2024-08-06 【ライブレポ・セットリスト】カネコアヤノ 野音ワンマンショー 2024 at 日比谷野外大音楽堂 2024年8月3日(土) カネコアヤノ ライブのレポート この日の東京は猛暑日だった。日中に少し外へ出るだけで汗ばむし、少し歩くだけでクラクラする。夏は苦手だなと思う。 でも「夏は苦手だからこそ最高の思い出作りしよう」と思い、日比谷公園へ向かった。カネコアヤノが野音でライブをやるからだ。 少し気温が下がった夕暮れ時。客入れのBGMが止まり、バンドメンバーとカネコアヤノが順番にステージへ出てきてライブが開始。 歓声をあげて浮き足立っている観客を落ち着かせるかのようにゆったりとしたリズムのドラムが響き、ライブが始まる。その瞬間に歓声が静まり、全員がステージに集中する。 1曲目は『サマーバケーション』。〈噴水広場〉というフレーズが歌詞にあって、日比谷公園で聴くシチュエーションとマッチしている楽曲だ。歌も演奏も繊細かつ丁寧ですっと胸に入ってくるが、後半は演奏が激しくなっていく。カネコアヤノは綺麗な赤いワンピースを着ているが、そんな姿とはギャップがある骨太で力強い演奏である。 そのまま『わたしたちへ』と曲間なしで雪崩込む。この曲からはステージ後方の豆電球が暖色に点灯し、ステージを美しく彩っていた。だが演奏は激しく、アウトロではシューゲイザーのような轟音になる。そんな演奏の演出のギャップに心が惹かれる。 今回は曲間を詰めて矢継ぎ早に演奏を続けることが多かった。『栄えた街の』もそうだ。ベースの跳ねるようなリズムから始まりポップな印象を与える演奏で、先程までの2曲とは違うタイプの楽曲ではあるものの、曲間なしで続くことでライブの流れが綺麗に変化していく。それによってライブの世界観に没頭させられてしまう。最後のフレーズをロングトーンで歌う姿には痺れた。 ギターリフから始まった『明け方』や、ドラムの長尺のソロからギターリフが鳴り始まった『ごあいさつ』も、演奏やパフォーマンスに派手さはないものの、しっかりと楽曲やライブの雰囲気に浸らせるものではある。 曲間はドラムやベースのソロプレイで詰められることが多かった。その間に他のメンバーが準備を整えて演奏に入る感じだ。『エメラルド』も音源にはない長尺のベースソロから始まり、カネコアヤノがメンバーと目を合わせ、彼女が頷いたタイミングでバンドの演奏が重なった。先ほども言った通りに派手さはないライブだが、演奏の工夫やテクニックで観客を感動させる、純度が高い音楽ライブになっている。 穏やかな演奏からアウトロでジャムセッションになった『気分』からの『タオルケットは穏やかな』の流れは、前半のハイライトだろう。 ジャムセッションから唐突ではありつつも違和感はない演奏で、メドレーのように 『気分』から『タオルケットは穏やかな』へと移行する斬新なアレンジを披露したからだ。ライブは曲の繋がりや流れによって、音源とは違う魅力を伝えることが多いが、今回のこの流れはまさにライブでしか味わえない衝撃と感動だった。 ここからカネコアヤノのさらにディープな世界へと引き込むような演奏が続く。赤や青の薄暗く妖艶な照明の光でステージが包まれる中、スカのリズムを奏でるバンドメンバー。カネコアヤノの楽曲としては珍しいアレンジだ。 そんなアレンジで始まったのは『 ラッキー』。リリースされたばかりの新曲なのに、早くも大胆なライブアレンジがなされていた。後半には演奏も照明も明るくなる。そんな展開もグッとくる。ラストは後ろから暖色の照明の光が眩しいほどにメンバーを照していた。神々しさを感じる光だ。 そんな神々しい照明が点いたまま『こんな日に限って』が続く。エレキギターでの弾き語りから始まる曲だが、そんな光に照らされながら弾き語りをするカネコアヤノの姿は壮麗すぎる。 この楽曲もアウトロは長尺のジャムセッションとなる。サイケデリックロックかと思う斬新なアレンジだった。今回のライブはいつも以上に大胆なライブアレンジがされている曲が多い。 そんなセッションからベースの疾走感ある演奏と荒々しいギターリフが続き『カーステレオから』が始まる。音源よりも速いBPMで、ロックンロールと言いたくなるような気持ちの良い演奏だ。 音源でもアウトロに長尺のギターソロがあるが、ライブでもそれは健在。むしろより激しく、さらに長尺になっている。 林宏敏が前方に出てきてギターをかき鳴らし、他のメンバーが小さくまとまり林の自由な演奏を支えるように安定した演奏をしている。 他のメンバーの演奏がだんだんと小さくなるものの、ギターソロだけは変わらない音量でかき鳴らし、その後再び演奏全体の音量が上がり激しいセッションになるアレンジはカッコよすぎて痺れた。演奏の激しさに負けないほどに激しく照明が点滅し続ける演出もカッコいい。 演奏後に野次に近いほどに会場のあちこちから「最高!」「すげえ!」などなどの、大声での賞賛が聞こえてきた。それほどに凄まじかった。 そんな観客の声を聞いて何度か「わかったから」と言っているかのように頷くカネコアヤノ。そして観客の興奮を落ち着かせるような繊細なタッチでギターを爪弾き『 ゆくえ』を演奏する。騒いでいた観客は再び静まり返り、薄暗い青い照明のステージに集中していた。 『月明かり』も同じように繊細な演奏ではあったものの、アウトロでジャムセッションになり、演奏は熱を帯びていく。やはり今回はバンドの演奏が際立つアレンジが多い。カネコアヤノよりもバンドメンバーが主役に感じるほどに。 『やさしい生活』はビートが強いサウンドになり、ギターはキラキラした音色でアルペジオを弾くアレンジになっていた。歌い始めるまで何の曲かわからないほどに、大胆なアレンジだ。 やはりアウトロは長い。キラキラしたサウンドの演奏が延々と続く。その音色の心地よさに観客が酔いしれていたが、サポートベースの飯塚拓野がキラキラした音をかき消すように歪んだ音のベースリフを荒々しく弾き会場の空気を変える。 そのまま流れる始まったのは『腕の中でしか眠れない猫のように』。音源とは全く違うオルタナティブなロックサウンドで、音源とは違う印象を与えるアレンジになっている。 続いて演奏されたのは『さびしくない』。リリースされたばかりの新曲だが、音源をさらに進化させたような重厚なサウンドになっていて、音源と印象が全く違う。歌唱は音源以上にエモーショナルになっているし、やは。アウトロではバンドの凄みを感じる長尺のジャムセッションが行われた。 ライブも終盤。カネコアヤノが荒々しくギターをかき鳴らしてから始まったのは『恋しい日々』。先日行われたライブハウスツアーでも演奏されたらしいが、自分はチケットが取れずにいけなかったので、かなり久々に聴く。かつてのライブ定番曲で、必ず盛り上がる鉄板曲だ。 声が掠れるぐらいに叫ぶように歌うカネコアヤノの姿はまるでパンクロッカーのようだったし、バンドの演奏も衝動的で音源よりもBPMがずっと速くパンクバンドのようだ。観客も騒ぐように踊り歌っている。久々に〈冷たいレモンと炭酸のやつ〉というフレーズを観客が歌う景色を観た時、胸がじんわりと熱くなった。 ラストは『アーケード』。こちらもカネコアヤノは叫ぶように歌い、バンドは衝動的に演奏する。観客もそれに応えるように騒いで楽しんでいる。最後の〈上手にターンもできないや〉というフレーズを投げ捨てるように歌い曲が終わり、大歓声を浴びながらカネコアヤノが笑顔を見せてライブが終わった。 メンバー紹介をしてそのままステージを後にするかと思えば、カネコアヤノが「わたしからお知らせがあるんですけど」と照れくさそうに話す。 観客が拍手を止めてじっとステージに集中したタイミングで「このメンバーでバンドになりました!」と発表された。驚きに満ちた歓声と拍手が響く会場。詳しい詳細を話さずにそのまま去ってしまったので、頭の中にハテナが浮かんだままの観客は多かったと思う。 本日はありがとうございました! グッズも可愛いんで買ってください。スタッフとメンバー4人に改めて拍手を!そして楽しんでくれたお客さん、自分自身にも拍手を! 先程カネコさんから発表された通り、この4人でバンドになりました!これからもよろしくお願いします! 終演を告げるアナウンスが流れる会場。帰宅を促す通常のアナウンスではなく、愛を感じる言葉が並んでいたのは、今回はマネージャーがアナウンスをしていたからだろうか。挨拶と報告以外はしなかったカネコアヤノのMCよりも、マネージャーのアナウンスの方が言葉数が多かった。 終演後、公式サイトにはカネコアヤノと今のサポートメンバーとでkanekoayanoという名義のバンドを組んだことが発表されてたいた。マリリン・マンソンやボン・ジョビみたいなものということだろうか。 そして公式SNSによると、野音のライブがkanekoayanoとしての最初のライブとして扱うらしい。 今回のライブは今まで以上にバンドメンバーが目立つパフォーマンスや演奏が多かったし、シンガーとサポートバンドの関係性とは思えない空気感を今まで以上に感じた。正式にバンドとなることを意識してのライブ構成だったのか、意識せずともバンドのようなライブになってしまったのかはわからないが、バンド結成は必然だったのだろう。 kanekoayanoの初ライブは、憎らしい暑い夏も恋しく思えるほどに素晴らしいものだった。 ■カネコアヤノ 野音ワンマンショー 2024 at 日比谷野外大音楽堂 2024年8月3日(土) セットリスト 1.サマーバケーション 2.わたしたちへ 3.栄えた街の 4.明け方 5.ごあいさつ 6.さよーならあなた 7.エメラルド 8.気分 9.タオルケットは穏やかな 10.ラッキー 11.こんな日に限って 12.カーステレオから 13.ゆくえ 14.月明かり 15.やさしい生活 16.腕の中でしか眠れない猫のように 17.さびしくない 18.恋しい日々 19.アーケード