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【レビュー】修二と彰『青春アミーゴ』の歌詞が素晴らしいことを改めて解説したい(感想・評価)

野ブタ。をプロデュース

 

全国のアラサーを歓喜の渦に巻き込んだニュースが届けられた。新型コロナの影響で気が滅入る出来事が続く中で、久々に元気をもらえる知らせだ。

 

『野ブタ。をプロデュース』の再放送が決定したのだ。(亀梨和也×山下智久「野ブタ。をプロデュース」特別編が4月11日、18日放送 -)

 

2005年10月〜12月に放送された人気ドラマである。山下智久と亀梨和也が演じる修二と彰が、堀北真希が演じるいじめられっ子の転校生「野ブタ」をクラスの人気者にプロデュースしていく物語だ。特別編集された総集編として再放送するらしい。

 

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特に中高生に人気が高かいドラマで影響力が強かった。修二と彰に憧れた男子は修二と同じ髪型にしたり、彰の個性的な話し方を真似をした。

 

家に帰る時は「バイセコー」「バイバイセコー」と友達と言い合った。語尾に「だっちゃ」をつけたり、意味もなく手でキツネを作って「こん!」と言ったりした。今では黒歴史である。

 

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そして野ブタにみんな恋をした。堀北真希の可愛さについて語り合った。しかし自分は戸田恵梨香が演じるまり子の方が好きだった。

 

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女子は修二と彰にキュンキュンしていた。イケメンではないクラスの男子との落差にため息をついていた。男子としては申し訳ない。

 

ドラマの内容も素晴らしかったが、今でも多くの人の記憶に残っている理由は主題歌も影響している。主題歌の修二と彰『青春アミーゴ』も素晴らしかったのだ。亀梨和也と山下智久がドラマの役名で歌った楽曲だ。

 

この曲は物凄い曲だ。J-POPシーンで語り継ぐべき名曲に思う。。

 

曲の魅力

 

『青春アミーゴ』は新しさと懐かしさを兼ね備えている。それが多くの人を惹きつけた。

 

昭和歌謡を感じるメロディ。そのメロディをラテンやスパニッシュを感じる音色の編曲で引き立てる。リズムはディスコミュージック。昭和歌謡とラテンとディスコの組み合わせはジャニーズの楽曲に多い。KinKi Kids『硝子の少年』もそれだ。最近ならSexy Zone『カラクリだらけのテンダネス』もその系譜に思う。

 

それが大人には懐かしさを感じさせて心を掴んだ。昔から耳馴染みのあるメロディや音色で惹きつけたのだ。

 

逆に若者には新鮮に感じる音楽だった。

 

2005年当時はORANGE RANGEやケツメイシ、大塚愛、木村カエラなどが頭角を現していた時期。ラップを取り入れた音楽が流行り始め、ポップスの新しい形を定義する音楽が増えていた。その中では『青春アミーゴ』は個性的で異質だった。

 

またドラマのキャラクターが歌っているということも面白い仕掛けだ。

 

二人のファンでなくてもドラマの視聴者は歌い手への親近感がわいてしまう。そのため亀梨和也と山下智久のファンだけでなく、ドラマのファンも自然と歌にのめり込んでしまうのだ。それもヒットにつながった理由に思う。

 

 

惹きつける仕掛けが多い歌詞

 

鳴り響いた携帯電話嫌な予感か胸をよぎる
冷静になれよミ・アミーゴ

 

情けないぜ助けてくれ例の奴等に追われてるんだ
もうダメかもしれないミ・アミーゴ

 

2人を裂くように電話が切れた

 

SI俺達はいつでも2人で1つだった地元じゃ負け知らずそうだろ
SI俺達は昔からこの街に憧れて信じて生きてきた
なぜだろう思いだした景色は旅立つ日の綺麗な空 抱きしめて

 

辿り着いた暗い路地裏しゃがみこんだあいつがいた
間に合わなかったごめんな

 

やられちまったあの日交わした例の約束守れないけど
お前が来てくれて嬉しいよ

 

震える手の平を強く握った

 

SI俺達はあの頃辿り着いたこの街全てが手に入る気がした
SI故郷を捨て去りでかい夢を追いかけ笑って生きてきた
これからも変わることない未来を2人で追いかけられると夢見てた

 

SI俺達はいつでも2人で1つだった地元じゃ負け知らすそうだろ
SI俺達は昔からこの街に憧れて信じて生きてきた
なぜだろう思いだした景色は旅立つ日の綺麗な空 抱きしめて

 

 『青春アミーゴ』で最も凄い部分は歌詞だ。いくつもの仕掛けがなされた完成度の高い歌詞である。

 

〈鳴り響いた携帯電話〉というフレーズで始まることからしても計算した上で書かれたフレーズであることがわかる。

 

曲のメロディや音色からは昭和歌謡曲を感じるが、歌詞では昭和には存在しない現代の物を登場させている。懐かしさの中に新しさを組み合わせることで、2000年代でなければ作ることができない楽曲に進化させたのだ。

 

〈例のやつらに追われてるんだ〉〈地元じゃ負け知らず〉などアウトローな雰囲気を感じるフレーズが続く。ポップスとしては危険な香りのする歌詞だ。

 

しかしアウトローとは無縁なアイドルが歌うことで爽やかに聴こえる。ドラマの役名で歌っているのでリアルさが減少する。リアルな状況や感情を歌うのではなく、フィクションの物語を観ている気持ちにになるのだ。そのような歌詞は珍しく新鮮だった。

 

このように歌詞には自然と惹きつけられてしまう仕掛けや新しさを感じる仕掛けがなされている。

 

 

隙のない作り込まれた歌詞

 

惹きつける仕掛けがあるだけでなく、歌詞としても完成度が高く細部まで作り込まれている。

 

一人称単数が使われずに一人称複数だけが使われている。つまり「俺」は使われないが「俺たち」は使われている。それがサビの〈2人で1つ〉というワードに説得力を持たせている。2人で1つだから一人称単数は使う必要がないのだ。

 

鳴り響いた携帯電話嫌な予感か胸をよぎる
冷静になれよミ・アミーゴ

 

情けないぜ助けてくれ例の奴等に追われてるんだ
もうダメかもしれないミ・アミーゴ

 

2人の行動や感情が歌われているが、それぞれ一人称は使われれていない。しかし一人称を使わずとも別の人物の行動や感情だとわかる歌詞になっている。これは高度な作詞テクニックだ。

 

登場人物の具体的な状況はわからない。何をしている人物かもわからない。それでも歌詞の流れで、普通とは違う危険なことをする立場にいるとわかる。具体的情景描写をせず無駄を省いた歌詞。必要最低限の描写だけで歌詞の物語を伝えている。これも実力ある作詞家でなければ書けないテクニックである。

 

SI俺達はいつでも2人で1つだった地元じゃ負け知らずそうだろ

 

登場人物の性格や心情に深入りしないのに登場人物のキャラクターや関係性も伝わってくる。サビの〈2人で1つだった〉というフレーズにも説得力を感じる。無駄がないのに個性もある完璧な歌詞だ。

 

そしてドラマともリンクする歌詞になっている。

 

なぜだろう思いだした景色は旅立つ日の綺麗な空 抱きしめて

 

『野ブタ。をプロデュース』の最終回を観ると、このフレーズに特別な意味を感じるようになる。『青春アミーゴ』が泣ける感動的な曲に変化するのだ。ドラマ主題歌であるべき理由もある歌詞なのだ。ポップスとしてだけでなく、ドラマ主題歌としても完成度が高い歌詞なのだ。

 

きっとドラマを最後まで見た後に『青春アミーゴ』を聴いたら、ふと空を見上げた時に浮かんでいた雲が笑っているように見えるかもしれない。