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【ライブレポ・セットリスト】櫻坂46『渡邉理佐 卒業コンサート』at 国立代々木競技場 第一体育館 2020年5月21日(土)

 国立代々木競技場第一体育館で行われた櫻坂46のライブは、普段とは違う始まり方だった。

 

オープニングで『Overture』が流れた時に客席のビジョンに映った映像が、欅坂46が結成されてから現在までの歴史を辿るような内容だったのだ。それでいて渡邉理佐の活動を中心に編集されたものになっていた。

 

今回のライブが「渡邉理佐の卒業コンサート」という櫻坂46にとって特別なライブだったからだろう。客席は彼女のメンバーカラーである青と白のペンライトを使っているし、『Overture』が流れている時の照明も彼女のメンバーカラーの1つである青を基調としたものになっていた。スタッフからもファンのからも、渡邉への愛を強く感じる。

 

そんな特別な空間が特別な想いで包まれる中で、櫻坂46『渡邉理佐 卒業コンサート』の初日が始まった。

 

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『Overture』が終わると幻想的なBGMが流れ、ステージが薄い煙で包まれた。ステージセットも豪華で幻想的だ。森の中にある神殿のようなセットで草木が生い茂る中に複数の柱や階段があり、階段の上には大きな門が設置されている。

 

渡邉理佐以外のメンバーが数名先に登場し、後から渡邉がセットの門からゆっくりと登場した。それを合図にパフォーマンスが始まる。

 

1曲目は『無言の宇宙』。渡邉がセンターを務める楽曲だ。宇宙をイメージしたような星に包まれた映像をバックに優雅に歌い踊るメンバー。その美しいパフォーマンスを見守るように観客は集中してステージを見つめている。

 

サビでは無数の花火が後ろのLEDビジョンだけでなく真横のビジョンにも映し出され、さらに美しく壮大な景色を作り出していた。

 

アウトロが流れている最中にステージを去っていくメンバー。音源よりも長くなったアウトロに合わせて、客席のビジョンには渡邉理佐の加入から現在までの歴史を辿るように、彼女がライブでパフォーマンスする写真がスライドショーとして映し出された。盛大に彼女の卒業を祝い、愛を持って送り出そうとする演出に思う。

 

菅井友香「1曲目からうるっとしちゃいました」

渡邉理佐「まだ実感がわかないです。本当にわたしは卒業するのかなと思ったりして(笑)。でも今日で会えるのが最後の人もいると思うので、大切な思い出として残れるようにパフォーマンスします」

菅井友香「みなさん水色と白のペンライトで応援してくれてますね!」

渡邉理佐「水色じゃなくて青ね!」

菅井友香「ごめんね!水色のイメージがあったから(?)」

 

渡邊のメンバーカラーを間違えたキャプテンの菅井友香。たしかに青と白を混ぜると水色になるが、お茶目な失態である。卒業コンサートの切ない雰囲気が良い意味で緩んだ。

 

ここからは言い意味で普段と変わらない櫻坂46のパフォーマンスが続く。まずは改名後のスタートを切った曲である『Nobody's fault』をクールに披露。火花が飛び出たり最後のサビ前では森田ひかるが芹を使って高くジャンプしたりと、演出面でも魅せていた。

 

 

 

 

続く『最終の地下鉄に乗って』では、早くもアリーナ外周に設置された花道を歩いてパフォーマンスするメンバー。できる限りファンの近くまで行こうとしている。

 

客席全体を見渡して手を振ったりとコミュニケーションを取っていた。卒業ライブという切なさを忘れさせるような、多幸感で満ちた空気だ。

 

森田ひかる「理佐さんに愛を伝える準備はできてますか!?」

増本綺良「みんなもっとスティックバルーンを叩いて!」

山﨑 天「寂しそうな顔をしないで!ライブはこれからだよ!楽しんでいくぞ!」

 

メンバーも卒業コンサートだとしても、心の底から楽しんで欲しいと思っているのだろう。後輩の2期生の煽りから『それが愛なのね』が続いた時にそう感じた。

 

この曲では渡邉はアリーナ中央の競り上がるセンターステージでパフォーマンスしていた。高く上昇していくステージの上から、2階席も含めた客席全体に手を振ったりとレスをしている。他のメンバーはメインステージでキレのあるパフォーマンスを繰り広げていた。

 

そこからメインステージで『BAN』を続け、クールなパフォーマンスで観客を盛り上げていく。

 

『Nobody's fault』から『BAN』までの流れは今の櫻坂46の、クールさと明るさを兼ね備えた魅力をわかりやすく伝えるような曲順とパフォーマンスだった。

 

大沼晶保「理佐さんと隣同士の位置で踊ることが何度かあったんですけど、その時に少し手がぶつかっただけなのに曲の間に謝ってくれて、すごく優しいしきをつかってくれる人だと思いました」

井上梨名「理佐さんがリハで横にいた時に、井上♡井上♡って名前だけ読んでくれたから、私は理佐さん♡理佐さん♡と言い返していました。あれは何だったんですかね?」

田村保乃「つまりみんなの思い出をまとめると、理佐さんは美しくて優しいということですね(?)」

 

2期生による渡邉理佐との思い出を語るほのぼのとしたMCを挟んでから、2期生がステージから捌けていき、渡邉理佐だけがステージに現れた。後方のLEDビジョンには大きな欅の木の映像が映されている。

 

この時点で「まさか?」と感づいた観客も少なくなかったのだろう。客席では緑色のペンライトが少しずつ増えていた。

 

 

 

 

そして1期生だけがステージに登場しパフォーマンスが再開した。

 

披露された楽曲は『二人セゾン』。欅坂46時代の楽曲だ。今回は渡邊がセンターを務めている。もちろん中盤の印象的なソロダンスも渡邊の担当だ。まさかのサプライズに歓声をあげたい気持ちをグッと抑えて、9人のパフォーマンスをジッと見つめる観客。全ての興奮や感動の気持ちをペンライトと歌い終わった後の盛大な拍手に込めていた。

 

サプライズはまだまだ続く。次の曲も欅坂時代の楽曲『手を繋いで帰ろうか』が披露され、メンバーはポップな映像をバックに歌い踊る。渡邉と菅井は喧嘩をする寸劇を交えたパフォーマンスをしながら、トロッコに乗ってスタンド2階席をトロッコで移動した。これまでのライブで最も全ての客席に近づく演出かもしれない。

 

自分の座席は2階席スタンド最前列だった。そのため2人が自分手を伸ばせば届きそうな距離までやってきた。毛穴が見えそうなぐらいに近い距離で見ることができた。自分は勝ち組である。ちなみにアイドルに毛穴は存在しないようで、2人の毛穴を見ることはできなかった。

 

トロッコの中でも寸劇は続く。仲直りしようと渡邉の推しメンタオルを広げたり卒業ライブのTシャツを見せつける菅井に対して「そんなじゃダメ!」と膨れっ面をする渡邉。とても良い表情である。

 

最終的には渡邊が菅井を殴ってから大外刈りをすることで、何故か仲直りし手を繋いで笑顔でパフォーマンスした。とても素敵な展開だ。

 

さらに欅坂時代の楽曲『青空が違う』を続ける。この曲は渡邊と菅井の2人で披露された。

 

トロッコの上で観客を煽ったりレスを送りながらキュートにパフォーマンスする2人。観客はペンライトを青く光らせて、まるで青空のような景色を客席に作り出す。

 

再び1期生が全員揃うと『制服と太陽』が披露された。こちらも欅坂時代の楽曲だ。ステージセットの階段に座りながら、メンバーは穏やかな声色と表情で歌っていた。

 

LEDビジョンには渡邊がアイドルになってから7年間のオフショット写真がスライドショートして映し出されていた。特別な楽曲と特別な演出に、切なさを感じる。

 

歌い終わりメンバーが立ち上がると、こちらもサプライズと言える欅坂の楽曲『世界には愛しかない』が続いた。

 

青空が広がる映像が後方やサイドのLEDビジョンに映る中、壮大なパフォーマンスをするメンバー。後半は再び花道を歩き、観客を盛り上げながら歌っていた。

 

欅坂時代の楽曲が披露されることを予想するファンはいたと思う。しかしこれほどまでに多くの楽曲が披露されるとは予想していなかったはずだ。

 

しかしまだグループとしても渡邉理佐てしても、欅坂時代の方が活動歴は長い。欅坂46の活動も彼女のアイドル人生において大切な期間なのだ。

 

だからこそ卒業コンサートで、彼女が特に好きだと語っていた欅坂46の楽曲を披露する必然性があったのだろう。

 

 

 

 

メンバーがステージから去ると、転換VTRとしてグランジの遠山大輔と日向坂46の佐々木久美からのビデオメッセージが流れた。

 

ラジオ番組で共演も多かった遠山は「ただのファンです!」と言ってオタク特有の早口で櫻坂46と渡邉理佐の魅力を語っていた。ただのオタクの話だった。

 

しかし「写真集を受け取った時に後ろにサインが書かれていて、そこには自分のことではなくグループのことをよろしくお願いしますと書かれていた」というエピソードには、渡邉の人柄を感じさせるものでグッとくる。

 

佐々木久美は「自分がアイドルになる前から推しメンだった」と渡邉への想いを語り、「私が一目惚れで理佐さんを推したことは間違いではなかったです」と伝えていた。

 

そんなファン代表と言える2人のメッセージを挟んでから、再び櫻坂46の楽曲が披露されていく。

 

『ブルームーンキス』ではLEDビジョンに映る青い満月を背に渡邉がブランコに乗って登場しパフォーマンスが始まった。幻想的な雰囲気は美しくて引き込まれてしまう。

 

2番サビ前の森田による〈あ、こんなに好き〉というセリフパートでは、渡邊と森田が手を合わせてハートを作り、いつも以上にデレデレしたぶりっ子な感じで〈こんなに好きい〜♡〉と森田が言っていた。萌えた。

 

そこから渋谷を舞台にした楽曲『偶然の答え』と、センターの藤吉夏鈴の存在感が光る『なぜ恋をして来なかったんだろう?』を畳がけるように続ける。欅坂46の楽曲を披露した時にも負けない熱気に会場が包まれていた。

 

小池美波「久々に欅坂時代の楽曲を披露させてもらって緊張しました」

原田葵「でも久々にやったのにサイリウムカラーが完璧で嬉しかったです。すごく綺麗でした!」

小池「そういえば『手を繋いで帰ろうか』のMVでも理佐とゆっかーは喧嘩してたよね?」

菅井渡邊「そうだった!」

菅井「その時は理佐とあまり仲良くなかったから、演技だとしても喧嘩して気まずかった

渡邊「今ではライブ中に大外刈りをできるぐらいに仲良くなったよね♡」

菅井「また大外刈りをして欲しい♡」

渡邊「呼んでくれれば、いつでも技をかけるよ♡」

 

1期生が久々の欅坂楽曲の披露についての感想を伝えるMC。菅井と渡邊はイチャついていた。自分も大外刈りをかけられたい。

 

そんなイチャイチャトークの余韻は、演出と楽曲によって違うものへと移り変わる。

 

 

 

 

雨が降る夜に部屋の中で本を読む渡邉の寸劇を挟み『五月雨』を披露し、幻想的な空気を作り出したからだ。

 

センターの山﨑天によるソロ歌唱から始まる楽曲だが、この日の彼女はいつにも増して声量がある。表現力も凄まじい。最後に全員でユニゾンで歌う声は感動的だ。

 

『思ったよりも寂しくない』では、また違う空気を作り出す。花道を笑顔で駆け回るメンバーは楽しそうで、渡邉はスマホが付けられた自撮り棒を持って動画撮影しながら花道を歩き、メンバー1人ひとりと一緒にスマホの画面に映って記念動画を撮っていた。

 

それをファンがペンライトを振ったりタオルを広げたりして見守る。会場全体が多幸感に満ちている。切ない卒業ではなく幸せな卒業ということを、演出とパフォーマンスによって伝えているようだ。

 

そしてファンと絆を確かめるような楽曲『Buddies』が続く。

 

曲中に「いつもかっこいい背中を見せてくれてありがとうございます!理佐さんが残してくれたものを、私たちが大切に守っていきます!お姉ちゃん!大好き!」と叫ぶ山﨑天。笑顔でメッセージを送る姿は、やはり明るく渡邊を見送りたいという想いで溢れている。

 

ステージが暗転し転換VTRとして、渡邊がオーディションを受けた時から現在までを遡る映像が流れた。ライブ中の真剣な様子や裏でメンバーと笑い合って戯けている様子など、卒業する今では楽しさと切なさが同居している内容だ。

 

全ての出会った人に ありがとう

 

映像の最後に渡邉からのメッセージが映され、ステージにメンバーの姿が浮き上がる。そして渡邉のセンター曲『僕のジレンマ』が始まった。

 

堂々としたパフォーマンスをしていた渡邊だったが、1期生が渡邊にハグをする後半の振り付けの後は、微かに目元が潤んでいるように見えた。それを見た自分は目元が潤むどころか、普通に泣いた。

 

曲が終わると残るメンバーに見送られるように、渡邉はビジョンに映る眩しいぐらいに白い光の中へと消えていった。卒業後の彼女にも、明るくて希望に溢れた未来があることを暗示しているようだ。

 

Tシャツに着替えたメンバー全員が登場したアンコールでは、1曲目に欅坂時代の楽曲『太陽は見上げる人を選ばない』がパフォーマンスされた。これもこの日だからこそのサプライズだろう。

 

ステージ上のミラーボールが輝き、それに照らされながら華麗なパフォーマンスするメンバー。明るくも幻想的な空気だ。

 

そんな雰囲気に浸っていた観客だが、どうやらメンバーは余韻を感じさせる暇を与えたくないのだらう。欅坂時代のライブ定番曲でキラーチューンの『危なっかしい計画』を続けて、観客のテンションを大爆発させた。一気に空気が明るくなる。

 

小林由依が「みんな!理佐に大好きって気持ちをちゃんと伝えるぞ!」と叫ぶ。叫んだ後、ちょっと照れていた。そして渡邉が「みんなでタオルを回しましょーう♪」と笑顔でいって曲が始まった瞬間、物凄い熱気に包まれた。

 

もちろん観客は感染症対策のルールを徹底しているので、客席から声が聞こえることはない。しかしタオルを全力で回す景色は、コロナ禍を感じさせないほどの盛り上がりだ。

 

メンバーも「この日1番の笑顔では?」と思うぐらいの良い表情をして、花道を走り回りファンと一緒に盛り上がっている。あまりに走り回ったり暴れ回ったりしたせいで歌唱は不安定にもなっていたが、それも含めてライブだからこその熱気があって最高だ。

 

このライブはリハーサルからずっと楽しくて、毎日みんなと笑ながら準備を進めてきました。セットリストも私が好きな曲を、欅坂時代も含めて入れてもらいました。

 

だから今日はすごく楽しかったです!次が最後の曲です!一緒に盛り上がりましょう!

 

渡邉が最後の挨拶をしてから披露されたラストソングは『風に吹かれても』。最後までサプライズ的な楽曲で湧き上がる客席。

 

メンバーもテンションがおかしくなっている。ステージや花道を駆け回り、客席に手を振ったりポージングをキメたり、メンバー同士でイチャイチャしたりと、自由にパフォーマンスしている。この場に居る全員が楽しそうだ。

 

全てのパフォーマンスを終え、キャプテン菅井の「櫻坂46でした!」という挨拶に合わせ、頭を下げるメンバー。その表情はみんな笑顔でやり切った表情をしている。もちろん渡邉も満面の笑みだ。

 

アイドルの卒業コンサートは、どうしても切なさや悲しさも付いてくるものだ。渡邉理佐の卒業コンサート初日も例外ではない。

 

しかし寂しさや悲しさよりも、楽しさや多幸感が勝っていた。ライブの余韻は温かくて幸せを感じるものだった。

 

アイドルはファンを笑顔にして元気を与える存在でもある。そう考えると渡邉理佐の卒業コンサートは、アイドルを締め括るライブとしては理想的なものだった。

 

渡邉は「またどこかでお会いしましょう!」と笑顔で話してから、ステージを後にした。アイドルでなくなっても、どこかでまた会えるはずだ。

 

渡邉理佐がアイドルを卒業し、渋谷で生まれ変わる姿は、とても美しかった。

 

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櫻坂46『渡邉理佐 卒業コンサート』at 国立代々木競技場 第一体育館 2020年5月21日(土) セットリスト

SE.Overture
01.無言の宇宙
02.Nobody's fault
03.最終の地下鉄に乗って
04.それが愛なのね
05.BAN  
06.二人セゾン
07.手をつないで帰ろうか
08.青空が違う
09.制服と太陽
10.世界には愛しかない
11.ブルームーンキス
12.偶然の答え
13.なぜ恋をして来なかったんだろう?
14.五月雨よ
15.思ったよりも寂しくない
16.Buddies
17.僕のジレンマ

 

EN1.太陽は見上げる人を選ばない
EN2.危なっかしい計画
EN3.風に吹かれても

 

↓前回自分が観た櫻坂46のライブのレポ↓