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【ライブレポ・セットリスト】乃木坂46 vs サンボマスター『箭内道彦60年記念企画 風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ“FURUSATO”ひとりひとりに、ひとりひとりのふるさとがある。』at さいたまスーパーアリーナ 2024年3月30日(土)

乃木坂46とサンボマスターが対バンをする。その知らせを聞いた時は驚いた。なんせ国民的王道アイドルグループと、ライブハウスを活動の軸とする熱いロックバンドの組み合わせなのだから。

 

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『風とロック』を主催する箭内道彦が、自身の還暦を記念して開催したイベントのひとつとして、この対バンは行われた。彼と交流があるアーティストが集められたからこそ実現したのだろう。

 

2日間に渡り全4公演の対バンライブが行われたのだが、初日の初回が乃木坂46とサンボマスターの対バンだった。イベントの開幕を飾る初っ端が、最も意外でカオスな組み合わせの対バンだったのだ。

 

乃木坂46

 

先攻は乃木坂46。今回のライブは5期生は不参加で、3期生と4期生のみでパフォーマンスが行われた。対バンイベント自体だけでなく、メンバー編成も珍しいライブだ。

 

参加メンバー全員の紹介映像を使った特別バージョンの『Overture』が流れると、客席一面がペンライトの光で埋めつくされ、ワンマンと変わらないほどに大きなコールが会場に響き渡った。観客の9割ほどは乃木坂46を目当てにしているのかもしれない。

 

そんな空気の中で始まった1曲目は山下美月がセンターに立つバージョンの『ガールズルール』。いきなり盛り上がること確実のライブ定番曲から始まったからか、ステージの音をかき消すほどの大きなコールの声が響く。大きさはワンマンと変わらない。そんなロックとは傾向が違うアイドル現場の熱気に、サンボマスターのファンは驚いたのではないだろうか。あと矢久保美緒がツインテールなのも良い。

 

さらに『インフルエンサー』を賀喜遥香と遠藤さくらのダブルセンターで続ける。今度は盛り上げるだけでなく、紫色の妖艶な照明の中でダンスで魅せるパフォーマンスだ。こちらも知名度の高いヒット曲だし、矢久保美緒はツインテールだし、初めて乃木坂46を観ても楽しめる選曲やパフォーマンスを意識しているのだろう。

 

『シンクロニシティ』とまたもやヒット曲を続けるところからしても、今回の乃木坂46は“確実に勝ちにきた”と、ファンは察したはずだ。センターの梅澤美波を囲むように3期生と4期生の全員が踊る姿は迫力があり圧巻だ。

 

特に繊細な表現でパフォーマンスするメンバーだけに明るい白い光が当たる演出は、あまりにも幻想的な景色で美しかった。彼女たちは盛り上げるだけでなく、魅せるパフォーマンスもできるし、矢久保美緒はツインテールもできるのだ。

 

乃木坂46は対バンライブを行ったことがほとんどない。それもあってか「少し緊張しています」と話す梅澤。遠藤さくらも少し緊張した面持ちで「盛り上げられるように頑張ります///」と話す。ツインテールの矢久保美緒は、笑顔で佇んでいる。

 

対してファンは緊張した様子がない。むしろいつも以上に調子に乗っている。過去に例を見ない対バンライブに高揚しているようだ。「初めて乃木坂46のライブを観た人!?」とメンバーが尋ねた時に、乃木坂のグッズを身にまといペンライトを掲げている観客だらけだったことが証拠だ。嘘をつくぐらいに調子に乗っている。だがそんなお調子者のファンが良い空気を作っているとも言える。

 

「普段はアイドルなのでかわいい部分を見てもらいたいんですけど、今日はわたしたちの風のようなカッコよさと、ロックなカッコよさを見て欲しいです!」と語る賀喜遥香。少し照れながら話していたので、早速「かっこいい姿」ではなく「かわいい姿」を見せつけてしまっている。

 

ここで3期生がステージから履けて4期生だけが残った。期別曲を披露していくようだ。披露されたのは『キスの手裏剣』。始まった瞬間に観客の歓声が湧き上がり、メンバーは飛びっきりのかわいい表情をしながら、かわいらしい歌とダンスでパフォーマンスする。「かっこいい姿を見て欲しい」と言っていたのに、4期生曲の中でも特にかわいい曲が披露されるという矛盾。しかも矢久保美緒はツインテールでかわいさが倍増だ。

 

しかし「自らの一番の武器であるかわいさ」で勝負する姿は、アイドルとしてブレないカッコよさがある。この楽曲は遠藤さくらがセンターに立っていたが、自信なさげに「盛り上げたいです///」と言っていたとは思えないほどに堂々とかわいいパフォーマンスをしている。

 

そんな“”乃木坂46の一番の武器”は連続で使われた。田村真佑が「盛り上がれますか?もっと声出せますか?かわいい曲やります!」と煽ってから披露されたのは『猫舌カモミールティー』。こちらもひたすらにかわいい曲だ。

 

「かっこいいところを見て欲しい」という発言の矛盾はさらに強まってしまうが、かわいい乃木坂46をこれでもかと見せつけることで、サンボマスターのTシャツを着た観客も魅了している。

 

ここでようやく賀喜の発言に説得力が生まれた。なぜなら畳み掛けるように続いた曲が『ジャンピングジョーカーフラッシュ』だからだ。

 

元TOTALFATのKubotyが作曲した勢いあるロック楽曲で、メンバーはロックバンドのように激しくパフォーマンスしている。筒井あやめが「わたしたちに続いて歌ってください!」と言った後の大合唱も楽しい。Rolling Stonesの名曲タイトルをオマージュしたロック調の楽曲ということもあり、おそらくサンボマスターのファンに最も響いた楽曲だったのではと思う。

 

さらに「まだまだ声出せますよねえ!?」という賀喜の挑発的な煽りから『I see...』が続く。大きなバズを巻き起こした楽曲だからか、曲が始まった時の観客の歓声も大きい。

 

メンバーがステージ両サイドまで出てきて観客に近づくと、またもや賀喜が「一緒にうたえますか!?もっと行けますよねえ!?」と挑発的に煽り、再び大合唱が会場に響く。会場は多幸感と熱気に満ちていた。このような景色をパフォーマンスで作り出す乃木坂46は、間違いなくカッコイイ。賀喜の言葉は有言実行されたし、ツインテールの矢久保美緒もカッコよかった。

 

ここで3期生にバトンタッチ。3期生だけで披露されたのは『三番目の風』。彼女たちにとって、特に大切な楽曲のひとつだ。貫禄も感じるクールなパフォーマンスで魅了しつつも、観客にシンガロングさせるほどに盛り上げていた。

 

だが岩本蓮加が「まだまだ声を聞かせてください!」と叫んでから始まった『トキトキメキメキ』では、明るくポップな楽曲をかわいらしいダンスで表現していた。真逆の印象の曲を続けてら多彩な魅力を伝えているのだ。

 

伊藤理々杏が「全部出し切ってください!」と叫んだ『僕の衝動』では、再びクールなパフォーマンスを繰り広げる。最後は『乃木坂工事中』で何度も話題になっていた伊藤理々杏のキメ顔てんこ盛りパフォーマンスで曲が締められた。

 

この日最も盛大なクラップが会場に響き渡っていた『僕が手を叩く方へ』は、会場が最もひとつにまとまった楽曲だったと思う。

 

特に後半に久保史緒里が「もっと!もっと!」と手拍子を煽り、メンバーのアカペラと観客の手拍子だけが会場に大きく響いた景色が忘れられない。乃木坂とサンボマスターのどちらのファンかなど関係なく、会場がひとつになっ音楽を聴いていた。あの空間はこの組み合わの対バンでなければ生まれなかっただろう。

 

アイドルはロックファンにバカにされがちだ。しかし良いパフォーマンスをすれば、ジャンルなど関係なくしっかりと届く。そんな音楽の凄さを証明した瞬間に思う。

 

MCでは東北出身の久保史緒里が「福島には家族でよくドライブに行っていたから、風とロックに関われて嬉しい」と感慨深そうに語っていた。ケータリングも福島の郷土料理などが並んでいたようで、メンバーはそれも嬉しかったようだ。筒井あやめは「乃木坂を初めて観る人も多いと思ってと不安だったけど、みんな楽しんでいて安心しました。盛り上がりすぎて会場が揺れてたビックリしちゃった」と笑顔で話していた。

 

山下美月の「もっと汗かけますか!?声出せますか!?」という煽りから、5月にグループを卒業する山下の卒業シングルで新曲の『チャンスの順番』からパフォーマンスが再開。80年代ダンスミュージックの影響を感じる楽曲で会場を温めていく。

 

このまま最後まで盛り上げて終わるかと思いきや、次の曲は『ごめんねFingers crossed』。遠藤さくらのクールなパフォーマンスによって、観客は引き込まれるように集中してステージを観ている。『キスの手裏剣』でも彼女はセンターだったが、その時は飛びっきりにかわいいパフォーマンスをしていた。きっと初めて観た人は別人かと思うほどに印象の違う遠藤の表情や動きに驚いたはずだ。

 

賀喜が「タオルを持っているひとは回してください!!!」と叫んでから始まったのは『好きというのはロックだぜ!』。これが最後の曲だ。

 

メンバー全員が前方や上手や下手の隅までやってきて煽ったりと、最後に最大の盛り上がりを作り出そうとしている。最後のサビで「全員回せ!!!」と賀喜が叫ぶと、メンバーもタオルを持って回す。当然ながら観客も同じように回している。サンボマスターのタオルが乃木坂のタオルと同じように客席で回っている景色は、圧巻かつ多幸感に満ちていた。

 

最後に笑顔で挨拶をして去っていく乃木坂46。

 

「サンボマスタのファンも楽しませる」というよりも「サンボマスターのファンも自分たちのファンにしてやる」ぐらい気概を、パフォーマンスや約1時間に14曲を詰め込むセットリストから感じた。

 

アイドルとしての魅力も伝えつつも、カッコいいパフォーマンスで観客全員を魅了した乃木坂46は、アイドルだけどロックだぜ!

 

■セットリスト

1.ガールズルール
2.インフルエンサー
3.シンクロニシティ
4.キスの手裏剣
5.猫舌カモミールティー
6.ジャンピングジョーカーフラッシュ
7.I see...
8.三番目の風
9.トキトキメキメキ
10.僕の衝動
11.僕が手を叩く方へ
12.チャンスは平等
13.ごめんねFingers crossed
14.好きというのはロックだぜ!

 

サンボマスター

 

サンボマスターがアイドルと直接の対バンをすることは珍しい。それも相手は国民的王道アイドル。BiSHのような異質な存在では無い。サンボマスターがというよりも、ロックバンドにとって、前代未聞な対バンライブだ。

 

それでも気負うことなく、いつも通りにゴダイゴ『モンキーマジック』をSEに登場し「ロックの申し子、サンボマスターです!」と挨拶してライブを始めたサンボマスター。

 

1曲目は『ミラクルをキミとおこしたいんです』。この日の会場はほとんどが乃木坂46のファンだったと思うが、観客はペンライトではなく拳を上げて盛り上がっていた。アイドルファンの適応能力の高さはすごい。

 

とはいえ初めて彼らのライブを観た観客も多いのだろう。それどころかロックバンドのライブが初めての観客もいるかもしれない。普段のワンマンやフェスでのライブとは雰囲気も違い、戸惑っている観客もいるように見える。

 

だがサンボマスターはそんな観客も置いて行くことはない。「今日はお葬式ですか?今日はライブですよ?お前らを優勝させるために来てんの!全員残らず全員優勝させるために来たんですよ!」と山口隆が叫ぶと、戸惑っていた観客も歓声をあげて拳を振り上げる。歌や演奏の凄さだけでなく、アイドルファンが大好きな「優勝」という言葉で煽ったことが効いているのだろうか。

 

乃木坂46のファンに語りかけるように「ロックンロールやっていいか?」と告げて『輝きだして走ってく』が演奏されると、最初から大きな手拍子が鳴り響いた。だんだんと普段のサンボマスターのライブと同じぐらいに客席は熱気で満ちていく。

 

賀喜遥香が煽った時と同じぐらいに観客は大きな声で叫んでいた。「めちゃくちゃ最高の1日にできる人!?」と山口が叫べば、乃木坂メンバーが開演前のアナウンスで「写真撮影や録画録音はご遠慮ください」と言った時とおなじぐらに大きな声で「はーーい!」と返事をふる観客。熱気は普段のサンボマスターのライブと変わらないが、やはり乃木坂ファンがいるから雰囲気は普段とは違う。

 

『ラヴィット!』のテーマソングである『ヒューマニティ』が演奏される前、山口が「せーの!ラヴィット!」と叫んでいたが、普段のライブよりもずっと多くの人がラヴィットポーズをしていた。

 

乃木坂46ファンにとって馴染み深い番組だからだろうか。もしかしたらこの会場にいる人が最も聴きたかったサンボマスターの曲がこれかもしれない。ここでも山口は煽りまくる「あれ?ラヴィットは埼玉でながれてないんですか?流れてるよな!」と叫ぶと、雄叫びのような歓声が客席から響いた。

 

『青春狂走曲』では山口が「恥ずかしがりに来たのか?楽しみに来たのか?どっちだああああ!!」と序盤から叫び、それに応えるように湧き上がるように盛り上がる客席。

 

だが山口としてはまだまだ足りないようで「乃木坂とサンボマスターのそれなりのライブにするのか?それとも飛んでもなく最高のライブにするのか!?今すぐどっちか選べぇぇ!」と叫ぶ。サンボマスターが大好きなロックキッズも、乃木坂にときめいていたアイドルオタクも、誰もがひとつになって熱狂する。異文化が混ざり合って融合した瞬間だ。

 

ワンマンと変わりない熱気に満ちた会場を観て「生意気なこと行ってごめんなさい!とてもやりやすい!自分たちのワンマンみたいにやっちゃいました!すみません!!!」と叫ぶ山口。さらに「お前が誰を見に来たとか関係ないぞ!お前が優勝することがじゅうようなんですよ!1人残らず優勝出来る方、挙手をお願いします!」と煽れば、会場全体が手をあげて応える。最高の雰囲気だ。

 

山口「俺の顔をよく見てくれよ!」

観客「.......」

山口「......」

観客「......」

山口「......」

山口「......」

山口「......」

観客「wwwwww」

山口「笑った!笑った!世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!」

 

会場のスクリーンに映される山口の顔面のアップにより爆笑が生まれた。彼は自らの顔面によって愛と平和を人々に伝えてしまった。

 

そんな愛と平和に満ちた空気の中で演奏されたのは『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』。イントロで「愛と平和で優勝するわけですよ!」と山口が叫んだ時点で、サビが始まったかのよう盛り上がりだ。観客全員で「全員優勝!」と叫ぶのが楽しすぎる。

 

ひたすらに盛り上げ煽ってきたサンボマスターだが、ここで言葉を選びながら丁寧に語りかけ始めた。

 

ここで『風とロック』のイベントが行われることには理由があるんだ。

 

2011年に東北で、知っているだろうけど、そういうことがあった。その時に福島県双葉町の機能をさいたまスーパーアリーナに持ってきて、町の人もここで避難生活をしたんだ。

 

あれから長い年月が経って......。いや、長くはないよな。まだ震災は終わってなくて、コロナが発生して、それも終わってなくて、戦争が始まって、それも終わってなくて。

 

それに対して俺は何も出来ないなって思っているの。でもここに来て歌うことで、亡くなった悲しみに祈ることはできると思ってるの。

 

今日はあんたにも祈らせてくれ。ありがとうって言わせてくれ。何がありがとうって?

 

産まれてきてくれて、ありがとう

 

先ほどまでの熱い歓声とは違う、優しい拍手が鳴り響く中、『ラブソング』が演奏された。

 

温かい想いの込められたロックバラードが会場に響く中、サンボマスターのファンはスマートフォンのライトを灯し、乃木坂46のファンはペンライトを白く点灯させる。サンボマスターは祈るように歌い、観客は祈るように腕を振り、美しい光の海が客席を埋め尽くされていた。

 

「お前はいた方がいいんだって、絶対証明するからな!」という山口の叫びから『Future is Yours』で衝動的な演奏が鳴らされると、再び熱気に満ちる会場。

 

そして「俺はここに来たお前と伝説をやりに来たんだ!お前の過去も未来も知らねえ。でもお前のことは信じてる!」と叫び『できっこないをやらなくちゃ』が続き、観客のボルテージは一気に最高潮に。

 

観客はみんな踊っているし、みんな歌っている。ワンマンと変わらない空気感どころか、違うジャンルのファンがひとつになることでワンマンとは違う感動が生まれている状態だ。

 

最後に演奏されたのは『花束』。多幸感に満ちた手拍子が会場に響き渡っている。それでも欲しがり屋な山口が「聞こえないんだよ!」と煽るのだから、演奏に負けないほどの大きな感性と手拍子が会場に響く。

 

お前らに呪いをかけてやる!ざまあみろ!

 

どんな呪いかって?

 

死にたくなった時、俺たちのことを思い出して、今日のライブを思い出して、笑っちゃう呪いだ!受けてみろこの呪い!

 

この言葉にも歓声があがる。呪いをかけられた観客は笑顔で手を叩いている。

 

さらにはサンボマスターは魔法までもかけてくれた。山口がベースの近藤洋一を指差し「このベースがなってる間、魔法かけてやる!辛いことを全部忘れる魔法だ!」と言って、近藤のベースソロが始まる。その瞬間も最高だった。呪いも魔法もまとめてかけられたのだから。

 

曲の後半に「乃木坂の皆さんがそうだろ!箭内道彦もそうだろ!お前の未来もそうだろ!」と歌い全員を花束にして、サンボマスターのライブは終演した。

 

アンコールの拍手が響く中、登場したのは箭内道彦。「できっこないをやらなくちゃと僕も思っています」と話してから、改めてサンボマスターを呼び込む。

 

バンドが準備を進める中、さらに「今日はできっこないをやります!」と叫び、乃木坂46までも呼び込んだ。この2組が一緒にステージに上がることは初めてだし、対バンといえども実現するとは思っていなかった。一緒にステージに立っている姿はカオスではあるが、奇跡でもある。本当にできっこないをやってしまった。

 

最後に披露されたのは、サンボマスターが演奏し乃木坂46が歌う『できっこないをやらなくちゃ』。

 

久保史緒里と伊藤理々杏と柴田柚菜と賀喜遥香と林瑠奈が順番に歌い継ぎ、メンバーがオリジナルのダンスを踊る。アイドルのかわいさとロックのかっこよさが見事にミックスされたコラボレーションによって、希望に溢れたパフォーマンスになっている。観客も同じようにロックファンもアイドルファンも一緒に混ざり合ってひとつになり盛り上がっている。

 

もしかしたらこの2組のコラボ「できっこない」ではなくて「やっていなかった」だけかもしれない。それほどに相性が良かった。

 

間奏で山口が弓木奈於にギターを渡し首にかけさせた。山口の見せ場であるギターソロを弾くタイミングなのに、よりによって弓木に見せ場を譲ってしまった。

 

弓木は混乱している。ギターを弾こうと試みたもののの、左手にマイクを持っているのであたふたしている。山口の大切なギターを弾いて良いのかとも迷っているようにも見える。そもそも彼女はギターの弾き方を知らない。挙動不審に周囲のメンバーや客席を見るものの、笑顔で弓木を見つめるだけだ。最終的に混乱しながらエアギターを始めたが、すぐに山口が「返して」とジェスチャーをして取り上げられたので、弓木のエアギターソロはすぐに終わってしまった。

 

楽しさと幸せで満ち溢れた余韻を残し、前代未聞の対バンライブは終了した。

 

この対バンを観て、そもそも乃木坂46とサンボマスターは相性が良かったのではと思った。どちらも観た者に希望を与えるし、どちらも観たものを救ってくれるし、どちらもライブを思い出して笑っちゃう呪いも辛いことを忘れる魔法もかけてくれるのだから。

 

『好きと言うのはロックだぜ!』で〈愛ってこんなにもチカラがあるんだ〉と歌う乃木坂46と、『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』というタイトルの曲でロックンロールを叫ぶサンボマスター。もしかしたら表現方法や手段が違うだけで、伝えたい想いは同じなのかもしれない。

 

自分にとっては乃木坂46の名前も、サンボマスターの名前も、どちらの名前も希望だ。そんなことを想ってしまうような、素敵な異文化交流だった。

 

■セットリスト

1.ミラクルをキミとおこしたいんです
2.輝きだして走ってく
3.ヒューマニティ!
4.青春狂騒曲
5.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
6.ラブソング
7.Future is Yours
8.できっこないを やらなくちゃ
9.花束

 

アンコール
10.できっこないを やらなくちゃ/w乃木坂46