2023-03-14 【ライブレポ・セットリスト】クリープハイプ アリーナツアー2023『本当なんてぶっ飛ばしてよ』 at 幕張メッセ 国際展示場 2023年3月11日(土) クリープハイプ ライブのレポート 開演前の会場にはBGMとしてモーリス・ラヴェル作曲の『ボレロ』が流れていた。「酒場で一人の踊り子が踊っていると、次第に周囲の人たちが集まり一緒に踊り出す」という物語のバレエ作品に書き下ろされた楽曲だ。 もしかしたらクリープハイプが、自身のバンド活動と『ボレロ』の物語を重ねているから、BGMとして選んだのかもしれない。最初は尾崎がひとりでギターをつまびき作った曲を、バンドで演奏するようになり、それが多くの人の耳に届き、その人たちがファンとなり音楽に熱狂する。 1人の行動が他者を巻き込み拡がるという部分では、クリープハイプおよびロックバンドの活動は『ボレロ』に通ずる部分がある。 段々と『ボレロ』の音量が大きくなり、楽曲が終わったタイミングで客席の照明が落とされた。その瞬間に客席から盛大な拍手が贈られる。ガイドラインが変わり声出しが許可されているものの、観客は声援は控えめだ。 ほんな中でゆっくりと準備を進めるメンバー。その様子はライブハウスに立つ時と変わらない。そして、鳴らされた音の熱量も、ライブハウスと変わらなかった。 クリープハイプにとって過去最大規模のワンマンとなった『アリーナツアー 2023「本当なんてぶっ飛ばしてよ』の初日。幕張メッセ国際展示場公演。 少しの緊張感はあるものの、彼らはいつもと変わらずに、でもスケールは大きくなったライブをやってのけた。そして、コロナ禍になってからの3年間のモヤモヤや怒りや悲しみの全てを、音楽として昇華し浄化するようなライブだったと思う。 耳を劈く爆音から始まった1曲目『身も蓋もない水槽』からしてもそうだ。 緊急事態宣言から約3年幕張メッセには張り詰めた空気が漂っている せっかくやれるんだから楽しもうぜ 尾崎世界観は最初の歌詞を、全く違う言葉で叫ぶように歌った。ここまで序盤からフルスロットルになることが今まであっただろうかと思うほどに感情的に叫んでいる。 〈今更になって思い出したんだよ〉という歌詞は〈3年前のことは忘れてねえよ〉という言葉に変えていた。彼らは2020年2月から2021年3月まで、有観客ライブを行わなかった。コロナ禍で初めて行なった有観客ワンマンでは、コロナ禍にライブを行うことへの葛藤を語っていた。そして中止になったライブへの悔しさも語っていた。 おそらく2021年のライブで語った「中止になったライブ」とは2020年に行う予定だった幕張メッセでのワンマンライブのことだろう。このライブは現メンバーになってから10周年を記念して行われるはずだったし、バンド史上過去最大規模の会場という意味でも重要な公演になるはずだった。だからこそより悔しかったのだと思う。 2曲目の『しょうもな』でも、そんな感情をぶつけるように衝動的に歌い演奏していた。それなのに続く『一生に一度愛してるよ』では、この日まで応援し続けてくれたファンへの感謝を伝えるかのように優い表現で披露する。 前半2曲は開演前の緊張を良い意味で引っ張るような尖った演奏だった。しかしこの楽曲によって、1万人から2万人はいるであろう観客とバンドの心の距離が、いっきに近づいた。 尾崎世界観「大人しいね。声出しても良いってアナウンスあっただろ?」 観客「いえぇぇええええええええええhふぇhぎおrwじおえfふぃおhごいwhg!!!」 尾崎世界観「できるんだったら最初から盛り上がれよ!」 メンバーも観客も緊張がほぐれたのだろう。MCではそんなことを感じる一幕もあった。久々にステージと客席とで声によるコミュニケーションが取ることができた。 しかし尾崎世界観は怒りが止まらないらしい。こんどはコロナ禍ではなく、エゴサで見つけたツイートにキレだした。彼の趣味は野球観戦とエゴサーチなのだ。 11日のクリープハイプのチケットを定価以下で譲ってくださいというツイートを見つけた。定価以下で譲りますでもムカつくのになんなんだよ!ムカつくからブックマークして監視してやった。 監視してたら「3000円で譲ってください」と具体的な金額を出すツイートもしやがった!でもクリープハイプのファンならそんな奴に譲ったら尾崎が怒るってわかるよな?だから譲ってもらえてなかった! そうしたら今度は「3500で譲ってください」とツイートしてきた!譲って貰えなかったから細かく値上げしてきやがった!普通は高いところから値下げの交渉をするもんだろ! 定価で入場したであろう観客たちに怒りをぶつける尾崎世界観。しかし3500円で入場した不届き者はいなさそうだと知り、少し嬉しそうである。 それでも「尾崎世界観の顔を見てるとモザイクをかけたくなるよねってツイートを見つけた!失礼だろうが!」と、またエゴサで見つけた別のツイートに怒り出す尾崎世界観。彼の悲しみの8割以上はエゴサで見つけたツイートでできていた。 怒りをぶちまけてスッキリしたのか、ここからの演奏は良い意味で肩の力が抜けていたと思う。演奏されたのは『君の部屋』。インディーズ時代の楽曲だ。きちんとメジャーで再録されたバージョンではなく、インディーズ時代と同じ〈ヘラヘラしながらピンポンダッシュしました〉という歌詞で歌っている。 〈僕の喜びの8割以上は僕の悲しみの8割以上は僕の苦しみの8割以上は クリープハイプでできてた〉た歌詞を変えて歌うのも、このメンバーで10年以上続けてきたからこそだろう。 ここから『月の逆襲』『グレーマンのせいにする』と長谷川カオナシがメインボーカルを務める楽曲が続いた。 序盤の勢いある曲とは違った、妖艶な雰囲気を作り出していく。再び尾崎にボーカルがバトンタッチされてから披露した『キケンナアソビ』では、ステージ上部のスクリーンが降りてきてメンバーを隠し、サイケデリックな映像が映された。その演奏と演出も妖艶で、観ていて吸い込まれそうな気分になる。 今日は3月11日です。みんなにとっても忘れられない日だと思う。 当日は『待ちくたびれて朝がくる』というミニアルバムのジャケットの打ち合わせをしていました。その後夜勤のバイトがあったから、その前に実家に帰って寝ていたら、大きな地震が起きました。 その時、もしかしたら作品を世に出ないかもしれないと思って怖くなった。その後も余震が続いて寝れなくて、その時の気持ちを『待ちくたびれて朝がくる』というタイトルに込めました。このCDが売れたことがきっかけでメジャーデビューできて、今でもバンドを続けられています。 3年前。幕張メッセのワンマンライブが中止になって、その後もライブができなくなった時、もうバンドは終わったと思った。でも今日はは最高の景色を見れています。 今も迷いながらだけど、1曲1曲大切に歌います この日のライブが開催されたのは3月11日。あの日から12年経った。いつになく言葉を選びながら、真剣に語る尾崎世界観。それを観客は静かに真剣に聞いている。 そして『ボーイズENDガールズ』を丁寧に優しく演奏した。〈背景君に伝えなくちゃいけない言葉を書き留めてく〉という歌詞は、ファンに向けてのメッセージにも聞こえてくる。そして青い照明に包まれながら『明日はどっちだ』を演奏し、尾崎の繊細な演奏の弾き語りから『傷つける』を続ける。それを観客はやはり真剣に聴いている。ロックバンドのアリーナライブで、会場でこれほど静まり返るのかと驚くほどに、全員が音楽とメッセージを受け取ろうとしていた。 前半のハイライトは『ナイトオンザプラネット』だろう。 尾崎のアカペラから始まり、そこからバンドの演奏が重なり、ゆったりとしたリズムが会場に響く。ステージや客席に置かれたミラーボールに光があたり、その光が会場に星のように飛び散る景色が美しい。演奏も演出も幕張メッセの規模だからこそ映える。この曲が演奏できただけでも、この会場でライブをやった意味はあるはずだ。 長谷川カオナシ「サブスクとかで安いお金で様々なエンタメを楽しめる時代なのに、安くないお金を払って来てくださり、本当に感謝しています」 尾崎世界観「3,500円しか払ってない奴がいるかもしれないけどな!」 音楽によって観客はみんな感動していたのに、ふざけたMCのせいで会場の空気が変わってしまった。3500円で入場した客はおそらくいないので、尾崎は落ち着いてほしい。 尾崎世界観「小川くんが神妙な顔して楽屋で話しかけてきたから、バンドの脱退を伝えるつもりなのかと思って緊張してたんだけど、何を話すかと思ったら、人生で初めて胸毛を剃ったという報告してきた......」 さらにアリーナ規模でする必要がないどうでもいい小川幸慈の報告を、ファンに伝える尾崎世界観。 小川はツルツルになった胸元がお気に入りなようで、セクシーな顔をしながら胸元を客席に向けていた。その様子が会場のスクリーンに映る。約2万人の観客が小川のツルツルな胸元をガン見して、それに対して盛大な拍手と歓声を贈る。序盤で最も観客が盛り上がった瞬間だった。 そんな盛り上がりの中、尾崎が「ジョリジョリの胸毛をツルツルにすることを歌った曲です」と言ってから、今回のライブタイトルとしても曲名が引用されている新曲『本当なんてぶっ飛ばしてよ』で演奏を再開。そんな歌だとは知らなかった。 メンバーの姿が渦になり歪むサイケデリックなエフェクトがかかった映像の中で演奏されたが、その演出も楽曲の不思議な空気感とマッチしていて良い。 ここからは再びまっすぐなロックを鳴らすクリープハイプのライブに戻っていく。 尾崎の弾き語りから『一生のお願い』を勢いよく演奏し会場を盛り上げた。爽やかな演奏と切ない歌詞が印象的な『チロルとポルノ』では、最後のサビでステージから紙吹雪が舞う華やかな演出も感動的だった。 ライブも後半に差し掛かりつつある。それに向けて熱量が増していく。『愛の標識』で客席全体が腕をあげるほどの盛り上がりを作り出し、〈死ぬまで一生愛されてると思ってたよ〉という最後のフレーズを〈死ぬまで一生愛してくれますか?〉という言葉に変えて、観客から歓声を巻き起こす。この歓声が問いかけへの答えだ。 春に聴くとより一層胸に響く『栞』を、桜色の照明に包まれながら演奏する姿は美しかった。〈簡単なあらすじなんかにまとまってたまるか〉という歌詞は、今のメンバーで10年間続けることができて、コロナ禍でももがきながら前に進むバンドの姿を歌っているようだ。今のクリープハイプが演奏すると、歌のメッセージにより説得力が増す。 個人的に最もテンションが上がったのは『ウワノソラ』だ。尾崎と長谷川と小川が客席に背を向け、ドラムの小泉拓の方を向き、音をしっかりと合わせるように始まった瞬間に鳥肌が立つ。そのまま衝動的に演奏し、睨みつけるような目をして歌い叫ぶ尾崎の姿に興奮した。 メジャーデビュー直後辺りまではライブ定番曲だったが、ここ数年は演奏回数が減っていた。そんな曲が演奏されたことが嬉しかったし、当時と変わらないどころか当時を超える熱量と衝動を持った形で演奏されたことが嬉しかった。 そんな勢いを保ったまま『週刊誌』へとなだれ込む。やはり尾崎は叫ぶように歌うし、バンドの演奏も激しい。〈YouTubeで毎日観てます〉という歌詞は〈tiktokで踊っています〉に変更されていた。この歌詞の変化に時代の流れを感じたし、今でもクリープハイプは”勢いがあって尖っている”のだと感じた。 長谷川のボーカル曲もライブの盛り上がりに貢献している。炎の映像をバックに演奏された『火まつり』も素晴らしかった。ミドルテンポの楽曲だが、演奏は炎のように熱い。 さらに『社会の窓と同じ構成 』と、これまた尖った楽曲を続ける。〈何か似てる 何か似てる〉という歌詞の部分で、尾崎はマイクスタンドから離れて口パクをしていた。観客の歌声を求めていたのだろう。小さな音量ではあるが、観客の合唱が少しだけ響く。これはコロナ禍では観ることができなかった光景だ。 そして、長谷川がステージ前方まで出てきて、イントロを弾いた瞬間、驚きと興奮に満ちたため息が漏れたような歓声と、期待に満ちた拍手が巻き起こった。『HE IS MINE』が演奏されたからだ。 長谷川のベースソロにバンドの演奏が重なり、この日のハイライトと言える物凄い盛り上がりになる。みんな腕を上げているし飛び跳ねている。 今日はイっても良いらしい。でも俺はどっちでもいい。 この3年色々なことがあって、縛り付けられてきた。それを解放してもいいらしい。でも、俺はどっちでもいい。 ここにぶちまけてもいい。でも、俺はどっちでもいい。 謎の焦らしプレイをする尾崎世界観。彼はドSである。しかしクリープハイプのファンは全員ドMなのでご褒美だ。そんなどっちつかずな煽りをして、そのまま歌に戻る。 そもそも尾崎世界観はひねくれ者だ。「どっちでも良い」と言いつつも、みんながイってくれることを望んでいる。それはドMなファンならわかるだろう。 そして演奏をかき消すほどの「セックスしよう!」という合唱かつ叫びが、幕張メッセに響く。この曲でこれほど全力で叫べたのは3年以上ぶりだ。感動的な曲でもないし、なんなら下品な曲なのに、なぜか泣けてきた。ここにいる全員がここにぶちまけてきた。観客がイったタイミングで、客席にぶちまけるように銀テープが発射された。演出も最高だ。 全力でイった観客の声を聞いて「大変よく出来ました」と言う尾崎。彼のこの言葉も久々に聞いたかもしれない。 全員が最高潮の盛り上がりでイった後に演奏されたのは『ポリコ』。おそらくポリティカルコレトネスについて歌った楽曲だが、盛り上げた後にメッセージ性の強い近年の曲を演奏するのもクリープハイプらしい。常に今伝えたい音楽を鳴らそうとしているのだろう。 尾崎世界観「俺はどっちでもいいとか言いつつ、銀テープまで仕込んで(笑)。もしも誰も言わなかったらどうしてたんだよ(笑)」 長谷川カオナシ「無音の中で銀テープだけ発射するのもカッコよかったかもしれません(笑)」 やはり尾崎世界観はひねくれ者だ。。全然「どっちでもいい」ではなかった。 本番の前、ものすごく緊張していた。演奏中に泣いてしまうかもと思っていた。でも、実際にステージに立ったら全然泣けなかった。 普通。普通のライブ。それが普通に嬉しいし、普通に幸せ。 2020年の幕張メッセが中止になって、ここに向けてやってきて、それでも普通に幸せと言えるのは、普通にお客さんが来てくれるからです。ここに来てくれる人の為に、終わらせてはいけないと思うからステージに立てます。 これからも普通にステージに立って普通に演奏して、普通にライブをやります。つまり、クリープハイプはまだまだ続くということです。 でも、バンド活動やファンへの感謝の気持ちは、素直に話す。ひねくれ者が素直に話した言葉は、覚悟を持った本音であることが多いと思う。そんな言葉に温かな拍手がステージに贈られる。 そんな多幸感に満ちた空気の中、メジャー1stシングルにしてオリコン7位に運良くランクインした『おやすみ泣き声、さよなら歌姫』が演奏される。シングルのジャケットのカラーをイメージしたような青色の照明に包まれながら演奏する4人。この曲はラストではなかったものの、歌詞の設定や内容からしても、ライブの終わりを感じて切なくなる。 そのまま間髪入れずに『イノチミジカシコイセヨオトメ』が続く。彼らが売れる前からライブで頻繁に演奏されていた楽曲だ。 自分はこの楽曲を数百人しか入らない小さなライブハウスで、それもチケットが完売していないフロアで聴いたことがある。その時からCMソングやドラマタイアップには絶対になれない曲だけど、他には無い個性と求心力があるとは思っていた。 そんな楽曲が幕張メッセに響く。音楽フェスではなく彼らの音楽だけを求めて集まった人に響く。過去最大規模のワンマンで、10年前のクリープハイプが間違っていなかったことを、証明しているように感じた。 やりきった表情のメンバー。尾崎は「言いたいことは全部言ったし、やりたい曲もやりきった。俺はもうなんも無い。何かありますか?」と他のメンバーに話を振る。 すると普段はMCで率先して話すことが少ない小泉が口を開いた。 2020年に幕張メッセのライブが中止になった時、めちゃくちゃへこんでた。でも、今回こうしてやれたので、本当に良かったと思います。 ありがとうございます。 少ない言葉だったが、その言葉には様々な想いがこもっていたと思う。それぐらいに幕張メッセのワンマンは、中止を経ての念願の開催だったのだろう。 聴いてくれるお客さんのための音楽だけど、聴いてくれる人がいるということに、こちらも救われています。 尾崎が改めてファンへの想いを語ってから、最後に『二十九、三十』が演奏された。ステージ後方とサイドのスクリーンには、渋谷や新宿、道頓堀や難波の繁華街の映像が映っている。 映像の意図が、最初はわからなかった。東京と大阪の繁華街が関連する曲ではないからだ。 しかし、曲と映像が進むに連れ、その意味と意図を理解した。 普段は24時間人がいるような繁華街の映像なのに、人が全然映っていなかったからだ。これは「緊急事態宣言」が発令された時の映像なのだとすぐに気づいた。 映像はハッキリとそれを伝えるように繁華街の店舗に「臨時休業」を知らせる紙が貼られている景色も映していた。2023年は渋谷も新宿もコロナ禍以前と変わらないほどに人が溢れている。関西も同じかもしれない。コロナ禍はまだ続いているが、前身していることは確かだ。 だからこそ〈前に進め 前に進め 不規則な生活リズムで〉という歌詞が、胸に刺さる。きっとサビだから言えたであろう、真っ直ぐなメッセージのサビが、コロナ禍を経てより強力なものとなった。 もしかしたら2020年の幕張メッセ公演が中止になった時に、いつか幕張メッセでワンマンがやれる時が来ることを願って、映像を撮ってこの演出を考えていたのかもしれない。その映像に最も似合う曲が『二十九、三十』だから、ライブの最後に演奏することも決めていたのかもしれない。 当時はもう二度と有観客ライブはできない可能性もあると思われていた時期だ。そんな時期にバンドもスタッフも、未来を信じて準備をしていたのだろう。再びライブができるようになって、この曲が演奏された時、この映像を使うことで、前に進んだことを証明するために。 〈前に進め〉という尾崎の力強い歌声で曲が終わり、ライブは幕を閉じた。 小川と長谷川と小泉がステージを後にする中、名残惜しそうに1人だけステージに残る尾崎世界観。そして「普段はやらないけど、写真撮影しようか?なんか大きい会場でやるとみんなやってるじゃんw?タオル広げたりしてさw」と話す。 どうやら写真撮影をする予定はなく、尾崎の思いつきだったらしい。「いきなりだからカメラも用意できないか?」と舞台袖に目をやっている。少し時間を置いてメンバーが再登場しカメラマンも急遽出てきて構図をその場で決めた。 「不倫してる人と指名手配犯と反社は顔を隠してください」という尾崎の言葉を合図に、クリープハイプと観客全員で記念撮影が行われた。 たしかにクリープハイプのワンマンライブ後に、このような記念撮影をすることは珍しい。むしろそういった行動を避けるようなバンドでもある。 それでも、似合わないことだけど、写真を撮りたいと思ったのは、幕張メッセでのワンマンに特別な想いを持っていて、実際に最高のライブをやった自信があったからだろう。 「手にマイクを持ってるんだけどどうすれば良い?ステージに置いたら引退するみたいなんだけど(笑)」と言って、ステージで挙動不審になる尾崎世界観。予定外の写真撮影のせいで、自らもテンパっている。 結局「ありがとう」と一言だけ告げて、引退するかのようにマイクを置いて去っていった。解散ライブだったとしても違和感がないほどの置き方である。 しかし「これからも普通にステージに立って普通に演奏して、普通にライブをやります。つまり、クリープハイプはまだまだ続くということです。」とMCで話していた。だからマイクの置き方もネタとして笑える。普通に笑える。 クリープハイプにとって過去最大規模のワンマンライブは、普通に良いライブだった。 ■クリープハイプ アリーナツアー2023『本当なんてぶっ飛ばしてよ』 at 幕張メッセ 国際展示場 2023年3月11日(土) セットリスト 1.身も蓋もない水槽2.しょうもな3.一生に一度愛してるよ4.君の部屋5.月の逆襲6.グレーマンのせいにする7.キケンナアソビ8.ボーイズENDガールズ9.明日はどっちだ10.傷つける11.ナイトオンザプラネット12.本当なんてぶっ飛ばしてよ13.一生のお願い14.チロルとポルノ15.愛の標識16.栞17.ウワノソラ18.週刊誌19.火まつり20.社会の窓と同じ構成 21.HE IS MINE22.ポリコ23.おやすみ泣き声、さよなら歌姫24.イノチミジカシコイセヨオトメ25.二十九、三十 ↓クリープハイプの他の記事はこちら↓