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【ライブレポ・セットリスト】ザ・クロマニヨンズ × a flood of circle『MAZRI no MATSURI -The Joint-』at 恵比寿ガーデンホール 2024年11月4日(月・祝)

ザ・クロマニヨンズとa flood of circleは、それぞれ方向性は少し違うと思う。しかし真っ直ぐすぎるほどにストレートなロックンロールを鳴らすことと、とにかくカッコいいロックバンドであることは共通している。

 

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そんな2組が映像制作会社MAZRIの25周年イベントで対バンを行った。おそらくツーマンライブは初めてなはずだ。

 

ありそうでなかった最高のロックバンドの対バンは、理由なき反抗をするかのような熱気に包まれ、あいのロックンロールで満たされる空間になっていた。

 

a flood of circle

 

先攻はa flood of circle。佐々木亮介が軽く咳をしたことを合図に、アオキテツがギターリフを弾いてライブが始まった。

 

観客はザ・クロマニヨンズのファンの方が多いようだったが、フラッドの演奏が始まった瞬間に会場から悲鳴のような大歓声が響いた。音を鳴らしただけでフラッドの空気に変えてしまった。一音奏でた瞬間に空気を作ってしまうロックバンドは本物だと思う。この日のフラッドは紛れもなく本物のロックンロールバンドだった。

 

1曲目は『ブラックバード』。耳をつん裂くほどの音圧の演奏の中、黄色い革ジャンを着た佐々木がマイクスタンドを定位置から少しだけ前に出してからエモーショナルに歌う。今回のライブはステージ後方に大きなスクリーンが設置されており、そこに映像が映される演出があった。『ブラックバード』では歌詞に合わせてか黒い鳥が大量に飛ぶ映像が映されていた。そんな演出によって壮大な空気が作られている。

 

『ゴールド・ディガーズ』へとなだれ込むと、拳を上げて騒ぐ観客が増えてきた。その中にはザ・クロマニヨンズのTシャツを着ている人もいる。きっと初めてフラッドを観た観客も、彼らの音に早くも魅了されてしまったのだろう。この楽曲でも映像での演出があった。男性が大きなスコップで土を掘り続ける映像だった。シュールな映像なのに不思議と曲の雰囲気と合っていた。

 

理由なき反抗(The Rebel Age』は、演奏が始まった瞬間に歓声が響いた。サビ前の〈ざけんじゃねえ〉という部分は観客も大声で一緒に叫んでいたし、サビでは観客の多くがシンガロングしていた。漫画『ふつうの軽音楽部』の劇中にも登場したこともあり、ファン以外も知っている人が多いからだろうか。ギターを弾いていた佐々木もハンドマイクになり煽りながら歌う。

 

この勢いのまま『ファスター』へとなだれ込む。観客も激しく踊ったりとフロアはもみくちゃになっていく。その勢いは止まることない。『狂乱天国』ではもみくちゃにあるフロアに佐々木もハンドマイクで突っ込んでいった。

 

観客にモーゼの海割りかのようにフロアど真ん中にスペースを開けさせ、そこを叫ぶように歌いながらフロア最後方まで進む佐々木。観客以上に感情が昂ってしまったのか、後半の歌詞は全て飛ばしてしまい、後半はどの部分でも〈ふざけろよBABY〉としか歌っていなかった。ここまで歌詞を飛ばした姿を観れたことは貴重かもしれない。歌詞を飛ばしまくった佐々木はふざけたBABYを体現していた。

 

ステージに戻っても昂った感情は治らないのか、ハイテンションで叫ぶように『花降る空に不滅の歌を』歌う佐々木と、それに連れられるように激しく演奏するバンド。観客はすでにフラッドのワンマンかのような盛り上がりになっている。『プシケ』も同様の盛り上がりだ。間奏で「恵比寿ガーデンホールにお集まりの親愛なるみなさんに、大事なメンバーを紹介します!」とメンバー紹介をしていく時の歓声も大きかった。

 

『シーガール』が始まると観客は一斉に前方へ駆け寄りモッシュが発生した。フロアはもみくちゃどころではない、ぐちゃぐちゃな状態だ。でもこのぐちゃぐちゃで汚い状況こそ、ロックンロールの美しい景色だとも思う。

 

ロックンロールは古臭い音楽だと思います。若い子がテレビで聴いて、演歌みたいなものだと思って聴いているのだと思います。

 

で、そんなだから、良いことをわざわざ言わなくてもいいかなと思います。

 

佐々木がほんの少しだけ語ってから、マイクスタンドから離れた生の声で『月夜の道を俺が行く』を歌い始めた。最初は歓声を上げた観客も、彼の言葉をしっかりと受け止めるかのように静かに聴きいる。力強い歌に負けないほどに迫力がある演奏も素晴らしい。

 

ラストは『本気で生きているのなら』。マイクスタンドから離れた生歌で、アコースティックギターを弾きならがら佐々木が叫ぶように歌う。

 

序盤からザ・クロマニヨンズのファンも含め、観客を興奮させ騒がせる演奏をしていた。だが最後は会場の全員を感動させる演奏をしていた。

 

そんな深い余韻が残る中、「 今日は何をしに来たかと言うと、宣伝に来ました」と言って空気をぶち壊す佐々木。感動的な空気に対し、理由なき反抗をしたのだろうか。

 

アルバムのリリースとツアーの宣伝をしたものの「みんなスマホゲームに課金して暇もお金もないと思うけど、よかったら聴いてください」とひねくれたことまで言う。これも理由なき反抗か。

 

個人的にフラッドのライブはかなり久々に観た。コロナ禍に入る前だったので、最後に観てから5年以上は経っている。今回のライブを観て、これまであまりフラッドのライブをあまり観ていないことを後悔した。そう思うほどにこの日のライブは素晴らしかった。

 

■セットリスト

1.ブラックバード
2.ゴールド・ディガーズ
3.理由なき反抗(The Rebel Age)
4.ファスター
5.狂乱天国
6.花降る空に不滅の歌を
7.プシケ
8.シーガル
9.月夜の道を俺が行く
10.本気で生きているのなら

 

ザ・クロマニヨンズ

 

転換が終わり暗転した瞬間、ワンマンかと思うほどの大歓声が会場に響く。フラッドのTシャツを着ていた人の中にも興奮している人がたくさんいた。これはどちらのファンかは関係なく、ロックンロールを愛している人がこの場所に集まっているという証拠だ。

 

今回は映像制作会社が主催しているからか、ザ・クロマニヨンズでも映像演出があった。とはいえSEでバンドのマスコットキャラクターの高橋ヨシオがクルクルと回る映像が使われた程度で、音楽を邪魔しないことを前提とした演出だ。この演出によって観客の興奮がさらに高まったようにも見える。

 

メンバーが登場し間髪入れずに始まった1曲目は『クロマニヨン・ストンプ』。初っ端から観客のシンガロングが響きフロアの善方へと観客が詰め寄っていく。今回のライブはダイブが禁止されていた。それを守りつつも衝動をぶつけるように盛り上がるフロアの空気感は最高だ。

 

立て続けに『タリホー』が演奏されると、さらに大きな観客の歌声が響く。甲本ヒロトと同じように指を立てて腕を回す観客のノリも良い。ヒロトが頷きながら観客と目を合わすかのようにフロアを見る姿にグッとくる。

 

「生きるいくぜ!」と宣言かのようなテンションでヒロトが曲紹介してからの『生きる』も凄まじい盛り上がりだ。間奏の「1!2!」の観客の掛け声も完璧である。そこからメンバーが手拍子を煽った『エルビス(仮)』と、ひたすらに衝動敵でぶっ飛ばすような演奏を続ける。超ベテランバンドがやっていることにおどろくほどに、勢いがどんどん加速したいくライブだ。

 

ありがとうありがとう!フラッドのファンもありがとう!

 

最後まで楽しんでいってくれよ!騒いで帰れよ!

 

ヒロトの挨拶代わりの短いMCでも、演奏中と同じように大歓声が響き鳴り止まない。そんなフロアの様子を眺めながら「やろうかな!」と煽るように言って、すぐに演奏が再開。

 

『イノチノマーチ』ではヒロトと観客が掛け合いのように歌い合い『ランラン』では大合唱が響く。バンドの勢いも観客の熱量も全くさがることなくライブが続く。この場にいる全員がロックンロールに心を突き動かされているのだろう。

 

間髪入れずに始まった『あいのロックンロール』ではさらに観客が前方に駆け寄り激しく盛り上がる。当然ながら観客はサビで大合唱していた。薄暗い照明の中で演奏するバンドの姿がクールだ。

 

甲本ヒロト「ありがとう!楽しんでるか!?」

観客「いえええええええい!!!」

甲本ヒロト「今日はみんなのおかげでこの場所が100%ロックンロール。半分くらい以上は俺たちのおかげだけど(笑)」

観客「wwwwww」

甲本ヒロト「気軽に楽しんでくれ!」


空気が良い意味で緩んだところで「次は突撃ロックだ!」とヒロトが叫び『突撃ロック』が始まる。「気軽に楽しんで」と言っていたのに、観客は暴れるように盛り上がっていた。もしかしたら気軽に暴れられると判断した観客が多いのかもしれない。そんな熱気だ。

 

さらになだれ込むように『雷雨決行』が続く。こちらももちろんフロアから大合唱が巻き起こる。ヒロトが真島昌利を指差した瞬間、真島が前方に出てきてギターソロを弾き倒す姿もカッコよすぎた。

 

甲本ヒロトはロックボーカリストとしても一流だが、ハーモニカの名手てしても知られている。そんな一面は『暴動チャイル』で発揮された。観客は先ほどと同じように自由に歌い、好き勝手に暴れてはいるものの、 ヒロトの吹くハーモニカが楽曲に華やかさを加えていて、より多幸感に満ちた空間になっていた。

 

ここまで殆ど休憩なしでぶっ飛ばすようなライブをしていたが、ここで長い間が空いた。どうやらフロア前方で体調を崩した観客がいたようだ。

 

気にすんなよ!倒れるギリギリまで楽しんだんだ!それに今日は2つも観れた。ザ・クロマニヨンズとa flood of circleの2つも観れたんだ!

 

残ってくれたフラッドのお客さんもありがとう!大きいオマケがついてきたと思って楽しんでくれ!

 

ロックンロールの良いところを全部やるぜ!

 

体調不良になってしまった観客を気遣いつつも、他の観客には心配させないよう、最高に盛り上げる煽りをする。これだから甲本ヒロトはかっこいいし、ロックンロールは優しいと思う。

 

ライブは『エイトビート』から再開。この楽曲でもヒロトのハーモニカが印象的だ。観客も先ほどと変わりない盛り上がりになっていた。さらに「今日は最高!今日は最高!」とヒロトが叫んでから『ギリギリガガンガン』へとなだれ込む。観客もサビで一緒に叫ぶように歌っていた。そんなフロアの景色は「ロックンロールの良いところ」が全て詰まっているように見える。

 

「あと1発!あと1発!」とヒロトが言ってから最後に演奏されたのは『ナンバーワン野郎!』。イントロでの〈イエー!〉の掛け合いも完璧に観客はこなし、最後に最高に暴れまくっていた。終わった時にはメンバーも観客も汗だくて、熱気でフロアの気温は高くなっていた。外は肌寒く感じる季節になったというのに。

 

「またやりたい!やらせてください!ロックンロール!」と叫んでステージを後にするヒロトと「またね」と小声で呟いてからゆっくりとステージから去る真島と、クールに颯爽と去っていく小林勝と桐田勝治。最初から最後まで興奮が続き、心が揺さぶらるライブだった。

 

フラッドとは違う形でロックンロールの最高さを伝えるライブをやったザ・クロマニヨンズ。ヒロトがライブ中盤で言っていた通りに、フラッドとザ・クロマニヨンズによってこの場が100%ロックンロールになっていた。出演バンドの二組も、最初から最後まで楽しんだ観客も、倒れるギリギリまで楽しむほど音楽を愛してる観客も、全員がナンバーワン野郎だった。

 

■セットリスト

1.クロマニヨン・ストンプ
2.タリホー
3.生きる
4.エルビス(仮)
5.イノチノマーチ
6.ランラン
7.あいのロックンロール
8.突撃ロック
9.雷雨決行
10.暴動チャイル
11.エイトビート
12.ギリギリガガンガン
13.紙飛行機
14.ナンバーワン野郎!