2022-10-15 Cody・Lee(李)『DANCE風呂a!』のふざけ方が最高 Cody・Lee (李) レビュー Cody・Lee(李)の新曲、めちゃくちゃふざけたタイトルである。なんせ『DANCE風呂a!』だ。酒を飲みながらタイトルを決めたのだろうか。 でも、そのふざけ方、最高だと思う。自分はこのようなユーモアが大好物だ。 だからタイトルを観ただけで好感を持ってしまった。センスの良い「おふざけ」は魅力に溢れている。 この楽曲は銭湯をテーマにしており、歌詞は風呂場をダンスホールに例えている。そのため曲名に「風呂」を入れて、それでいてタイトルが「ダンスフロア」と読めるように調整しているようだ。おそらく「a!」という文字は、無理矢理に入れたのだろう。でも、そのふざけ方、最高だと思う。 タイトルだけが良いわけではない。もちろん曲も最高だ。ダンスミュージックとして完成されているが、泥臭いロックミュージックとしても成立している。それが個性的でクセになる。 それに演奏や編曲はふざけていない。例えばギターと歌と、手拍子だけが聴こえる曲の始まり方。人間が鳴らす生々しい音が印象的である。この生々しくて温かい空気は、ふざけていたならば生み出せない。彼らは音楽にユーモアを取り入れつつも、真剣ではある。 ドラムとベースの音も良い。最初から最後まで心地よいビートを奏でるこの2つの音が、この楽曲の要だと思う。この音があるからこそ、『DANCE風呂a!』は最高のダンスミュージックになっている。 しかしその演奏や音色のアプローチは、一般的なダンスミュージックとは少し違う。 EDMのような洗練されたビートでもないし、ファンクミュージックのようなオシャレさもない。どうもロックミュージックのアプローチに聴こえるのだ。人間味や生々しさや泥臭さがあり、良い意味でいなたいビートに思う。 そこに浮遊感あるエフェクトがかかったエレキギターや、煌びやかなシンセサイザーや、打ち込みの音が重なる。楽曲の根っこを支えるリズム隊はロックだが、楽曲を彩る上ものの音はクラブで流れても違和感がない聴き心地である。 つまりロックバンドとしての軸をしっかり持った上で、ロックバンドとしてクラブミュージックを作る演奏や編曲、音作りをしているのだ。 だから聴き終えた時、ロックに対する興奮と、ダンスミュージックを聴いた後の高揚感の、2つがミックスされた余韻が残る。それが最高なのだ。 このようなアプローチの楽曲は、他の日本のロックバンドも行っていた。 例えばフジファブリック『ダンス2000』やZAZEN BOYS『Asobi』や赤い公園『Highway Cabriolet』などなど。なんならサカナクションの音楽は、常にそのような方向性で創られている気がする。 もちろんこれらは似ている訳ではない。『DANCE風呂a!』とは全く違う曲だ。ただ「ロックバンドのビートで、クラブで流れそうなダンスミュージックを創る」というアプローチの部分では、近いとは思う。 だからCody・Lee(李)が珍しいことをやったわけではない。新しい音楽を発明した訳でもない。しかし良い塩梅なバランスを保ち成功させることが、難しいアプローチではある。それをCody・Lee(李)は見事に成功させた。ロックバンドが創るクラブミュージックの、新しい名曲を生み出したのだ。 歌詞のことも忘れてはならない。 「ダンスホール」といえば、夢のような華やかであったり、都会的なイメージがある。しかしこの楽曲は〈都会の喧騒に塗れて見えなくなっていく〉と、都会的なものとは真逆の世界について歌っている。それもこの曲に個性を加えているのだ。 そもそも風呂や銭湯は、生活に根付いたもので、そこに華やかさも都会的なオシャレさも存在しない。夢ではなくリアルな現実だ。 ロックンロールといえば破天荒で夢を売るイメージはあるが、よくよく歌詞を聴いてみると、人間の日常生活を生々しく歌ったり、日常の悩みに寄り添っている内容であることが多い。 ロックバンドはダサい姿をさらけ出すほどに、魅力を増す。ロックバンドは尖っているのに、ほんのり優しいからこそカッコいい。軽く笑えるユーモアがあるとなお良い。だからロックと日常は相性が良い。自分はそう思う。 『DANCE風呂a!』の歌詞も、日常に根付いているし、少しだけダサい。しかもふざけている。風呂場について歌っているなんて、カッコつけられるわけないじゃないか。 でも、ふざけているし、ダサい姿もさらけ出すし、尖っているのに優しいから、Cody・Lee(李)はカッコいい。 きみの踊り方笑ってるやつがいるならソイツを笑って一緒に銭湯浸かって クソな戦争終わらせる こんなにダサくて優しくてふざけている歌詞、なかなかない。この「おふざけ」に、救われる人が絶対にいる。 だからCody・Lee(李)のふざけ方、最高だと思う。自分はこのようなロックバンドが大好きだ。