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【ライブレポ・セットリスト】フジファブリック 活動休止前ラストライブ at NHKホール 2024年2月6日(木)

2024年7月3日。フジファブリックが2025年の2月で活動休止することを発表した。その発表は青天の霹靂で、予想できたファンはほとんどいなかったと思う。

 

むしろ活動休止や解散から、最も遠い場所にいるバンドだと信じて安心していた。本人たちが「フジファブリックは解散しないバンド」と何度も何度もライブのMCで話してきたバンドなので、メンバーの仲も良好でバンド活動も順調に見えていたからだ。

 

活動休止の発表から約7ヶ月経った2月6日。フジファブリックがNHKホールでワンマンライブを行った。これが活動休止前、最後のライブとなる。

 

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バンドにとってもファンにとっても大切で重要な公演だが、配信があるものの会場のキャパは小さく、チケットが取れなかったファンも少なくはなかった。大きな会場の予約は1年以上前から行うことが多いので、おそらく活動休止が決まってから抑えられるキャパでは最大だったのだろう。仕方がない。

 

自分は運良くチケットが取れたものの、チケット抽選に落選し入場が叶わなかったファンの声をSNSなどでたくさん見かけて、胸が痛んだ。

 

この7ヶ月間は、ファンも様々なことを考え、心の中で葛藤し折り合いをつようとした日々だったと思う。そんな気持ちに決着をつけるためなのか、会場にはチケットを持っていないファンもたくさん訪れていたようだ。そんな様々なファンの寂しさや切なさややるせなさが会場前には漂っていて、会場前は普段のライブとは全く違う空気だった。

 

身分証による本人確認を終え会場に入ると、今までのフジファブリックのライブでは1番多いのではと思う量の花がロビーに展示されていた。

 

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元メンバーも含む多くの仲間のミュージシャンや関係者、仕事をした人たちに、フジファブリックは愛されていたのだと実感する。普通に一般のファンに混ざるかのようにロビーにいる高橋響らしき人物を見かけたりもして、後輩のミュージシャンにも多大な影響を与えた偉大なバンドということも再認識もした。

 

開演時間を過ぎメンバーがステージに登場すると、大きくて長い拍手が会場に響いた。15周年の大阪城ホール公演や、20周年の東京ガーデンシアター公演も拍手が大きくて長かったが、今回はそれを上回るほどに大きくて長い。

 

だが山内総一郎がギターを丁寧にストロークし語りかけるように歌い出すと、フジファブリックの鳴らす一音一音を絶対に逃すまいとするかのようにう客席は静まる。1曲目は『Portrait』。最新アルバムのリードトラックだ。

 

山内の演奏に寄り添うように金澤ダイスケがピアノの音色を鳴らし、加藤慎一は重厚なベースを響かせ、サポートドラムの伊藤大地とサポートパーカッションの朝倉真司が力強いビートを作りだす。1曲目から「フジファブリックは凄いバンドだ」ということを、説明ではなく音で説得力を持たせ伝えるかのような鬼気迫る演奏だ。

 

山内がGのコードをゆっくりとストロークし曲を終わらせると、メンバーが次の曲へ行くのに躊躇うほどに盛大で長い拍手が鳴り響く。それに対して深々とお辞儀をする山内の姿が印象的だった。〈悲しい思いはそれなりでいい 笑いあう声を聞く方が良い 〉という歌詞から始まるこの曲を1曲目に選んだことは、今のメンバーの心境を表しているからなのだろうか。

 

山内が再び集中した顔でマイクスタンドの前に立ち、ギターを丁寧に爪弾きながら歌い始めた2曲目は『LIFE』。ライブ定番曲だがいつも以上に言葉のひとつひとつを噛み締めるように歌っている。そこからバンドの演奏が加わり金澤が手拍子を煽り、観客がそれに応え大きな音で手拍子をすれば、すっかり普段のフジファブリックのライブと同じ雰囲気だ。

 

それでも〈見慣れていた景色さえも輝いてた 「いつまでも忘れない」 そんな事思う日がくるかな〉という歌詞は、いつもとは違う重みを感じてしまう。楽しいはずなのに涙が出てくる。自分の周囲でもこの曲で泣きながら手を振っている人が何人もいた。

 

『流線形』とライブ序盤に相応しい疾走感ある楽曲が続く。サビの壮大さもNHKホールの規模と相性が良くて最高だ。山内もきっとこの日に合わせて体調管理を気づかったのだろう。ここ最近では一番に感じるほどに喉の調子が良さそうだ。

 

フジファブリックは様々な方向性の楽曲がある。続く『赤い果実』ではジャズの影響を感じるオシャレなサウンドを響かせる。そんな演奏に聴き入った観客は心地よさそうに身体を揺らしていた。

 

観客の手拍子が響き渡った『robologue』では、ギターソロやキーボードのソロで演奏力の高さを感じさせてくれる。キーボードソロの後に山内が金澤の方を指さし、観客が盛大な拍手を贈ったことも印象的だ。そこからの長めのアウトロに感動していた頃には、自分の涙は引っ込み、純粋にライブを楽しむモードになれていた。

 

演奏を終えて客席から長く大きな音の拍手が響く中、メンバーが深々とお辞儀してから改めて山内から挨拶がされた。

 

今日はたくさん拍手くださいね。

 

一瞬一瞬を刻みながらやりますので、 会場の皆さんも配信の皆さんも、最後までよろしくお願いします。

 

その言葉に対する観客の長い拍手が鳴り止むの待たずに、 真っ赤な照明の中で『楽園』がキレのある演奏で披露される。サウンドもステージの景色もクールで、耳で聴き入って目でみとれるような状態だ。

 

そこから続く『KARAKURI』では、複雑な展開を高い技術で表現し圧巻の演奏を鳴らす。フジファブリックの魅力の濃く深い部分を伝えるようなパフォーマンスで、ライブでは音源を超える凄みを感じさせてくれる。この演奏を生で聴けなくなるなんて、勿体なすぎる。

 

そんな凄まじい演奏の興奮を落ち着かせるかのように、山内が丁寧にギターを爪弾いてから演奏されたのは『Water Lily Flower』。

 

スイレンをイメージしたであろう模様の光でステージの床が照らされていて美しい。バンドの演奏も繊細で美しい音を奏でている。でも心做しか歌声はいつもよりも感情的に聴こえて〈離さないで〉というフレーズがいつも以上に心に刺さる。

 

そこから青い照明の中で『ブルー』を続ける。言葉を丁寧に紡ぐように歌い、それに寄り添うような優しい演奏をしていた。だがアウトロではエモーショナルで長いジャムセッションになるのも良い。

 

ライブでこの曲を聴く時、自分はこの長いアウトロを特に楽しみにしていた。観る都度に凄みが増していたし、長尺の演奏でこそフジファブリックの凄さが分かりやすく表れると思っているからだ。それを聴けなくなることも寂しい。

 

ステージの床が満点の星空のような美しい光で照らされた『Light Flight』が、個人的に序盤で特にグッときた曲だ。壮大な演奏に負けないぐらいに魂のこもった歌声で、その迫力に圧倒され感動した。この歌は特に志村正彦に向けて歌っているように聴こえた。

 

 

2023年のツアーで久々に演奏した時、改めて自身で名曲と実感し手応えを感じた山内が「こらからたくさんやるかもしれません」と山内が言っていたから、本当はもっとこれからもライブで聴きたかった。

 

今日はいっぱい曲をやりたいんです。

 

みなさん、ここでNHKホールの椅子の感触を確かめてみませんか?

 

山内の呼び掛けによって、いっせいに椅子に座る観客。

 

金澤ダイスケ「始まる前に椅子の感触はいっぱい確かめてたと思いますけど」

山内総一郎「座ってくださいって言ったら聴き方を強制しているような気がするから、確かめてみたらどうですかって言っているわけです」

 

活動休止前最後だけど、メンバーのMCでのやり取りはいつも通りで、ゆるゆるいっていた。メンバーが不仲になったわけではないことが伝わってくる。

 

さらに山内が「やるつもりはなかったけど振ってみます!カトーク!」と言って、かつてライブの定番だった加藤慎一がトークを行うコーナーを突然開始した。加藤は少しどうようしていた。無茶振りである。

 

みんな気づかないのか?

 

今日は僕は何の柄を着ているのか?パイソン柄の服です。蛇年だから会場にいるみんなを丸呑みしてやろう!

 

加藤のトークを「急に振ったわりには綺麗におまとめになって」と冷静に批評する山内。歌っている時のエモーショナルな姿とは真逆である。

 

観客に椅子の感触を確かめさせる中、『 月見草』から演奏を再開。山内がアコースティックギターを弾き、金澤が鍵盤ハーモニカを吹く。その温かな音色が心地よい。朝倉のパーカッションもこのようなアコースティックな曲だと際立つ。

 

この楽曲が初披露された時、山内は声ででトロンボーンのような音を出すことを「くちトロンボーン」というシュールな名称をつけていた。「これからくちトロンボーンを上達させる」と言っていたが、おそらく最後の披露となるこの日は、素晴らしいくちトロンボーンを鳴らしていた。

 

 

続く『夜の中へ』ではアコースティックながらも跳ねるようなリズムで楽しませる。椅子の感触を楽しんでいる観客も、身体を揺らしたりと感触を確かめつつも踊っているかのように楽しんでいた。

 

アコースティックサウンドでも壮大な音を作り出すのがフジファブリックの凄いところだ。まさに『音の庭』はそのような楽曲である。音色は優しいのに迫力が凄まじくて圧倒させられてしまう。

 

演奏を終えて「いい曲をたくさん創ってきたなあと思います」と自画自賛する山内。おっしゃる通りだ。山内に共感の気持ちを伝えるかのような盛大な拍手が客席から響く。

 

「今日もこうやってライブができているのはサポートメンバーのおかげです」という山内の言葉からサポートメンバーが紹介され、そのままフジファブリックのメンバーも紹介された。

 

金澤は「NHKホールは何度かやらせてもらったんですけれど、毎回あれを弾いたんですよ」と言って客席上手側にあるパイプオルガンを指さす。

 

金澤「初めてやった時は盛り上がっていたけど、やる都度に普通になって、あまり盛り上がらなくなって...」

山内「壮大な音が出るパイプオルガンだけど、ダイちゃんが弾くと笑いが起きる」

金澤「パイプオルガンを弾いて笑いを起こせるのは世界中で僕だけですね」

 

ゆるゆるいってしまっているトークも、観客の温かな反応も、活動休止前とは思えないほどに穏やかだ。まだライブが終わっていないうちに、こんな雰囲気のライブをまたすぐにでも観たかったと思ってしまった。

 

加藤は話を振られたものの序盤のMCで山内に強引にカトークをやらされてしまったので、そこで話すネタを使ってしまったらしい。「一通りカトークで話したから話すことがない」と言って、すぐに山内に返した。そんなやりとりに客席から穏やかな笑い声が響く。

 

自分から言うのは小っ恥ずかしかったけれど、20年以上バンドをやってきたことで、バンドを通じて愛は素晴らしいんだなって知ることができました。

 

メンバーもそうだし、ファンのみなさんもそうだし、みんなで一緒に育ってきたバンドというか、みんなに育ててもらったバンドをずっとやれてきたことを誇りに思います。

 

ありがとうございます。

 

改めてバンド活動を振り返って感謝を伝える山内。それに対する観客の大きくて長い拍手を、山内は穏やかな表情で浴びていた。

 

最新アルバム収録曲の『ショウ・タイム』から演奏が再開。複雑な構成ながらもポップでロックでクールな楽曲で、これはフジファブリックの20年間によって培われた経験によって生まれた楽曲なのだと実感する。

 

1番を歌い終わったところで加藤が「みなさん、立ち上がってもいいですよ」と言うと、観客が一斉に立ち上がる。自然と手拍子を鳴らしたりと再び客席は熱気を帯びていく。山内も熱くなっているのか、間奏で「渋谷!」と叫んでいた。

 

その勢いのまま『シェリー』へとなだれ込む。名曲ではあるものの今回のライブでやることは個人的に予想外ではあったので嬉しい。疾走感ある演奏に合わせて観客は身体を揺らしたり腕を上げたりと盛り上がっている。

 

もしかしたらここまでの披露曲で最も盛り上がっていたかもしれない。この楽曲も複雑な構成で、いかにもフジファブリックといった楽曲だ。アウトロのだんだんと速くなっていく演奏も聴いていて心が高揚する。

 

さらに『ミラクルレボリューションNo.9』と最近のライブ定番曲を続けた。この楽曲は観客も踊る振り付けがあるのだが、何の説明もなく観客はしっかりと振り付けを踊って楽しんでいる。

 

山内は途中からハンドマイクになり、一緒に振り付けを踊りながら観客を煽りつつ踊る。いつもそうなのだが、山内は振り付けを踊る時、間違えることが多い。それすらも見れなくなるのかと、少しだけ寂しくなる。

 

イントロから観客も演奏に参加するかのような盛大な手拍子を鳴らした『Green Bird』も素晴らしかった。疾走感と壮大さがミックスされたような演奏で、それがNHKホールに響渡る様子に心が揺れる。

 

いつもならただただその演奏に興奮していたのに、今日は〈また何時か何処かで会えたなら あの日と同じように ただ僕のそばで微笑んで〉という歌詞に特別な意味を見出してしまい、涙が出そうになった。

 

だがフジファブリックは泣く隙を与えてくれない。リリース以降ほぼ全てのライブでやっているほどにメンバーがお気に入りであろう『Feverman』が始まったからだ。山内と加藤が前方まで出てきて観客を煽ると歓声が湧き上がる。

 

やはり観客は説明せずともこの曲でも振り付けを踊っていた。ギターソロで大歓声があがったりと、やはりフジファブリックは演奏で魅せるバンドだなと再認識する。アウトロで山内が叫んだ「ありがとう!」いう言葉には特に魂がこもっていた気がするし、演奏で見せつつも最後に金テープを飛ばして演出で見せるのも活動休止前だからこそのお祭り感があって良い。

 

この盛り上がりを失速させないように、むしろさらに盛り上げるかのように『電光石火』が間髪入れずに続く。最初から演奏と同じぐらいの音量の手拍子を観客が鳴らしたりと、バンドだけでなく観客もいつも以上に盛り上がっている。

 

定番曲ではあるものの『徒然モノクローム』を今回のライブでやってくれたことは嬉しかった。個人的に「志村正彦が作ったバンドだからこれからも聴いて応援しよう」ではなく「今のフジファブリックも変わらずにカッコいい」ということを確信したきっかけの楽曲だからだ。

 

初めて聴いた時、少し変態チックなメロディや演奏なのにキャッチーなのは志村がいた頃のフジファブリックを彷彿とさせるけれど、歌詞の希望を感じるメッセージは今のフジファブリックだから歌えるとも感じた。そう感じた当時の感覚は今でも変わらない。活動休止前のこの日も同じように、変態チックな演奏と希望を感じる歌詞で感動させてくれた。

 

金澤が繊細なタッチでピアノを弾く中、改めて「ありがとう」と感謝を告げる山内。観客も再び大きくて長い拍手を贈る。もしかしたらこの日のライブがフジファブリック史上、最も拍手が大きくて長いライブだったかもしれない。

 

最高のバンド人生でした。

 

フジファブリックは終わってしまうわけではないです。終わってしまうわけではないけれど、今日からフジファブリックは新たなスタートをきることになります。

 

どんな未来が待っているかは、僕らにもわからないですが、これからもフジファブリックを聴き続けてくださいね。

 

必ず活動を再開するというわけではない。でも解散をするわけでもない。だからこそ慎重に言葉を選びながら、山内が今の想いとファンへのメッセージを伝える。

 

でもフジファブリックの音楽と同じように、ほんのりと希望を感じさせてくれて、前を向かせてくれるような言葉であった。「終わってしまうわけではない」という言葉をメンバーから直接聞けたことが、大きな希望なのだ。

 

ゆっくりと噛み締めるように山内がギターでイントロを弾いてから始まったのは『STAR』。これがこのライブの本編で最後の演奏曲だ。

 

バンドの演奏が山内のギターに重なると、一気に壮大で疾走感ある熱い演奏へと変化していく。山内も叫ぶように歌っていた。白い光がステージの後ろからメンバーや観客を照らしている景色からも希望を感じる。

 

曲が終わる直前。最後の締めとなる音をバンドで鳴らす時、いつもよりもタメが長かった。まるで終わるのを名残惜しんでいるかのような、最後の一音を最高のものにするために集中しているかのような、そんな空気感だった。

 

そしてファンも、その一音を逃すまいと真剣にステージに集中していた。メンバーもファンも、いつも以上にフジファブリックのライブに集中した瞬間だったと思う。

 

演奏を終えてステージを後にするメンバーに、多くの観客が「ありがとう!」と叫んでいた。個人的な印象ではあるが、フジファブリックのファンは大人しくて優しくて少しだけシャイな人が多く、積極的にメンバーに声援を送ったり頻繁に叫んだりする人は少ないと思っている。

 

でも今日はメンバーの名前を大声で叫ぶ人がたくさんいた。「ありがとう!」という声も今までのライブで1番に感じるほどあちこちの席からたくさん聞こえた。

 

フジファブリックに感謝を声で直接に伝えられる場は、この日が最後なのだから当然なのかもしれない。シャイなファンも叫びたくなるぐらい、みんなフジファブリックに感謝しているのだ。

 

アンコールの拍手も当然に大きな音だった。初めはバラバラだった拍手がだんだんと一つになる様子は、ファンの心がひとつになっていっている様子が音として表れたのかもしれない。そんなファンの温かさや愛にも感動してしまう。

 

アンコールで出てきたメンバーは穏やかな表情だった。金澤と加藤は笑ながら雑談をしながら登場し、それを気にした山内が2人に駆け寄って、3人で何かしら会話して笑い合ってから持ち場に着いた。高校生が友達を見つけたときかのようなほのぼのとした姿である。活動休止するバンドとは思えないぐらいに仲が良さそうだ。

 

アンコールで何を言うのかと思いきや「ダイちゃんと加藤さんが話していて何かと思ったら、加藤さんの服の柄がパイソンかバイソンかで言い合ってました(笑)」と話す山内。活動休止前最後のライブなのに、メンバーはやはりゆるゆるいってしまっていた。

 

「まだまだ俺たちにトキメキをちょうだい!」と山内が叫んでから始まったアンコール1曲目は『SUPER!!』。本編を超えるぐらいの最高の盛り上がりだ。悲しく終わるよりも楽しく終わりたいという、メンバーの想いやファンの気持ちが表れたような盛り上がりだ。

 

山内と加藤が前方に出てギターとベースのネックを横に振り、それに合わせて観客も腕を振る。それはひたすらに楽しくていつも通りの見なれていた景色だけど、少しだけ寂しくなって涙が出そうになる。〈君を忘れはしないよ〉というフレーズで山内が空を指差し見上げる姿も、いつもと同じなのにいつも以上に重みを感じてしまう。

 

何度も何度も言いますが、フジファブリックはたくさんの人に支えられてここまで来ました。

 

スタッフのみなさん、ありがとうございます。ライブのスタッフももちろんいます。ありがとうございます。僕らはマネージャーも20年間変わってないんですよ。

 

サポートミュージシャンのみなさんも支えてくれました。たくさんのドラマーもフジファブリックで叩いてくれました。ありがとうございます。

 

本当は1人ずつ名前を言いたいんです。でも名前を言っていったら1日がかりにになってしまいます。それだけたくさんの人に支えられてきました。

 

そして何よりもライブに足を運んでくれたみなさん、配信でもご覧になっているみなさん、皆さんの支えがあったから、笑いながらも真剣にライブができています。皆さんのおかげです。

 

こうしてステージに立ってライブをできる喜びを、噛み締めながらやってきました。フジファブリックに関わってくれた皆さん、本当にありがとうございます。

 

最後に関わった全ての人に感謝を伝える山内。

 

みんなと出会えて、最高のバンド人生でした。

 

また次に会う時は、笑顔で再会しましょう。

 

言葉を噛み締めるように話してから、フジファブリックとして活動休止前、最後に演奏する曲である『破顔』がドラムのカウントを合図に始まった。

 

壮大な演奏といつもよりも感情的に歌うボーカルが心に刺さる。力強いけれど優しいのは、この曲がファンへのメッセージを含んだものとして最後に演奏されたからだろうか。

 

実際に自分はこの曲を聴いている時、なぜかとてつもない希望を感じて、まさに破顔といえる表情になっていたと思う。白い照明が眩しいぐらいに光っていたのも、希望を表現しているかのように感じた。

 

演奏を終えてメンバーの名前を1人ずつ改めて紹介していく山内。もちろん「ギターボーカル、志村正彦!」と言って空を指差すことも忘れていない。忘れるわけがない。

 

客席からの盛大な拍手と何人もの観客が叫ぶたくさんの「ありがとう!」を浴びながら、前方に出てきて客席を見渡すメンバー。

 

名残惜しそうに「まだ帰りたくないってのもあるんですけど、言葉にできないぐらい皆さんへの感謝の気持ちをまだまだ伝えたくて。本当に本当に、ありがとうございました」と言って山内が頭を深々と下げると、それに対してまたしても客席からたくさんの「ありがとう!」と拍手が返ってくる。

 

山内「まだ感謝を伝えられていない人もいるんです。ダイちゃん、加藤さん、一緒にバンドをやってくれてありがとうございます」

加藤「こちらここだよ!」

金澤「20年間一緒に活動した加藤くんと聡くん、そして志村に1番の感謝を伝えたいです。ありがとう!」

 

ファンと感謝を伝え合うだけでなく、メンバー同士でも感謝を伝え合っていた。本当にフジファブリックは様々な人たちが支えあってここまで来たのだと、改めて思う。

 

「すみませんね、終わりにダラダラしちゃって(笑)」と言って山内は照れていたけれど、この姿もファンが見たかったフジファブリックの姿だと思う。活動休止するとしてもメンバーの絆は深いまま繋がっていることを実感できた時間なのだから。

 

フジファブリックはこれで終わりでは無いです。

 

未来は僕らにもわからないですが、次に会う時まで元気でいてください!

 

活動休止前最後のライブでの最後に伝えられた言葉は、みんなを破顔させるような素敵な言葉だった。

 

やりきった表情で肩を組み、ゆっくりと歩いて帰ろうとする3人。いつもメンバー仲は良さそうではあったけれど、肩を組んで帰るのは初めてだったのではないだろうか。肩を組み慣れていないのか、少しだけフラフラしている。

 

それでも3人は肩をずっと組んでいた。笑いながら肩を組んだままステージ袖まで頑張って向かっていった。フジファブリックの活動休止前の区切りを、肩を組んだまま終えようとしていた。

 

今回のライブは現体制になってからの楽曲のみで構成されていた。

 

おそらくフジファブリックの20年以上の活動の集大成は、志村正彦の残した音楽もフィーチャされ、志村も一緒にステージで歌った東京ガーデンシアターのライブだったのだろう。そのライブが志村が作ったフジファブリックから、それを引き継いたメンバーの集大成だったのだと思う。

 

 

そしてNHKホールでのライブは、志村からフジファブリックを引き継いでからのメンバーの軌跡を辿り、現在のフジファブリックの最もカッコいい部分を抽出し伝えるライブだったのだと思う。そんなライブをやることが。現体制のフジファブリックの区切りであり、ケジメなのかもしれない。

 

ステージからメンバーが見えなくなっても、拍手は鳴り止まなかった。なんならエンディングの客出しのBGMとして『春の雪』が流れても、観客は帰ることなくずっと拍手を続けていた。

 

『春の雪』がフルで流れ鳴り止んだタイミングで拍手はさらに大きくなり、それでもまだ拍手が続いた。終演を告げるアナウンスが流れて少ししてから、ようやく鳴り止むほどに長く盛大な拍手だった。

 

最終列車は時の隙間


またいつか会える日が来るのかな 来るのかな


さよなら今 叶うのなら 

 

もう何もいらないと見つめ合えたなら

 

終演後にBGMとして流れた『春の雪』は、フジファブリックからファンへのメッセージだったのかもしれない。そんなことを『春の雪』の歌詞の最後のフレーズから感じる。

 

未来はわからない。でも「またいつか会える日」が、もしかしたらあるかもしれない。だから自分はチョコドーナツを気楽にかじりながら、フジファブリックの次のショウ・タイムを待つことにしよう。

 

フジファブリック活動休止前最後のライブを観て、そんなことを思ってしまった。

 

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◾️フジファブリック LIVE at NHKホール 2024年2月6日(木) セットリスト
1.Portrait
2.LIFE
3.流線形
4.赤い果実
5.robologue
6.楽園
7.KARAKURI
8.Water Lily Flower
9.ブルー
10.Light Flight
11.月見草
12.夜の中へ
13.音の庭
14.ショウ・タイム
15.シャリー
16.ミラクルレボリューションNo.9
17.Green Bird
18.Feverman
19.電光石火
20.徒然モノクローム
21.STAR

 

アンコール

22.SUPER!!
23.破顔

 

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