オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

GRAPEVINEの亀井亨は乃木坂46齋藤飛鳥のファンだった

自分の日課のひとつに、インスタグラムでアイドルの写真を観てニヤニヤすることがある。そのため頻頻にアイドルのプロフィール欄にアクセスし「更新されてないかな♪」と確認する。これが自分のモーニングルーティンだ。

 

そんなモーニングルーティンをしていたある日、少しの違和感を覚えた。それは乃木坂46の某メンバーのプロフィール欄から、なんとなくフォロワー欄を確認してみた時だった。

 

「なんでだろう?まさかな...」と思い、他の乃木坂46のメンバーのフォロワー欄も確認してみる。そこでもやはり違和感を覚えた。数人の乃木坂メンバーを確認したが、その都度に違和感の強さは増大した。

 

GRAPEVINEのドラマーである亀井亨が、必ず乃木坂メンバーのフォロワー欄にいるからだ。

 

かつて共演したことがあるならば、フォローも理解できる。しかし自分の記憶が正しければ、GRAPEVINEが乃木坂46と共演したことは殆どない。元メンバーの斉藤優里がパーソナリティを務めたラジオにゲスト出演したことぐらいだ。

 

亀井亨はなぜ乃木坂メンバーをフォローしたのだろうか。違和感の正体を突き止めるため彼のフォロー欄を確認したところ、驚きの結果が判明した。

 

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フォローしている253アカウントのうち、32アカウントが乃木坂46のメンバーや元メンバーのアカウントだったのだ。亀井亨のTwitterも確認したが、そちらではアイドルを全くフォローしていないものの『乃木坂工事中』の公式アカウントのみフォローしていた。

 

GRAPEVINEと乃木坂46の兼任ファンである自分としては「亀井さん!乃木坂ファンを公表してくれ!いっそのこと対バンしてくれ!」と思ってしまうのだが、よくよく調べるとひっそりと乃木坂ファンであることは公表してはいた。

 

それはファンクラブの会報である。その中で連載されている『亀井亨の、似顔絵人物寸評』というコラムで、何度か乃木坂46に言及しているのだ。

 

ファンクラブのコンテンツなので詳しい内容については触れられないが、一部分だけ引用し紹介しよう。

 

例えばバナナマンについて語っていた回。そこで乃木坂46について言及していた。亀井亨は「バナナマンはラジオを毎週聴くほどのファン」と語っていたが、そのきっかけは乃木坂46の冠番組『乃木坂工事中』にバナナマンがMCとして出演しているから興味を持ったのだという。

 

コラム内で「乃木坂工事中はめっちゃ面白い」と絶賛していたので、彼はテレビ番組をきっかけに乃木坂46のファンになったのかもしれない。ちなみにバナナマンはGRAPEVINE『アダバナ』のミュージックビデオに出演しているが、その事は忘れていたらしく、当時はバナナマンに興味を持てなかったようだ。好きなアイドルと親しい共演者を応援するのは、まさにアイドルオタクの定番である。

 

乃木坂46のメンバーにも言及していた。「お気に入りの女子」として齋藤飛鳥を紹介していた回だ。その内容は齋藤飛鳥についてのインタビューをいくつも読んだり、彼女の活動経歴を追ったり調べたりしなければ書けない情報を交えたものだった。長い期間応援しているコアなファンのようだ。

 

コラム内で「乃木坂46がめちゃくちゃ好きで語れるけれど、50のおじさんがアイドルを語るのは気持ち悪くなりそう」と書いていた。そのためファンクラブ内の会報でひっそりと語っていたのだろう。

 

「結構音楽が好きみたいで、いろんなバンドの名前が出てくるんですけど、クレイプバインの名前はまだ出てこないです。名前が出てきたら嬉しいですけど、好きなんであまり近づきたくないというか。知られたくないです」と複雑なオタク心も吐露している。

 

齋藤飛鳥は『ハマスカ放送部』という音楽番組に出演しており、多くのミュージシャンと共演している。その中にはGRAPEVINEと関係性が深いバンドマンもいるので、亀井は何かしら伝手を使えば会える立場だとは思う。それでも「好きなんであまり近づきたくない」と思ってしまう複雑なオタク心を吐露する様子からは、齋藤飛鳥を心の底から好きだということが伝わってくる。

 

GRAPEVINEはロックバンドだ。音楽性やバンドのキャラクターを考えると、アイドルを好きになることは意外だ。それも日本で最も売れている女性アイドルグループのファンということにも驚きである。

 

なぜ彼は乃木坂46を好きになり、その中でも齋藤飛鳥を推すようになったのだろうか。もしかしたらその理由は、彼女の音楽の才能にあるのかもしれない。

 

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齋藤飛鳥の特技はドラムだ。テレビやライブでも演奏を披露しており、その腕は確かである。

 

リズム感があるからか、リズムがブレることは少なく安定している。華奢な身体からは想像できないパワフルな魅せる演奏をするのに、鳴らされる音は繊細で綺麗でもある。そんな独特で個性的なドラミングをするのだ。

 

もちろんプロのドラマーと比べると、技術が高いとは言えない。しかし奥田民生やハマオカモトとセッションを堂々と行えるほどの実力は持っている。先日行われた自身の卒業コンサートでは、五万人以上の観客で埋め尽くされた東京ドームで堂々としたドラム演奏を披露し大歓声を浴びていた。亀井亨は「齋藤飛鳥だからこそのドラム演奏」惹かれファンになったのだろうか。

 

だが自身のコラムで齋藤飛鳥を紹介する際に「顔立ちがオリエンタルな雰囲気がある」と真っ先に書いていたので、顔が好きなのかもしれない。

 

ロックバンドとアイドルは形態や表現方法は全く違う。しかしステージに立ち表現するという共通点はある。もしかしたら亀井亨は齋藤飛鳥のステージパフォーマンスに敬意を払っているからファンになったのかもしれない。

 

 

齋藤飛鳥はダンスパフォーマンスに定評がある。多くの人が彼女のダンスに惹かれてファンになっているようだ。

 

手足が長い彼女の動きは、アリーナやドームだとしても目立つ。長く綺麗な髪の毛がダンスによって靡く様子や、しなやかに踊る姿がで美しい。楽曲の世界に入り込んで踊っている時は、普段とは違うクールな表情になる。齋藤飛鳥は背も高くなく華奢で小柄だが、パフォーマンスをしているときは大きく見えるのだ。

 

特に『Sing Out』の間奏でのソロダンスは圧巻である。技術や迫力で圧倒させられると言うよりも、吸い込まれるように集中して観てしまい魅了させるようなダンスだ。亀井亨もそんな齋藤飛鳥のステージパフォーマンスの才能を、評価しリスペクトしているからファンになったのだろうか。

 

だが自身のコラムで齋藤飛鳥を紹介する際に「顔立ちがオリエンタルな雰囲気がある」と真っ先に書いていたので、顔が好きなのかもしれない。

 

齋藤飛鳥は日本一売れているアイドルグループの中心メンバーとして、グループを引っ張ってきた。人気も知名度もトップクラスだ。しかしアイドルの王道からは、少しだけ外れたキャラクターではある。。

 

彼女はファンに媚びを売るようなことはしない。嫌なことは嫌とハッキリ言うし、常に笑顔かと言えばそういう訳ではない。秋元康から頼まれた仕事や依頼だったとしても、気乗りしなければ断るそうだ。秋元康は嘆いていたが、とてもいい傾向である。

 

活動初期は「「いちごミルクがだぁ~い好きっ!」と言って王道アイドルキャラを演じようとしていた。しかしある時期からアイドルとしての悟りを開いたのか、等身大の姿でいるようになった。

 

過剰にアイドルであろうともしないし、かと言ってアイドルらしくいることを避けている訳でもない。ファンに媚びはしないが突き放しもしない。アイドルという仕事を楽しみつつ、アイドルとしての生き方をプライドを持って続けつつ、それでいて1人の人間として自然体でいた。

 

それはアイドルとしてニーズに応えたというよりも、齋藤飛鳥としてのニーズを作ったといえる。その姿勢はロックバンドの在り方に近いかもしれない。ロックバンドもファンに媚びるわけではなく、自分のやりたいようにやってニーズを作り出す存在だからだ。亀井はそんな部分に自身のバンド活動を重ねて共感し、ファンになったのだろうか。

 

だが自身のコラムで齋藤飛鳥を紹介する際に「顔立ちがオリエンタルな雰囲気がある」と真っ先に書いていたので、顔が好きなのかもしれない。

 

彼女のメンバーといる時の立ち振る舞いはクールだ。それはアイドルというよりもバンドマンに近い価値観に感じる時がある。それに亀井は惹かれたのかもしれない。

 

例えば後輩の遠藤さくらがシングルのセンターに抜擢された時。彼女は自信のなさとプレッシャーに押しつぶされそうになって「自分が重要な場所に立って申し訳ない」と思いながらステージに立っていたらしい。そんな時にふと齋藤飛鳥と雑談をしていたときに「いろいろ申し訳なさすぎてつらい」と話したら「私には申し訳ないって思わないで欲しい」と言われたという。

 

 

この「世界中の誰もが敵になっても私はあなたの味方だ」という齋藤飛鳥の精神に、自分はロックを感じた。

 

そんなロックな言葉は、遠藤にとって救いとなったようだ。齋藤飛鳥の卒業コンサートで遠藤さくらは、このような話をしていた。

 

飛鳥さんは何もできない私に、いろんなことを教えてくれて、背中を見せて下さって、本当に沢山のモノをもらったのに、全部返したいっていう気持ちずっといっぱいなのに、全然今日までに間に合わなかったです。

 

これからいただいたものを沢山返していくには、こんな私だから自信はないです。追いかけてきた背中があまりにも大きすぎて追いつけないかなとも思っています。 でもちゃんと飛鳥さんからいただいたモノを忘れないように、一生懸命抱えて、これからもここで一生懸命踏ん張って頑張ります。

 

いつか飛鳥さんが「自分で自分を認めてあげられるようになって」と言ってくれました。自分で自分を認めてあげられるようになったら、また会いに行きます。お世話になりました。

 

乃木坂46遠藤さくら、齋藤飛鳥と30秒の熱いハグ 涙ぐみながら伝えた思いとは <齋藤飛鳥卒業コンサート2日目/メッセージ全文>

 

そういえば齋藤飛鳥はグループの絶対的エースでありながらも、後輩がどうすれば輝くかを常に考えていた。自身の卒業コンサートですら、後輩をどのようにして輝かせるかを意識したパフォーマンスや演出をしていた。自分のアイドル人生を最高のものとして終わらせること以上に、次の世代にどうやって最高の形でバトンを渡すかを意識していたように思う。

 

齋藤飛鳥は社交的に後輩と絡みに行くことは少ない。冗談半分ではあるが「楽屋は壁に向かう席が好きだし隣には来ないで欲しい」とも語っていた。それでも多くの後輩に慕われているのは、彼女の後輩への想いがしっかりと伝わっており、それに後輩は支えられていたからだろう。

 

ライブでのパフォーマンスからもロックの精神を感じる。例えばまだ声出しが禁止されていた時の日産スタジアム公演2DAYSの2日目。

 

思わず声を出してしまったファンに向けて「お前ら!まだ行けんのか!?声出せって言ってんじゃないの!腕を上げろっつってんの!」と、鋭い眼差しで叫んでいた。

 

他のメンバーは動揺しつつも観客の声を受け入れていたが、齋藤飛鳥だけは「守るべきことは守れ」とライブの空気を壊さない程度に強く出て、真剣にファンへ訴えかけた。その姿はロックに思えたし、彼女は信頼できるアイドルであり、ステージに立つ責任と重みを知っているアーティストだと思った。

 

そんな姿に後輩の梅澤美波は感化されたのかもしれない。その3ヶ月後に行われた神宮球場でのライブで観客が大歓声をあげてしまった時、パフォーマンスを止めてまでも「皆さんから歓声が聞こえました。その気持ちは嬉しいです。でも今日は応援の気持ちはペンライトやタオル、手拍子などで伝えてください」とファンに訴えかけていた。もしかしたら齋藤飛鳥の背中を見て、何か感じるものがあったからこその行動なのかもしれない。

 

亀井亨はそんな齋藤飛鳥のロックな精神や、ロックを感じるステージでの佇まいに共鳴して、ファンになったのだろうか。

 

だが自身のコラムで齋藤飛鳥を紹介する際に「顔立ちがオリエンタルな雰囲気がある」と真っ先に書いていたので、顔が好きなのかもしれない。

 

5月18日。東京ドームで行われたライブで、齋藤飛鳥は乃木坂46を卒業した。5万枚のチケットに約65万件のチケット先行に応募があったらしい。少なく見積もっても65万人以上の人の心を動かしたアイドルということだ。亀井も応募したのだろうか。

 

自分は運良くチケットが当選しライブを観ることができた。亀井さん、羨ましいだろう。

 

齋藤飛鳥の立ち振る舞いはやはりカッコよくて、ダンスパフォーマンスは美しかった。今回はいつもよりテンションが高かった。時折涙ぐんでいた。曲中でもイヤモニを外してファンの歓声を聴いて嬉しそうな顔をしていた。その姿は可愛らしくて世間の思い描くアイドルの姿に近いだろう。

 

齋藤飛鳥「では私はこれで天使ちゃんになって、皆さんのもとを去ろうと思います。明日からは、恋とかするかもしれませんね?」

観客「えええええ!!!」

齋藤飛鳥「お前らの誰かの嫁になるかもしれませんね!」

観客「おおおおおお!!!」

齋藤飛鳥「俺の嫁ですねwww」

観客「wwwwww」

齋藤飛鳥「じゃ、さよなら!」

 

齋藤飛鳥の「アイドルとしての最後の挨拶」は、ファンにアイドル卒業後の現実を伝えつつも、ファンにアイドルとして夢を見せつつも、ファンを手のひらで転がすようにからかって弄ぶものだった。亀井も弄ばれたのだろうか。

 

その挨拶は齋藤飛鳥らしくもあり、アイドルの最後の挨拶としてこれ以上ないほどに可愛くて、カッコいい内容だった。今までの卒業メンバーの挨拶とは少しだけ違う、多くは語らないものの大きなインパクトを残す言葉だったと思う。それは多くの人に痛さと心地よさが共存したような引っかき傷をを心に残した。

 

そんな引っかき傷を残したのは卒業コンサートだけではない。彼女のアイドルとして過ごした11年間ずっとでだ。亀井亨の心にも齋藤飛鳥に付けられた引っかき傷がたくさんあるのだろう。

 

そんな引っかき傷が理由で、亀井亨は齋藤飛鳥のファンになったのかもしれない。少なくとも自分はそうだ。

 

亀井はコラムの最後に、このような文章を書いていた。

 

これが巡り巡って齋藤飛鳥ちゃんの耳に入るかも?

 

それは嬉しいけど、ちょっと嫌やな(笑)

 

彼はやはり複雑なオタク心を持っている。好きな人に認知されたら素直に喜べばいいのに。

 

だがGRAPEVINEと齋藤飛鳥のファンである自分としては、齋藤飛鳥の耳にGRAPEVINEのドラマー亀井亨が自身のファンであるという情報は耳に入って欲しい。なぜならGRAPEVINEは素晴らしいロックバンドだからだ。めちゃくちゃカッコいいし名曲がたくさんあるからだ。そのことを齋藤飛鳥に知って欲しい。

 

と、ここまで書いて、ふと思う。

 

音楽好きでロックにも造詣があり様々なバンドを聴いている齋藤飛鳥なら、GRAPEVINEの存在は知っているのではないかと。

 

彼女はロックが好きだが多くは語らない。『ハマスカ放送部』で話していたが「小娘がロックミュージシャンの名前とか挙げて語っちゃうと、いけ好かねえなって思われるじゃないですか」というのが語らない理由なようだ。亀井が乃木坂46について詳しいのに「50のおじさんがアイドルを語るのは気持ち悪くなりそう」という理由で深くは語らないことと、少しだけにている。

 

なんなら亀井が乃木坂46のファンであり自身を推していることまで、齋藤飛鳥は知っているかもしれない。その上であえてGRAPEVINEに触れない可能性すらある。そうだとしたらアイドルとして彼女はカッコよすぎるし、違ったとしてもそのような想像をさせる彼女はアイドルとして魅力的すぎる。

 

そんな掴みどころがないけれど好感を持ってしまうような、謎に包まれている部分が多いのに親近感を持ってしまうひとがらに、亀井は惹かれてファンになったのかもしれない。

 

だが自身のコラムで齋藤飛鳥を紹介する際に「顔立ちがオリエンタルな雰囲気がある」と真っ先に書いていたので、顔が好きなのかもしれない。

 

最後に万が一にも巡り巡って齋藤飛鳥にこの文章が目に入った時のため「齋藤飛鳥に聴いてほしいGRAPEVINEのオススメの曲」を紹介しておこう。それは『here』という曲だ。

 

「坂道」という言葉が歌詞に使われている夏の歌。乃木坂46で活動してきて、誕生日が8月の齋藤飛鳥に似合う曲だと思う。

 

薄れゆく空の色 息はずませ
見えぬ坂道を 遠くなって
消えゆく言葉を もう吐き出せ
声が聞こえたら 思いがけない場所へ

 

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