまたツアーをやります」と語っていた。

 

バンドは一旦活動休止をしてしまう。

 

しかし自分は「解散しない」「アルバムを出してまたツアーをやる」という言葉を信じている。メンバーが言う通りに今回は前向きな意味の活動休止という言葉も、嘘でもリップサービスでもなく、本心のものだと思っている。

 

また会えるって 約束して

 

だからこそ『未来はみないで』の最後のフレーズに、凄まじい説得力を感じた。希望に溢れていた。この場で歌うことに意味を感じた。

 

 

アンコール

 

メンバーの口の形を印刷した「キス魔スク」をつけ、アンコールで再登場したメンバー。しかし今回のライブはスクリーンがない。笑いを狙ったのだろうが、後方の観客には普通の顔に見えてしまうので、スベっていた。

https://image.emtg.jp/store.emtg.jp/html/upload/save_image/TYMS201130_kiss_mask_01_LVB4zebN.jpg

「これをやらないと年を越せないよね」と言ってから『おそそブギウギ』を演奏。

 

「口を閉じたハミングなら飛沫は飛ばないので、一緒に歌いましょう」と煽る吉井和哉。客席が小さな声でハミングをする。シュールながらじわじわと盛り上がる客席。

 

そんなシュールでアバンギャルドなパフォーマンスの後に演奏されたのは『アバンギャルドで行こうよ』。パッと明るい空気になる会場。

 

『Romantist Taste』では客席の電気も全てついて、より一体感が高まる。一緒に振り付けを踊る客席。

 

Romantist Taste (Remastered)

Romantist Taste (Remastered)

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

アンコールはお祭りのように盛り上がることが必然なロックナンバーを連発する。楽しい気持ちだけでライブを終えて、年を越して、活動再開を明るい気持ちで待てるように、未練を残さないようにしていると感じた。

 

ステージ後方にバンドのロゴが描かれたセットが上昇してくる。そしてライブ定番曲の『悲しきASIAN BOY』へ。

 

悲しきASIAN BOY

悲しきASIAN BOY

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

盛り上がりは最高潮。360度全ての客席が腕を挙げたり手拍子したりと盛り上がる。

 

最後の曲を演奏する前にメンバー紹介をしていく。「愛すべきTHE YELLOW MONKEYのスタッフ全員!」とスタッフへの感謝を伝えていた。そして「最も愛すべきエブリバディ!」。とファンへの感謝と愛も伝える。客席からはこの日一番大きな音の拍手が贈られた。

 

「またお会いしましょう」と言ってから最後に演奏されたのは『WELCOME TO MY DOGHOUSE』。

 

WELCOME TO MY DOGHOUSE

WELCOME TO MY DOGHOUSE

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

アコースティックギターをかき鳴らしてから一旦演奏を止め、「普通の野良犬に戻ります」と吉井が言ってから、バンドの演奏が重なる。

 

感動的なバラードでもない。めちゃくちゃ盛り上がるハイテンションな曲でもない。ただただTHE YELLOW MONKEYの、ロックバンドとしてのカッコ良さが伝わる楽曲でライブが終わった。

 

演奏を終えて簡単な挨拶だけしてステージを去るメンバー。

 

活動休止前のライブとしては、あっさりとした終わり方だったかもしれない。もっとエモーショナルなMCや感動的なライブ展開にもできたと思う。

 

しかしシンプルなステージで客席を360度開放した中で、ファンに囲まれた中でロックバンドとして真っ直ぐなライブをやっていたと思う。ただただロックバンドとしてのカッコ良さに痺れさせられた。

 

今回は前向きな活動休止なわけで、再開が約束されているようなものだ。だから「活動休止する」という雰囲気を出す必要がなかったのかもしれない。ただただ「これだけカッコいいバンドなんだから、しばらく待っていてよ」と演奏で伝えるだけで良いのだ。

 

活動休止前最後のライブなのに、多幸感に満ちていた。希望を感じるライブだった。それは今のTHE YELLOW MONKEYだからこそ鳴らせる音と空気感によって生まれた希望だと思う。

 

だから活動休止するとしても寂しさはあまりない。むしろ今後への期待でワクワクしてしまう。

 

「未来はみないで」と歌われたとしても、ついつい希望に溢れた未来を観たくなってしまうようなライブだった。

 

THE YELLOW MONKEY『30th Anniversary LIVE -BUDOKAN SPECIAL-』@日本武道館 2020.12.28
■セットリスト

 1.DANDAN
 2.Subjective late show
 3.Chelsea Girl
 4.Fairy land
 5.Tactics
 6.VERMILION HANDS
 7.Changes Far Away
 8.審美眼ブギ
 9.Foxy blue love
10.SLEEPLESS IMAGINATION
11.PENITENT
12.ロザーナ
13."I"
14.バラ色の日々
15.SUCK OF LIFE
16.Father
17.未来はみないで

EN1.おそそブギウギ
EN2.アバンギャルドで行こうよ
EN3.Romantist Taste
EN4.悲しきASIAN BOY
EN5.WELCOME TO MY DOGHOUSE

 

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