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【ライブレポ・セットリスト】SPARTA LOCALS / Cody・Lee(李)『PLAY VOL.164』at 渋谷La.mama 2025年4月24日(木)

スパルタローカルズは自分にとって青春のバンドのひとつだ。出会いはTBSテレビで深夜に放送されていたCOUNT DOWN TV。そこのオープニングナンバーとして『トーキョーバレリーナ』のMVが流れていたのだ。


使われていたのはサビのたった数秒ではあるものの、そのメロディと歌詞とサウンドに衝撃を受けたことを覚えている。ロックに興味を持ち始めたばかりの中学生だった自分のハートはとろけてしまい、この衝動だけで無敵になった気分だった。それからずっと音源はチェックしていたし、ライブにも何度も行った。


Cody •Lee(李)は久々に現れた自分の好みに合致しすぎるロックバンドだ。自分よりメンバーは年下なのに、まるで同年代かのように感じる時がある。それほどに自分の琴線に響く音楽をやってくれている。Cody•Lee(李)の『我爱你』を初めて聴いた時も『トーキョーバレリーナ』を聞いた時に匹敵する衝撃を受けた。

 

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そんな2組が渋谷ラママという伝統のあるライブハウスで対バンを行った。こんな熱い組み合わせは滅多にないと思った自分は、テーマパークと変わらない渋谷で行列をよけながら会場に向かった。

 

Cody•Lee(李)


先に登場したのはCody•Lee(李)。サポートメンバーを含む6人が小さなステージにギュウギュウになりながら演奏した1曲目は『君の彼氏になりたい』。サポートの東風あんなや中野郁哉が手拍子を煽り、観客がそれに応える。ゆったりと始まり多幸感に満ちた空気を作り出す。


とはいえCody•Lee(李)はクールなロックを鳴らすバンドでもある。ドラムの原汰輝によるカウントから雪崩れ込むように『涙を隠して(Boys Don't Cry)』が続くと観客は拳を上げたりと熱い反応を示す。後半に高橋響が「渋谷!」と叫び、それを合図にしたかのように力毅が前方に出てきてギターソロを掻き鳴らす姿には痺れた。


その勢いを保ったまま『ほんの気持ちですが!』をカラフルな照明に包まれながら演奏する。観客も先ほどと同様に腕を上げたり身体を揺らしたりと楽しそうだ。序盤は世代が違うバンドとの対バンだからかフロアの空気は普段のライブとは少し違う雰囲気に感じたが、そんな空気を塗り替えてしっかり普段と変わりないCody•Lee(李)の空気にしてしまった。


さらに勢いを増した演奏で『WKWK』を続ける。B:メロで高橋以外のメンバーがバトンを渡すように歌い継ぐ編曲が印象的だ。高橋はまたもや最後のサビ前に「渋谷!」と叫び観客を煽る。影響を受けた偉大な先輩との対バンだからか、いつも以上に衝動的なパフォーマンスで気合いが入っているよつに思う。


代表曲『我爱你』でもいつも以上に衝動的な演奏を鳴らしていた。中盤に客席下手側の天井にあるミラーボールが美しく回っていた景色も印象的だ。高橋は「ミラーボールあったんだあ。東京の街のネオンライトみたい」とでも思ったのか回るミラーボールを眺めていた。


本当に今日は楽しみにしていました。スパルタは凄い好きなバンドなんです。スパルタがいたから今のCody・Lee(李)があるのだと思うほどにです。


Cody・Lee(李)はスパルタを知っている人が聴いたらパクリかなって思うかもしれない曲が多いので、今日はそれがバレる日かもしれません(笑)


この後はスパルタみたいな曲をどんどんやっていきます。感謝の気持ちをライブで返せたらなと思います。

 

高橋がスパルタローカルズへのリスペクトを語ってから演奏されたのは『さよuなら』。美しいピアノの旋律から始まったミドルテンポの楽曲だが、演奏や全体のサウンドは個性的だ。それは確かにスパルタローカルズのミドルテンポのロックバラードに通ずるものがあるかもしれない。最後のサビ前に「届け!」と高橋が叫んでいた。きっとスパルタローカルズのファンにも彼らの音楽はしっかり届いていたと思う。


ニシマケイよベースから始まった『悶々』からもスパルタローカルズへのリスペクトを感じた。たしかにスパルタローカルズ『ピース』などのダンスナンバーからの影響を感じる曲だ。


続く『DANCE扁桃体』のギターリフやベースラインからも、スパルタローカルズの影響を感じる。だが決してパクリではなく、その影響をしっかりと昇華してCody•Lee(李)の音楽にしている。それはリスペクトがあるからこそできる音楽だ。


高橋が「ありがとうございました!」と挨拶して最後に演奏されたのは『イエロー』。自分がこれまで観たライブではサビを高橋が弾き語ってからバンドの演奏が重なるアレンジが多かったが、今回は音源通りのイントロから曲が始まった。


とはいえ音源の再現ではない。ライブだからこその熱量もあったし、観客はそれに応えるように盛り上がっていた。アウトロは音源よりも長尺になっていて、その演奏は音源よりも激しくて、対バンの短い時間でも全てを出し切るかのようなパフォーマンスを見せいた。


高橋はVOXのアンプにギターを押し付けてノイズを出したりと、サウンドも荒々しく轟音だ。そんな気迫ある演奏に鳥肌が立つ。高橋が激しく動いていたから、ギターの裏側に書かれたスパルタローカルズの盟友であるフジファブリックのサインが見えたことも印象的だった。


先輩かつ影響を受けたバンドへのリスペクトを持ったステージでありつつも、謙遜することなくCody•Lee(李)の魅力を出し切ってぶつけるような名演だった。


◾️セットリスト

1.君の彼氏になりたい

2.涙を隠して(Boys Don't Cry)

3.ほんの気持ちですが!

4.WKWK

5.我爱你

6.さよuなら

7.悶々

8.DANCE扁桃体

9.イエロー

 

スパルタローカルズ


演奏前。メンバー自らが機材をセッティングしていたスパルタローカルズ。その姿からも貫禄が滲み出るほどに、彼らはベテランの粋に達しているのかもしれない。


準備を終えて安部コウセイからメンバーに握手を求め、全員と握手をし終え「はい!スパルタローカルズです。よろしくお願いします」とリラックスした様子のゆるい挨拶をしてライブがスタート。


1曲目は『ウララ』。ゆったりとしたリズムながらも迫力がある演奏と、コウセイの丁寧な歌唱が良い。観客も自然と温かな手拍子を鳴らす。春に行われたライブで春にピッタリな曲から始まったことも嬉しい。


温かな雰囲気で始まったが、彼らはロックバンド。続く『夢ステーション』ではキレのある演奏でフロアを熱気で包む。だが佇まいは貫禄があって、勢いだけでなく凄みで圧倒させている感じもある。


そこから雪崩込むように『黄金WAVE』が続くと観客は激しく身体を揺らし、ダンスホールかのようにフロアは激しくなった。バンドの演奏やパフォーマンスもそれに比例して激しさが増している。それは若手時代と変わりない。貫禄と勢いの両方を手に入れたスパルタローカルズは、実は今が最強なのかもしれない。


「Cody•Lee(李)の祖先、スパルタローカルズです」と高橋響の「スパルタがいたから今のCody・Lee(李)がある」というMCへのアンサーのようなことを話すコウセイ。

 

楽屋で高橋くんとニシマくんと話をしました。特に2人がスパルタローカルズを好きでいてくれると聞いていたんで。


若いバンドに会うと、たまに「大好きです!」と言ってもらえるんです。でも大体がみんなフジファブリックの方が好きなんだよ!ついでにスパルタローカルズも好きって言ってるだけなんだよ!


でも2人に「他には誰が好き?」って聴いたら「アナログフィッシュ」って言っていました。彼らはガチ勢だなと(笑)

 

今日のライブは18歳以下は無料なんでしょ?若い人たちは日本のロックの文化の一端を感じて帰ってください


高橋とニシマのガチ度に驚いた話と、今回のライブが18歳以下は無料で入れることに言及してから演奏されたのは『ギャラクシー空港』。

 

楽器のそれぞれが個性的なフレーズを奏で、それが複雑に絡み合う楽曲だ。ミドルテンポながらもロックとしか言いようのない演奏で、彼らを知らなかった若者にも「こんなロックもあるんだぜ」と感じさせるかのような演奏だった。


ここまで解散前の過去の名曲が多かったが、再結成後も名曲を作っていることを伝えるように『アンダーグラウンド』を続ける。かつてと変わりない疾走感ある演奏だ。メンバーも手拍子を煽ったりと積極的に盛り上げていく。


曲が始まった瞬間に観客から歓声があがった『GET UP!』の盛り上がりは凄まじかった。フロアは揺れているのかと思うほどにみんな踊っていたし、サビでは一緒に叫ぶように歌う。


個人的なハイライトは『THE CLUB』だ。薄暗い妖艶な照明に包まれながら怪しげなイントロから始まり、だんだんと勢いが増していく楽曲である。


観客はここまでで1番と言えるほどに激しく盛り上がっていたし、メンバーのパフォーマンスもどんどん激しくなった。コウセイの荒々しく叫ぶように歌う姿が目に焼きついた。この場だからこその熱狂が生まれていた。


それをコウセイも感じ取っていたようで、演奏後に「今の、来てるね......。来てるね......。何を話そうと思ったか忘れちゃった。来てるから......」と息を荒げながら言っていた。何が来たのかはわからないが、なんとなく言いたいことのニュアンスはわかる。


Cody•Lee(李)は同世代のバンドから孤立してそうな気がしました。音楽を聴いたり話をしたりしていたら、内包している毒を感じたんで......


だからこのバンドは10年後も変わらずに活動してるね!そういう毒を持ったバンドは長く続くから(笑)


でも、バンドは続くだろうけれど、険しい道のりになるぜ......(笑)

 

スパルタローカルズも毒を内包しているバンドなので、説得力がすごい。


Cody・Lee(李)のドラムの人の顔に傷があって、気になって聞いてみました。


昔ベースを弾いたらしく、カッコつけてベースを一回転したらネックが顔に当たって怪我して、それが消えずに今も残ってるそうです。それをきっかけにドラムに転向したんだって。


このバンドは長く続くな......(笑)

 

ドラムの原汰輝の行動も、コウセイの価値観としては毒を内包しているらしい。

 

演奏は『旧TOKYO』から再開。コウセイと伊東真一が向き合って、息を合わせるようにギターの音をハモらせてから曲が始まり、演奏力の高さを見せつける。


ライブも後半。コウセイが「オンザピースだ!」と叫びベースの安部光広を指さしたこと合図に『ピース』が始まると、観客のボルテージは一気に最高潮に。


さらにコウセイがハンドマイクになり『リーキードライブ』を畳み掛ける。演奏も歌声もパフォーマンスも、ベテランとは思えない衝動に満ち溢れている。


ラストは『ばかやろう』。こちもハンドマイクで観客を煽りながらのパフォーマンスだった。サビでフロアにマイクが向けられると、観客はバカでかい声で「ばかやろう!」と叫ぶ。演奏をかき消すほどの観客の叫び声が最高だ。

 

ベテランの貫禄を見せつつも若手に引けを取らない熱量の演奏をしたスパルタローカルズ。初めて観たと思われるCody•Lee(李)目当ての若い観客も多かったが、そんな観客も魅了し熱狂させていた。

 

アンコールで再登場すると物販の紹介をすふメンバー。ロンTが6000円だが良い素材を使っていることをアピールしていた。原価が3000円だから本当は9000円で売りたいのに大サービスしているとのことだった。まさかの裏事情を話していた。

 

最後に演奏されたのはさ『POGO』。ドラムのカウントから息の合った演奏が始まり、ゆったりとしたリズムで心地よさそうに音を鳴らす。観客はその音を聴きながら心地よさそうに身体を揺らす。この日のライブの最後に相応しい余韻を残すような演奏だ。

 

バンドのメンバーもファンの層も世代は全く違う。自分のようにどちらのバンドも好きで、両方が目当てだった観客の方が少なかったかもしれない。しかし世代を超えての親和性もあったし、だからこその新鮮さや刺激もあった。とにかく素晴らしい対バンだった。

 

Cody・Lee (李)のファンはきっとスパルタローカルズのカッコよさを知ることができたはずだし、スパルタローカルズのファンはCody・Lee (李)の魅力に惹かれたはずだ。

 

■セットリスト

1.ウララ

2.夢ステーション

3.黄金WAVE

4.ギャラクシー空港

5.アンダーグラウンド

6.GET UP!

7.THE CLUB

8.旧TOKYO

9.ピース

10.Leaky drive

11.ばかやろう

 

アンコール
12.POGO