オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

【ライブレポ・セットリスト】あいみょん『AIMYON TOUR 2024-25 “ドルフィン・アパート”』at Lala arena TOKYO-BAY 2024年9月28日(土)

※ネタバレあり

 

幻想的なSEと美しいい青い照明でステージが包まれる中、白い光が客席へと伸びていく。そんな美しい照明演出から、あいみょんの約2年ぶりのアリーナツアー『ドルフィン・アパート』の初日が始まった。

 

会場は今年新しく開業されたLaLa arena TOKYO-BAY。ここであいみょんのライブが行われるのは初めて。つまりこの日のライブは初めてづくしということだ。

 

f:id:houroukamome121:20241009110633j:image

 

そんな幻想的な雰囲気の中でバンドの演奏が始まったものの、あいみょんの姿は見えない。かと思えば最初のフレーズを歌い終わるとステージの照明も客席の照明も明るくなり、アリーナ席中央のサブステージから「あいみょんアリーナツアーにようこそ!」と叫びながらあいみょんが登場した。いきなりサブステージを使い近くから登場するとは、粋な演出だ。

 

観客は悲鳴にも近い大歓声で迎え入れるが、2年前のアリーナツアーの時は、まだ声出しが禁止されていた。大会場で制限なく楽しめることは、これほどまでに楽しいのかと実感する。

 

メインステージからアリーナ最後席まで花道が伸びており中心にサブステージがあるステージ構成なので、アリーナではあるもののどの座席からもあいみょんを近い距離に感じられる。そんな花道やステージを練り歩き、手を振ったり投げキッスしたりと、観客を煽りながら歌う姿が印象的だ。

 

続く『ラッキーカラー』も同じように煽りながら花道を練り歩き歌う。 〈 大きな声で叫ぶの「恋してるよ、私」〉という歌詞を観客に歌わせようとマイクをむけたものの、観客がそれに反応ができなかったのはツアー初日ならではだとは思うが、そんなことは関係なく観客は楽しそうだ。これからさらに成長していく楽曲になるだろう。

 

前半2曲で盛り上げメインステージに戻り歌われたのは『会いに行くのに』。今度はあいみょんもアコースティックギターを弾きながら、優しく歌う。騒いでいた観客も静かに聴き入っていた。

 

ララアリーナは初めましてです。できたばっかりのピカピカな会場で、初日を迎えることができました

最初花道の真ん中から出てくるとは思ってなかったやろ?思ったより近いやろ?

このライブはここから成長していくけれど、皆さんと一期一会のライブを過ごせたらと思います!この日の反応によっては演出やセットリストが変わるかもしれんからよろしく(笑)

 

手短に最初のMCを済ませ、演奏がすぐに再開。マンドリンのような音から始まるアコースティックサウンドながらも迫力ある『幸せになりたい』をしっとりと聴かせ、サビでバンドメンバーが順番にあいみょんとユニゾンで歌うのが聴いていて楽しい『駅前喫茶ポプラ』を続ける。この楽曲では喫茶店のドアベルの音などをパーカッションの朝倉真司を鳴らしたりと、演奏も聴いていて楽しい。

 

ツアー初日とは思えないほどに完璧なライブを繰り広げていたが、やはりツアー初日。『今夜このまま』では、ちょっとしたトラブルもあった。あいみょんが最初の歌詞を忘れてしまったのだ。

 

演奏が続く中「ごめんなさーーい!」と叫び「ふふふふーん♪」とハミングで誤魔化していた。なぜか最新アルバムの曲ではなく、歌い慣れた過去のシングル曲でやらかした。

 

だがそんなミスで盛り上がる観客。こんなトラブルもライブならではの〝一期一会〟の楽しみと理解しているのだろう。それに演奏は素晴らしいし、歌詞を飛ばしたこと以外はあいみょんの歌声も最高だ。ステージに置かれたミラーボールに青い照明の光を照らし、会場一面に星のような光が散らばらせる演出も感動的である。

 

そんなミスを取り返すかのように『あのね』をスタンドマイクで完璧な歌唱をするあいみょん。白い光のスポットライトに照らされる姿が神々しい。

 

MCではミスの反省からか『今夜このまま』のサビを歌い直すあいみょん。しかしミスをしたのはAメロである。「次の曲を歌ってる時に飛ばした歌詞を思い出したりするんよねえ」と言い訳をしていた。

 

あいみょんのMCはaikoに負けず劣らずの長さかつ観客とひたすらに絡む。ここからのMCが長かった。花道を歩きながら「唾液を飛ばしても届きそうなぐらい近いですね」と言って観客に顔を近づけたりしながら、ひたすらに喋り観客に絡む。

 

あいみょん「今日は千葉でのライブだし千葉から来た人が多いんですか?」

観客「板橋から来たああああ!!!」

あいみょん「ああ、そうですか(笑)」

 

あいみょんが強引に観客と絡むことと同様に、観客も強引にあいみょんに絡もうとする。似た者同士だ。「今日は喋りすきないようにも自分に言い聞かせてます!まだ3分ぐらいしか経ってないよねワラ」とあいみょんが言っていた頃には、恐らくその倍以上の時間が経っていた。

 

長いMCを挟んで『スーパーガール』から演奏が再開。カラフルな照明の中でクールな演奏をバックに、色気ある歌唱で魅せる。前半とは違った魅力を感じるパフォーマンスだ。

 

続く『マトリョーシカ』もクールなサウンドとパフォーマンスで魅せる。カラフルな煙が渦を巻くように絡み合う映像演出は迫力があって圧巻だ。

 

そんなクールな楽曲を続けた後に『朝が嫌い』のような全く印象が違う切ない落ち着いた楽曲が続くと、そよギャップでより楽曲が胸に響く。こちらは丁寧な歌と繊細な演奏でしっかりと聴かせてくれた。

 

『マリーゴールド』が演奏された瞬間、会場の一体感がさらに高まった空気になったのが印象的だ。マリーゴールドのようなオレンジ色の照明の中で演奏されるのも粋である。サビで観客全員が腕を降っている景色も圧巻だ。なんだかんだで代表曲を求めている観客は多いのだとは思うが、ライブ中盤で代表曲が演奏されるようになったのも、ライブで重要な楽曲が増えた証拠かもしれない。

 

ここで再び長いMCタイムへ。

 

あいみょん「平成生まれの人!」

平成生まれの客「いええええい!!!」

あいみょん「昭和生まれ!」

昭和生まれの客「いぎゃああいいいえええあ!!!!!」

あいみょん「昭和生まれ、押しが強い(笑)」

 

あいみょんが客と絡んだことにより、昭和生まれファンが多いことが判明した。本人よりも年上のファンが多いのかもしれない。

 

その後も双眼鏡で客席を眺め目立つファンを見つけてはイジるあいみょん。マッチョを見つけて興奮したり、まったりと見ていた男性客を見つけて「油断してたやろ!」と叱ったりと自由である。

 

さらには指先の綺麗に塗られたネイルをカメラに映し『ラッキーカラー』のサビを歌う。これらの破天荒なMCは、時間にして10分ほどはあったとは思う。だが観客と心の距離を詰める重要な時間になっていて、彼女のライブの名物になりつつあるので、必要な時間だ。

 

ここからはアリーナ席中央のサブステージで、アコースティックセットの演奏が繰り広げられた。サブステージに来ても「少し話そうか?」と言うあいみょん。それに対して「散々喋ったでしょ?」と優しく注意するパーカッションの朝倉真司。彼が注意しなければMCの時間がさだまさしに迫っていた。

 

それでも喋ろうとするあいみょんを静止するかのように、パーカッションを叩き演奏を始める朝倉。「朝ちゃんはパーカッションだから曲を始められるから強い!」と、文句と賞賛が混ざった台詞を言ってからあいみょんは歌い始めた。

 

アコースティックセットでの1曲目は 『猫にジェラシー』。音源でも優しいアコースティックなサウンドだが、ライブだとそこに生々しさが加わり、より温かみが増したサウンドになっていた。曲終わりにあいみょんが猫の鳴き真似をしていた。それなりに、似ていた。

 

「ライブでアコースティックのバンドセットを本格的にやるのは今回が初めて」と話すあいみょん。そういえばアリーナ席後方まで花道を伸ばしたことも初である。今回のツアーは新たな試みが盛りだくさんなようだ。

 

次の曲はバードコールというパーカッションを使うらしい。そこであいみょんが「わたしか井嶋さんかどっちにやって欲しいかみんなが決めて!」と話し、あいみょんとサポートベースの 井嶋啓介が順番にバードコールを演奏し!観客にどちらが良いのかアンケートを取り、拍手の大きさで決めることになった。

 

両者ともに演奏してみたものの、どちらも悪くは無い演奏で、観客の拍手の大きさも同じだった。「あなたは歌うから井嶋さんに任せましょう」という朝倉のアドバイスで井嶋がバードコールを演奏するこたになったものの、あいみょんは納得いかないらしい。「井嶋さんの鳥は発情した鳴き声だった!」「発情せんといてな!」とイチャモンをつけていた。

 

演奏されたのは『姿』。井嶋のバードコールも今回は発情せずに美しい囀りになっている。ピアノの音が印象的な演奏で、しっとりと心地よく聴かせてくれた。

 

ここでバンドメンバーがステージを後にする。1曲だけ弾き語りをするらしい。「センターステージで弾き語りするの、甲子園球場ぶりだからドキドキしちゃう///」と言って、あいみょんは照れていた。

 

だが弾き語りで演奏された『裸の心』は、そんな照れや緊張を感じないほどに素晴らしかった。息を飲んでしまう名演で、アリーナ規模の会場なのに観客は物音を立てずに静かに聴いていて、その空気感にも鳥肌が立つ。

 

ここからは再びバンドセットでの演奏が始まる。「もう残り半分です!でも体力有り余ってますよね?昭和生まれのみなさん!」とサブステージにまだ立っているあいみょんが煽るものの、昭和生まれの観客はまばらな拍手を鳴らしていた。昭和生まれは疲れてしまったのか。

 

だがあいみょんが「いぶいぶ!イカしたドラムをわたしに聴かせて!」と叫びドラムの伊吹文裕が激しくドラムを鳴らすと、疲れた昭和生まれも力を振り絞り盛り上がる。そしてメンバーの名前と楽器を順番にあいみょんが呼び、それと同時に音が重なりバンドの音が構築されていく。そんな演出が最高だ。

 

始まったのは『私に見せてよ』。音源よりも激しいロックな演奏になっていた。あいみょんが「みんなは手拍子を続けて!」と叫んだこともあり、観客は演奏に参加しているかのように大きな手拍子を鳴らす。アウトロで演奏が徐々に速くなるアレンジになっていたのが楽しい。

 

その勢いのまま『マシマロ』へと雪崩込む。観客もマシマロへとなだれ込む手拍子をならしつづけていて、会場は熱気に満ちていた。〈マシマロの丘〉という歌詞で自身の胸をアピールするジェスチャーをしているあいみょんからは、セクシー以上にユーモアやロック魂を感じてしまった。

 

代表曲のひとつ『愛を伝えたいだとか』は、ハンドマイクで妖艶にパフォーマンスをしていた。この楽曲では観客が心地よさそうに横に身体を揺らしていた。あいみょんのライブは騒がせ盛り上げるだけでなく、様々な表現で魅了させるのだ。

 

その後の『愛の花』では明るい照明の中、爽やかな空気を作るように歌い演奏していた。やはり様々な表現を1回のワンマンライブで見せることが、彼女のライブの特徴のひとつかもしれない。

 

再び観客に絡み会話をするあいみょん。「アリーナツアーは2年ぶりで、これほど多くの人にかわいいと言ってもらえるのも2年ぶりです!」と言って、強制的に観客に「かわいい!」と言わせていた。さらに自由に話しまくり、クレヨンしんちゃんのモノマネまで披露していた。自身の想定を超える上手さだったらしく「自分でも引くぐらいにしんちゃんのモノマネ上手いんだけど...」と言って自画自賛していた。

 

千葉県なのに京都銀行のCMを引用し「皆さんとながーいお付き合いになりたいです!」と煽って、ここからライブの後半戦。

 

曲名を叫んでから演奏されたのは『君はロックを聴かない』。サビであいみょんがマイクから離れると、観客の大合唱が会場に響く。ライブでは定番の光景ではあるが、毎回感動してしまう。

 

「汗かいて行きましょう!」と言ってから『RING DING』をハンドマイクでステージを練り歩きながら歌い、さらに会場の熱気を高めていく。観客の綺麗に揃った手拍子も最高だ。

 

その勢いのまま『夢追いベンガル』へと雪崩込む。この日1番と言えるほどの盛り上がりになっているし、あいみょんが「せーの!」と煽ってからの観客が叫ぶ〈平成!〉という掛け声の 大きさは演奏をかき消すほどの大きさで、あいみょんの方が観客の勢いに連れられて盛り上がってるのではと思うほどの熱気になっている。

 

曲間なしで『貴方解剖純愛歌 ~死ね~』へと雪崩込むと、まるで代表曲が演奏されたかのような歓声が響いた。サビであいみょんが「歌えますか!?」と尋ねると、またもや演奏をかき消すほどの大きな声で観客が歌う。この楽曲はインディーズ時代の尖った歌詞の楽曲だが、アンセム的な盛り上がりを生む楽曲となっている。

 

最高の盛り上がりを作り上げた後に演奏されたのは『ざらめ』。今度は重厚なロックサウンドではあるものの、ミドルテンポの落ち着いた楽曲でしっかりと聴かせる。

 

薄暗い橙色の照明の中で歌い演奏する姿には引き込まれてしまうし、スクリーンに歌詞が出ていたこともあり、楽曲のメッセージがダイレクトに胸に響いた。

 

あいみょん「次が最後の曲です!」

観客「えー!」

あいみょん「あっという間やねえ」

女性客「裸見せて!」

あいみょん「うちらいつからそんな関係になった?」

 

あいみょんと観客の謎のやり取りの後に演奏されたラストソングは『葵』。

 

ハンドマイクてゆっくりとステージや花道を歩き、手を振りながら歌っていた。客席の電気も点灯し、観客の笑顔もしっかりとあいみょんから見える明るさになり、会場全体が多幸感に満たされていた。アウトロでバンドメンバーが紹介された時の観客の拍手も温かくて、バンドメンバーも含めてファンに愛されていることが伝わってくる。

 

アリーナツアーを当たり前のように行い始めてから、もう数年経っている。今では紅白に何度も出演する国民的歌手でもある。それなのにあいみょんのライブに行くと、会場規模がどれほど大きくても心の距離は近く感じる。まるで友達と一緒にいるような気持ちになる。だからライブに行くというよりも、あいみょんに会いにいくという感覚になるのだ。

 

ツアーをやる都度に新しい挑戦をしていることも忘れてはならないを今回で言えばアコースティックでのバンドセットや、客席後方まで伸びた花道、オープニングで真ん中のサブステージから登場したことなどがそれだ。そんな貪欲に挑戦する姿勢があるから、ずっとファンに驚きと興奮を与えるのだ。

 

そんなライブをあいみょんはこれからも続けるはずだ。彼女はまたただいまを言える場所をずっととっておいてくれるのだと思う。

 

あいみょん『AIMYON TOUR 2024-25 “ドルフィン・アパート”』at Lala arena TOKYO-BAY 2024年9月28日(土) セットリスト

1.リズム64

2.ラッキーカラー

3.会いに行くのに

4.幸せになりたい

5.駅前喫茶ポプラ

6.今夜このまま

7.あのね

8.スーパーガール

9.マトリョーシカ

10.朝が嫌い

11.マリーゴールド

12.猫にジェラシー

13.姿

14.裸の心

15.私に見せてよ

16.マシマロ

17.愛を伝えたいだとか

18.愛の花

19.君はロックを聴かない

20.RING DING

21.夢追いベンガル

22.貴方解剖純愛歌 ~死ね~

23.ざらめ

24.葵