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【ライブレポ・セットリスト】クリープハイプ『大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう』@ 東京ガーデンシアター 2021.3.3 

大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう

 

ステージに立ってどんな気持ちになるんだろうと思ってたけど。嬉しいという気持ちだけでなく、悔しいという気持ちもあります。

 

お客さんの前でやれる喜びはあるけれど、中止になったライブの悔しさも忘れたくないなと思います。

 

簡単な感動にはしたくないと思います。そんな想いを込めてやります。

 

簡単なあらすじなんかにまとまってたまるかと思います。

 

クリープハイプにとって1年以上ぶりになる久々の有観客ワンマンライブは、尾崎世界観の長いMCから始まった。

 

SEもなくメンバーが薄暗い照明のステージへ登場して、マスクをして歓声も出せない客前に立った時の雰囲気は、2019年以前とは全く違うものだった。

 

ほんの少し緊張感があって、期待と不安が入り交じった感じ。その中で言葉を選びながら話す尾崎世界観。喜びや悔しさと、嬉しさと悲しさ。などなどの様々な感情が溢れているようだ。

 

それでも落ち着いて、ゆっくりと言葉を噛み締めるように想いを伝えている。それを真剣にファンは聴いて、言葉と想いを受け取る。

 

そして演奏が始まった。言葉で伝える事ができなかった想いを、音楽に乗せるように。

 

今までのクリープハイプのライブで、最も想いが込められていたライブかもしれない。それぐらいに心を動かされるような名演だった。

 

前半

 

爆音のドラムが会場に響き、それを合図にライブスタート。

 

1曲目は『栞』。「簡単なあらすじなんかにまとまってたまるか」という尾崎世界観のMCにあった言葉が歌詞に使われている楽曲。

 

栞

  • クリープハイプ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

この曲を1曲目に選んだことにも意味があって、この曲に今回のライブへの想いを全て込めた宣言のように聴こえた。

 

そして『鬼』『おばけでいいからはやくきて』と、近年のライブ定番曲でアップテンポの曲を続ける。客席からは声を出すことができない。だから歓声は聴こえない。

 

鬼

  • クリープハイプ
  • ロック
  • ¥255
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それでも身体を揺らしたり腕を上げたりと、それぞれ自由に楽しんでいる。その光景はコロナ禍以前と変わらない。バンドの演奏の力強さだって以前と同じだ。

 

近年のライブでは定番の曲が3曲続いた。王道のセットリストになるかと思いきや、ここらか意外な楽曲が披露される。

 

次に披露されたのは『クリープ』。シングルのカップリング曲で、ライブで演奏されることが珍しい楽曲だ。

 

久々のライブだから緊張するよね。こっちもみんなも。

 

女子を部屋に入れたけど勇気がなくて誘えなくて、深夜にテレビで変な洋画を見て、それが終わって通販番組になって、勇気がなくてずっと誘えなくて、気づけば『めざましテレビ』が始まって朝になってた時のような緊張です。

 

みんな声を出せないから反応がないけれど、そのせいで何を言ってもスベった気分になるね。小学校3年生の時に転校して馴染めなかった頃を思い出します。

 

まるで自分は転校生のようだなと。

 

尾崎世界観の独特なMCを挟んで演奏されたのは、これまたライブで演奏されることが珍しい『転校生』。

 

この曲もカップリング曲だ。さらに続く曲の『ATアイリッド』もカップリング曲。

 

転校生

転校生

  • クリープハイプ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

つまり王道を3曲続けた後にレア曲を3曲続けたのだ。

 

レコ発でもないし記念ライブでもない。偶然にもコロナ禍で間が空いてしまったことによる久々のワンマンライブ。だからこそ活動の歴史から様々な性質を持つ楽曲が、バランスよく配置されたセットリストになっている。

 

ミドルテンポのレア曲を連発してしっとりとした雰囲気にした後は、シングル曲の『イト』を演奏して華やかな空気を作り出す。明るい白の照明でステージが彩られる。

 

イト

イト

  • クリープハイプ
  • ロック
  • ¥255
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華やかな演奏と演出はまだ続く。『ラブホテル』ではステージに置かれたミラーボールに光があたり、ステージと客席を美しく照らした。

 

歌詞は決して明かるいわけではないのに、不思議と多幸感満ちた雰囲気になる。

 

ラブホテル

ラブホテル

  • クリープハイプ
  • ロック
  • ¥255
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3月7日に情熱大陸が放送されるんですけど、今日まで取材のカメラが密着しているんですよ。密着がこのご時世で一番ダメなのに。

 

でもまだ密着して欲しいから寂しくなっちゃって。どうせカメラ回しているスタッフの人も明日には他の取材をするんでしょ?なんかムカついてきた。

 

最後のサビは情熱大陸のディレクターと、ここにいるお客さんに捧げます

 

こんな吹いたら飛んでいきそうな軽い捧げ方をされるから、自然と笑顔になってしまう。そして『かえるの唄』『ニガツノナミダ』とアップテンポの曲を続け、会場の熱気を上げていく。

 

どの楽曲もバンドの力強い演奏があることは共通しているが、楽曲は方向性は幅広い。

 

怪しげでエキゾチックな雰囲気の『キケンナアソビ』、薄暗い照明の中で弾き語りから曲が始まる『誰が吐いた唾がキラキラ輝いてる』と続ける。

 

キケンナアソビ

キケンナアソビ

  • クリープハイプ
  • ロック
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様々な方向性の音楽を鳴らし、様々な感情にさせてくれる。それがクリープハイプの魅力の一つだ。

 

 

後半

 

スタッフがシンセサイザーを持ってきて、尾崎がギターを置きスタンドマイクになる。クリープハイプの中でも異質なアレンジである『5%』が始まる。

 

5%

5%

  • クリープハイプ
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落ち着いた雰囲気の楽曲。5%どころか音楽さえあれば酔うことができると思うような心地良さ。

 

尾崎「クリープハイプのお客さんは声を出せなくても楽しんでいる様子がわかるね。でもよく考えたらいつもこんな感じだもんね。しっかり曲を聴く感じで、それほど反応せず」

 

客席「・・・・・・」

 

尾崎「え?無視?何を言ってもスベった気分になるんだけど・・・・・・」

 

声出しをしてはならないルールをしっかり守る客席と、MCがスベる尾崎世界観。

 

しかし音楽はスベらない。「テレビでもラジオでも流れていない初披露の新曲です」と言うと会場から喜びに満ちた拍手が贈られる。

 

披露された新曲はアップテンポで音楽フェスで盛り上がりそうな楽曲だ。コロナ禍でライブができない間に、新曲の制作を水面下で行なっているのかもしれない。

 

尾崎「このTシャツはギャルのブランドのものですwwwすごい衣装でしょwww」

 

客席「・・・・・・」

 

尾崎「ギャルのブランドの衣装を着てスベるって最悪だな・・・・・・。さっきの話は忘れてください」

 

声出しをしてはならないルールをしっかり守る客席と、ギャルブランドのTシャツを見せつけるもののスベった尾崎世界観。

 

しかし音楽はスベらない。「さっきの話は忘れてください」というMCと繋がるように『さっきの話』を演奏。

 

さっきの話

さっきの話

  • クリープハイプ
  • ロック
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寒いMCをしたとは思えないほどに、温かい歌声と演奏。〈大丈夫だよ 君は君でいいから〉という歌詞が胸に沁みる。クリープハイプは尖ったバンドだけど、優しいのだ。

 

また緊急事態宣言は延長されそうだし、不安になることもあるけれど、こうやってライブをやって、お客さんの前で演奏すると、大丈夫だって言いたくなります。

 

 そして歌詞に今回のライブタイトルと同じ〈大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう〉というフレーズがある『大丈夫』を披露。

 

大丈夫

大丈夫

  • クリープハイプ
  • ロック
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この曲も温かい。語りかけるよな歌声とミドルテンポの心地よい演奏。やはりクリープハイプは尖ったバンドだけど、優しいのだ。

 

そして『陽』『チロルとポルノ』とさらに心地よいミドルテンポの楽曲を続ける。会場全体が音楽によって色んな意味で優しく包まれていく。

 

チロルとポルノ

チロルとポルノ

  • クリープハイプ
  • ロック
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もう少しで終わるから、寂しいな。最後までしっかりと傷つけて帰ります

 

もうすぐライブが終わること告げてから、演奏を再開。ラストに向けて「尖ったロックバンドのクリープハイプ」の音楽を叩きつけてきた。

 

爆音のエレキギターのリフが響き『イノチミジカシコイセヨオトメ』が始まる。

 

イノチミジカシコイセヨオトメ

イノチミジカシコイセヨオトメ

  • クリープハイプ
  • ロック
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先ほどまで優しく包まれていた会場が、アリーナ会場なのにライブハウスのような熱気で包まれる。

 

途中で〈生まれ変わってもクリープハイプになりたい〉と歌詞を変えて歌っていた。バンドの状態が絶好調なのだろう。かつては捻くれ者の尾崎がこのようなことを言うことはなかっただろう。

 

そして『社会の窓と同じ構成』でさらに尖ったロックを聴かせる。

 

社会の窓と同じ構成

社会の窓と同じ構成

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Adoと同じぐらいに「うるせえ」を連発する楽曲。

 

中盤のMCで「歳を取って丸くなった」と言っていたが、音楽は丸くなっていない。むしろより鋭利に尖って、リスナーの胸に音楽で突き刺すような感じ。

 

まだまだ尖るクリープハイプ。続く曲は『身も蓋もない水槽』。

 

歌うと言うよりも感情的に言葉を羅列するように喋るような歌詞。最初のフレーズを音源とは違う内容になっていた。

 

緊急事態宣言が始まってからどれぐらい経ったっけ?いつになったらライブできるんだよ?

 

今の世の中への怒りや不満をぶちまけているような歌詞に変わっていた。

 

音楽によって感情をぶちまけるクリープハイプ。ロックバンドとして、どんどん尖った姿を見せていく。

 

それに比例して感情が揺さぶられていく客席。声を出せない客席だが、空気感からそれが伝わってくる。

 

ラストはバンドのライブ定番曲であり、こちらも尖った楽曲である『HE IS MINE』。

 

この曲は最後のサビ前に〈セッ○スしよう〉という歌詞を、コロナ禍以前はファンが叫んでいた。

 

HE IS MINE

HE IS MINE

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しかし今は客席から声を出すことができない。当然ながら叫ぶことは御法度。

 

大きな声で叫んで欲しいけれど、クリープハイプは丸くなったのでルールを守ります。一人でするのも良いと思います。今日はみんなとではなく、この気持ちを家に持ち帰って、家で一人でしましょう

 

最後のサビの前にどうするのかと思うと、このように語っていた。オ○ニーを勧める尾崎世界観。それに対して拍手で応える客席。

 

つまり東京ガーデンシアターに集まった人たちは、この日の夜、全員オ○ニーを家でしたということだ。

 

今度会ったら何をしようか 今度あったら

 

いつもならこのフレーズの後に演奏が止まり、ファンの大きな声が響く部分。そこでいつも通りに演奏が止まる。

 

しかし当然ながら誰も叫ばない。無音になる。空調の音だけが会場に響く。

 

誰も感染者を出さずに、またライブで今度会うことができるように、全員がルールを守った。みんな家に帰ってからオ○ニーすることを選んだ。

 

クリープハイプは丸くなったわけではない。ファンも丸くなったわけではない。

 

ただ音楽やライブを愛していて、また会うことができるようにと、大切な場所を守ろうとしているだけだ。

 

大変な中、お客さんが来てくれたから楽しくライブができました。元に戻るかもしれないし、もう元に戻らないかもしれないかもしれない。だからまた1から一緒にライブを作っていきましょう。

 

まだ喋りたいぐらい想いが溢れてるけど、喋ることがない。それって、今日は良いライブだったってことだよね。新曲も出すしアルバムも作るしライブもやるから、また会いましょう

 

演奏を終えてステージを去る前の尾崎世界観の最後の挨拶。この日1番長くて大きくな拍手が贈られた。

 

尾崎世界観が言った通り、もう元には戻らないかもしれない。それぐらいに先が見えない世の中になってしまった。

 

クリープハイプは現実的なことや冷めたことも言う。それを音楽にすることもある。しかし絶望から希望を見つけるバンドでもある。

 

「元に戻らないかもしれないから、また1から一緒にライブを作っていきましょう」という言葉は、まさに絶望から希望を見出す言葉だ。現実逃避の前向きな言葉なんかよりも、ずっと希望を与えてくれる。

 

本当に元には戻らないかもしれない。二度とマスクを外してライブを見ることはできないかもしれない。ある程度は覚悟するべきかもしれない。

 

それでも、今度会ったらセッ○スしたい。

 

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クリープハイプ『大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう』@ 東京ガーデンシアター 2021.3.3

■セットリスト

 1.栞
 2.鬼
 3.おばけでいいからはやくきて
 4.クリープ
 5.転校生
 6.ATアイリッド
 7.イト
 8.ラブホテル
 9.かえるの唄
10.ニガツノナミダ
11.キケンナアソビ
12.誰が吐いた唾がキラキラ輝いてる
13.グレーマンのせいにする
14.5%
15.新曲
16.さっきの話
17.大丈夫
18.陽
19.チロルとポルノ
20.イノチミジカシコイセヨオトメ
21.社会の窓と同じ構成
22.身も蓋もない水槽
23.HE IS MINE

 

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