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【ライブレポ・セットリスト】小山田壮平『バンドツアー2021 THE TRAVELING LIFE』@ USEN STUDIO COAST 2021.4.7

久々のバンドツアー

 

開演時間になると自身の曲である『旅に出るならどこまでも』をSEにして、バンドメンバーと共に登場した小山田壮平。

 

彼はご機嫌なようだ。始まる前からテンションが高い。身体を揺らしステップを踏みながら登場した。踊っているようにも見える。

 

そういえばandymori『クラブハウス』の歌詞に〈ジントニックで踊ろうよ〉というフレーズがある。彼はジントニックを飲んだのだろうか。

 

ご機嫌なテンションのまま演奏の準備をするメンバー。小山田壮平はまだユラユラしている。踊っているようだ。やはりジントニックを飲んだのか。

 

そして演奏が始まる。『Life Is Party』。andymori時代の曲だ。

 

Life Is Party

Life Is Party

  • andymori
  • オルタナティブ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

本人の謎なテンションとは違い、ミドルテンポのしっとりとした歌と演奏。

 

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 USEN STUDIO COASTで行われた『小山田壮平バンドツアー2021 THE TRAVELING LIFE』 。

 

1曲目を聴いて、この日は最高のライブになると確信した。

 

本人は気持ちが昂っているのに、演奏や歌に対しては冷静な部分を持っているからだ。

 

熱量があるのに演奏も歌もブレることがない。そんなライブに隙などない。好きしかない。

 

前半

 

2曲目は『ベンガルトラとウイスキー』。こちらもandymori時代の曲。

 

ベンガルトラとウィスキー

ベンガルトラとウィスキー

  • andymori
  • オルタナティブ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

しかしこちらはアップテンポのロックナンバー。バンドの演奏は激しくなり、エモーショナルに叫ぶボーカル。フロアの熱量も比例して上昇する。

 

エレキギターを置き、アコースティックギターへ持ち替える小山田壮平。また揺れて踊っている。ジントニックの力はすごい。

 

ALの楽曲である『メアリージェーン』をしっとりと丁寧に歌う。急激に上げたフロアの熱量を、優しく包み込むような演奏だ。

 

メアリージェーン

メアリージェーン

  • AL
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

小山田「東京でのライブは嬉しいですね」

藤原「でも二人(小山田壮平とギターの濱野夏椰)は東京に住んでないから、今日は東京に来たって感じだよね」

小山田「でも東京は友達も多いし15年住んだ場所だし、バンドを組んだのも東京だったし」

藤原「バンドを組んだのは埼玉じゃない?」

小山田「そうだっけ?まあ埼玉も東京みたいなものだし。だから東京だとやってやるって思って気合いが入ります」

 

今回のバックバンドでベースを弾いていて、andymori時代から活動を共にする藤原寛と、ゆるい会話を繰り広げる。埼玉を東京扱いする小山田壮平。安いウイスキーを飲んで酔っ払っているのだろうか。

 

ここからはツアータイトルにもなっている、初のソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』の楽曲が中心に披露されていく。

 

『HIGH WAY』では心地よいリズムを鳴らす。フロアの熱気をじわじわと上げてから、アップテンポの『kapachino』で一気に上昇させる。

 

Kapachino

Kapachino

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「椅子が並んでるけど、どうやら立って踊りたい人もいるみたいなので、みんな!立とうぜ!疲れたら座っていいから!」

 

今回のライブは感染症対策のためフロアには椅子が設置されていた。そのためファンも「立たない方が良いのかな?」と思ったのか、大人しく椅子に座って音楽を楽しんでいた。

 

しかし小山田壮平はロックミュージシャン。普段のライブではファンも立ち上がって楽しんでいる。今日もジントニックを片手に踊りたい人がたくさんいる。

 

彼の一言を合図に全員が椅子から立ち上がる。そして踊り出す。ステージとフロアの心の距離が急激に近づいた。

 

ギターリフが印象的なロックナンバー『OH MY GOD』を叫ぶように歌い、『雨の散歩道』をゆったりとしたリズムの演奏で優しく歌う。

 

雨の散歩道

雨の散歩道

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

客席はそれぞれの好きなように体を揺らしたり腕をあげたりと楽しんでいる。ようやくコロナ禍以前の雰囲気が戻ってきた感じ。

 

今は朝まで飲むことが難しい時代だけれども、ここにいるみんなは朝まで飲み続けていたような人たちばかり集まっていると思う。そんなみんなに捧げるぜ(照)

 

少し照れながらカッコつけたMCをしてから『ベロベロロックンローラー』へ。

 

小山田壮平はまたユラユラと揺れ、不思議な動きをしている。踊っているようだ。ベロベロになるまでジントニックを飲んだのだろうか。

 

そして最新曲『恋はマーブルの海へ』を切なく歌い演奏し、音楽で酔わせる。

 

恋はマーブルの海へ

恋はマーブルの海へ

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

濱野夏椰(g)は音源とは違うギターソロを弾く。ライブだからこそ聴けるアレンジで楽しませてくれた。

 

そんな切ない余韻を『スランプは底なし』で吹き飛ばす。一瞬で空気を変えるほどの、エモーショナルで叫ぶような歌声。

 

かと思いきや、アコースティックなサウンドの『あの日の約束通りに』で、再び切なくて心地よい音楽を聴かせてくれる。

 

あの日の約束通りに

あの日の約束通りに

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

音楽によって様々な感情にさせてくれる。気持ちを昂らせてくれたり、心を落ち着かせてくれたりと。

 

この感情の起伏による感動や興奮を味わえるからこそ、生のライブは最高なのだ。

 

 

後半

 

アコースティックな演奏が続く。『ゆうちゃん』は特に素晴らしかった。

 

ゆうちゃん

ゆうちゃん

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

濱野夏椰のラップスティールギターが印象的な曲。

 

彼の演奏によって、アコースティックで温かくもシンプルなサウンドに、華やかさが加えられた。音源とは違う魅力があるアレンジだ。

 

続く『サイン』も、アコースティックでの披露。

 

サイン -Acoustic Ver.-

サイン -Acoustic Ver.-

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

元々の音源がアコースティックバージョンとして発表されていた曲だが、ライブバージョンではドラムの音も加わり、より力強い演奏になっている。

 

音源から進化しているのだ。

 

あくまで小山田壮平のソロライブとなっている公演だが、4人がバンドを組んだかのようにライブで楽曲も演奏も覚醒している。

 

『16』もライブアレンジが印象的だった。andymori時代の楽曲だが、音源よりも繊細な音色と編曲になっている。

 

16

16

  • andymori
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

ラップスティールギターの浮遊感ある音色によって、16のリズムで空を飛ぶような気持ちになる。

 

若い頃に作った曲を今演奏すると、今の自分とは気持ちや考え方が違って、この歌詞はこんなグロリアスなんだなあと思ったり。このMCのせいで次の曲がバレちゃったんですけど(笑)

 

歌詞でジャイサルメールとか色んな地名が出てくるんですけど実は行ったことがなくて、聴いた人から「壮平さん!自分、ジャイサルメール行って来ましたよ!」て言われて困ったりして(笑)

 

実は行ったことない場所のことも歌にしちゃっています。ケアンズも行ったことないし。

 

次の曲は『グロリアス軽トラ』。聴いているだけで旅をしている気分になる名曲。

 

グロリアス軽トラ

グロリアス軽トラ

  • andymori
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

中盤には〈新木場の空の下〉と歌詞を変えて叫ぶように歌う。それに対してファンは拍手したり腕を上げたりと応える。ライブだからこそのコミュニケーションが音楽で成立していた。

 

みんなの波動によって、素晴らしいステージになりました!

 

無意識に自分は波動を出していたらしい。

 

次が最後の曲であることを、ユラユラと揺れながら告げる小山田壮平。踊っているように見える。やはりジントニックを飲んだのだろうか。

 

ラストは『旅に出るならどこまでも』。

 

旅に出るならどこまでも

旅に出るならどこまでも

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

旅に関するアルバムのレコ発で、旅に関する楽曲が多く披露されたライブ。この曲を軸にセットリストが組まれたのかもしれない。

 

楽しそうに笑顔で演奏するメンバー。この日が良いライブだったことを、実感するようなメンバーの表情。

 

今回のツアーでは、意味もなく毎回ユラユラと身体を揺らしています。なんか楽しくなるんですよ。皆さんも職場や学校で意味もなく身体を揺らしてください。

 

アンコールの拍手に応えて1人で出てきた小山田壮平。演奏前にユラユラと揺れていた理由を語っていた。

 

ジントニックで踊っていたわけではないらしい。楽しいから揺れていたらしい。???

 

ハマ・オカモトくんのラジオに先日出たんですよ。呼ばれても居ないのに勝手に行って出て。その時も意味もなく揺れていたんですけど、気づいたらハマくんも同じように揺れていました。これは伝染するようです。

 

ハマ・オカモトは小山田壮平のシュールな奇行の被害者だった。

 

シュールなMCの後に、アコースティックギターの弾き語りで披露されたのは『月光荘』。

 

今回初披露の新曲だ。沖縄の同名のゲストハウスへ行った時に感じた想いを歌にしたという。〈イヤサッサー〉と沖縄民謡よ掛け声を取り入れた楽曲だ。

 

そして濱野夏椰を呼び込んで『ローヌの岸辺』を披露。

 

ローヌの岸辺

ローヌの岸辺

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

アコースティックギターと、ラップスティールギターのみの演奏。優しく包み込むようなサウンドだ。

 

アンコールは落ち着いた楽曲が続いた。

 

本編の楽しかった余韻を楽しむように、メンバーはリラックスして演奏し、ファンはリラックスして聴いている。

 

藤原寛とドラムの久富奈良を呼び込み、再び4人で演奏『君の愛する歌』で演奏を再開。

 

君の愛する歌

君の愛する歌

  • 小山田壮平
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

真っ直ぐなメッセージを、真っ直ぐな歌と演奏で表現する。小山田壮平が音楽をやる理由は、この歌に込められているのかもしれない。

 

盛大な拍手が鳴り終わってから、4人は目を配らせ合い、少しの無音の時間を作ってから、確かめ合うように、次の曲を演奏した。

 

演奏されたのは『投げKISSをあげるよ』。これが最後の曲だった。

 

投げKISSをあげるよ

投げKISSをあげるよ

  • andymori
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

〈大丈夫ですよ 心配ないですよ〉〈なんにも考えなくていいよ 投げKISSをあげるよ〉という歌詞が、今日はやけに胸に響く。

 

大丈夫でもないし心配も多いご時世。考え事も増えてしまう社会情勢。

 

小山田壮平の音楽が、バンドの演奏が、そんな不安を浄化してくれた気がした。

 

最後にメンバー紹介をして、「また会いましょう」と一言だけ話して、ステージを後にした小山田壮平。

 

ユラユラと踊るように揺れて帰って行った。やはりジントニックは飲んでいる気がする。

 

しかし彼のこの簡単な一言が、ファンにとっては大きな希望になるのだ。

 

出口の見えない暗い出来事が続く今のご時世でも、また会って生で音楽を聴ける機会を作ると、約束してくれたのだから。

 

希望をくれたのは言葉だけではない。音楽やライブのコンセプトによっても希望をくれた。

 

アルバム『THE TRAVELING LIFE』は「旅」をテーマにした作品である。そのレコ発である今回のライブも「旅」をテーマにした内容だった。

 

アルバム収録曲以外も「旅」を感じさせる楽曲がセットリストに組み込まれていた。

 

例えば『メアリージェーン』には海外の描写があるし『グロリアス軽トラ』は旅をする歌だ。『Life Is Party』には〈10年たったら旅に出よう〉というフレーズがある。

 

コロナ禍で旅に出ることに躊躇してしまう世の中。旅に出ても感染症対策に気を使うので、今まで通り自由にいられるわけでもない。行きたくても行けない人もたくさんいる。

 

しかし音楽によって仮装的に旅をした気分を味わえるのだ。旅をした時と同じぐらいに、爽快な気持ちになれるのだ。

 

そして、愛してやまない音楽を聴ける場所があることと、意味もなくユラユラと揺れて踊る小山田壮平が存在することを実感して、心が救われるのだ。

 

小山田壮平『バンドツアー2021 THE TRAVELING LIFE』@ USEN STUDIO COAST 2021.4.7
■セットリスト

1.Life Is Party(andymori)
2.ベンガルトラとウイスキー(andymori)
3.メアリージェーン(AL)
4.HIGH WAY
5.kapachino
6.OH MY GOD
7.雨の散歩道
8.ベロベロロックンローラー
9.恋はマーブルの海へ
10.スランプは底なし
11.あの日の約束通りに
12.ゆうちゃん
13.サイン
14.16(andymori)
15.グロリアス軽トラ(andymori)
16.彼女のジャズマスター(未音源)
17.夕暮れのハイ
18.旅に出るならどこまでも

EN1.月光荘(新曲) 
EN2.ローヌの岸辺
EN3.君の愛する歌
EN4.投げKISSをあげるよ(andymori)

 

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