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【ライブレポ・セットリスト】フジファブリック20th anniversary SPECIAL LIVE『THE BEST MOMENT』at 東京ガーデンシアター 2024年8月4日(日)

バンドのデビュー20周年を記念した特別な公演を観に来たのに、複雑な気持ちを抱えながら開演を待っていた。チケットを購入した時はハッピーな気持ちだけで満ち溢れていたし、ライブ当日もそんな気持ちでライブを観れると信じていたのに。

 

2024年7月3日。フジファブリックはバンド活動の休止が発表された。 翌年2025年の2月まで活動は続くらしいが、それでもその発表は青天の霹靂すぎて、すぐには意味や状況が呑み込めなかった。だからライブ当日は複雑な気持ちで開演を待っていた。ライブのチケットを購入した時は、活動休止なんて想像もしていなかったのに。

 

様々な事情があっての決断だと思う。それは理解できるし、尊重はしたい。でも簡単には気持ちの整理をできないほどに、フジファブリックは自分にとって特別なバンドなのだ。

 

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とはいえこのような状況でも、フジファブリックはカッコいい演奏をして、最高のライブをしてくれると信じていた。それは会場に集まった多くのファンも同じ気持ちだったと思う。今までもどのような状況でも素晴らしい演奏を届け続けてくれたバンドだから、信頼度が半端なく高いのだ。

 

だからメジャーデビュー20周年を記念したワンマンライブ『THE BEST MOMEN』が行われる東京ガーデンシアターは、会場を埋め尽くす約8,000人の期待と興奮に満ちた熱気で包まれていた。

 

ステージが暗転すると、開演を告げるオープニング映像が流れた。この20年間にリリースしたアルバムのジャケット写真と、当時のライブ映像やオフジョットをまとめた映像だ。短い映像ではあるものの、バンドの歴史を感じる映像で、この日が集大成のライブになることを想像させる。

 

映像が終わり拍手と歓声が響く中始まった1曲目は『STAR』。今の体制になってからの最初にリリースされたアルバムの表題曲だ。〈ハートの鐘がひとつ鳴れば さあ進むのさ〉という歌詞が示すように、これからもフジファブリックを続けるという2011年当時のメンバーの覚悟を感じる曲だとも思う。

 

迫力のある演奏が会場に響き、真っ白な照明の光がメンバーを後ろから照らし、多くの観客がグッズのペンライトを星のように光らせている。音も景色も壮大で圧巻だ。1曲目から既にバンドとスタッフと観客とで、一緒に最高の空間を作り上げてしまった。

 

「1,2,3」というカウントから『夜明けのBEAT』が始まれば、観客は普段のライブと同じようにひたすらに興奮して盛り上がる。山内総一郎はギターソロで背面ギターを披露したりと、いつも通りにクールなパフォーマンスで観客の心を掴んでいる。

 

良い意味でいつもと変わらないライブだ。しかし『THE BEST MOMENT』というライブタイトルがついているからか、知名度の高い楽曲やシングル曲が多いセットリストになってきる。続けて演奏された『徒然モノクローム』や山内がイントロで「待ってたぜ!東京!」と叫んだ『電光石火』も、タイアップの影響で人気や知名度がある楽曲だ。久々にライブに来た観客やライトなファンも喜ぶ選曲だろう。

 

そういえば『徒然モノクローム』の間奏で加藤が金澤の近くまで行き、目を合わせてお互いに笑顔で演奏する様子がスクリーンに映っていた。バンドは活動休止してしまうが、メンバーの関係性が壊れた訳では無いし、フジファブリックというバンドが壊れたわけでもないと、それを観て確信した。

 

今日はみなさんのそれぞれが、様々な想いを持ってライブに来ていると思います。

 

今日は自分たちの全てを見せるつもりでやります。よろしくお願いします。

 

観客の心に寄り添うように、言葉を選んで話す山内。それでいていつも以上の覇気を感じる話し方でもあった。

 

ここからはサポートパーカッションとして朝倉真司も参加した。あいみょんのライブでお馴染みのパーカッショニストだ。

 

演奏されたのは『プラネタリア』。今年リリースされた疾走感ある楽曲で最近のライブでは披露されることが多いが、朝倉が参加することてビートがより強くなり音に迫力が増している。

 

『Green Bird』のようなミドルテンポの楽曲でも、朝倉は良い仕事をしている。壮大で大会場が似合う楽曲だが、パーカッションが増えることによる迫力で、より圧巻の演奏になっていた。

 

サポートだとしてもバンドにメンバーが増えたり代わったりすると、演奏や音色に大きな違いが出ることがある。それがマイナスになってしまう場合も少なくはないが、サポートでパーカッションを入れたことはフジファブリックにとって大正解だったと思う名演だった。、

 

演奏を終えて少しの間が空き、金澤ダイスケが、低い声で、少し緊張した様子で、ゆっくりと話し始めた。

 

デビューして20年間、全力で駆け抜けてきましたが、ここで一区切りしたいと思いました。そんな僕の想いをメンバーは受け止めてくれました。本当に感謝しています。

 

今日はバンドにとって特別なライブです。いつも通りに、いつも以上に、盛り上がって貰えたら嬉しいです。

 

金澤の声はこれまで聞いたことがないようなトーンだった。彼がライブで話す時は高いテンションの時が多かったから。客席も8000人近くいるとは思えないほどに、静まり返って話を聞いていた。

 

金澤の話をきいても、観客はみんな様々な感情で渦巻いてはいたと思う。だが演奏が始まれば良い意味でいつも通りのライブかつ、大会場だからこそのいつも以上のフジファブリックのライブになる。

 

赤い照明の中で演奏された『楽園』ではステージセットの松明に火が灯り、サビでは炎が吹き上がったりと、大会場だからこその魅せる演出がされていた。アウトロでは金澤がキーボードを弾き倒す演奏にグッとくる。

 

複雑な構成の最新アルバム収録『KARAKURI』でも、金澤のテクニックやセンスが光る。ファンクラブ会員限定ライブで「左手を使わないといけなくて大変なんだよ!」と金澤は話していたが、その大変さが報われていると感じる素晴らしいキーボードプレイで、最新のフジファブリックの凄さを見せつけるような演奏だった。

 

拍手が鳴り止んだタイミングで、山内が「今日は20周年をお祝いする特別なライブので、志村くんと一緒に演奏しようと思います」と言って、上手側に移動した。

 

センターの誰も立っていないスタンドマイクにスポットライトが当たると『モノノケハカランダ』が始まり、会場に志村正彦の歌声が響く。過去に録音した志村のボーカル音源と今のバンドが、一緒に演奏を始めたのだ。

 

スクリーンには志村がいた頃の、いくつかのライブでの志村の姿をまとめた映像流れている。まるで2009年以前にタイムスリップしたかのような気持ちになる。マイクスタンドの前には誰も立っていないはずなのに、そこに志村の姿が、はっきりと見えた気がした。

 

志村ボーカルでの『陽炎』では、志村がいた頃のライブ映像とリアルタイムで演奏する今のフジファブリックの映像が交互に映される。過去の再現ではなく、過去と今のコラボレーションと言える。間違いなく今のフジファブリックの音楽の中に、志村は存在し続けていることを実感する演出だ。

 

志村がいた頃のオフショットの映像も流された『クロニクル』も志村のボーカルだった。先ほどは過去と今が交差した演奏に感じたが、ステージ裏の志村を含めた映像をバックに志村の声と今のバンドの演奏が合わさると、音楽の中だけでなくバンドのメンバーとして今も志村は一緒に活動している感覚になってくる。


いつの間にかバンドの代表曲どころか、夏を代表する日本の名曲になった『若者のすべて』も、志村の歌声での披露だった。志村は決してテクニックのあるボーカリストではない。でも、やはり、唯一無二のボーカリストだとは思う。特に『若者のすべて』は、どれだけ歌唱力のあるシンガーがカバーしても、独特な叙情的な空気は志村にしか出せないのかもしれない。

 

志村の生前にリリースされたアルバム4枚の中から1曲ずつ志村のボーカルで披露され、志村が歌うブロックは終了した。『若者のすべて』の演奏が終わった後、天を仰ぐようにして「ボーカルギター!志村正彦!」と叫ぶ山内の姿と、それに歓声と盛大な拍手で応えた客席の景色か、目に焼き付いて離れない。

 

ここから再び山内のボーカルに戻る。音を確かめるような繊細なジャムセッションか始まったのは『Water LilyFlower』。美しいコーラスは大会場と相性が良いようで、ガーデンシアターに響くコーラスは壮大で感動的だった。

 

「 みなさん、ガーデンシアターの椅子の座り心地を確かめてみませんか?」と独特なセリフのお願いで観客を座らせる山内。全員座ったタイミングで客席から謎の拍手が響き、素直に従う観客を見て「フジファブリックのファンは良い人しかいない!」と言って感動する山内。

 

歳を取ると寂しさややるせなさは消えることなく増していきます。

 

俺は寂しい大人になったのかなと、思ったりすることもあります。でもそれは心地悪いものではなくて、寂しさこそが生きている実感なのかもしれないと思います。

 

そんか寂しさや侘しさを肯定したいと思って作った曲です

 

山内が語りかけるように話してから始まったのは『月見草』。アコースティックなサウンドで、朝倉のパーカッションが特に映える楽曲だ。金澤の吹く鍵盤ハーモニカの音も心地よい。山内による“くちトロンボーン”も、初披露時よりも進化していた。

 

活動休止発表後に行われたワンマンであることだったり。志村と一緒に演奏した4曲のことだったり、落ち着いた曲が続いたことだったり、様々な理由によって感傷的になっている会場。

 

そんな空気を期待はずれなほど感傷的にはなりきれなかった加藤慎一が打ち破る。「みんなこれを聴きにきているんだろ?カトクォォォオオオク!!!」と叫び、自身のトークコーナーを始めたからだ。観客は誰もが笑顔を見せる。それは失笑ではなかったと信じたい。

 

加藤「8月が誕生日だと、子どもの頃は夏休みで誰にも祝ってもらえなかった。大人になってからは夏フェスがあった。でも祝ってもらえないんだ...」

金澤「うちらは夏フェスでも祝ってたよね?」

山内「 ロッキンとか花火まで打ち上がるぐらい祝ってたし」

加藤「恒例のあれをやるか。謎をかけるか!」

 

金澤や山内が自虐ネタへのツッコミをしたものの、スルーして謎解きを始めようとする加藤。ちなみにロッキンの花火は加藤を祝うために打ち上げられたわけではない。

 

加藤「お題をください!」

観客「ガーデンシアター!」「記念日!」「もんじゃ!」

観客「もんじゃはないな」

 

もんじゃ焼きを切り捨てる加藤。結局お題は「20周年」となった。

 

加藤「20周年とかけまして、ペットと解く」

山内「その心は?」

加藤「どちらもめでたい(目出度い・愛でたい)でしょう」

山内「じわじわくるね」

 

仲良さそうに話す3人。やはり関係性が壊れたから活動休止するわけではなさそうだ。

 

山内「なぞかけの答えが出てこなくてアンコールに言いますって時もあったよね」

加藤「アンコールになっても答え出なかったけれどね(笑)」

 

こうして懐かしのエピソードを聞けるのも、20周年を記念したライブのMCだからこそかもしれない。

 

「ここから盛り上がりたいんですけど、また立てますか?」と言って、観客に立ち上がるように促す山内。いっせいに立ち上がる観客を見て「みんな立ってくれた!みんな優しい!」と感動していた。

 

ライブも後半戦。ここから畳がけるように楽曲が続く。まずは『東京』。青や赤の妖艶な照明の中で演奏が始まり、イントロで自然と客席から手拍子響く。山内は途中でハンドマイクになり、サビで腕振るように煽ったりとパフォーマンスも熱量が増している。間奏のソロ回しも最高だ。演奏技術でしっかりと盛り上げるのもフジファブリックの特徴である。

 

雪崩込むように『 ミラクルレボリューションNo9』が続くと、観客は完璧な振り付けで踊りながら盛りあがる。山内もギターを弾きつつも、その合間で踊るという器用なパフォーマンスをしていた。

 

リリース以降は殆どのライブで披露している『FEVERMAN』も、大規模な会場のワンマンライブで聴くと新鮮に感じる。曲始まりのセッションがいつもとは違う演奏だったことや、この規模だからこその熱量が理由だろう。

 

曲間無しで繋がるように始まった『星降る夜になったら』もライブでの披露回数は多い。だがこちらも大きな会場が似合う楽曲。この会場で演奏されることは必然なのだろう。晴れた日の夜空のような紺色の照明で、客席はグッズのペンライトを星のように輝かせている。そんな景色が壮大で美しい。

 

途中のサビで山内がマイクスタンドから離れた時、客席から歌声が聴こえた瞬間にもグッとくる。フジファブリックの楽曲はアップテンポの曲でも、心が昂るだけでなく温かな気持ちにもさせてくれる。

 

みなさんと一緒に作り上げた20周年だと思います。みんなも含めてフジファブリックで、この20年間はみなさんと僕らのショウタイムだったと思います。

 

ステージに立つ僕たちがだけがショウタイムではありません。みなさんもショウタイムなんです。

 

山内が感動的な話をしているかと思いきや、だんだんと雲行きが怪しくなってくる。観客がざわめきだし、少しだけ笑い声が聞こえる。山内も変な空気になったことに気づき「 何言ってるんだって思うでしょ?俺も自分が何を言ってるんだかわかんないんですよ!」と言ってしまう始末だ。

 

でも、こうなってしまうMCも愛おしいし、これもフジファブリックの良いところだとも思う。

 

みなさんと一緒にライブを作り上げられることの幸せについて歌ったうたを作りました。

 

組曲のような曲ですが、最後にこの曲をやります。

 

今度は変な感じにならず、真剣に山内が話してから、最後に演奏されたのは『 ショウ・タイム』。最新アルバムでも最後に収録されている楽曲だ。これは20周年を迎えても、活動休止を決断しても、最新のフジファブリックを伝えたいという想いが理由の選曲だろうか。

 

山内は最初のMCで「 自分たちの全てを見せるつもりでやります」と話していた。組曲のように複雑で変態的な演奏だが、どことなくキャッチーでロックとしてもカッコいいこの楽曲は、まさにフジファブリックの今までの全てを詰め込んだような楽曲かもしれない。

 

最高の演奏をして最大の拍手を浴びながらステージを後にするメンバー。すぐにアンコールを求める拍手が客席から響く。

 

しばらくしてステージが暗転した。するとメンバーの登場と同士に、映像がスクリーンに映された。それは志村がいた頃のフジファブリックのライブやオフショットなどをまとめた映像だった。

 

映像が終わると中央のマイクスタンドにスポットライトが当たり、志村の声が会場に響く。それは歌声ではなかった。彼の地元である山梨県富士吉田市で行われたライブのMCだった。「この曲を歌うために、僕はずっと頑張って来た気がします」という言葉だった。

 

そして今のフジファブリックが音を鳴らし、曲が始まった。演奏されたのは『茜色の夕日』。フジファブリックにとって、志村正彦にとって、特別に大切な曲だ。

 

もちろんボーカルは志村正彦。その歌声は生々しくて音源とは思えなかった。志村がその場にいて、その場でリアルタイムで歌っていると錯覚するほどに、生々しく響いていた。志村のボーカル音源に合わせて演奏しているのではなく、志村も今のフジファブリックも、今この場で一緒に演奏し歌っているように聴こえた。

 

スクリーンに映像は一切流されていなかった。薄暗いステージの、誰もいないセンターのマイクスタンドにスポットライトが当たるだけという、シンプルな演出だった。

 

き会場にいる全員が、無人のマイクスタンドを見つめていた。でも、会場にいる全員に、志村がマイクスタンドに立っている姿が見えていたような気もする。

 

志村正彦はフジファブリックの過去の音源の中だけでなく、今のフジファブリックのライブの中でも生きている。志村正彦の音楽は今でも生きている。バンドは活動休止してしまうけれど、それでも彼の残した音楽やバンドを愛する人がいる限り、生き続ける。そんなことを思ってしまうような名演だった。

 

20年と言う月日は思った以上に長くて、今日という日は思ったよりもあっという間に終わろうとしています。

 

今回の20周年のライブも特別なものになりました。今回のライブは志村家のご協力のもと、一緒にライブを作り上げ開催することができました。そして今回のライブは20年ぶりに1sアルバムのプロデューサーの片寄明人さんにプロデュースしてもらいました。それも全て志村の計らいかなと思います。

 

今日はいつも以上に志村を感じることができました。志村と過ごした日々はインディーズ時代を含めても短い時間ではありましたが、志村と過ごした日々が今の僕を作っていて、そんな僕は今、ここに立っています。

 

志村ありがとう。

 

最初のMCの時と同じように、金澤は今までのライブで出すことがなかった低い声で、真剣に言葉を選びながら今の想いを最後の挨拶で語っていた。それを観客は静かに真剣に聞いていた。

 

今日はあっという間だったよね。カトークでみんなと一緒になれたし、志村とも一緒に演奏できたし、楽しくてあっという間だったよね!この瞬間全てがベストモーメントだったんじゃないかなと思います。

 

金澤さんが長かったからもう少し喋った方がいい?

 

少し重くなった空気を変えるためにあえてなのか、加藤は少しおちゃらけた感じで話す。この関係性も「これがフジファブリックだよなあ」と思う。このバンドは音楽が唯一無二なだけでなく、関係性も唯一無二だ。

 

フジファブリックは楽しい出来事だけではなく、悲しい出来事もあって、いろいろな出来事が重なって、20年を迎えました。

 

僕は幸運なことに大阪から東京に来て半年ほどで志村君と知り合えました。志村君と話をしている時に「一緒にやりましょう。ギターを弾いてください」と言ってもらえたから、今の僕があります。

 

20年はあっという間だったけれど、短くはなくて、長かったなあとは思います。

 

バンドはバンドメンバーだけでは続けることはできないんです。支えてくれるスタッフの皆さんだったり、サポートしてくれたドラマーのみなさんだったり、録音をしてくれたエンジニアのみなさんだったり、様々な人の力でフジファブリックは成り立っていました。

 

そしてずっとフジファブリックを応援してくれて、時間も体力もお金も心もかけて来てくれたみなさんがいなければ、フジファブリックは存在しませんでした。

 

あなたと出会ったことで、自分はこの20年間で変わりました。あなたに聴いて喜んでもらえる音楽を作りたいと思うようになったんです。そんな関係をあなたと築けたから、今日は最高のライブになりました。

 

本当にありがとうございます。

 

これでバンドが終わりみたいな雰囲気になってますけど、まだまだ続きますからね。2月にもありますからね。

 

やはり山内は想いが溢れすぎていた。そんな言葉を観客は受け止めるように真剣に聞く。想いが溢れすぎたのか、2025年2月に特別なライブがあることを匂わせてしまった。過去のライブでもそうなのだが、彼は公表前のバンドの情報を匂わせがちだ。でも、今回はそれが、ファンにとって再びフジファブリックに会える希望を与えるものになったと思う。

 

「これからもあなたの居場所を作っていくので、これらもフジファブリックをよろしくお願いします」と、活動休止発表前と変わらない挨拶を山内がしてから演奏されたのは『破顔』。

 

壮大な演奏と感情的なボーカルが会場に響く。ステージを照らす白い照明の光が美しい。活動休止発表後のワンマンなのに〈闇を切り裂け さあ鳴らそう〉という歌詞に希望を感じてしまう。

 

ラストは『SUPER!!』。 その演奏も歌も、観客の反応も、いつものライブと同じだった。メンバーはひたすらに楽しそうで、観客もひたすらに盛り上がっている。

 

〈君を忘れはしないよ〉という歌詞で山内が空に向かって指差さのも、いつもと同じだ。でも今回のライブで志村はは、空の上で見守るのではなく、一緒にステージに立っていたのではないかなとも思う。

 

「俺は今日の景色を忘れたくない。だから、一緒に写真、撮ろう//////」と照れながら山内が言って、バンドと観客とで記念撮影をしてライブは終わった。見なれていた景色さえも輝いていた。

 

開演前は 始まる前は様々な感情が心の中で渦巻いていたけれど、終演後は楽しさの余韻で心が満ちていた。悲しいライブではなく、楽しいライブをフジファブリックはしっかりとやり遂げてくれた。

 

やはりフジファブリックは最高のバンドだ。そんなことを思ってしまった。

 

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■フジファブリック20th anniversary SPECIAL LIVE『THE BEST MOMENT』at 東京ガーデンシアター 2024年8月4日(日) セットリスト

1.STAR

2.夜明けのBEAT

3.徒然モノクローム

4.電光石火

5.プラネタリア

6.Green Bird

7.楽園

8.KARAKURI

9.モノノケハカランダ

10.陽炎

11.バウムクーヘン

12.若者のすべて

13.Water LilyFlower

14.月見草

15.東京

16.LIFE

17.ミラクルレボリューションNo9

18.FEVERMAN

19.星降る夜になったら

20.ショウ・タイム

 

アンコール

21.茜色の夕日

22.破顔

23.SUPER!!