オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

【ライブレポ・セットリスト】Cody・Lee(李) Major 2nd Album Release TOUR『I want to be a flower』 at 東京・EX THEATER ROPPONGI 2024年2024年11月17日(日)

 Cody・Lee(李)のライブへ行く都度に、開演前のBGMのセンスが素晴らしいと思う。2ndアルバム『最後の初恋』のリリースツアー『I want to be a flower』の千秋楽であるEX THEATER ROPPONGI公演のBGMも名曲が連発していた。それでいて自分の好みに合致する曲が多い。

 

メンバーの好きな音楽と自分が好きな音楽が合致するからこそ、自分は Cody・Lee(李)の音楽にも惹かれるのかもしれない。

 

f:id:houroukamome121:20241127194914j:image

 

BGMとして流れたフジファブリック『Water Lily Flower』が終わったタイミングでフロアの照明が落とされ、SEとして『NOT WAR, MORE SEIKATSU』が流れメンバーが登場し「 We are Cody・Lee(李) from sakuramachi records!よろしくお願いします!」という高橋響の挨拶を合図にライブがスタート。

 

原汰輝のカウントから始まった1曲目は『涙を隠して(Boys Don't Cry)』。ツアーファイナルだけあって安定した演奏でしっかりと聴かせてくれるが、間奏で高橋が「東京!」と叫んだりギターソロの前に高橋が「ギター!」と叫んでから力毅がギターソロを掻き鳴らしたりと、ライブだからこその熱さもしっかりとある。観客も自然と手拍子を鳴らしたりと、最初から盛り上がりも上々だ。

 

そこから真紅の照明に包まれながから『LOVE SONG』を重厚な演奏で続ける。盛り上げるだけでなく、Cody・Lee(李)の深い魅力を伝え、このバンドにしか創れない空気にしていく。

 

このバンドは様々な方向性の楽曲があることも特徴だ。『ほんの気持ちですが!』では明るくボップなサウンドで明るい雰囲気を創り出した。アウトロでは演奏がフェードアウトしていき段々と大きくなるという器用な演奏をして、そこからメドレーのように『W.A.N.』を続ける。

 

今回のライブはサポートキーボードとして中野郁哉が参加しているが、この2曲ではキーボードの音が楽曲の要と感じるほどに印象的で、彼の存在感を強く感じる演奏だった。サポートといえどもバンドにとってメンバーと同様に大切な存在になっていることを感じる。

 

「今日はツアーファイナルなので頑張ろうと思います!一緒に頑張るメンバーを紹介させてください!」と独特な台詞からメンバーを紹介する高橋。この挨拶によって、バンドはさらに頑張った感じの演奏を繰り広げた。

 

80年代ポップスの影響を感じるサウンドの『 ストロベリーエンジェルDon'tSayGoodbye~』では、イントロやBメロでは観客が自然と手拍子を鳴らす。この楽曲からはステージ背面に最新アルバム『最後の初恋』のジャケットに書かれたイラストの大きな壁画が降りてきた。ライブハウス公演だが、演出も凝っている。

 

『真夏のジャイガンティック』の演出もこっていた。よりダンサンブルなサウンドにアレンジされた音源が流れる中、フロア天井のミラーボールがカラフルに輝き、レーザー照明がステージからフロアへと真っ直ぐと伸びていく。まるでクラブのような雰囲気だ。

 

そこからバンドの生演奏へと変化する展開も良い。バンドのライブといえば生音が基本だが、このような音源から生演奏へと移ろう演出によりライブだからこその感動を創り出すことにグッとくる。

 

キーボードの音が映える『愛してますっ!』では、サポートコーラス&ギターの東風あんなが前方まで出てきてタンバリンを叩き観客を煽っていた。その姿は正規メンバーと同じぐらいに重要な役割を担ったパフォーマンスだ。

 

さらには元の位置に戻ろうとしたのに力毅に背中を押されて再び前に出されたりタンバリンを奪われたりと、東風は散々な目にあっていた。だが表情は笑顔で楽しそうで、これはサポートも含めたメンバーの関係性が良子だからこそなのだと思う。そういえば以前観た時よりもサポートメンバーの表情は穏やかで、バンドに馴染んでいるように見えた。

 

美しい旋律の演奏が印象的な『東京』では東風のコーラスが特に魅力的に聴こえる。彼女の歌声が楽曲に彩りを加えているのだ。尾崎リノがバンドから卒業した穴を埋めたというよりも、それとは違う魅力を加えた上で楽曲の本来の魅力を崩さないコーラスをしているように感じた。

 

高橋響「このツアーで思い出深いことはあったりする?」

他のメンバー「・・・・・・」

高橋響「ないの・・・・・・?」

 

最高の演奏をしてライブは盛り上がっていたのに、MCはなぜか変な空気になっていた。その理由としては「響のメンタルが心配でその印象がツアー中は印象が強くて」ということらしい。思い出深いことがそのような内容では、なかなか話しづらいので仕方がない。

 

だが高橋は元気になったらしく「僕も記憶がすっぽりと抜け落ちていて、福岡あたりから自我を取り戻したと言うか。ライブは楽しくはやらせてもらっていたんですけども」と話していた。ちなみに福岡公演はツアーセミファイナルなので、つい最近の話しである。

 

「東京はホームタウンですから、盛り上がったり盛り上がらなかったり、頑張ったり頑張らなかったりしましょう!」という独特な煽りから演奏が再開。

 

薄暗く妖艶な照明にステージが包まれる中、『烏托邦』が始まる。緊張で張り詰めたようなヒリヒリした空気の演奏に続々するが、高橋のギターの音が出ずにやり直しになってしまった。高橋の学生時代の友人だという照明担当のスタッフにメンバーが話しかけると、照明の光の点滅で受け答えをしてメンバーとコミュニケーションを取っていた。ドープな曲を中断したと言うのに、ほのぼのとした空気になってしまった。

 

しかし2回目の『烏托邦』でも当然のように楽曲の世界に引き込むような空気を作ってしまうのだから流石だ。プログレッシブロックのような複雑な演奏に鳥肌が立つ。このような楽曲はTikTokで流行ることはないかもしれないが、このような楽曲を求める音楽ファンは確実にいる。だからこそ自分はこの楽曲をCody・Lee (李)に演奏し続けてほしい。

 

ライブもそろそろ後半戦。ここからさらに熱い演奏が続く。ニシマケイのベースソロから『悶々』が始まると、フロアは自由に踊ったり腕を上げたりと盛り上がっていく。高橋も「東京!」と叫び煽る。京都で「名古屋!」と叫んでしまったらしいが、今回は地名を間違えていなかった。

 

『DANCE扁桃体』ではミラーボールがカラフルに輝きレーザー照明も飛び交ったりと、演出でも盛り上げていく。ダンサンブルながらもロックとしか言いようのない演奏は、やはりフジファブリックの影響が大きいのだろう。

 

リノちゃんが卒寮してから離れてしまった人もいるかと思います。Spotifyの月間リスナー数は減ってしまったり、前まで完売していた会場が余っていたりするので。

 

タイアップもたくさん貰ったりと充実した活動ができていると思っていたんですけど、それが必ずしも結果に結びつくとは限らないと実感して落ち込んでしまったんですが、今は元にもどって元気になりました。ツアー前半は中止にできないかとマネージャーに相談しようかと考えるほどに落ち込んでいたんですけど、なんとかツアーをやり切ることができました。

 

でも躁鬱の人は躁の時に治ったと思いがちらしいので、次のうつが来るまでは元気だと思います。

 

少し心配な言葉を交えつつも元気になったことを伝える高橋。最近のSNSの発言を見ていると心配になることも多かったが、しばらくは安心して良さそうだ。

 

そんな話をしている最中に「お笑い芸人は2027年に法律で禁止されるらしいんで、バンドも同じかもしれません。それまでに僕らもベンチャー企業に就職しないと」とM-1グランプリ2024の第3回戦の令和ロマンのネタを引用して冗談をいう力毅。お笑いファンしかわからないマニアックなトークである。

 

 

「大切な曲をやります」と高橋が告げてから『1096』が演奏された。高橋は丁寧に優しく歌い、バンドもそれに合わせるように繊細な演奏をしている。だが後半はだんだんと感情的で壮大な歌と演奏になっていき、バンドがこの楽曲に込めた想いを音楽によってしっかりと伝えるものになっていた。

 

そんな感動的な空気に包まれる中。心地よいリズムと演奏で『世田谷代田』を続け、そこからサビを高橋が弾き語りしてからバンドの演奏が重なるアレンジになった『イエロー』を黄色い照明の中で演奏し、深い余韻を残していく。

 

「今回のツアーは今までよりも多くの海珠尾を回った」と話し「サポートも含めての6人でCody・Lee (李)になれた気がする」と語る高橋。尾崎リノが抜けた後は4人で活動しようとしていたらしく「4人で『異星人と熱帯夜』をスタジオで演奏した時の絶望感は凄かったよね。裏声でコーラスしてもらったりして、終わったと思った(笑)」と感慨深そうに話していた。サポートメンバーが助けてくれたからこそ、今もバンドを続けることができているのかもしれない。

 

みなさんの1番聴く音楽になりたいわけではないんです。昔のお気に入りのTシャツがタンスの奥から出てくることがあるでしょ?そんな感じで良いと思っています。みなさんの生活が1番大切なので。

 

今後も自分のことを1番に考えて過ごしてもらえたらと思います。だから生活を続けて生き続けて、またライブで会いましょう。

 

高橋がまっすぐな目で観客に語るように話してから『生活』が演奏された。まるでバンドの想いを物語にして伝えるかのような歌詞だと、改めて思う。繊細なサウンドながらも演奏はロックで壮大だ。

 

〈平凡な日々を残さずに愛して〉という歌詞の最後のフレーズが、ライブだとより胸に響く。自分にとってはライブへ行くことは特別でありながらも平凡な日々に含まれ日常でもある。それを実感させられて心が温かくなった。

 

アンコールでは定番となっている原汰輝が中心になって行う物販紹介が行われた。今回はスケッチブックに書かれた本人作画の紙芝居を織り交ぜながら紹介するという、凝った演出まで使って紹介していた。ツアーの都度に物販紹介への熱量が上がっているようだ。ツアーファイナルということでスケッチブックを破り紙芝居を観客に配っていたが「前方以外は冷めてる」ことを理由に途中で止めた。

 

「ツアータイトルに意味はないんです。ただ『 下高井戸に春が降る』の歌詞から取ったタイトルなんです。今からその曲をやります」と高橋が語り、アンコール1曲目に『 下高井戸に春が降る』が演奏された。優しく温かなサウンドが心地よい。

 

ここで高橋がかしこまった様子で「大事な報告があります」と言って、自身の結婚報告を行った。以前から長く付き合っている恋人がいることはファンに知られていたし、時折SNSで惚気け話を投稿していた。そのためか観客は驚きというよりも「ようやくか」と言った感じの納得に近い祝福の歓声をあげ、温かい拍手を鳴らしていた。

 

高校2年の時に出会って付き合って、自分は人生の半分ぐらいは鬱なんですけど、その時も支えてもらっていました。この人しかいないとずっと思ってました。

 

結婚したからと自分の何かが変わるけではねいけど、もっといい曲を書かないととか、もっとお客さんに来てもらわないととか、そういったことをより思うようになったので、気持ち新たに頑張りたいと思います

 

改めて想いを語り万雷の拍手を浴びる高橋。そして「新曲を作りました」と言ってから、ライブ当日は未発表だった新曲が披露された。

 

タイトルは『君の彼氏になりたい』。青臭いと感じるほどに真っ直ぐなタイトルで、曲調や歌詞も青くて真っ直ぐだ。〈永遠〉〈セブンティーアイス〉など銀杏BOYZの影響を感じるワードも使われていることも印象的である。

 

高橋が「ギターソロ!」と言ってからの力毅によるギターソロはメロディアスで美しいサウンドだった。まるで音楽によって高橋の結婚を祝っているかのように。

 

力毅「響とは大学1年の時に何かの側近として居る姿をみて出会って......

高橋「何かの側近? 」

観客「??????」

 力毅「仲良くはないけれどなんとなく集まっているグループに一緒にいたメンバーだったってこと」

 

独特な表現で高橋との出会いを語る力毅

 

力毅「前やっていたバンドでワーミーが好きで使いまくってたらクビにされた。お前にはついていけないってベースのやつに言われて......。そんな時にバンドに誘ってくれたのが響でした」

高橋響「クビになって可哀想だなって思って」

力毅「同情で誘ってくれたんだ......」

高橋響「力毅が前に居たバンドはきっちりとした演奏をしたかったらしいけど、 力毅はライブで毎回違う演奏をていたらしくて。 でも音源と違うのがライブだから。勿体ない理由でクビになってるやつがいるって思った」

 

力毅が加入した当初の話を、感慨深そうに話す高橋と力毅。

 

僕は頑張っている人を応援したいと思っている。ライブに行く時にオシャレな服を着たり、爪を綺麗にネイルしてきたりする人とか。

 

けれど響は真逆で響みたいな人の味方をしている。決して響が頑張っていないとか響が味方している人が頑張ってないわけでもないけれど、僕とは違う人を応援していると思う。

 

それと僕が1番のCody・Lee(李)のふぁんなので。だから良いギターをこのバンドでは絶対に弾くし。

 

.....僕も結婚した方がいいですか?

 

あまりにもエモーショナルになってしまったからか、突如結婚しようかと考えてしまう力毅。ドラムの原汰輝が空気を和ませようと冗談を言おうとしても、高橋が「本当にエモい空気の時はそういうのは止めた方がいい」と言ってしまうほどにエモーショナルになっていた。

 

サポートを含めたメンバーと出会えたことが、僕の宝物です。死ぬまで一緒にやっていくと思っているので、みなさんも長生きしましょう。

 

長くやっていくと良くない曲が出るかもしれません。炎上するかもしれません。はっきり言って炎上は時間の問題です(笑)

 

みんなの生活の中にいさせてもらえれば十分です。出会いを大切にして、また生きて会いたいです。頑張りすぎずに、またライブで会いましょう!

 

高橋が活動に対する想いが詰まった最後の挨拶をしてから演奏されたのは、バンドの飛躍の切っ掛けの1つでもある『我愛你』。定番曲ながらも、やはりライブで聴くと胸が昂る。観客の盛り上がりも最高だ。アウトロで高橋と力毅が2人並んで背面奏法をしている姿にグッときた。

 

そこからなだれ込むように『When I was cityboy』が続く。これが最後の曲だ。演奏は荒々しくなりボーカルは叫ぶような歌唱になり、全てを出し切るかのような衝動的な音になっている。観客の全てを出し切るように、最後の最後に1番の盛り上がりになっていた。

 

2番のBメロの歌詞を〈これからも Cody・Lee(李)は家族とか友達とな大切な人のために歌っていきます!We are  Cody・Lee(李)! We are  Cody・Lee(李)!〉と変更していたことも印象的だ。メンバーのプライベートなこととはいえ、結婚は生活において大きな変化である。

 

それでも音楽に向き合う姿勢やバンドの目指す方向は変わらないという宣言は、ファンを安心させるものでもあるしファンへの愛が詰まった言葉にも思う。

 

メンバーの生活は続くし変化もする。ファンそれぞれの生活も続くし変化もする。だがCody・Lee(李)が生活の中に存在することは、メンバーにとってもファンにとっても、きっとこれからも変わらない。

 

平凡な日々を残さずに愛して、生きてまたライブへ行こうと思う。

 

f:id:houroukamome121:20241202180000j:image

 

■Cody・Lee(李)Major 2nd Album Release TOUR『I want to be a flower』 at 東京・EX THEATER ROPPONGI 2024年2024年11月17日(日) セットリスト

1.涙を隠して(Boys Don't Cry)
2.LOVE SONG
3.ほんの気持ちですが!
4.W.A.N.
5.ストロベリーエンジェルDon'tSayGoodbye~
6.真夏のジャイガンティック
7.愛してますっ!
8.東京
9.烏托邦
10.悶々
11.DANCE扁桃体 
12.1096
13.世田谷代田
14.イエロー
15.生活

 

アンコール

16.下高井戸に春が降る
17.君の彼氏になりたい

18.我愛你
19.When I was cityboy