2024-10-24 【ライブレポ・セットリスト】ずっと真夜中でいいのに。『やきやきヤンキーツアー2 ~スナネコ建設の磨き仕上げ~』at 東京ガーデンシアター 2024年10月16日(水) ずっと真夜中でいいのに。 ライブのレポート ※ネタバレあり ずっと真夜中でいいのに。のステージセットは、毎度のことながらこだわり抜かれている。壮大で豪華なことはもちろん、ライブのコンセプトに合わせて細かい部分まで徹底的に作り込まれているのだ。 今回の全国ツアー『やきやきヤンキーツアー2 ~スナネコ建設の磨き仕上げ~』も同様だ。大きな工事現場をイメージしたであろうセットは壮大で、それを見ただけで世界観に没入してしまう。開演前からステージ上で現場作業をする寸劇をしているメンバーがいたりと、演出へのこだわりも半端ない。 ステージが暗転し、バンドメンバーが電飾が光っているヤンキー仕様のデコレーションさ!た自転車に乗って登場。「ヤンキー」というコンセプトをユーモアとシュールを交えながら再現している。ACAねも同じように登場したが、手には大きなペンチを持っている。それを使いステージ中央のステージセットに見える配線を切り、それを合図に演奏が始まった。 1曲目は『JK BOMBER』。音源よりもスローテンポのオルタナティブロックサウンドになっていて、ACAねも音源よりも気だるそうに歌う。これまでにないアレンジだが、これまでもおこなっていたかと錯覚するほどに仕上がっている。 だがサビ前に「ずっと真夜中でいいのに。です」とACAねが挨拶をしてからのサビでは、いっきにBPMが速まる。これも今回のライブでのオリジナルアレンジだ。そんな演奏と歌声で、観客のボルテージは一気に最高潮に。 1番までを歌い終わると曲間なしで『こんなこと騒動』へと勢いよくなだれ込む。どうやら序盤はメドレーで曲を繋いでいくようだ。幻想的な照明の中で演奏された『ヒューマノイド』も曲間なしで続いた。こちらもショートバージョンだったが、それが気にならないほどに熱い演奏だ。 ドラムソロから『はゔぁ』のショートバージョンが続くと、客席から歓声が響く。ずとまよはACAねのソロユニットという扱いではあるが、バンドの演奏に湧き上がる観客を見ると、バンドとして扱ってもいいほどにサポートメンバーが重要な役割を担っていると感じる。 駆け抜けるような勢いだったメドレーは4曲目で終わったが、熱気は下がらないし勢いは留まらない。ACAねが「馴れ合いだああ!」と叫び『馴れ合いサーブ』 が始まると、観客はさらに大きな歓声をあげる。 この楽曲は今回のライブで特に音源から大きくアレンジされていた。口笛でサビのメロディを吹く曲始まりになっていて、歌い始める前にはダウン・タウン・ブギウギ・バンド『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』の歌入り前のイントロのオマージュかのようなアレンジがされていた。これもヤンキーのコンセプトに合わせたものだろうか。 1番の後もエルビス・プレスリー『Blues Sued Shose』のオマージュのような演奏を取り入れたりと、演出だけでなく演奏の中にもヤンキーのコンセプトをしっかりと取り入れている。 演出も面白い。 Open Reel Ensemble の2人が工事現場の警備員を演じ、赤い誘導灯を振る。観客はそれに合わせてしゃもじを振る。コンセプトを利用することで盛り上がりを最大化していた。 バンドによるキレッキレなジャムセッションから『残機』へと続く流れもテンションが上がる。緑色のライトセーバーを持って暴れるように歌うACAねの姿も最高だ。そんなサウンドと演出で、観客のボルテージは一気に最高潮に。 それにしても今回の演奏は裏泊が強調されたビートの編曲になっている気がする。元々ずとまよはそういった音楽性ではあったものの、その傾向が強まっているように感じた。縦揺れで盛り上げてもいい『残機』も、ほんのりと横揺れのビートになっている。それが新鮮かつ、さ様々な方向性の楽曲があるずとまよのセットリストを、ひとつのライブとして綺麗にまとめる要素となっていた。 コンビニでたむろしていたやきやきヤンキーツアーから4年で帰ってきたよ。あの頃のヤンキーほ定職につきました。 今日は東京ガーデンシアターと恵比寿ガーデンホールを間違えて恵比寿に行った人はいる?普通は間違えるよね。行った人、気をつけて。 私たちスナネコ建設は大きな扇風機のようなものを作る作業をしています。今日はいつも以上に爆走するんで、ついてこれる人は着いてきて。 スクリーンにしゃもじを叩いてとか振ってとか出てくるので、それに従ってください。 とはいえ弊社に社内規則に強制はないんで、そこんとこ夜露死苦! 今回のツアーは2020年に行われた『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』の続編的なポジションとなるライブだ。ちなみに自分は今回と同様に東京ガーデンシアターでそのライブを観ていた。そこから続く今回の設定について話をしていた。 続けて演奏されたのは『秒針を噛む』。落ちサビでは観客にしゃもじを叩かせ「小さく」「だんだん大きく」などと叩く大きさなどを指示して従わせていた。だが「客席の右から左!」という指示には観客が上手く対応できず「少し、下手」とACAねはディスっていた。しかし「歌える?」と問いかけると、観客は最高の大合唱で応える。これにはACAねも満足気だ。 そこから『ばかじゃないのに』を疾走感ある演奏で続ける。この楽曲はライブで化けた曲のひとつだ。音源ではここまで盛り上がる楽曲だとは思っていなかった。 好きなことに没頭している時間は自然で居られる時間で、それは孤独かもしれないけれど、誰にも奪えない時間だと思います。 クズリという他人と群れずに狼とかの大きな敵を倒す動物がいます。次にやる新曲はクズリについての歌です。 ゆっくりと言葉を選びながら話してから演奏されたのは新曲『クズリ念』。MCの時と同じように、ACAねは丁寧に言葉を紡ぐように歌っていた。ミドルテンポのリズムが心地よく、ピアノの音色が印象的な楽曲だ。 観客を座らせるように指示すると、ステージにそれぞれ色が違う3つの缶と、缶の色と同じ色のくす玉がセットされた。くす玉の中には曲名が書かれた紙が入っているそうだ。ミラー機関銃で缶を打ち、倒れた缶と同じ色のくす玉を割り、その中の紙にに書かれた曲名と同じ曲をやるという。 その結果、演奏されるのは『繰り返す収穫 』になった。その後「今日はししとうが入ったお弁当を食べました。辛くてよかったです」と唐突に話すACAね。曲とは全く関係ない報告だった。 この楽曲のアレンジはACAねの指示により、その場のアドリブで行うらしい。 ニラ農家のお父さんとヤンキーに目覚めた息子が争い、最終的に父もヤンキーになり、二人だあヤンキーのまま、ニラ畑を一緒に耕す物語。 序盤はカントリーで、後半は激しくロック。 このACAねの指示に、納得し理解するバンドが凄い。ニラ農家の父と息子の役を与えられたオープンリールの2人は、アドリブで台詞入りの寸劇まで披露していた。 演奏がACAねの指示通りかというと、あまりにも抽象的な指示だったため再現できているかはよくわからなかったが、とにかく素晴らしい演奏だった。音源のイメージを崩すことなく、新たなイメージを加えるような演奏だった。後半のサイケデリックになる演奏が特に素晴らしい。 「しゃもじ用意!」とACAねが言って観客にしゃもじを叩かせたりと、観客も演奏に参加させて音に彩を加えさせていた。最高のセッションを終え、ACAねは「美味しいニラが栽培できました!」と嬉しそうに話していた。 ニラ栽培によって心がひとつになったステージと客席。その一体感が残った空気の中、新曲『 海馬成長痛』が披露される。今後ライブ定番曲になりそうな盛り上がりだ。途中でACAねが柄杓で水を撒く動作をしていたが、あれはなんだったのだろう。 『彷徨い酔い温度』でもステージと客席との一体感が物凄い。ACAねの指示によりサビで演奏が速くなったら遅くなったりする都度、観客もそれに合わせ、しゃもじを振る速度を変える。観客の適応能力が高い。そんなやり取りが長く続いてどのように終わらせるのかと思いきや、唐突に演奏が止まり「終わり」と呟くACAね。これはこれでユーモアがある終わり方で良い。 ここから後半戦。ヤンキーのコンセプトを活かしてか、改造バイクが鳴らしそうなピロリロと音が鳴るホーンの音から『お勉強したいてよ』が続く。歌詞に〈ヤンキー〉という言葉が使われている楽曲なのだから、今回のツアーでやるのは当然なのだろう。 途中で観客にACAねが曲のリズムとメロディに合わせた独特な発音で「歌え!」と言って煽っていた。自分は8月に小沢健二のライブへ行ったのだが、その時の小沢健二もACAねと同じ言い方で「歌え!」と言っていた。 そのライブが行われる直前にACAねと小沢健二は対談をしていた。ACAねは今の小沢健二からも影響を受けているのだろうか。もしかしたら小沢健二の武道館にも足を運んだのだろうか。だとしたらミュージシャンからミュージシャンへ受け継がれた〈生まれて育ってくるサークル〉のひとつかもしれない。そんなことをずとまよのライブから感じ取れた。 さらにラストスパートをかけるかのように『TAIDADA』を続ける。新曲ではあるものの、観客はしっかり聴き込んできたのだろう。そう感じるほどに観客は熱く盛り上がっている。そこからACAねが「踊れ!」と叫んでから始まった『 あいつら全員同窓会』で、観客のボルテージは一気に最高潮に。 個人的に驚いた楽曲は『勘冴えて悔しいわ』だ。ライブで演奏されることが多い楽曲ではあるが、ショートバージョンで演奏されることが多かった。しかし今回はフルバージョンでしっかりと演奏されたのだ。間奏ではロカビリーロック風の演奏にアレンジされていたりと、ヤンキーコンセプトをしっかり活かされた形で披露されたのも嬉しい。 周りと合わせなくても、好きなものを磨いていくのは楽しいです。そのためには時には頑張ることも大切です。 でも頑張らなきゃいけないわけではないし、こうして生活するだけでも素晴らしいと思う。 良い部分の見せつけあいが多い社会だけど、本当は他人と比べられる基準なんてないし、自分の中にあるしょぼい部分が本当は偉大でかっこいいんじゃないかって思っています。 でもそう思えるのは自分の中で揺るがないものを見つけられた時で、そういった熱い気持ちになれているのは、こうしてきてくれるみんなのおかげです。 私たちはまだまだ研磨を続けていきます!これからもっと楽しくなるよ! ACAねが思いの丈を語ってから披露されたのは『ミラーチューン』。これが本編最後の曲だ。 リバーブのかかったリフをゆっくりと弾いてから演奏が始まるアレンジで、観客をじわじわと高揚させる始まり方だ。ラストにロングトーンのシャウトをしたりと、観客だけでなくACAねも高揚しているように見える。 全てを出し尽くしたと感じるほどに凄まじい本編だったが、アンコールも負けず劣らずに素晴らしかった。 ACAねとバンドメンバーが再登場して披露された1曲目は『虚仮にしてくれ』。最新EPに収録される新曲だ。ミドルテンポの心地よい楽曲で、緑色の照明が美しくステージを照らしていた。ティンパニーのような音が鳴ったりと、優しくも壮大な演奏が良い。 昔のヤンキーの今を必死に生きるような精神が好きで、自分もそんな気持ちでいたいと思っています 今日の楽しかった思い出とか、たくさん思い返しながら生きていこうと思います 磨きの向こう側へ行こう! やれんの!いけんの!? オラオラ系な煽りをするACAね。観客もオラオラした歓声で応える。 続けて演奏されたのは、こちらも新曲の『嘘じゃない』。アコースティックギターの弾き語りで丁寧にゆっくりサビを歌う演奏から始まったが、そこからバンドの疾走感ある演奏が加わり、再び観客のボルテージは一気に最高潮に。メンバー紹介代わりのソロ回しをバンドメンバーが行ったりと、演奏でもしっかりと盛り上げていく。ソロ回しの前に各自が「レインボーブリッジ封鎖できません!」などと一言添えてからソロで演奏していたが、あれは何だったのだろう。 今回のライブはアンコールで披露される曲が多い。2曲で大団円かと思いきや、ACAねが指揮をして村山潤がリコーダーを吹き始めた。なぜか村山がHilcrhyme『春夏秋冬』を吹いていた。 ACAねはリコーダーに合わせて歌おうとしていたが、歌詞を覚えていないらしくハミングになっていた。あれは何だったのだろう。 そこから始まったのは『正義』。ACAねの「ぶっちぎれえええ!!!」という煽りに応えるかのように観客も盛り上がる。後半のサビでては再び小沢健二の言い方で「歌え!」と言って煽っていた。そこからのACAねと観客とが掛け合うかのように歌い合う展開が楽しい。 「最後にスナネコ建設のエンディング曲をやってお別れです!『勘ぐれい』ヤンキーバージョン!」とACAねが言って最後に演奏されたのは『勘ぐれい』。説明通りに音源とは全く違いアレンジになっていた。 演奏はグランジかと思うような尖った轟音で、ACAねが気だるそうに歌う。荒々しくも気だるくてカッコいい。それはACAねが憧れる古のヤンキーの姿に通ずるものがあるのかもしれない。やはりコンセプトを大切にしつつ、そのコンセプトを音楽に反映させているのだ。 ずっと真夜中でいいのに。のライブへ行くと、毎回驚かされる。観る都度に歌も演奏も進化しているし、音源とは違う表現で、前回のライブとは違う手法で、音楽を届けてくれる。だから何度もライブを観たくなるし、いつでも初見かのような感動を与えてくれる。 特に今回はコンセプトとライブ内容の親和性が高かった。全ての曲が今回のツアーのために用意さらたかと思ってしまうほどにだ。 今回のツアーでずとまよは演奏や歌を極めただけでなく、ライブをひとつの作品として観た時の完成度まで高めてきた。ずとまよはどこまで進化してしまうのだろう。 今回のライブも冴えないリズムで踊り尽くせるような、最高の内容だった。 ■ずっと真夜中でいいのに。『やきやきヤンキーツアー2 ~スナネコ建設の磨き仕上げ~』at 東京ガーデンシアター 2024年10月16日(水) セットリスト 1.JK BOMBER2.こんなこと騒動3.ヒューマノイド4.はゔぁ5.馴れ合いサーブ6.残機7.秒針を噛む8.ばかじゃないのに9.クズリ念10.繰り返す収穫 11.海馬成長痛12.彷徨い酔い温度13.お勉強しといてよ14.TAIDADA15.あいつら全員同窓会16.勘冴えて悔しいわ17.ミラーチューン アンコール18.虚仮にしてくれ19.嘘じゃない20.正義21.勘ぐれい