オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

【ライブレポ・セットリスト】SHISHAMO『SHISHAMO NO YAON!!! 2021』@日比谷公園野外大音楽堂 2021.4.11

SHISHAMO NO YAON!!! 2021

 

ほぼ毎年、日比谷野外大音楽堂でライブを行っているSHISHAMO。2021年は2年ぶりに開催が実現された。

 

『SHISHAMO NO YAON!!! 2021』という相変わらずシンプルなライブタイトル。

 

f:id:houroukamome121:20210412175234j:image

 

しかしステージは普段と違う雰囲気が漂っている。

 

ステージには綺麗な花で彩られている。楽器やアンプの側、バンドのフラッグ。などなど。

 

まるで日比谷公園の花を積んできて、そのまま飾りつけたような感じ。それぐらいに周囲の環境に馴染んでいて落ち着く。普段のステージセットとは、少しだけ違う。

 

メンバーの登場方法も普段と違った。

 

自転車に乗って登場したのだ。漕ぎ慣れていないのだろうか、全員が緊張した面持ちで自転車を漕いでステージを一周する。そしてそのまま再びステージ袖に帰っていった。

 

動揺する客席。この雰囲気も普段と違う。

 

再びステージに自転車で登場するSHISHAMO。安心する客席。相変わらず緊張した面持ちのメンバー。

 

自転車から降りて、ようやく楽器を持って準備を始まる。登場方法だけでなくメンバーのファッションも違った。

 

普段はTシャツやパーカーに短パンというスタイルが多い朝子は、ラズベリー色のニットを着てと長いパンツを履いていた。お洒落である。

 

ベースの松岡彩はライトグリーンの綺麗なワンピース。彩ちゃんかわいい。

 

ドラムの吉川美冴貴はパーカーにジーンズ。一人だけいつも通りである。

 

前半

 

 宮崎朝子が卓上の小さなシンセサイザーを演奏し、ライブがスタート。このような始まり方をする曲は今までなかった。これも普段と違う。

 

1曲目は『君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!』。配信リリースされたばかりの新曲だ。

 

君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!

君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そしてベースの松岡彩のベースソロから『フェイバリットボーイ』でポップな演奏を鳴らし、『君の大事にしてるもの』で重厚なロックサウンドを鳴らす。演奏や歌声はいつも通りに最高だ。

 

しかしメンバーは少し緊張した面持ち。

 

「今年初ワンマンだからドキドキしてるんですよ。バレてないとは思いますけど」と朝子はMCで話していた。バレバレである。

 

朝子「今日は初めて長ズボンの衣装を履いてみた。ライブで初めてハーフパンツ以外を履いたんですよ。わたしの生足を目当てに来てくださった方には申し訳ないです」

吉川「そんな人いないから!」

朝子「みんな生足を楽しみにしていたとは思います。生足目当ての方にだけ返金処理します」

 

MCではリラックスして話していたものの、なんとなく話の方向性は普段と違う。

 

生足が見れなかったことは残念だが、その悲しさは演奏の素晴らしさでカバーできる。

 

MC後に演奏されたのは『明日の夜は何が食べたい?』。こちりも配信リリースされたばかりの新曲だ。

 

明日の夜は何が食べたい?

明日の夜は何が食べたい?

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ミドルテンポのいた楽曲。コーラスワークも心地よい切ないナンバーだ。

 

SHISHAMOはポップな曲やロックな曲が多いイメージではある。しかし情景や感情を丁寧に繊細に描写することも得意だ。

 

そして『すれちがいのデート』を跳ねるようなリズムでポップに演奏。カラフルな照明もかわいらしくて良い。

 

曲間なしでベースの松岡が真ん中前方に飛び出て来てベースソロを弾き、メドレーのように『デートプラン』へとなだれ込む。

 

デートプラン

デートプラン

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

デートをテーマにした曲を続けるという、粋なセットリスト。

 

ライブにデートで来たファンもいるだろうし、会場のある日比谷公園はデートスポット。それもあっての選曲と流れだろうか。

 

『花』を演奏したのも花が多く咲いている日比谷公園だからの選曲かもしれない。

 

ステージを彩っているセットの花と相性良いタイトルの楽曲。

 

しかし歌詞の内容は薔薇の棘よりも尖っている。そのギャップでヒリヒリしてしまうが、それも彼女たちの音楽の魅力だ。

 

朝子「今日は寒いよね。服装間違えたと思っている人いるでしょ?」

吉川「最近は暑かったもん。わたしは昨日は半袖だったもん」

朝子「もしかして今日も半袖の人いるの?」

松岡「さすがにいないでしょ?」

吉川「やめとけって!いるかもしれないから」

松岡「うわぁ、あそこにいたよ・・・・・・」

朝子「いるんだ・・・・・・」

吉川「やめとけって!半袖、良いと思います!」

 

メンバーにドン引きされる半袖の客。SHISHAMOのファンはマゾヒストが多いので、半袖の客は喜んでいることだろう。

 

その後4月だからか「新生活を始めた人」で客席に手をげさせアンケートを取った。

 

生活が変わっていないファンが多く「これで話を膨らまそうと思ってたんだけど、どうしようか?」と動揺するメンバー。

 

「わたしたちも現状維持をするんで、みんな現状を維持していきましょう!」と強引に話をまとめ、生活が変わっていないファンにエールを贈って演奏再開。

 

『中庭の少女達』『きっとあの漫画のせい 』とロックナンバーを立て続けに演奏する。

 

きっとあの漫画のせい

きっとあの漫画のせい

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「笑わせないでよ」というフレーズを鼻で笑うように歌う姿に痺れた。これには毎回ヤラれてしまう。

 

『またね』の演奏には特に感情を動かされた。

 

またね

またね

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

3人が向き合って息を合わせるように演奏を始め、最後も同じように向き合って演奏を終える。魂を感じる力強い演奏。エモーショナルな歌声も最高だ。

 

個人的には『またね』が前半のハイライトである。 

 

 

後半

 

ドラムの吉川が喋り始めると客席は言われてもいないのに全員が座った。「吉川が喋る時は座るものだと学んでるんだね」と感心する朝子。少し不満げな吉川。

 

話題は新しいLINE公式スタンプについて。そこからLINEの誤字脱字についての話題になり、「すみせまん」と書かれたスタンプは「すみません」の誤字だったと明かされる。

 

そして「LINEスタンプを買ってください!」と強引に話をまとめて、LINEスタンプの販促活動へと繋げた。

 

「ここから温めて行きます!いや、それほどは温めないけれど......」と朝子が言ってから演奏再開。

 

バンドの新境地とも言えるクールな演奏の『人間』を披露し、歌詞を詰め込んだロックナンバー『ひっちゃかめっちゃか』と、最新のSHISHAMOのキラーチューンを連発。

 

人間

人間

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そしてライブ定番曲『ねえ、』でさらに温める。客席も腕を上げて盛り上がる。

 

「あと2曲で終わります。またライブ会場で会いましょう!」

 

朝子が簡単に挨拶してから始まったのは『明日も』。

 

明日も

明日も

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

月火水木金に働いたり学校へ行って、週末にSHISHAMOに会いに来たファンもたくさんいる。この日を心待ちにしていたファンがたくさんいる。

 

そんな気持ちを受け止めて代弁するような歌と演奏。

 

いつもよりも感情的に歌っているように感じた。いつもよりも演奏に想いが乗っているように感じた。

 

ライブで会えることの喜びを噛み締めながら歌い演奏していると感じた。

 

しかしSHISHAMOは尖ったロックバンド。この曲で多幸感満ちた空気を作ったかと思いきや、それを自らぶっ壊す。

 

『明日はない』という〈どいつもこいつも腹立つな〉という歌詞から始まる、感情をむき出しにしたロックナンバーを叩きつけて来た。

 

明日はない

明日はない

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

様々な方向性の楽曲が揃っているバンドではある。世間的にはポップなイメージが強いかもしれない。

 

しかし音楽性の軸はロック。それを言葉ではなく、キレキレな演奏で説明している。

 

とはいえ様々な3人でありながら様々な演奏をするバンドでもある。アンコールではアコースティックセットで3曲披露した。

 

アンコール1曲目は新曲。おそらく6月にリリースされる最新アルバム収録曲だろう。

 

続く曲は『あの子のバラード』活動初期のナンバー。最新曲と並んでも古さを感じない。

 

あの子のバラード

あの子のバラード

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

技術的に成長した今のメンバーが表現するからこそ、音源を超える魅力が生まれる。アコースティックだからこそ歌詞の内容がより頭に入って来て、切なさが強まる。

 

松岡「寒いから乾布摩擦しようね」

吉川「今日は声を出せないけれど、みんな声を出せたら”彩ちゃんかわいいー!”とか言うんでしょ?何がかわいいんだよ?乾布摩擦だぞ?」

朝子「誰も何も言ってないのに被害妄想が酷い。でもお客さんが声出せなくて良かったよ。松岡がかわいいって褒められたら、わたしたちはイラッとして演奏に響くから」

 

アコースティックな優しい演奏の合間のMCは、優しさのない尖ったものだった。

 

意外な選曲だったのは『BYE BYE』。音源では3人のゴリゴリなロックサウンドが印象的な楽曲。

 

BYE BYE

BYE BYE

  • SHISHAMO
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

しかし今回はアコースティックバージョン。音源とは全く違うアレンジだ。

 

かといってテンポを落とすことはしない。しんみりともしない。原曲と同様に力強い。

 

「アコースティックでロックをやる」ことに挑戦するような演奏。楽曲の持つ軸をぶらさずに新しいアレンジを取り入れている。それが新鮮で刺激的だ。

  

最後に演奏されたのは新曲だった。3人の演奏が際立つ楽曲だが、リズムや編曲が今までとは少し違うロックナンバー。

 

今のバンドが良い状態で、今のバンドが作る音楽に自信を持っているのだと思う。

 

だからライブにおいて重要なラストソングに、誰もが知るヒット曲やライブ定番曲ではなく、誰も知らない初披露の新曲を選んだのだ。

 

『恋する』や『タオル』のようなワンマンでほぼ毎回やる定番曲は演奏されなかった。その代わりセットリストの半分が2020年以降に発表された新曲が中心だった。

 

それなのにライブに不満はない。いつも以上の満足があった。それは新曲で勝負する覚悟と自信を演奏から感じたことと、新曲がどれも素晴らしかったからだ。

 

SHISHAMOは進化と変化を続けている。新曲は続々と作られているし、松岡彩は綺麗なワンピースを衣装に使い、宮崎朝子は生足を隠すようになった。

 

最新アルバムでは、さらに進化したSHISHAMOの音楽を聴かせてくれるだろう。そして次のツアーでは、進化したライブを見せてくれるはずだ。

 

吉川美冴貴の衣装が変わる進化も、ありえるかもしれない。楽しみである。

 

 SHISHAMO『SHISHAMO NO YAON!!! 2021』@日比谷公園野外大音楽堂 2021.4.11
 ■セットリスト

 1.君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!
 2.フェイバリットボーイ
 3.君の大事にしてるもの
 4.明日の夜は何が食べたい?
 5.すれちがいのデート
 6.デートプラン
 7.花
 8.中庭の少女達
 9.きっとあの漫画のせい
10.笑顔のとなり
11.またね
12.人間
13.ひっちゃかめっちゃか
14.ねえ、
15.明日も
16.明日はない

EN1.新曲1(アコースティックver.) 
EN2.あの子のバラード(アコースティックver)
EN3.BYE BYE (アコースティックver.)
EN4.新曲2

 

↓SHISHAMOの他の記事はこちら↓

SHISHAMO NO BEST ARENA!!! EAST [Blu-ray]

SHISHAMO NO BEST ARENA!!! EAST [Blu-ray]

  • アーティスト:SHISHAMO
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: Blu-ray