2024-04-01 【ライブレポ・セットリスト】GRAPEVINE『Almost There Tour extra show』at Zepp DiverCity 2024年3月28日(木) GRAPEVINE ライブのレポート ピースしながらステージに登場したギターボーカルの田中和将。とてもご機嫌である。ドラムの亀井亨は登場するや否や、両手をグーにして万歳していた。とてもご機嫌である。ギターの西川弘剛やサポートメンバーは無表情で穏やかそうだが、たぶんご機嫌な気がする。 なぜ彼らがご機嫌かというと、最新アルバム『Almost there』がお気に入りだからだと思う。レコ発ツアーは終わったのに、自分が参加したZepp DiverCity公演を含む3会場で新作の収録曲を中心に演奏する追加公演行うほどなのだから。 「こんばんは!」とご機嫌な様子で田中が挨拶してからの1曲目は『雀の子』。最新アルバムのリード曲であり、バンドの凄みがはっきりと伝わる凄まじい構成の楽曲だ。この日はレコ発ツアーを経ての追加公演ということもあって、演奏はさらに仕上がっていて迫力が増している。いきなり演奏の凄みで圧倒させてしまった。 このまま最新作の曲を続けるかと思いきや、次に演奏されたのは『Neo Burlesque』。10年以上前の楽曲だ。しかしシンセサイザーの音が映える編曲とミドルテンポの心地よい演奏とアウトロのキレッキレなギターソロは『Almost there』に収録されていたとしても違和感がない。 おそらく最新作の収録曲を軸に、どの楽曲をセットリストへ入れるのか判断しているのだろう。その後に演奏された最新作収録の『Ub(You bet on it)』が自然な流れで続いたことからもそれがわかる。この楽曲もツアーを経てさらにライブで進化した楽曲だ。貫禄を感じる演奏でしっかりと聴かせてくれる。 「ツアーが短くてやり足りないかったので公演を追加させてもらいました!最後までよろしく!」と田中が簡単に挨拶して、埼玉ポーズの手を目にくっつけ双眼鏡のようにする仕草をしてから演奏されたのは『EVIL EYE』。序盤3曲ではしっかり演奏を聴かせてライブの空気を作るような曲目だったが、この楽曲によって会場の空気がガラッと変わった。 ドラムから始まり、ギターのリフが重なり、バンドの重厚な演奏になる。その勢いある演奏によって、観客のボルテージは一気に最高潮に。カラフルな照明がステージを華やかに彩っていたのも、ライブの盛り上げに一役買っていた。 さらに『マダカレークッテナイデショー』が続き、貫禄と衝動が混じり合う演奏で盛り上げていく。田中と西川が2人ともギターソロを弾いたりと、演奏の凄みでどんどん熱気は上昇していく。 サポートメンバーもバンドにとって重要だ。田中が「お台場のみなさーん!オンベース、かねやんが行く!」と煽ると、サポートベースの金戸覚が前に出て来てベースソロを掻き鳴らす。そのサウンドの凄みや盛り上がりからしても、やはりサポートと言えどもバンドに欠かせないメンバーなのだ実感する。 再び美しいメロディと幻想的なサウンドが印象的な『それは永遠』で心地よい空気を作り出す。田中がアコースティックギターに持ち替えた『TOKAKU』もメロディは美しい。この楽曲ではサビ前に客席を指差す田中の姿も印象的だった。今日の田中は演奏だけでなく動作で表現することが多い。そのテンションの高さは、やはりご機嫌だからだろう。 ここからGRAPEVINEのドープな世界を堪能できる楽曲が披露された。まずは『ねずみ浄土』。 亀井がドラムロールを叩き、そのままミニマムでゆったりとしたリズムのドラムソロへと続く。そのリズムに合わせるように繊細なコーラスと歌声が重なり曲が始まる。ミニマムながらも不要な音が1つもない完璧な構成の楽曲を上質な演奏で届けるバンド。この楽曲はリリース以降ほとんどのライブで演奏されているが、ここに来てさらにもう一段階進化したような凄みを感じた。 打ち込みの音と生音が組み合わさり幻想的でサウンドが鳴らされた『停電の夜』で、さらに沼に沈めるように観客を音に集中させる。そこから続いた『アマテラス』は特に素晴らしかった。個人的にはこの楽曲が今回のハイライトだ。 紫色の妖艶な照明の中、エフェクトのかかったボーカルで田中がラップ調の歌をうたい、サビでバンドが轟音を鳴らす。その壮大さに圧倒され鳥肌が立つ。いや、音で観客を包み込んでから、じわじわと音で観客を締め付けるような感じと言うべきだろうか。あまりにも凄すぎて傍観してしむうほどに凄まじかった。 そんな『アマテラス』の余韻が冷めないうちに、田中と西川が向き合い、確かめ合うようにギターを弾いて『Ophelia』を始める。優しく落ち着いた演奏が、後半に進むにつれ音の洪水化のような厚みあるサウンドへ展開していくのが最高だ。そんな演奏の後に『The Long Bright Dark』でまったりとした演奏をされると、よりグッとくる。 立て続けに楽曲を披露していたが、ここで長い間があく。集中力を高めているのだろうか。田中がサポートキーボードの高野勲と目配せしてから演奏されたのは『Loss(Angels) 』。美しいピアノの旋律をバックに、田中が丁寧にうたう。バンドの演奏も繊細で、美しいメロディの楽曲を引き立てることに徹している。美しいロックを奏でることも、GRAPEVINEの魅力のひとつだ。 「今やった曲はアナログ盤だけに入ってます。いや、サブスクでも聴けましたり怖い時代ですね......」と言って、定額配信サービスに恐怖を感じる田中。彼の恐怖を取り除くためにも、アナログ盤を買おうと思う。 「4月にも5月にもイベントがあります。来週はLINECUBEでやるし5月は恵比寿ガーデンホールです。意外と覚えてた!」と自信満々に話す田中。 ちなみに昨年末に行われたLINE CUBE SHIBUYA公演ではライブ予定を間違えまくって発表していたので、これ以上情けない姿を見せないために覚えているアピールをしたのだろう。だが不安は拭えないようで「後で改めて確認します」と言っていた。 ライブも後半。「残り、えーと、700億曲!」と、それは永遠かと思う曲数を告げてから演奏を再開。実際は残り7曲だった。 尖った歌詞とキレのある演奏の『Goodbye, Annie』再び会場は熱気に満ちる。照明もあかるくなり、先程までの空気感とは全く違う。 『実はもう熟れ』のイントロで「お台場のアモーレ達よ、このセリフがDVDに入るなんて、おかしな話ですね~」と色っぽく話す田中。だが彼が複数人をアモーレとして扱うのは、このタイミングだと色々と勘違いされそうで少しヒヤヒヤする。しかし今回のライブが映像化されることが、この台詞で確定した。 跳ねるリズムの楽曲で、カラフルな照明が似合うダンスナンバーだ。観客も身体を揺らしたり踊ったりと楽しそうである。間奏で田中は「アモ~レ~♪ゆりかも~め~♪」と向井秀徳に通ずるセンスのダジャレを言っていた。楽しそうである。 盛り上げた後は『Glare』を繊細な演奏で届け、お台場のアモーレ達を惚れ惚れとさせた。お台場のアモーレにとってGRAPEVINEはバンド界のアモーレなので、相思相愛だ。 余韻に浸りウットリしていたお台場のアモーレ達だが、ここで再び空気が変わり今度はアモーレ達を音楽で興奮させた。 次に演奏されたのは『Scare』。ロックンロールな演奏に熱狂し踊ったり腕を上げたりと盛り上がる観客。GRAPEVINEのライブはじっくり観て楽しむ観客が多いが、今日はライブハウスということもあって踊っている観客も多い。 「いくでえええ!」と田中が叫んでから演奏された『超える』も、サビで腕を上げている観客が多い。会場は約2000人キャパのライブハウスだが、この楽曲の演奏はもっと大きな会場が似合うぐらいに壮大で、ばかでっかい音量で演奏していた。 田中が「サンキューソーマッチ!」と叫んでから近年の楽曲で最も疾走感ある『Ready to get started?』が演奏されると、再び会場は熱気に満ちる。これが後半での盛り上がりのピークだ。 最後に演奏されたのはアルバムの最後の曲でもある『SEX』。ヒップホップに通ずる歌唱と韻を踏む歌詞を、ゆったりとしたリズムに乗る。薄暗く妖艶な照明も楽曲の魅力を引き出していて、盛り上げて終わるのではなくバンドの深い魅力を伝えるような余韻を残して本編が終了した。 アンコールで再登場すると、ステージ前方に田中と金戸が出てきた。何をするのかと思えば、金戸が1枚ずつ今後行われるライブのフライヤーを田中に渡し、正確な情報をアナウンスし始めた。なかなか田中がライブ日程を覚えられないので、確認しながら発表するようにしたのか。 この発表方法にしたのは、特に正確に伝えなければならない情報があったからだ。2024年も東京と大阪の野音でワンマンを行うことが発表された。これはこの日初めて伝えられた嬉しい情報だ。いつもの調子で適当な日程を言われてはファンは困るしスタッフは怒ってしまう。フライヤーを読ませたのは正解だ。、 正確な告知というひと仕事を終えると「ちゃんと言えてたらスッキリした!アンコールやるぜ!」と元気よく叫ぶ田中。楽しそうである。 そんな空気感だから明るい曲やシングルの代表曲をやるかと思いきや、アンコール1曲目は『阿』。金戸のベースソロからバンドの音が重なっていき、重厚なサウンドとキレッキレなセッションでによる圧巻の演奏を叩きつける、重くて濃い楽曲だ。 そこから続いたのは『God only knows』。亀井のドラムから始まり、そのリズムに合わせたギターリフを田中と西川がそれぞれ弾いてから始まる展開は、生で聴くと痺れるほどにカッコイイ。 『Shame』はしっかり踊らせてくれるロックンロールながらも、重厚で音の厚みを感じるサウンドで圧倒させるのはGRAPEVINEの真骨頂とも言える演奏だ。 アンコールはおまけ的な雰囲気だったり、人気曲をサービスで行うバンドは少なくは無い。だがGRAPEVINEはアンコールで本編以上にバンドの濃い部分を曝け出す。そんなブレずに自分たちがやりたいロックを鳴らす姿勢が最高だ。 「また会おうぜ!おっだっいっばあああ!!!」と田中が叫び、最後に『Arma』が演奏された。壮大で迫力ある演奏が会場に響き渡る。ベテランバンドになり、ここ最近は彼らの影響を公言する後輩バンドが増えてきた。そんなバンドが〈先はまだ長そうだ〉と歌うことに希望を感じてしまう。 日本のロックシーンで揺るがない地位を獲得しているというのに、まだまだバンドは貪欲に挑戦し進化を目指している。それは最新アルバムを聴いたり、今のライブを観れば実感できるはずだ。 若手バンドに負けないほどに「そこのけそこのけ」とロックで突き進むGRAPEVINEの物語は終りじゃなく、まだまだ続く。そんなことを想ってしまう追加公演だった。 ■GRAPEVINE『Almost There Tour extra show』at Zepp DiverCity 2024年3月28日(木) セットリスト 1.雀の子 2.Neo Burlesque 3.Ub(You bet on it) 4.EVIL EYE 5.マダカレークッテナイデショー 6.それは永遠 7.TOKAKU 8.ねずみ浄土 9.停電の夜 10.アマテラス 11.Ophelia 12.The Long Bright Dark 13.Loss(Angels) 14.Goodbye, Annie 15.実はもう熟れ 16.Glare 17.Scare 18.超える 19.Ready to get started? 20.SEX アンコール 21.阿 22.God only knows 23.Shame 24.Arma