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【ライブレポ・セットリスト】Cody・Lee(李)『愛してますっ!を伝えにいきますTOUR』at Spotify O-EAST 2022年7月11日(月)

3月にリキッドルームを完売させた時は驚いた。Cody・Lee(李)の人気がここまで上昇していることに自分は気づいていなかったからだ。

 

そのライブも素晴らしい内容だった。「このバンド、もっと凄いことになるのでは?」と感じてしまうほどの勢いがあった。近いうちにもっと大きな会場を埋めるバンドになると確信するほどにだ。

 

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だからリキッドルームよりも大きいSpotify O-EASTのチケットが即完したことには驚かなかった。予想通りである。むしろもっと大きいZeppでやっても良いのではと思っていた。

 

本人たちもO-EASTのほどの大きなキャパでも、最高のライブをやれる自信は持っているのだろう。落ち着いた様子でステージに現れ、堂々とした佇まいで演奏を始めた。ファンも過去最大規模のワンマンだとしても、晴れ舞台と思わずに純粋なワンマンライブとして受け取っているような空気である。

 

そんな雰囲気の中で始まったCody・Lee(李)『愛してますっ!を伝えにいきますTOUR』の東京公演。やはり、予想通りに素晴らしいライブだった。

 

1曲目はライブタイトルの由来になったであろう楽曲『愛してます』。過去最大規模のワンマンではあるが、浮き足立った感じは一切ない。安定した演奏でしっかりと聴かせている。

 

演奏だけでなくパフォーマンスも堂々としている。途中で高橋響がハンドマイクになり、腕を振るように煽っていたし、尾崎リノは前方に出てきてタンバリンを高く掲げて叩き、観客の手拍子を煽っていた。

 

このように煽って盛り上げることは、これまでのライブでは少なかった。これも自信があるからこそ、堂々と煽ることができたのだろう。

 

そして高橋が「自由に楽しんでください」と告げてから『トゥートルズ』を続ける。この曲では客席上のミラーボールが回り会場を美しく照らしたりと、大きな会場を活かした演出がされた。そこから『I'm sweet on you(BABY I LOVE YOU)』を、シンプルな演出ながらも壮大な演奏で聴かせる展開も良い。

 

演出や魅せ方は前回のワンマンよりも進化している。それでもバンドの演奏の凄みや楽曲の魅力が軸となったライブでもある。Cody・Lee(李)が短期間でさらに進化したことを実感した。

 

照明の美しい光の中でダ キレッキレな演奏を繰り広げる姿を見ていると、改めて大きなバンドになりつつあると実感する。

 

クールな演奏で観客を魅了するもののMCは緩い。ツアーの思い出を語る話では、北海道から帰る時に乗ったフェリーにサウナが着いていたことへの感動を、力毅とニシマケイと原汰輝の3人は語っていた。高橋響と尾崎リノは飛行機で帰ったらしく、高橋は「ボーカルだから」と言って、優れた待遇を利用してマウントを取っていた。

 

そんな緩いMCを挟んだものの「今日の東京は暑いです。だからここからはCody・Lee(李)の夏ソングを続けます。」と告げてから再開した演奏は、緩さとは無縁で隙がない。

 

高橋と尾崎がハンドマイクになり歌った『キャスパー』は、ゆったりとしたリズムが心地よい演奏で聴かせた。ステージを装飾している豆電球は、星のように輝いている。〈だらしない夜に溶けていく〉と言う歌詞をイメージしているかのようだ。

 

3月のリキッドルーム公演では尾崎の弾き語りから始まった『異星人と熱帯夜』だが、今回は音源に近いアレンジで披露された。それでもライブだからこその迫力を感じる。

 

高橋はテンションが上がってしまったのだろうか。尾崎のギターからカポを外してぶん投げ、彼女の背中を押してステージ前方まで強引に連れていった。

 

苦笑いしつつも台の上に立ってギターソロを弾く尾崎。それを聴いて湧き上がる観客。ニヤつく高橋響。ライブだからこその無茶ぶりが、ステージと観客の一体感を高める。この曲で緊張感ある客席の空気が和らいだと感じた。

 

『冷やしネギ蕎麦』では腕をあげて盛り上がる観客が増えたし『江ノ島電鉄』では自然と手客席から拍子が鳴らされた。前半はじっくりとライブの空気を作るような選曲と演奏だったが、ここで完全に盛り上げ、Cody・Lee(李)だからこその空気を完成させた。

 

そんな空気を感じ取って高橋はテンションが上がったのか「渋谷は家から近いんです。すぐそこに住んでます。だから東京は揺るぎないホームだなと思います!」と自宅が近所ということを暴露する。

 

MCは再び北海道から帰ってきた際のフェリーでの話になる。「往復で30時間以上乗ったんだからMC2回分ぐらいは話させてくれ!」も訴える力毅。

 

力毅「みんなで人生ゲームをやろうと思ったんですけど、波が大荒れでみんな酔ってできませんでした」

高橋響「可哀想だなあ。僕とリノちゃんは飛行機だったから、それは知らなかった」

力毅「格差を感じます」

高橋響「ホテルが10時半チェックアウトだったんですけど、起きたのが9時半だったから急いで準備して走ってフロントに行きました。可哀想でしょ?」

力毅「全然可哀想じゃないです」

 

バンド内格差を感じるが、自分は飛行機よりフェリーの方が楽しそうな気がするので、フェリー組の3人は元気を出して欲しい。

 

高橋響「福岡も北海道もバイブスが凄かったけど、東京が1番バイブスが凄いでしょ!?」

 

突然「バイブス」の話をする高橋響。ライブMCでバイブスを連呼するバンドマンの登場は、ピエール中野以来である。

 

ここからバンドのバイブスを感じる衝動的な演奏が続いた。『WKWK』が始まった瞬間に、演奏から凄まじいバイブスが生まれる。

 

バイブスを感じ取った観客も、バンドに負けないほどの盛り上がりでバイブスを表現する。中盤はメンバー全員に歌わせるライブアレンジがされていた。カッコよさだけでなくユーモアも取り入れるのが最高だ。

 

さらに『W.A.N』とキラーチューンを続けるのだから、ステージもフロアも最高のバイブスになってしまう。

 

そんな観客のバイブスにメンバーは感動しているのだろうか。高橋は感慨深そうに、今回のツアータイトルに込めた意味を語り始めた。

 

皆さんがCDや、グッズを買ってくれるから、こうしてバンドは活動できるわけです。

 

ステージに立つ側としてはライブを観てもらえて嬉しいんだけど、僕なんかで良いのかと不安にも思います。だからこんな自分の音楽を聴きに来てくれる人に感謝を伝えたいという意味で、今回のツアータイトルをつけました。

 

次は、愛のうたを歌います。

 

真っ直ぐな眼差しで語ってから披露されたのは『LOVE SONG』。歌はメロディアスだが演奏はオルタナティブというのが「ロックバンドとしてのラブソング」といった感じで良い。

 

そこから最新アルバムの曲順と同じように『honest』を続ける。こちらはうねるようなグルーヴが印象的な、バイブスが高い楽曲だ。心に突き刺すロックというよりも、心にズッシリと伸し掛ってくるようなロック。このような演奏をできる若手バンドがいることは貴重だ。

 

そこから高橋の「ベース、ニシマケイ!」と高橋が紹介から、にニシマのベースソロが始まり『悶々』へとなだれ込む。サビ前には「行くぞ東京!」と高橋が煽ったりと、演奏のバイブスはさらに高まっていく。客席だって負けていない。腕を上げて盛り上がったりと観客も高いバイブスを見せつけていた。

 

高橋のバイバスはまだまだ上昇していく。自身の中でバイブスを消火しきれなかったのか、メンバー1人ひとりに「バイブス高すぎいぃ!」と強制的に叫ばせていた。

 

「やりたくねえ......」という感情が表情に出ていた尾崎リノにも、お構い無しに「リノちゃんのバイブスは高まってますか?」と尋ねて強引に叫ばせていた。彼女がここまで大きい声を出したのを初めて聞いた。

 

Cody•Lee(李)が皆さんの1番でなくても良いです。でも辛いことがあった時に会いに来てくれて、それで癒されるような存在でいたいです

 

しかしバイブスが高まったとしても、最も伝えたい想いは冷静にしっかりと伝える高橋。そんな言葉に心が震えてバイバスが高まる観客。

 

ライブも後半。昂りすぎたバイブスを落ち着かせて感動的にライブを締めたいのだろうか。『世田谷代田』『drizzle』を丁寧な演奏でしっかりと届ける。バイブスの高い演奏も最高だが、このように繊細な演奏をするのも素晴らしい。

 

本編最後に演奏されたのは『桜町』。美しいピアノの旋律が流れてから、メンバーが繊細ながらも壮大なサウンドを響かせる。その演奏と歌声が胸に沁みる。後半では感情が昂ったのか、高橋は叫ぶ場面もあった。その声に鳥肌が立った。

 

バンドは技術も大切だし、Cody・Lee(李)は技術力はある思う。しかし音楽において最も大切なのは、どれだけ音に魂を込められるかだ。この日の魂のこもった『桜町』の歌と演奏聴いて、そんなことを思った。

 

ニシマケイと原汰輝による物販紹介から始まったアンコールは、バイブスよりもアットホームさを感じる空気が流れていた。

 

そしてお笑い芸人とゲストバンドを招いた3マンツアーの開催を発表した。意外なコンセプトのツアーに驚きつつも喜ぶ観客。

 

ちなみに高橋はNSC28期生の初公演を観に行くほどのお笑いファンらしい。ネタを飛ばす若手を「かわいいなあ///」と思いながら観るのが好きだという。変わった趣味だ。

 

「凄く楽しいツアーでした。また会いに来てください」と一言だけ告げて、代表曲『我爱你』を披露。イントロが鳴った瞬間、ステージ後方に筆記体でかかれた「ILoveYou」という文字が映し出された。

 

演奏や楽曲だけでなく、演出でもファンへの愛を伝える。そんな想いが込められた音楽だから、ファンは心が動かされてバイブスが高まるのだ。

 

メンバーのバイブスも当然ながら高まっている。高橋は背面弾きをしていたし、力毅も前方に出てきてギターをかき鳴らしていた。〈東京の街のネオンライトは まるでミラーボールみたいでしょ?〉というフレーズが歌われた時、客席上のミラーボールが回り会場全体を美しい光で照らした景色も素晴らしかった。

 

そこからなだれ込むように『初恋・愛情・好き・ラブ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!』を続ける。まるでパンクバンドかのような衝動的な演奏で、バイブスを高めていく。全ての体力とバイブスを使い果たすかのような激しさだ。

 

さらに曲間なしで『When I was city boy』を披露。これがラストナンバーだ。やはり凄まじいバイブスを感じる演奏だ。サビ前に「東京!最後に力を見せてくれ!」と高橋が煽った後は、この日1番のバイブスを見せつけるように観客は興奮し盛り上がっていた。

 

バイブスが最高潮に高まったところで全ての演奏が終わった。力毅はバイブスが治まらないのか、自身のピックをアルコールで消毒した後に客席へ投げていた。普段はピックを投げることはないので、そうとうバイバスが高まっていたのだろう。

 

しかしピックを飛ばしても飛距離は短い。高橋は「普段やらないんですよ。慣れてなくてすみません......」と冷静になって観客に謝罪していた。彼のバイブスはライブをやり切ったことで低くなったのだろう。

 

原汰輝「終わっちゃったねえ」

高橋響「そうだねえ。でもそういう話は楽屋でするやつだよ」

 

最後に写真撮影をする前、原は高まったバイブスの余韻で切なそうに呟いていた。心の底からやり切ったからこその感情だろう。

 

「過去最高のライブでは?」と思うほどに素晴らしい内容だった。しかし彼らはまだメジャーデビューしたばかりの若手バンド。ここからさらに進化して、バイブスはさらに高まっていくことだろう。

 

高まったバイブスが治まらないほどに、ワクワクが持続する最高のライブだった。

 

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■Cody・Lee(李)『愛してますっ!を伝えにいきますTOUR』at Spotify O-EAST 2022年7月11日(月) セットリスト

1.愛してます

2.トゥートルズ

3.I'm sweet on you(BABY I LOVE YOU)

4.キャスパー

5.異星人と熱帯夜

6.冷やしネギ蕎麦

7.江ノ島電鉄

8.WKWK

9.W.A.N

10.LOVE SONG

11.honest

12.悶々

13.世田谷代田

14.drizzle

15.桜町

EN1.我爱你

EN2.初恋・愛情・好き・ラブ・ゾッコン・ダイバー・ロマンス・君に夢中!!

EN3.When I was city boy