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【ライブレポ・セットリスト】Cody・Lee(李) Live at 日比谷野音 2025年5月25日(日)

いつも通りに『NOT WAR,MORE SEIKATSU』をSEにメンバーが登場した時の客席から響いた拍手の音が、とても優しくて温かかった。野音という特別な場所だからか、いつも以上に温かいと思った。この心地よい空気を始まる前から感じるロックバンドのライブは、他にフジファブリックぐらいしかないと思っいたのに。

 

立見席も含めて全席が完売したCody・Lee(李)の日比谷野外音楽堂でのライブは、彼らが尊敬するバンドのライブと、同じような雰囲気の中で始まった。

 

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1曲目の『君の彼氏になりたい』は、そんな空気の中で演奏されるに相応しい楽曲だ。ドラムの原汰輝がドラムスティックで手拍子を煽り、サポートコーラスの東風あんなも笑顔で一緒に手拍子を煽る。観客の手拍子も当然に温かくて、メンバーの演奏とボーカルの高橋響の歌声が優しくて心に沁みる。野外の心地よい風との相性も抜群だ。

 

かと思えば涼し気な外の気温とは真逆な熱い演奏が続く。高橋とギターの力毅が前方の台に乗ってからイントロが奏でられた『W.A.N』では疾走感ある演奏によって、観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

観客が手拍子を鳴らして踊っていた『ほんの気持ちですが!』の盛り上がりも上々だ。3000人以上のキャパがある会場だが、彼らの音楽は大きな規模でもしっかり届くのだと再認識した。

 

高橋の弾くギターのイントロからサポートキーボードの中野郁哉の美しい音色が重なる『I'm sweet on you(BABYILOVEYOU)』は、その迫力と壮大さから特に大きな規模の会場が似合う曲だと感じる。野外なのに音で包まれるような感覚がしたのは、それほどまでにバンドが観客を音に集中させる演奏をしているということだろう。

 

「雨じゃなくて良かったです......」という野外ならではの言葉から最初のMCへ。

 

高橋「ネットで2週間分の天気予報が見れるじゃないですか。ずっと雨が降る確率が100%で、信頼度みたいなランクもAだったから、絶対に雨が降ると思ってたんで(笑)」

ニシマ「俺が野音に来るといつも雨なんだよね」

高橋「たぶん雨予報はニサマさんのせいです」

ニシマ「でも今日はスタッフに晴れ男がたくさん集まってるんですよ。照明さんやカメラマンさんとか。みんか雨の現場に行ったことがない人たちらしくて、そのおかげで晴れました(笑)

高橋「ここから降る可能性もありますから」

ニシマ「てるてる坊主をくれたお客さん人もいたみたいで、ありがとうございます」

りき ニシマさんの雨男としてのパワーに、晴れ男のスタッフとみんなのてるてる坊主が抵抗してなんとか天気が保っている状態」

 

どうやらニシマは強靭な雨男らしい。

 

なんとか曇り空で天気が持ちこたえる中、演奏が再開。高橋がハンドマイクになり演奏されたのは『冷やしネギ蕎麦』。〈いいね!〉という歌詞を観客も一緒に叫んだりと、ひたすらに楽しい。「歌える人は歌ってくれたら助かる!」という独特な煽りから、手拍子とメンバーと観客とだけで〈あの夏のせいにして あの夏を乗りこなせ〉を大合唱した瞬間は、ライブ前半のハイライトだった。

 

安定した演奏で『おどるひかり』を煌びやかな音色で届けてから、少しだけ不穏な雲行きになった空を見て「さっきより天気が悪くなりましたね......」と高橋が再び喋り出す。

 

高橋「僕は晴れていない日が好きなんで今日は最高です。晴れの日はみんな意気揚々としていて、それが耐えられないんです。家に居ろよって思っちゃうから」

力毅「俺は晴れてる方が好き」

原「俺も晴れてるのが好き」

ニシマ「暑いのも寒いのもどっちも嫌だ」

高橋「それはそう」

 

演奏中とは違いMC中のメンバーはゆるい。そんなトークの後に演奏されたのは、重厚なサウンドの『LOVE SONG』。ギャップがすごい。だんだんと外も暗くなってきて、照明が映える時間になってきた。だからこそこの楽曲の赤い照明は会場とも楽曲ともマッチしていて最高だ。

 

続けて雪崩れ込むように演奏されたのは新曲。バンドの過去の持ち曲と比べてもBPMはトップクラスに速いようだったし、今後ライブの定番曲になりそうな疾走感あるナンバーだ。〈ときめきをなくさないように〉というサビの歌詞が暗所的だった。

 

高橋の叫びから始まった『悶々』から演奏はさらに熱気を帯びていく。力毅は背面奏法でギターを弾いたりと音だけだなくパフォーマンスでも魅了していた。

 

高橋「今日は関係者入口の場所を間違えて物販に並んでいる皆さんの前に登場してしまいました」

力毅「集合時間を間違えて早く会場に来ちゃったらスタッフさんが焦ってた」

高橋「力毅は1番来て欲しくない人だから。僕とかが早く来てもスタッフは適当にしても問題ないと思ってはだろうけど、力毅はカリスマニティがあって適当には扱えないから」

力毅「カリスマニティってなに?」

 

カリスマニティという新たな言葉が発明された。

 

高橋「始まると終わっちゃうからなあ」

ニシマ「始めるの止めとく?」

高橋「いやあ......」

ニシマ「やっといた方がいいよ」

 

シュールなやり取りの後に演奏されたのは『世田谷代田』。東風あんなアコギの音と心地よいリズムが印象的だ。そこから『東京』が続く。こちらも心地よいリズムで届けられた。

 

涼しい日の暗くなった野外と『キャスパー』は相性が抜群だ。〈だらしない夜に溶けていく〉という歌詞がシチュエーションとマッチしすぎている。青を基調とした薄暗い照明も雰囲気があって良い。

 

そこから『異星人と熱帯夜』が曲間なしで続く。夜の野外がぴったりの曲が並ぶセットリストで、この日ではなければ得られない感動がある。この2曲の流れでは、観客のステージへの集中力が凄かった。全員が演奏に吸い込まれているかのような雰囲気だった。

 

ライブも後半。ここから空気を一気に塗り替えるように、代表曲『我爱你』が続く。イントロで歓声が沸き、観客は拳をあげたり踊ったりと激しくも自由に楽しんでいた。

 

今日は今までで1番早く感じるライブかもしれない。いつもは逆に長く感じてまだ終わんないかって思うのに(笑)

 

野音は改修工事が行われるから、しばらくはライブができないかもしれないです。次に野音でやれるてしたら30代後半かもしれないので、今日が野音で観れる若いCody・Lee(李)は最後です(笑)

 

色々な意味で感慨深く感じている様子のメンバー。30代半ばの自分はメンバーのMCによって自身が若くないことを再認識して少しのショックを受ける。

 

メジャーデビュー後は色々と大変でした。会議をたくさんしていました。会議の毎日でしたね。でもこうして野音を完売できたのは会議のおかげだと思います(笑)

 

もちろんリノちゃんやサポートしてくれたメンバーやスタッフの方にも感謝しています。今までのメンバーがいたからこその今日だと思います。

 

そして今日サポートしてくれているこの2人の協力がなければ野音に立てなかったと思います。2人に大きな拍手を!

 

高橋が感謝を述べると、客席から盛大な拍手が響いた。東風と中野はお互いに顔を見合って拍手を贈りあっていた。微笑ましい。

 

今日も電車に乗って霞ヶ関で降りて来ました。野音に立つ人はタクシーで会場に来てみんなに並ばれて挨拶されたり、もっとスターな人なのかと思ってました。

 

自分は何者かになりたいという想いに支配されてました。なかなか結果に結びつかない日々もありました。サブスクの月間登録者数だったり再生数を気にしたり。

 

今日は野音の景色を見て、何者かになれた気がしました。これからも平凡な生活を歌っていきます。無理せず自分のペースでついてきてくれたら嬉しいです!

 

野音でのライブで感じた想いを高橋が語ってから演奏されたのは『イエロー』。美しい黄色い照明の中で疾走感ある演奏を鳴らす。アウトロは音源よりも長く激しい。この6人で音を鳴らすことに喜びを感じているかのような演奏だ。

 

ラストは『drizzle』。インディーズ時代の楽曲で、もっと小さなライブハウスでも演奏され続けていた曲だ。そんな楽曲が野音の規模でも小さいと感じるほどに壮大で迫力ある音で届けられる。過去最大規模のワンマンであり、これまでの成長を感じさせるワンマンでもある。そんなことを感じるラストソングだった。

 

アンコールで再登場すると、早々と観客と写真撮影をするメンバー。カメラマンは「雨を防いだ晴れ男。ミスターサンセット」と紹介された。観客からのメンバー以上に盛大な拍手と歓声を、カメラマンのミスターサンセットは浴びていた。

 

高橋「今日は早くライブが終わっちゃうなって感覚がしました」

観客「もっとやれー!!!」

高橋「そうだよな!もう1回同じセットリストでやろうよ!野音を出禁になっても関係ないからな!改修工事で使わなくなるし!」

観客「wwwwww」

 

なかなかに尖った発言をする高橋。

 

今回のライブのBlu-rayと新作EPのリリース、ツアーの開催など嬉しいお知らせを盛りだくさんに、して、メンバー同士で「良いバンドだよねぇ」と言い合い自画自賛していた。やっているメンバーがそう思えることはファンとしても嬉しい。ファンもCody•Lee(李)を心の底から良いバンドだと思っているのだから。

 

力毅「寄り添ってはくれないけれど、そこにいてくれるバンドだと思う。やってて良いバンドと思えるバンドをやれていていることが嬉しい」

ニシマ「良いバンドなのにけっこうな人数が辞めてるじゃん。もうそろそろ辞めた人数がキリンジと同じ人数になる」

高橋「他のバンドの名前を出さないで!なんならCody•Lee(李)は辞めた人の方が現メンバーの人数より多い。もうこれ以上辞めないで欲しい!これ以上は辞められたらそろそろ私の人格が疑われ始めるので......」

 

不安そうになる高橋。だがメンバーからこのような話をファンの前でできるということは、このメンバーで続けていくという強い意志があるからこそだからかもしれない。

 

アンコールの1曲目は新曲『ダンスする惑星』。カラフルな照明に照らされながら、レゲエの影響を感じる演奏をする。バンドにとって新境地的な楽曲だった。

 

もうひとつ発表があります。花巻市文化会館でのライブが決まりました。今日は家族が来てるけれど家族にも黙っていました。今はびっくりして失神してると思う(笑)

 

花巻地来て欲しいです。花巻にお金を使って欲しいです。アクセスはカスなシティで行きづらいですが(笑)

 

本当は武道館とかでやる方がみんな嬉しいかもしれないです。花巻でやってもたいした黒字にもならないです。でもバンドの目標のためにやらせてもらいます。

 

遠いから絶対来てとは言えないです。時間もお金もかかるから無理はしないで欲しいです。でも、花巻で会えることを楽しみにしています。

 

以前から目標のひとつとして掲げていた高橋の故郷である花巻でのライブ開催を発表し「花巻の歌をうたいます」と告げてから演奏されたのは『桜町』。かなり久々にライブで演奏されたし、サポートを含むこのメンバーでの披露は初めてだと思う。

 

中野の美しいピアノの音色から始まり、壮大なバンドの演奏が響く。高橋の情熱的な歌声が胸に響く。特別な発表をした日に、特別な曲を、特別な想いを込めて披露する。演奏が素晴らしかったことはもちろん、そういった背景も含め、この日の『桜町』は名演になっていた。

 

感動的な余韻が残る中、その余韻をハッピーな空気で塗り替えるかのように、原の大きな声のカウントから『涙を隠して(Boys Don't Cry)』が続く。温かくもバンドの魅力が伝わるロックサウンドで、まるで映画のエンドロールを見ているかのような深い余韻が聴きながら心に湧き上がってくる。

 

ラストは『When I was cityboy』。いつものワンマンライブと同じように雪崩れ込むように始まり、観客はライブハウスと同じように盛り上がる。

 

その光景は今までのバンドの活動が間違っていなかったことを証明しているようにも見えたし、根っこは変わらずに進化してきたことを伝えているかのように思えた。

 

メンバーは売り切れるとは思わなかったと言っていた。だが実際はチケットは完売したし、野音規模でも通過点と感じるほどの名演だった。

 

バンドにとって過去最大規模のライブは、集大成というよりも、未来へ繋がるライブだった。

 

Cody・Lee(李) Live at 日比谷野音 2025年5月25日(日)セットリスト
1.君の彼氏になりたい

2.W.A.N

3.ほんの気持ちですが!

4.I'm sweet on you(BABYILOVEYOU)

5.冷やしネギ蕎麦

6.おどるひかり

7.LOVESONG
8.新曲
9.悶々
10.DANCE扁桃体
11.世田谷代田
12.東京
13.キャスパー
14.異星人と熱帯夜
15.我愛你
16.イエロー
17.drizzle

 

アンコール
18.ダンスする惑星※新曲
19.桜町
20.涙を隠して(Boys Don't Cry)
21.When I was cityboy