2022-10-21 【ライブレポ・セットリスト】日向坂46『Happy Smile Tour 2022』at ぴあアリーナMM 2022年10月17日(月) 日向坂46 ライブのレポート 高本彩花が、噛んだ。 開演前に注意事項を伝える影ナレを高本彩花とキャプテンの佐々木久美が担当していたが、高本が一言目で「お客様」と言うべき箇所を「おちゃきゅしゃま」と言った。盛大に噛んだ。 客席から温かな笑い声が漏れる。始まる前から緩い空気になってしまった。しかし開演前からおひさま(ファンの総称)の心が和み、すでに客席にはハッピーオーラが溢れている。こんな空気を一瞬で作ってしまうことが、日向坂46の魅力のひとつだ。 そんな温かな空間で、日向坂46の全国ツアー『Happy Smile Tour 2022』のぴあアリーナMM公演初日が開催した。 とはいえパフォーマンスはいつも通りにキレがある。特に今回のライブは今までとは違う方向性を感じる始まり方だったので、パフォーマンスの凄さがより強く伝わってきた。 『overture』が流れてからメンバーが登場するのはいつも通りだが、メンバーの佇まいがいつもと違う。 真っ黒のパーカー衣装を着て登場したのだ。全員フードを被っていて、表情が見えない。普段の可愛らしい姿とは真逆でクールだ。 そのまま壁面やステージ後方だけでなく、メンバーが立つ立体のセットまでもがLEDビジョンになっている壮大なステージで、ダンストラックに合わせクールに踊る。これほどまでにクールな方向に振り切った衣装やパフォーマンスは初めてだし、長尺のダンストラックからライブが始まることも珍しい。 観客は予想外の始まり方に衝撃を受けているようだ。吸い込まれるようにステージを傍観している人が多い。しかし流れるように『My fans』へとなだれ込むと、衝撃は興奮へと変わる。 ペンライトを振ったり、メンバーと一緒に踊っている人がたくさんいる。楽曲のイメージに合わせ観客はペンライトを赤色に変えていた。アリーナを赤い光が埋め尽くす景色は圧巻だ。 映像演出も凝っている。メンバーのリアルタイムの姿が映るステージ後方の巨大スクリーンに、青い炎をイメージしたエフェクトがかかっていた。物凄い迫力の演出にグイグイと引き込まれてしまう。 フードを被りながら歌っていたメンバーだが、歌唱パートが来たメンバーから順に、歌うタイミングでフードを外していた。この演出もクールだ。顔が見えただけでテンションが上がるし、その姿もカッコよくて痺れてしまう。 今回のライブはダンスで魅せることをコンセプトのひとつにしているのだろうか。再びダンストラックが始まった。大人数で魅せるフォーメーションダンスも目が離せない。 彼女たちはアイドルでありつつも、パフォーマンス集団としてもレベルが高いことを、言葉でなく実力で伝えているように見える。 ダンストラックが終わったタイミングで黒いパーカー衣装を脱ぎ捨て、美しい白い衣装になる演出も良い。その瞬間に、クールな空気が華やかに変わった。 観客の予想していなかったライブ展開は、まだまだ続く。なんと『誰よりも高く飛べ2020』がパフォーマンスされたのだ。 この楽曲はライブの後半に披露されることが多い。それほどにライブのハイライトと言えるほど盛り上がる楽曲だからだ。ワンマンで序盤に披露されたのは初めてかもしれない。 ライブ後半かと思うほどに、激しく全てを出し切るようにパフォーマンスするメンバー。アリーナ最後方のバックステージまで伸びる花道に散らばり、会場全体を煽りながら歌い踊っている。 おひさまも全てを出し切るように盛り上がっていた。佐々木久美が「横浜!行くぞぉぉぉぉ!!!」とシャウトすれば、それに応えるようにペンライトを掲げながら飛び跳ねている。 この勢いはまだまだ止まることを知らない。久々に小坂菜緒がセンターに立つフォーメーションで『キツネ』をパフォーマンスし、その熱量をさらに上昇させる。 この曲もライブで盛り上がることが確実の、人気曲かつ鉄板曲だ。今回は間奏が長尺になっており、そこでメンバーがソロダンスを順番に披露していた。そのダンスもメンバーそれぞれの個性が反映されていて最高だ。 やはり今回のライブはダンスで魅せることを意識しているのだろう。そんなパフォーマンスにおひさまは興奮し盛り上がるだけでなく、引き込まれて魅了されているようだ。 コロナ禍以前、ラストのサビ前の〈コンコンコン〉という掛け声は、おひさまも一緒に叫んでいたが、今はまだコロナ禍。客席から声を出すことはできない。その代わりみんなペンライトを掲げて全力で盛り上がっている。みんなルールをしっかり守りながら楽しんでいるのだ。おひさまは民度が高い。 3曲を終えたところで行われたMCでは、体調不良のため不参加の宮田愛萌と潮紗理菜にも触れ「2人の分も頑張って歌います」と宣言する佐々木久美。東村芽依も気合が入っているようで、その理由について「楽屋でスプラトゥーンをしたから」と語っていた。 佐々木久美「みんなが声を出せない分、芽依が代わりにいつもより大きな声で歌ってくれます!」 東村芽依「はぁ〜い」 しかし返事の声は小さかった。スプラトゥーンの効能は小さいようだ。 森本茉莉は会場名の「ぴあアリーナMM」にMMという自身と宮田愛萌のイニシャルが入っていることに触れ、花道で近くに来た時に指でMの形を作ってくれたら嬉しいとおひさまに訴えかけていた。 自分は花道のすぐ前の席だったが、森本が目の前に来た時にMを指で作ったらレスをもらえた。これは自慢である。羨ましいだろう。花道のすぐ前はメンバーからレスももらいやすい。他のメンバーからもレスをもらった。もらったと信じている。羨ましいだろう。 序盤は急激に盛り上げるライブ展開だったが、ここから落ち着いた楽曲で魅せる展開へと変化していく。 バックステージまで移動すると、幻想的な雰囲気のダンストラックに合わせ1期生が舞うように踊り、そのまま1期生曲『耳に落ちる涙』が始まった。加藤史帆がセンターに立ち、メンバーが繊細な表現でパフォーマンスする。楽曲も美しい曲だが、メンバーのパフォーマンスも美しい。 それに対して2期生は『君のため何ができるだろ』で、温かな空気を作り上げた。ステージにシャボン玉が舞い散る中で、ハートが描かれた小さな傘を持ち可愛らしくパフォーマンスしている。丹生明里がセンターに立っていることもあり、彼女の持つ空気感がパフォーマンスに表れているのかもしれない。 続いて披露されたのは『僕なんか』。1期生と3期生も加わり幻想的なダンスで魅せ、曲の中盤では花道を歩き、おひさまに近づき笑顔にさせる。そして後半はメインステージに戻り壮大なパフォーマンスで感動させた。1曲の中で様々な感情を生み出してくれる演出だ。 前半はクールなパフォーマンスや魅せる演出を中心に披露される構成だった。しかし日向坂46はハッピーオーラに包まれた空気を作り出し、観た者を温かな気持ちにさせることが大きな魅力だと思う。中盤はそんな彼女たちの強みが存分に発揮される楽曲が続いた。 『飛行機雲ができる理由』ではステージ全体に青空と雲の映像が映り、本物の紙飛行機がステージを飛んでいく演出から始まった。そんな壮大な景色と可愛らしいエンシュアににグッとくる。 メンバーのパフォーマンスも演出に合わせたものだ。セットの大型の台にも空と雲の映像が移されていたが、メンバーはその台に座りながら歌っている。その姿はまるで雲の上に乗っているようだ。そんな演出にほっこりする。 ほっこりと言えば、落ちサビで河田陽菜と丹生明里と松田好花が身体をくっつけ、じゃれるように大きく横に揺れていたのもほっこりした。かわいい。かわいい。かわいい。 さらに『君しか勝たん』でもハートや笑顔の顔文字イラストがスクリーンに映ったりと、可愛らしい演出が続く。新しい魅力を伝える序盤も良かったが、強みを見せつける中盤も最高である。かわいい。かわいい。かわいい。 高本彩花「神奈川は地元なんです!」 佐々木久美「本当にぃ?」 高本彩花「本当に!横浜にはよく来てました!」 MCではなぜか高本を疑う佐々木久美。 高本は弓道部だったらしく、試合のために横浜武道館へ行ったというエピソードを語っていた。 グループとしてもぴあアリーナMMには思い入れがあるらしい。ここでライブをやるのは『MTVライブ』以来らしいが、無観客配信ライブもここで行ったという。 客席を指さして「あのあたりで配信ライブで『ソンナコトナイヨ』を踊ったんですよ」と思い出話をしていた。 富田鈴花「わたしも神奈川出身で横浜にはよく遊びに来ます。今度は横浜にKアリーナっていう新しいアリーナ会場ができるらしいですよ!」 佐々木久美「本当にぃ?」 富田鈴花「本当です!!!」 なぜか富田を疑う佐々木久美。 佐々木久美「KアリーナのKってどういう意味?」 加藤史帆「加藤アリーナ!」 影山優佳「影山アリーナや河田アリーナや金村アリーナかもしれない!」 佐々木久美「小坂アリーナもありえる!ょ」 富田鈴花「神奈川のKでしょ!?」 日向坂46は自己主張が強い。 そんな自己主張はパフォーマンスになるとさらに強くなる。むしろ主張せずとも人を惹きつけてしまうような魅力を見せつける。 3期生曲『ゴーフルと君』では、黄色い衣装に着替えた3期生の4人がポップにパフォーマンスした。その姿からは自己主張せずとも魅力が伝わる。 ステージにはお菓子の家の映像が大きくうつしだされ、メンバーはボウルやミキサーなどお菓子作りの道具を持って歌い踊る。そんなメンバーの姿と演出が可愛らしい。 そして白い衣装の1期生と青い衣装の2期生が加わり『アザトカワイイ』を続ける。かわいさの暴力かと思うほどのキュートなパフォーマンスだ。 ここでステージセットが大きく移動し、またライブの雰囲気が変わる。ステージ後方の映像は大型の倉庫をイメージしたものに変わり、クールな印象を与えるものになった。 そこで1期生による『真夜中の懺悔大会』が披露された。ポップな振り付けではあるが、その動きはキレがありカッコいい。この曲を皮切りに、再びクールなパフォーマンスが続く。 金村美玖がセンターの2期生曲『恋した魚は空を飛ぶ』では、バックステージでクールに踊る2期生。かと思えば小坂菜緒と丹生明里は、メインステージの高台の上で寄り添いながら歌い踊っている。 どちらのステージでも素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられているのに、両方を同時に観ることができない。もどかしい。しかし日向坂46のファンはドMばかりだ。もどかしさすら楽しんで興奮してしまう。 ここからラストスパートをかけるように、さらにクールなパフォーマンスを続けて盛り上げてる。続く楽曲も金村美玖がセンターの『アディショナルタイム』。メインステージで全メンバーがキレのあるダンスで、煽りながらパフォーマンスをしていた。 『ってか』ではクールに踊りつつも花道にメンバーが散らばり、おひさまを煽り盛り上げる。この楽曲もセンターは金村美玖。3曲連続で金村センター曲を続けるということは、彼女の実力やパフォーマンスでグループを引っ張る力が評価されている結果だろう。 最高の盛り上がりを作り出して、ステージを去っていくメンバー。これでライブ本編が終わりかと思いきや、ステージが暗くなりVTRが流れた。 その内容は日向坂46の歴代のシングル曲のMVのダイジェストや、当時の舞台裏をまとめたものだった。以前から応援している人にとっては思い出に浸れる映像であり、新規のおひさまにとっては当時を追体験できる映像になっている。 そして「8thシングル」という文字が映し出されると、齊藤京子の姿がスクリーンに大きく映し出さる。 するとメンバーが新衣装に着替え、新曲『月と星が踊るMidnight』を迫力あるフォーメーションダンスで披露した。映像が示唆した通りに、センターは齊藤京子。 彼女はグループの中では小柄だ。しかしセンターでダイナミックにパフォーマンスする姿は、貫禄やオーラがあり大きく見える。実力や才能からしても、抜擢というよりも、なるべくしてなった、任されるのが遅いぐらいに感じるセンターに思う。 ラストは『知らないうちに愛されていた』。 ピアノの鍵盤の映像が映される台の上て歌い踊るメンバー。まるで彼女たちの動きに合わせてピアノが奏でられているように見える。〈ピアノが聴こえたら このメロディー 弾くのは誰か?〉という歌詞に合わせた粋な演出だ。 曲の中盤ではメンバーが花道をゆっくり歩き、ファンにレスをしながらパフォーマンスしていた。それに対しおひさまはペンライトや手を振って応えている。お互いに愛を交換しあっているような、ハッピーオーラに満ちた空間だ。 曲の後半にはツアーロゴが書かれたハート型の紙飛行機が、無数に落ちてきた。その景色も美しくて、幸せに溢れていて、最高だ。 アンコールでも日向坂46は変わらず、多幸感に満ちた空間を作り出す。アンコール直前の真っ暗なステージに眩しいほどの白い光が差し、メンバーの姿が見えてアンコールが始まった瞬間に、再び会場がパッと明るく彩られた。 そんな空気感の中でアンコール1曲目の『ドレミソラシド』が始まり、メンバー全員のユニゾンのコーラスが響が響くと、鳥肌が立つほどグッとくる。 この曲の中盤でもメンバーは花道全体に散らばり、おひさまの近くでパフォーマンスしていた。そういえば東京ドーム公演でも「できるかぎりみんなの近くに行きたい」と話していた。その想いは今でも変わらないのだろう。 佐々木久美の「アンコールありがとうございます!」という挨拶からMCへ。 齊藤京子は新曲『月と星が踊るMidnight』に丹生明里が初めてライブで参加したことを伝えていた。数ヶ月にわたり腰の不調で参加曲が限られていた丹生だが、少しずつ改善しているのかもしれない。 新たに4期生が加入することにも触れ、佐々木久美が「まだ一緒に仕事はほとんどできていない」と話しつつも、これからさらに進化していくことを誓っていた。 そして「いつもはみなさんの作る虹の中を歩いていたけれど、今日は一緒に虹を作りたい」と言ってから、こちらもライブ定番曲の『JOYFUL LOVE』が披露された。 おひさまは一瞬で座席ブロックごとにペンライトの色を変え、客席に美しい虹色の光を作り出す。メンバーも今日はペンライトを持っている。花道を歩きながら、おひさまと同じように笑顔でペンライトを振っていた。アリーナ会場の特性を活かして、おひさまにウェーブをさせたりと、ファンも含めてライブを作り上げていく。 最後の曲は『日向坂』。〈いつか歩きたかったんだ どこまでも太陽に続く道〉という歌詞に説得力を持たせるように、おひさまのいる客席に伸びる花道を歩くメンバー。 やはり彼女たちのパフォーマンスは多幸感に満ちている。それを最後までずっと貫くライブをやっている。だから多くの人を魅了するのだ。 「みなさん、今日は一生忘れられない思い出になりましたか?」と佐々木久美が語りかけると、歓声の代わりに全力の拍手で応えるおひさま。最後までルールを守りメンバーを応援し楽しんだファンの姿も、素晴らしいライブになる理由のひとつだ。 そして「これからもみなさんに会える場を作り続けていきます!」と佐々木久美が力強く宣言し、メンバーはステージを後にした。 今までの日向坂46のワンマンライブは、2時間半から3時間ほど行っていた。それと比べると約2時間の今回のライブは短さを感じる。夏に行われた野外ワンマンライブは24曲披露したのに、今回のツアーの披露曲数は19曲だ。5曲も減っている。 しかし満足感がないかといえば、そういうわけではない。むしろいつも以上に濃厚なライブにすら思った。 それは進化した姿を見せつつも、揺るがない強みを見せつける内容だったからだ。 序盤はいつもと違うクールな一面で魅了し、後半はハッピーオーラに満ちたパフォーマンスでみんなを笑顔にした。そんな日向坂46に心をつかまれ、もっと応援したいと思った。 新メンバーも加入し、これからグループはさらに変化していくだろう。もしかしたら、ファンが戸惑ってしまう大きな改革があるかもしれない。 それでも心配よりも期待をしてしまう。それはこの日の素晴らしいライブを観て、日向坂46の軸は揺るがないと確信したからだ。 だからこれからも、みんなで真っ直ぐ進もうぜ。 ■日向坂46『Happy Smile Tour 2022』at ぴあアリーナMM 2022年10月17日(月) セットリスト 1.My fans2.誰よりも高く跳べ!20203.キツネ4.耳に落ちる涙5.君のため何ができるだろ6.僕なんか 7.飛行機雲ができる理由8.君しか勝たん 9.ゴーフルと君10.アザトカワイイ11.真夜中の懺悔大会12.恋した魚は空を飛ぶ13.アディショナルタイム14.ってか 15.月と星が踊るMidnight16.知らないうちに愛されていた EN1.ドレミソラシドEN2.JOYFUL LOVEEN3.日向坂