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【ライブレポ・セットリスト】日向坂46 四期生『おもてなし会』at 幕張メッセイベントホール 2023年2月12日(日)

そういえばコロナ禍になってから声出しが解禁された日向坂46のライブは、幕張メッセイベントホールで開催された四期生による『おもてなし会』が初めてになった。

 

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とはいえ出演者は去年9月に加入した四期生メンバーの12人のみ。11月のライブに一部出演していたものの、ガッツリと2時間以上ステージに立つのは初めてだ。今回は四期生がファンに生の現場でお披露目される場であり、約5ヶ月間の活動で「ファンを満足させるだけの力がついたか」が試される場でもある。

 

開演数分前にメンバーによる注意事項のアナウンスが流れた。担当したのは小西夏菜実と竹内希来里と平尾帆夏の3人。言うべき言葉を噛んでしまったりと、たどたどしいアナウンスではあった。しかしおひさま(ファンの総称)は優しい。注意事項の全てに「はーい!」と元気よく答えていた。もちろんイベント中もメンバーが伝えた注意事項をしっかり守って楽しんでいた。とても良いファンだ。

 

開演前のアナウンスはたどたどしかったものの、イベント中のメンバーはアイドルとして仕上がった姿を見せていた。オープニング映像が流れてからメンバーが五十音順に順番に登場したが、全員が自分のアピールしたいポイントをしっかりと伝え、自身の個性をしっかり伝えた上にアイドルとしてキラキラしたオーラでおひさまを魅了している。

 

しかし彼女たちのアピールは個性が強すぎてぶっ飛んでいるものが多かった。

 

石塚瑶季はハンドスプリングをした後に「自らに闘魂を入れる」ことを理由に読売ジャイアンツの応援歌を歌い、岸帆夏は自身の推しメンタオルを足の指で掴み涙をふくパフォーマンスをしてから、ダンゴムシのモノマネをした。文字で読むと何をやっているのかわからないと思うが、実際に見ても「何をやってるんだ?」と思ってしまうアピールだ。しかしインパクトが強くて一発で覚えてしまう。小西夏菜実はクオリティの低い加藤史帆のモノマネを関西弁で披露した。

 

そんな中でも真面目なアピールをして爪痕を残そうとするメンバーもいた。清水理央はアカペラで『永遠の白線』を歌い正源司陽子はフルートで『ドレミソラシド』を吹いてアピールをした。竹内希来里のフリップを使ったアピールも印象的で良い。平尾帆夏はサインボールを客席にバットで飛ばすと言ったものの空振りしまくっていた。最終的に投げて飛ばそうとしたものの、床に叩きつけていた。サインボールはファンの元へは行かなかった。

 

やはり特技を披露するメンバーが多いようだ。平岡海月の中国語を披露し、藤嶌果歩も特技の書道を披露した。しかし書いた言葉は「羊」という文字。シュール。宮地すみれも特技のバトントワリングを行い、山下葉留花は三線で『NO WAR in the future』を演奏した。タイプの違う様々な特技を持つメンバーが揃っているようだ。そんな中で最年少の渡辺莉奈は特技ではなく、あいうえお作文を披露した。それはそれでアイドルらしくて可愛い。

 

清水が四期生のリーダー的なポジションなのだろうか。MCでの回しは彼女が中心になって行っていた。加入して数ヶ月とは思えない堂々とした佇まいで話を進めている。他のメンバーもリラックスした様子でじゃれあったりリハーサルでの思い出を語っていた。岸帆夏はリハーサルでダンゴムシのモノマネを失敗していたらしいが、ダンゴムシのモノマネに失敗というものが存在することに驚いた。

 

ここからいくつかの「おもてなし」を行うことを改めて伝え、ステージ脇に置かれためくりがめくられる。そこには「伝統のパフォーマンス」と書かれていた。かつて先輩メンバーが挑戦したパフォーマンスに挑戦するとのことだ。ちなみに墨汁で書道紙に書かれた文字は、書道が得意な藤嶌が書いたという。達筆ではあるものの、右隅に自身のニックネームの「かほりん」を感じで小さく「果歩臨」と書いていた。この子、色々な意味ですごい。

 

まずは石塚、小西、清水、竹内、平尾、藤嶌の6人が「伝統のパフォーマンス」としてマーチングドラムを披露した。全員の演奏だけでなくソロプレイもあったりと、しっかりと演奏をして楽しませる姿が印象的だ。動きも凝っていてダンスを踊るように動いたり、隣のメンバーのドラムを叩くコンビネーション技を使ったりと、と音だけでなく動きでも楽しませる。

 

岸、正源司、平岡、宮地、山下、渡辺の5人はフラッグやライフルを使ってカラーガードを華麗に披露した。ダイナミックな大技も披露したりと、しっかり伝統を引き継ぎ進化させるようなパフォーマンスだ。おそらくそうとう練習したのだろう。

 

そしてラストは12人全員で一体感ある激しダンスパフォーマンスを披露した。彼女たちのダンスは先輩メンバーと比べても引けを取らないぐらいに求心力と迫力がある。まだアイドルになって数ヶ月の12人ではあるが、アイドルとしてしっかりスキルを身につけていることが窺える。

 

これらのパフォーマンスは先輩メンバーである佐々木久美と東村芽依が練習現場に来て、直接指導やアドバイスを行ったらしい。今回ステージに立つのは四期生だけだったが、先輩メンバーと共に作ったステージでもあるのだろう。それに関係者席では先輩メンバーが四期生を見守るように見ていた。すでに四期生も日向坂46のメンバーとして打ち解けているのだろう。

 

続くおもてなしは「いきなり即興劇」。先ほどの「伝統のパフォーマンス」は相当な練習をしたとのことだったが、とうぜんながら即興劇なので何の練習もしていないし、何をやるかも直前までわからない。

 

まずは石塚と清水が「付き合いたてのカップルが、英語しかしゃべれない場所へ海外旅行に行って、大雨が降ってきてびしょ濡れになって告白した」というシチュエーションで即興劇を行った。突然ハワイにワープしたり「雨が止んだ後は虹が見えるんだよ」と石塚がキザなセリフを言ったものの失笑されてしまったりと、即興劇だからこそのシュールな空気になっていた。

 

そんなシュールな空気はひたすらに続く。宮地と岸は「声が大きい店員さんとお客さんが、遊園地に遊びに行ってとても面白い駄洒落を言ってしまった」というカオスな設定で即興劇を繰り広げた。最終的に「ぐるぐるくるま」という駄洒落にもなっていない意味不明な言葉で劇は終わった。

 

小西と正源司のペアもシュールな即興劇だった。2人のお題も「優しい部活の先輩と後輩が、キャンプ場で料理をしていると、大勢の敵が襲ってきたがふたりでやっつけた」というシュールなもの。料理部の先輩後輩の設定で劇を進め、ライバル校がやってきたからかれーの具材を投げつけて倒すという謎の話だった。そして「小西は料理が全然できない」という暴露を藤嶌からされた。

 

会場の幕張メッセイベントホールは約8000人キャパだ。後方の座席は肉眼でメンバーの表情までは見ることができないだろう。そんな観客にとっては続くおもてなしの「私服ファッションショー」は嬉しかったはずだ。なぜならメンバーが私服でスタンド席を前から後ろまで練り歩く「おもてなし」だったからだ。これならばステージから離れている観客もメンバーを間近で見ることができる。会場全体が歓喜で湧き上がる中でファッションショーは終了したが、続くおもてなしが「ミニライブ」だとわかると、会場はこの日一番と言える歓声が湧き上がった。日向坂46はライブでこそ最も輝く。四期生が最も輝く姿もライブであるはずだ。

 

四期生が加入してから現在までの歴史を捉えた映像が流れて『overture』が流れ、観客はさらに大きな歓声をあげる。そんな最高の空気感の中でメンバーが『ブルーベリー&ラズベリー』の衣装に着替えて登場した。その衣装でパフォーマンスする1曲目は、予想通り『ブルーベリー&ラズベリー』。ステージに背を向けたメンバーは、イントロに合わせて順番にくるっと前を向く。その表情はみんな初々しくも満面の笑みでキラキラしている。そんな表情と同じぐらいにパフォーマンスもキラキラしていた。クオリティはめちゃくちゃ高いとは言えないかもしれない。しかしアイドルとして魅力的で求心力がバツグンの最高のパフォーマンスだ。

 

1曲終えてMCに入ったが、メンバーはこの日一番に感じる笑顔で客席を眺めていた。自分達のパフォーマンスを楽しんでもらえていることを、しっかりと感じ取ったのだろう。トークもリラックスしていて「ブルーベリーとラズベリーのどっちが好きか」をおひさまにアンケートを取ったり「『ブルーベリー&ラズベリー』のパフォーマンスはメンバー同士で目があうから楽しい」と言った話を楽しそうにしている。

 

ここからは先輩メンバーが歌いついできた日向坂46の楽曲が四期生だけで披露された。まずは正源司がセンターに立ち『ドレミソラシド』がパフォーマンスされた。指揮者のように華麗に腕を振るダンスを華麗に見せる姿はセンターにふさわしい華がある。ドレミでなく正源司にやられてしまう。彼女はグループ全体のセンターとして立つ未来があると感じるほどにエース級のオーラがあった。

 

『キュン』では藤嶌がセンターにたちキュートに舞い踊る。彼女の可愛らしい笑顔は、この曲のセンターだとより映える。サビ前の「かわいい」という台詞は小坂菜緒とは違いぶりっ子感に溢れた言い回しだった。この瞬間、彼女の沼に落ちたおひさまは少なくないだろう。2番の「好きだよ」の台詞は正源司だった。こちらのささやくような言い方もキュンとしてしまう。自分はこの瞬間、正源司の沼に落ちた。

 

先輩の曲でセンターを務めた正源司と藤嶌はパフォーマンス後に感想を述べていた。正源司は「本当に大好きな曲で、最初の合奏の振り付けの時にみんなの顔を見た時、みんな満面の笑顔で、すごく楽しかったです!」と笑顔で語り、藤嶌は「合宿でピュアな表情を出そうとしていて、そうやって頑張ったことが今日発揮できたと思います」と語る。

 

他のメンバーもセンターへの憧れがあるのだろうか。MCでは宮地の提案により山下、宮地、石塚、渡辺が順番に『キュン』の台詞パートを順番に言っていく場面もあった。それぞれが違うニュアンスで表現していて、それぞれにかわいい。勝手にキュンとしてしまった。

 

可愛らしいパフォーマンスを繰り広げていたが、美しく魅せるパフォーマンスも彼女たちはできる。小西がセンターを務めた『こんなに好きになっちゃっていいの?』では、大人っぽいダンスと妖艶な表情で魅了した。最初の自己紹介で加藤史帆のクオリティ低いモノマネをした子と同一人物とは思えないクールさを小西は見せていた。

 

そのまま曲間なしでダンストラックが流れ、メンバーがダンスパフォーマスを披露した。ソロダンスを繋いだりメンバー全員で一体感あるダンスをしたりと、そこにはイベント前半で見せた初々しさやたどたどしさはない。アイドルとしてだけではなく、パフォーマーとしても成長しているのだろう。

 

続く曲は『青春の馬』。かつて先輩メンバーが「グループの進むべき道がわかった」と語るほどに、グループにとって重要な楽曲だ。四期生にとっても合宿で練習を続けた大切な曲である。センターに立ったのは清水。彼女の力強いダンスに引っ張られるように、メンバー全員が力強く迫力あるパフォーマンスを魅せる。アイドルとしてキラキラしているだけでなく、力ぢょさでも圧倒させる。それが日向坂46の強みのひとつだ。それが四期生にもしっかりと受け継がれている。

 

『青春の馬』のパフォーマンスを終えると、メンバーが一人ずつ順番に、イベントの感想とグループへの想いを語っていった。ほぼ全員が目に涙を滲ませながら語っていた。特に岸は号泣しており「話したいことが飛んじゃったんですけど」と言いながらも、自分の言葉で想いを語り「日向坂46に入れてよかったです」とはっきりと話していた姿が印象的だった。

 

自分が特にグッときたのは正源司の言葉だ。彼女は「つらいとか苦しいと思っている人の背中を押すのではなく、そんな人のただ隣にいるアイドルになりたい」と語っていた。その言葉に自分は心をつかまれた。自分がアイドルに求めていることが、これだからだ。

 

最後に披露されたのは『JOYFUL LOVE』。客席はいつものライブと同じようにおひさまたちがペンライトの色を座席ブロックごとに色を変えて、客席全体を虹色に照らしている。そんな景色を見ながら、メンバーが懸命に歌い踊る。涙声になってしっかりと歌えなくなっているメンバーもいた。しかしこの日のパフォーマンスで最も想いが伝わる歌声でもあった。そんな中でもセンターに立つ宮地は凛とした表情をしていた。佇まいでメンバーを引っ張っているように見えた。

 

パフォーマンスの最後には泣いていたメンバーも笑顔になり、満足げな表情でステージを去っていった。12人のパフォーマンスに心を打たれたおひさまたちも、マスクで顔は隠れているものの同じようにみんな笑顔だったと思う。

 

アンコールに応えてグッズのTシャツを着て再登場したメンバー。しかし「やれる曲は全部やっちゃったんですよね」と話す清水。そこで四期生曲の『ブルーベリー&ラズベリー』がもう一度披露されることになった。

 

そのままパフォーマンスに移ろうとするものの、山下が「ここで円陣を組みたい!」と提案し、普段はステージ裏でやっている円陣を急遽ステージ上で行うことになった。

 

「空まで届け! ぽかぽかキュン! ひとりじゃない、仲間と共に高く跳べ! 日向坂46!」という掛け声が、マイクを通していない生の声なのに、会場全体に大きく響く。それに対しても盛大な拍手が贈られる。まさに「ぽかぽかキュン」な空気で会場が満ちている。

 

最後に披露された『ブルーベリー&ラズベリー』は、1回目よりもずっと華やかでキラキラしていた。そんな姿を観て、おひさまは元気をもらっているのだろう。おひさまの声援やコールも大きくなり、それがメンバーに力を与えているようにも感じる。演者とファンとでお互いに支え合っているのだ。このパフォーマンスが、今回のイベントで最も心を打つものだったし、メンバーにとってもおひさまにとっても忘れられないものになったと思う。

 

約2時間50分という長尺のイベントだった。しかし初々しいメンバーは、見事にイベントを成功させた。そして彼女たちが日向坂46にとって必要な12人であることを、しっかりとおひさまに伝えた。

 

似てるような全然似てない12人は、友情でも恋でもないアイドルとファンの関係性を、既に築けていた。

 

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■日向坂46 四期生『おもてなし会』at 幕張メッセイベントホール 2023年2月12日(日) セットリスト

01. ブルーベリー&ラズベリー
02. ドレミソラシド
03. キュン
04. こんなに好きになっちゃっていいの?
05. 青春の馬
06. JOYFUL LOVE
<アンコール>
07. ブルーベリー&ラズベリー