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【ネタバレあり感想】日向坂46ドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』で印象に残った名シーンと残念に思った部分について

※ネタバレあり

青春の馬

 

日向坂46が先日行った無観客配信ライブ『HINATAZAKA46 Live Online,YES!with YOU!~“22人”の音楽隊と風変わりな仲間たち~』は最高だった。

 

メンバーのパフォーマンスはもちろん、演出やセットやライブ構成も凝っていて作り込まれている。生のライブで観れなかったことを心底後悔するようなライブだった。

 

素晴らしいライブではあったが、ライブの内容で一つだけ疑問がある。

 

それは『青春の馬』を前半と後半に1回ずつ、計2回パフォーマンスしたことだ。

 

青春の馬

青春の馬

  • 日向坂46
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

メンバーが主演したテレビドラマ『DASADA』の主題歌ではあったのでコアなファンでなくても馴染みのある曲かもしれない。しかしシングルのカップリング曲だし、テレビの歌番組で歌われたことは少ない。他のシングル曲や代表曲とは違う立ち位置の楽曲に思う。

 

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しかし日向坂46ドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』を観て、2回歌われた理由を理解した。

 

この曲はメンバーにとって特に思い入れの強い楽曲で、特別な想いを持ってパフォーマンスしている楽曲なのだ。

 

日向坂46 青春の馬

 

この曲は日向坂にしか歌えないし、今の日向坂だからできる曲。センターの小坂菜緒が、体調不良で活動休止していて今作で復帰した濱岸ひよりの手を引いて出てくる振り付けがある。日向坂は目の前に困難があったら「みんなで一緒にいこうぜ!」って協力して引っ張っていく。誰かが傷ついたらみんなで助け合う。みんなで手を握り合いながら協力して進んでいく。それが日向坂の魅力。

 

メンバーだけでなく関係者にとっても特別な曲なのかもしれない。振り付けを担当したダンサーのTAKAHIROは映画内で振り付けに込めた想いや日向坂のメンバーやグループに対しての想いを語っていた。

 

その想いをメンバーも感じ取ったのだろうか。初めて曲を聴いて振り入れをするシーンで、メンバーはみんな涙を流していた。

 

「日向坂の向かう方向が決まった気がした」

「誰かに希望を届けるというか、笑顔でハッピーを届けるけど、前に進む力を与えるのが日向坂の役割と確信した」

「自分も音楽に助けられてきたから、今度は自分たちが音楽で救える立場になれたらなと思った」

 

『青春の馬』についてメンバーはそれぞれこのように語っていた。

 

その言葉は今まで続けてきた活動が間違っていなかったことと、自分たちの役割や強みを確信したように聞こえる。力強い宣言をしているように感じる言葉だ。

 

君はずっと信じるんだ いつかみたあの夢
目を開けても 消えない夢 現実の世界だ 
そこに行けば 何があるのか 誰もわからない
辿り着いたその瞬間 考えが 欲しかったものまで
変わるのさ青春の馬

(青春の馬 / 日向坂46)

 

 

結成直後の「欅坂46の2軍」扱いをされ、人気もなく報われないことが多かった時から、現在まで走り抜けて状況を変えていった現在について歌ったような歌詞。だからこそ今の日向坂46にとって特別な曲で、彼女たちが歌うべき曲なのだ。

 

初披露したライブに特別な意味があったことも『青春の馬』が特別な曲になった理由に思う。

 

2月に横浜アリーナで行われた『日向坂46×DASADA LIVE&FASHION SHOW』で初披露された『青春の馬』。このライブは濱岸ひよりの復帰ライブでもある。

 

濱岸が登場した瞬間に客席から大歓声が湧き上がる。メンバーが全力で笑顔でパフォーマンスする。涙は流しながらパフォーマンスをする浜岸ひより。それをこの日『青春の馬』でセンターを務めた金村美玖がパフォーマンス中に手を取り一緒に前に出てくる。振付師のTAKAHIROが特別な想いを込めた振付部分だ。

 

「休んだせいでみんなと差がつくから戻らないほうがいいと思ったけど、みんなが優しく迎え入れてくれたから、このメンバーだから自分も戻ることができた」と濱岸は語っている。

 

この日の『青春の馬』を観れば濱岸が復帰できた理由がわかるようなパフォーマンスだった。

 

「ひよたんお帰り!みんな帰ってくるのを待っていたから一緒にパフォーマンスできることが嬉しいです。また一緒にがんばろう!」

 

パフォーマンスが終わった後のメンバーの言葉が優しかった。TAKAHIROが「みんなで手を握り合いながら協力して進んでいく」と日向坂について語っていたことに説得力を感じた。競争ではなく協力をするグループなのだ。

 

「ライブに出れないことは悔しいし悲しいけれど、わたしがいなくても盛り上げてくれる頼れるメンバーがいて信頼しているから、応援の気持ちに変わりました。でも早く一緒にやりたいなあ」

 

映画の撮影のためライブに参加できなかったセンターの小坂菜緒の言葉も印象的だった。

 

その言葉からはメンバーとの絆を感じる。他のメンバーは小坂の想いを汲んで心配させないようにと、小坂の穴を埋めるように気合を入れて最高のパフォーマンスしていた。それは特に『青春の馬』でのパフォーマンスに現れていたのだと思う。

 

だから『青春の馬』は日向坂46にとって特別な楽曲になり、先日の配信ライブであえて2回もパフォーマンスしたのだろう。

 

『青春の馬』のエピソードは時間にして10分弱のシーンだ。映画内ではほんの一部のシーン。

 

この記事では『3年目のデビュー』を観た全体の感想を書こうと思っていたが、すでにこのシーンの感想だけで1,700文字以上書いてしまった。このシーンに映画を観る価値の全てが詰まっているとすら思えたので、これほどの文字数を費やしてしまった。

 

このシーンだけで映画のチケット代の元は取った。このシーンがあるからこそ全てのファンに観て欲しいと思った。

 

深い内容はないドキュメンタリー

 

それほど深い部分まで突っ込んだ内容は存在しない映画だ。ほとんどの内容が過去のインタビューやブログの投稿、その他メディア等の情報でファンも知っているものが中心。

 

今年の3月に発売された『日向坂46ストーリー』という書籍に書かれていることを映像にしている感じだ。120分という時間制限があるので、書籍の内容を薄めて伝えている部分もある。そこに今年の活動についての部分を加えてドキュメンタリーにしたような内容だ。

 

そのためコアなファンならば知っている内容ばかり。前述した『青春の馬』のエピソードも内容自体はメンバーのインタビューやブログなどで既出だ。だから新しい情報や意外な話を求めている人にとっては薄い内容に感じるだろう。

 

どちらかというと最近ファンになった人やや、グループのことをほとんど知らない人のほうが純粋なドキュメンタリー作品として楽しめるかもしれない。

 

しかしコアなファンも映像で観ると知っている内容だとしても、当時の状況やメンバーの気持ちや関係者の想いがリアルに伝わってくるはずだ。

 

例えばメンバーの目標でもある東京ドームでのライブが決まったことを知らせた2019年の『ひなくり2019』でメンバーが泣いて抱き合って喜ぶ映像や、東京ドームについて歌った『約束の卵』の歌唱シーンは映像で観るからこそ感動的になっていた。

 

約束の卵

約束の卵

  • けやき坂46
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

また紅白歌合戦初出場を会議室でスタッフから聴かされた時、表情を崩さずに真っ直ぐで真剣な眼差しで話を聞いているメンバーの姿は以外ではあった。それまでとは違う力強さを感じる姿だった。それは様々な経験をして少しづつ夢を叶えていったグループの成長を感じるシーンでもある。

 

日本レコード大賞に『ドレミソラシド』が優秀作品賞に選ばれ、生バンドでパフォーマンスするシーンも映像で見せる意味があるシーンだ。「いつもよりも多くの人が観てくれる番組だから、記憶に残るようにパフォーマンスしましょう!」とメンバーに言葉を投げかけ気合を入れるキャプテン佐々木久美の言葉は映像だからこそ力強く感じる。

 

  ――やはり「全員」がキーワードの一つですね。

 

キャプテン(佐々木久美)はみんなに支えられているんですよ。センター(小坂菜緒)は後ろのメンバーに支えられている。小坂さんは性格的に前に出る子ではないと思うんですけど、何でセンターとして成り立っているのか。それは、やっぱりグループ全体の中に秘密があると思います。誰を推していても楽しいグループだし、単推し(一人のメンバーを応援)を作らなくても楽しいと思います。このグループのこの子たちを見ているだけでほっこりするというか。それがこのグループの良さであり、他のグループにはないところですよね。

(引用:日向坂46は「競争ではなく全員が肩を組んで進んでいる」<映画「3年目のデビュー」監督Interview> )

 

監督がこのように語っているように、出来る限り全員に視点が当たるように編集されているように感じた。宮田愛萌の出番は少なかったけれども。

 

  

メンバーの誰か一人が主役ではなく全員が主役で、全員で成り立ってるグループだと伝わってくる映像だった。宮田愛萌のコメントは1回しか使われなかったし、ライブのリハで階段で転けて泣いているところしか見せ場はなかったけれども。

 

そしてメンバーの素の部分をしっかり映しつつも、メンバーが見せたくないであろう部分は見せないようにしていたし、メンバーが傷つくであろう編集は一切なかった。愛を持って撮影と編集をしていたのだと思う。

 

宮田愛萌の出番が少なかったことは気になるけれども。

 

  

 

卒業したメンバーについて

 

卒業したメンバーについても取り上げて、卒業メンバーの活動もしっかり伝える作品でもあった。現メンバーの宮田愛萌よりも出番が多かった。本当に愛萌の出番が少なかった。

 

けやき坂46の結成のきっかけでもある長濱ねるが欅坂46の活動に専念するため、けやき坂46から離れることも映像にされている。

 

日向坂46名義での初ライブを行った横浜アリーナでのライブに足を運んだ長濱ねるが、欅坂46を卒業しアイドルを辞めることを日向坂46に伝えるシーンも映像になっていた。かつて一緒に活動してきた大切な仲間の決断に、メンバーは涙を流していた。

 

日向坂46にとって初の卒業生となった柿崎芽実がメンバーに卒業を伝えるシーンや、最後の握手会でファンに挨拶する場面もある。

 

そこでは柿崎芽実が「ストーカー被害にあって活動することが怖くなった」と話したこともしっかりと映像に収めていた。一部にメンバーを傷つける最低な奴がいることをしっかり映像として残して伝えている。

 

メンバーに「本当に楽しいアイドル生活でした」と笑顔で語り、最後の握手会でファンに挨拶した時も笑顔だったが、悔いは残っていないだろうかと想像すると、やるせない気持ちになった。

 

アイドルとしてやり残したことや、実現したかった夢もまだあったと思う。一部の”自称”ファンが彼女の夢を壊して仕事を奪ったことは伝えるべきことである。

 

井口眞緒が活動自粛をメンバーに伝えるシーンや、卒業を決めたことをメンバーに明かすシーンもあった。

 

彼女はネットメディアに男性と一緒にいる写真を撮られたことがきっかけで、スタッフに活動自粛したいと伝えて活動を自粛した。アイドルの恋愛については賛否が分かれることで、個人的には謝る必要はないとは思うが、井口が写真を撮られてメンバーに迷惑をかけたと謝罪したシーンも映像になっている。

 

しかしメンバーは怒ることなく「休んでいる間、ダンスを練習しとくんだよ」とダンスが苦手な井口を励ましたりと優しい言葉をかけている。彼女の帰りをみんな待っていた。

 

半年の活動自粛期間を経て、結局グループを辞める決断を井口は選んだ。怒るメンバーがいてもおかしくないことかもしれない。また一緒に活動できることを信じていたと思う。しかしメンバーは涙をながしつつも彼女の決断を支持して送り出していた。

 

井口が辞めた理由については語られていない。写真を撮られたことがきっかけだとは思うが、メンバーもスタッフも戻ってくることを望んでいたので、それだけが理由ではないと思う。

 

ファンとしては気になる部分であるし、ドキュメンタリー監督ならば理由を探るために手停的に取材することが普通かと思う。しかしそれを映画内に残さなかったことも、メンバーを想って監督の優しさかもしれない。『3年目のデビュー』には監督やスタッフのメンバーへの愛であふれている。

 

だからこそ宮田愛萌をもっと映してあげる優しさも監督は見せて欲しかった。

 

 

エンディングに選ばれた曲について

 

最後はメンバーが河原を仲良く歩き、手を繋いでジャンプをするシーンで終わる。まさに全員が手を取り合って前に進んでいった日向坂46の姿を表しているようなエンディングだ。

 

エンディングで流れた楽曲は『車輪が軋むように君が泣く』。

 

車輪が軋むように君が泣く

車輪が軋むように君が泣く

  • けやき坂46
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

けやき坂46時代の楽曲でシングル表題曲でもないしMVも制作されていない。『約束の卵』のように特別な意味が込められた楽曲でもない。最後にこの曲を流すことは意外ではある。

 

人生なんていつだって
何が正しいかわからない
僕ら10年後どうなるか
自分で道を拓こう

古い車輪が軋む
次の世代は新しいレールの上
夢追いかけどこまでも走れるはず
信じるまま 思うままに 回せ車輪

(車輪が軋むように君が泣く / けやき坂46)

 

しかし歌詞を読めばエンディング曲に選ばれた理由がわかる。

 

希望にあふれた歌詞で背中を押す力をくれる歌詞。それはファンの背中だけでなく、メンバーの背中も押してくれる歌詞に思う。しっかりとメンバーと向き合って映画を創ったからこそ選ぶことができた選曲だ。

 

そして『3年後のデビュー』では〈信じるまま 思うままに 回せ車輪〉を体現したグループの姿と歴史が映っている。その映像に感動してしまう。

 

 最初から最後までグループの魅力が伝わるドキュメンタリー作品だった。競争し合うのではなく協力し合うメンバーの絆の深さを感じる映画だった。

 

だからファンとしては不満がほとんどない作品で、日向坂46の歴史を丁寧にまとめてくれて、メンバーの背中を押してくれる作品になっていることに感謝をしたいとすら思う。だからこそ多くの人に観てほしい。

 

しかし不満もある。一つだけどうしても残念に思う部分がある。

 

 

それは俺たちの宮田愛萌の出番が少なすぎることだ。

 

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