2024-03-23 【ライブレポ・セットリスト】Cody・Lee(李) presents 「ようこそ!すももハイツへ 3LDK -2024-(201) ※対バン:ダウ90000・DAOKO at 東京キネマ倶楽部 2024年3月16日(土) Cody・Lee (李) DAOKO ライブのレポート Cody・Lee(李)主催の『ようこそ!すももハイツへ』へ初めて参加した。過去に2回開催されていたが、その時は予定とチケットの都合がつかなかったのだ。だからようやく参加出来た3回目となる今回は、自分にとって待望の公演である。 対バン相手は単独公演が人気すぎて全然チケットが取れないダウ90000と、個人的には約7年振りに観るDAOKO。 ファン層が被ってなさそうな意外な組み合わせではあるが、これが意外にも相性抜群の組合せなのだと、ライブを観て知ることとなった。 ダウ90000 DAOKO Cody・Lee(李) ダウ90000 自分がここ最近、特に生で観たいと思っていた芸人がダウ90000だ。 「お笑いではなく演劇だ」「いや演劇じゃない!お笑いだ!」という論争をされることが多々あるグループではあるが、そんな論争を生むことから個性や魅力が生まれていると思う。自分としては「お笑いを演劇として演じている」「演劇がテーマのお笑いをやっている」という認識である。 今回のライブもそうだ。蓮見翔と女性メンバーだけでの漫才からライブが始まったが、それも少し演劇チックである。吉原怜那の彼氏が客席に居るという設定でぶりっ子をしているというネタだったが、それも演劇のよつに演技で魅せ、演劇のように展開で笑わせる内容だった。それは他のお笑い芸人の漫才の漫才とは、少しだけタイプが違う。 Cody・Lee(李)主催ライブということもあって『我爱你』のサビの歌詞に蓮見が「自分の最寄り駅や使ってい路線の駅がが綺麗にメロディにハマる」と言って、西武新宿線の駅をメロディに当てはめ歌ったのも、この日の観客だから伝わるボケで面白い。蓮見が日常的に使う路線が観客にバレるというリスクをおかしてまで笑わせてくれた。 フルメンバーでコントも行われた。去年行われたダウ900000の企画ライブ『あの子の自転車vol.10』で初披露されたネタだ。人間の属性や性格によって恋愛の相性がそれぞれあることについて、ユーモア交えてじゃんけんに例えることで笑いに持っていく内容である。 特に「ギャルは吉祥寺に勝てない」という言葉は、その言葉だけでも謎の共感を生むし、コントの流れとしてもズバッとハマるキラーワードになっていた。その瞬間が笑いのピークだったのではないだろうか。 公演中に体調不良で倒れた観客がいた。コントの中盤で、観客もステージに最も集中し世界観に浸っていた場面だった。「公演を止めたら申し訳ない」と思ってしまう状況でも、勇気を出して「人が倒れました」と声をあげてスタッフを呼んだ人がいた。観客の人命を最優先して助けを呼んだ人の行動を称えたい。 そしてコントを「一度中断します。スタッフさん、あちらに向かってください」と指示を出した蓮見は、ステージに立つものとして鑑だと思う。その後は倒れた観客に気遣いの言葉を投げかけつつも、きちんと再開して更なる爆笑をとった。それも芸人としての鑑に思う。 だから倒れてしまった観客も、中断させたことに申し訳ないとは思わないで欲しい。ダウ90000は、それぐらいでダメになるようなレベルのコントをやる芸人ではないのだから。倒れてしまったお客さんも、次にライブに参加する時は元気に楽しめますように。 DAOKO DJセットでの出演となったDAOKO。鼓膜だけでなく身体までが振動で震える程の重低音をDJが鳴らし『御伽の街』からライブをスタートさせた。 正直なところ、Cody・Lee(李)とDAOKOは音楽性もファン層も全く違う。会場に居るのは殆どがCody・Lee(李)のファンなので、アウェイな空気は流れていた。だがパフォーマンスが進むにつれ、彼女の音楽が少しづつ受け入れられていく空気も同時に感じる。良い音楽ならばジャンルが違うとしてもしっかり伝わるのだ。 矢継ぎ早に曲間なしで『MAD』『spoopy』を続ける。こちらもゴリゴリのダンスミュージックだ。ステージを舞うように動き歌うDAOKOの姿にも惹かれてしまう。 「呼んでくれてありがとう!素敵な夜を過ごせたら良いなと思います!」と挨拶してから披露されたのは『ぼく』。今度はゆったりとしたリズムに尖った内容のラップを乗せ、サビではキャッチーなメロディに可愛らしい歌詞を乗せて歌う。序盤とは違うキュートな印象を与える楽曲によって、DAOKOの深い魅力をさらに伝えていく。 「ここからはチルな曲を」と言ってからパフォーマンスされたのは『groggy ghost』。ゆったりとしたリズムが心地よい楽曲だ。サビの〈なんにもやりたくなくなる〉と言う歌詞が印象的で、まさにチルな曲である。 さらに『Sorry Sorry』とチルな曲を続けるが、歌詞は〈尖ったナイフ突き立ててみる〉といつフレーズがあったりと尖っている。曲と歌詞とで真逆な表現を組み合わせギャップを生むことが、DAOKOの音楽の魅力のひとつかもしれない。 個人的に1番好きなDAOKOの曲である『ワンルームシーサイドステップ』がパフォーマンスされたことは嬉しかった。これもキャッチーなメロディとゆったりとしたリズムが魅力的な楽曲だ。特にサビは初聴くでも心をつかむほどの求心力がある。 アウェイな空気はなくなりつつあった。初見の観客もDAOKOの魅力に気づいたのだろう。『fighting pose』がパフォーマンスされる頃には、心地よさそうに身体を揺らす観客も増えていた。 めっちゃ花粉症なんです。でも今日はアドレナリンでなんとかなってきました。花粉症の人、一緒に頑張って耐えましょう! Cody・Lee(李)のLeeは桃って意味なんですね。すももハイツってどんな意味かと思ったら、バンド名が関係していたんですね。良いタイトルですね。 今日は初めて会う人が多いと思いますが、皆さんと友達になりたいと思ってライブをやっています。花粉症が辛いので、夏をさきどっちゃいましょう このMCで次の曲を察した観客から感嘆に近い声が漏れる。次の曲は誰もが知る名曲『打上花火』。 さっきまでステージを縦横無尽に動き舞うように当たっていたが、この曲は青い照明に包まれながら、歌に集中してパフォーマンスしていた。後半には観客が腕を振ったりと、ステージとフロアとで心の距離が確実に近づいていることがわかる空気になっていた。 ラストソングは『水星』。tofubeatsの名曲をDAOKOバージョンの歌詞にアレンジされたカバーだ。サビの歌詞に合わせて天井のミラーボールも回り、幻想的な空間を作り出す。そんな空間で心地よさそうに身体を揺らしたり、サビで腕を振る観客。 DAOKOはMCでCody・Lee(李)のファンに対して「友達になりたい」と言っていたけれど、その願いは叶ったと思う。最初はアウェイな空気だったものの、最終的には“この夜が続いて欲しかった”と誰もが思ってしまうほどにホームな空気になっていたのだから。 ■セットリスト 1.御伽の街2.MAD 3.spoopy4.ぼく5.groggy ghost6.Sorry Sorry7.ワンルームシーサイドステップ8.fighting pose9.打上花火10.水星 Cody・Lee(李) 中村一義『犬と猫』をSEに登場したCody・Lee(李)。東京キネマ倶楽部はステージに階段があり、その上の踊り場は張られたカーテンの奥がステージ裏と繋がっている。メンバーはそこから登場した。元キャバレーを改装した会場だからこその派手な登場だ。 高橋響は黒いセットアップを着てサングラスをかけていた。いつもよりワイルドで派手な出で立ちだ。それも会場の雰囲気に合わせたものなのだろう。上品でお洒落だ。 しかし演奏はDAOKOのライブの余韻を受け取ったかのように、最初から盛り上げていく。 1曲目は『涙を隠して(Boys Don't Cry)』。メンバーが声を揃えて「1、2、3、4!」とカウントして、そのまま疾走感ある演奏が始まる。高橋が間奏で「ギター!」と叫び、それに応えるように力毅が台の上に立ちギターを掻き鳴らす。その時の観客の歓声は興奮と喜びに満ちていた。 東京キネマ倶楽部は元キャバレーなので、他のライブハウスとは雰囲気が違う。だがロックバンドが立てばロックが似合う熱いライブハウスになる。それを証明するような演奏だ。 かと思えば『異星人と熱帯夜』では会場の雰囲気にマッチする妖艶な照明の中で、妖艶な演奏でしっかり聴かせる。今回はサポートメンバーに中野郁哉(Key)と中尾有伽(Cho)と東風あんな(Cho)を迎えた7人編成。そんな大所帯バンドだから、繊細に音を重ねつつも迫力のあるサウンドになっている。 続く『おどる ひかり』も繊細で優しいサウンドながらも、壮大さが加わっている。これも大所帯バンドだからだろう。楽曲の魅力や重要な部分は変えずに、サポートを含めた7人の総力戦によるライブで楽曲を進化させているのだ。 「ダウ90000と楽屋が一緒で満員電車ぐらいに楽屋が狭かった」と笑う高橋。だが「今どうしても一緒にやりたい人を呼んだ」とも嬉しそうに話していたので、そんな不満はどうでも良いのかもしれない。 原汰輝「開演前の注意事項アナウンスでめちゃくちゃスべった......。ダウ90000に今日のお客さんは厳しいですよって言ったら、ダウはめちゃくちゃウケてた......」 高橋「純粋にこちらの力不足でしたね」 今回の開演前の注意事項アナウンスは原が行っていたが、ユーモアを交えて笑わせようとしていたものの、見事にスべっていた。びっくりするほどにスべっていた。恐ろしい程にスべっていた。スべっていた。スべっていた。 だが原がスべったことで、観客を爆笑させたダウ90000は一流の芸人であることが証明されたとも言える。 高橋「盛り上がって行きましょうと言うのはあまり好きじゃない。何か他に盛り上がりそうな台詞はありますか?」 ニシマケイ「30歳まで売れなかったら本当に辞めようと思っていました!」 観客「ふぉおおおおおおwwwwww!!!」 ダウ90000のコント内の台詞を引用し、観客を煽ったニシマ。そんな小粋な煽りに興奮した観客が笑いと歓声で応える。原の開演前アナウンスよりもウケていた。 そこから演奏されたのが『悶々』。深紅の照明の中、ニシマのベースから始まると、観客の歓声か湧き上がる。そのまま全員の演奏が重なると、熱気はどんどん上昇していく。 さらに『W.A.N』とアップテンポの楽曲を続けるのだから「これが今回のライブのピークでは?」と思うほどに、観客のボルテージは一気に最高潮に。 そんな盛り上がりの余韻が残る中「ダウ90000の蓮見とのLINE交換を断った」という切ないエピソードを語る高橋。どうやら自身と蓮見に近しい部分を感じるらしく「暴れ回るメンバーをまとめる人は心の内を他人に見せるのが苦手」という想像で距離感を見定めているようだ。観客は「ダウ90000とCody・Lee(李)のメンバーは暴れ回る」という知見を得た。 「ここからはチルい感じでいきます」と高橋が告げて演奏を再開したが、この言葉はDAOKOもライブ中に言っていた言葉でもある。きっと彼女へのリスペクトを込めた引用なのだろう。 続けて演奏されたのは『キャスパー』。高橋はハンドマイクになり、薄暗い青の照明の中をゆったりと動きながら歌う。演奏もゆったりとしていて心地よい。多くのバンドの名前が出てくる歌詞が、ライブでもしっかり聴こえてくるから、楽曲の世界観にすっと引き込まれる。たしかにチルい感じの楽曲だ。 『世田谷代田』もゆったりとしたリズムでチルい。歌詞もゆったりとした情景を描いていて、ライブでの生々しい演奏がそこに温かみを加える。 Cody・Lee(李)はDAOKOに影響を受けているそうだ。「自分たちにとってのレジェンド」と高橋が語るほどに。特にニシマは影響を強く受けているらしい。 このイベントは「Cody・Lee(李)が友達を作る」ことも目的のひとつとのことだ。過去の出演者とも友達になれたようで、水曜日のカンパネラの詩羽とは特に交流が深いらしい。フェスで話し相手が居なくて孤独な時にら高橋が話しかけることができる貴重な友達だという。詩羽がライブのブッキングを蹴って発明せずに『すももハイツ』へ出演してくれて良かった。 そんな今も交流がある友人の話をした後、高橋が言葉を選びながら、交流がなくなってしまった友人について語った 友達の芸人が急に亡くなってしまいました。 LINEのメッセージは「丸亀製麺に行きましょう」と送ってから、もう返事は帰ってこないままです。 すももハイツにも誘っていたんです。今更だけど、もっと深く関わっていたらなと思います。 次に『さよuなら』という曲をやるんですけど、今日はその友達に捧げます。 この日の『さよuなら』は、彼らが今まで演奏した中でも、特に魂が込められていたのではと思う。少なくとも自分がこの日のライブで最も胸を打たれたのは『さよuなら』だった。二番のサビ前、高橋が掠れた声で天を仰ぎながら「届け!」と叫んでいた姿が、目に焼き付いて離れない。 高橋がサビを弾き語りしてから始まるアレンジになった『イエロー』も、想いが込められているように聴こえた。〈なんかちょっとだけ君に会いたくなった〉という歌詞が、妙に心に響く。曲名に合わせた黄色い照明も美しかった。演出も含めて素晴らしいライブなのだ。 「本当に楽しかったです。LINE、やっぱ交換しとこ」と素直な気持ちを高橋が告げてから、最後に『我爱你』が演奏された。 ライブ定番曲だが、何度聴いても盛り上がってしまう最高のキラーチューンだ。カラフルな照明がステージを彩り、高橋や力毅が台に立ち演奏しド派手に盛り上げる。アウトロでギターの背面弾きをする高橋。この曲では定番のパフォーマンスだが、今回は山内総一郎も褒めそうなぐらいに見事に弾いていた。 最高の本編を終えたメンバー。その興奮はアンコールでも残っているようで、出てきた直後の力毅がバグっていた。 力毅「僕らが呼んだ人たちをお客さんとどちらが楽しめるかだと思うんでんすよ!」 観客「??????」 高橋「わかった人?」 観客「・・・・・・」 高橋「ニュアンスは分かったよ。僕らが好きだと思って呼んだアーティストや芸人を、僕らのファンも楽しんでくれたら嬉しいってことでしょ?」 力毅「ちょっと違う」 とりあえず力毅の熱い想いだけは伝わってきた。 次に演奏されたのは『ステップアップLOVE』。岡村靖幸とDAOKOがコラボレーションした楽曲のカバーだ。「バンド史上過去最高難易度」と言ってから演奏した通り、かなり難しそうで必死に演奏しているように見える。 だがこの日限りの特別なカバーは嬉しい。しかもだ。曲の途中でモノマネ番組の“ご本人登場”かのようにDAOKOが階段上の踊り場から登場するサプライズまであった。高橋とDAOKOが向き合って歌う姿は楽しそうに見えたし、観客も同じぐらいに楽しんでいる。歌詞が飛んだこともご愛嬌と思えるほどに楽しい。 高橋「僕、イカしてましたか?」 DAOKO「岡村さんが憑依したのかと思いました」 言わされている感はあったものの、高橋を絶賛するDAOKO。“DAOKO、高橋響に岡村靖幸が憑依したからこんな顔するんだ“と、ふと思う。高橋の暴れまくってる情熱は、DAOKOにも観客にもしっかり伝わったようだ。 ラストは『When I was cityboy』。メンバーはこの日の曲目の中で、最も衝動的に激しく音を掻き鳴らしている。動きもパンクバンドのように激しい。観客のノリもそれに比例してどんどん激しくなっている。 それなのに少しだけ切ない。この楽曲がライブの最後に演奏される定番曲で、最高の空間が終わることを示しているからだろうか。 最後に出演者全員で写真撮影をして、多幸感に満ちた空気を残して終演した。最高のライブだったけれど、終わってしまって少し寂しい。いや、最高のライブだったからこそ寂しいのかもしれない。 でも寂しいけど笑って、切ないなら笑って、またライブを観れる時まで、生活を続けなくちゃ。 ■セットリスト 1.涙を隠して(Boys Don't Cry) 2.異星人と熱帯夜 3.おどる ひかり 4.悶々 5.W.A.N 6.キャスパー 7.世田谷代田 8.さよuなら 9.イエロー 10.我爱你 アンコール 11.ステップアップLOVE 12.When I was cityboy