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炎上したぐらいできゃりーぱみゅぱみゅを嫌いになるな

きゃりーぱみゅぱみゅの炎上

 

きゃりーぱみゅぱみゅがTwitterで炎上した。検察庁法改正に抗議のツイートをして、それが賛否を巻き起こしたのだ

 

昔から政治と宗教と野球とONE PIECEの話はするなと言われていた。「空島で飽きた」と飲み会で言ったら上司に説教されたことがある。特にSNS時代になって特にその傾向は強く感じる。ネットの投稿は独り言のつもりでも誰に見られるかわからない。だからちょっとしたことで叩かれて炎上する。誰かわからない人から突然批判もされる。

 

人間だから時には間違えてしまうこともある。偏った考えになってしまうこともある。もしかしたら迂闊な投稿だったかもしれない。

 

きゃりーは該当のツイートを消して謝罪ツイートを投稿した。それでも炎上は続いた。むしろより炎上した。誹謗中傷も増えた。「気に食わないことを言った人物をネットリンチしたいだけ」の人もたくさんいるようだ。

 

 

ファンの間でも今回の行動には賛否があるようだ。「失望した」「ファンを辞める」という自称ファンのツイートもあった。

 

しかしちょっと待ってほしい。その程度でファンを辞めてしまうのだろうか。一つの発言によってきゃりーぱみゅぱみゅの魅力はなくなってしまうのだろうか。

 

自分はきゃりーの熱狂的なファンというわけではない。しかし彼女の歌や音楽は聴いてきた。2010年代において重要なポップアイコンであり、重要なシンガーだと思う。

 

 

 名盤『ぱみゅぱむレボリューション』

 

ぱみゅぱみゅレボリューション(アナログ盤) [Analog]

 

特に1stアルバム『ぱみゅぱみゅレボリューション』は最高だ。初めて聴いた時は衝撃を受けた。個人的には2010年代を代表するJ-POPの名盤だと思う。

 

作詞作曲編曲は中田ヤスタカ。

 

自身もcapsuleとして活動しつつperfumeのプロデュースも行っている。しかし『ぱみゅぱみゅレボリューション』はcapsuleやperfumeとは全く違うアプローチの作品だ。

 

perfumeは新しいJ-POPの形を作った。

 

ボーカルにエフェクトをかけて声も楽器のように使い、歌以外の部分の魅力が引き立つサウンドだ。しかし歌メロはキャッチー。J-POP的なのに今までのJ-POPとは違うサウンドが刺激的で、その新しさがヒットに繋がったようにも思う。

 

しかしきゃりーぱみゅぱみゅは「歌」が引き立っている。歌が目立つようなサウンドになっているのだ。新しいJ-POPの形を作ったこととは違い、先人たちが作ったJ-POPの定番の形に合わせに行っているように思う。

 

音色は中田ヤスタカの個性を感じるが、それは今までの中田ヤスタカの方向性とは少しだけ違った。それが意外でもあり、魅力的でもあった。

 

印象に残るサビの仕掛け

 

『ぱみゅぱみゅレボリューション』収録曲のほぼ全ての楽曲で「サビが同じ言葉の繰り返し」か「韻を踏む歌詞」になっている。

 

 

きゃりーの知名度を急上昇させた『PONPONPON』でもサビは同じフレーズを繰り返したり、韻を踏むフレーズで構成されている。収録曲で代表曲でもある『つけまつける』でも同様だ。

 

ほぼ全ての収録曲のサビで同い言葉を繰り返すか韻を踏むフレーズになっている。違う曲は後半に収録されている『おやすみ』という曲だけだ。

 

おやすみ

おやすみ

  • きゃりーぱみゅぱみゅ
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

キャッチーなメロディで覚えやすい歌詞。同じ言葉が繰り返されて中毒性のある歌詞。だから歌の印象が強く残る。老若男女誰もが簡単にメロディも歌詞も覚えることができる。思わず口ずさんでしまう。

 

中田ヤスタカとしては初めて「歌を聴かせること」を最重要視して作ったように思う。しかも歌詞の内容自体に意味をなさないフレーズによて「歌の魅力」を表現しているのだ。それでいてきゃりーの等身大のイメージを守るような歌詞になっている。彼女が歌うことに意味がある歌になっているのだ。

 

 

アルバムである意味

 

1枚のアルバムとして意味がある作品になっている。曲調は明るダンスミュージックやポップスで統一されており全体としてまとまっている。それだけでなく意味を感じる曲順や構成になっている

 

11曲目の『おやすみ』は〈楽しい時間は ねえ すぐに過ぎてしまうけれど〉というフレーズから始まる。まるで1枚のアルバムで1日の流れを表現しているように捉えることができる。

 

12曲目で最後の曲である『ちゃんちゃかちゃんちゃん』では『PONPONPO』や『CANDY CANDY』など収録楽曲のサビのメロディを楽曲ないに取り入れている。ラストの曲でアルバムを総括しているのだ。

 

ちゃんちゃかちゃんちゃん

ちゃんちゃかちゃんちゃん

  • きゃりーぱみゅぱみゅ
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ポップスのアルバムは「曲を寄せ集めただけ」の作品も多い。リスナーも良い曲の寄せ集めを求めて聴いている人も少なくはないと思う。昔からコンセプトのあるアルバムよりも、シングル曲や代表曲を寄せ集めたベストアルバムの方が売れる。

 

『ぱみゅぱみゅレボリューション』はそこに一石を投じたように思う。

 

ベストアルバムのようにポップでキャッチーな楽曲が集まっているのに、最後まで聴くとコンセプトアルバムに感じる仕掛けになっている。アルバムであることに価値を感じない人にも、アルバムを聴く楽しさを伝えようとしているように思う。

 

 

実は暗い歌詞

 

曲調は明るい楽曲が多いが「明るい内容の曲」が揃っているわけではない。

 

つけまつける

つけまつける

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さみしい顔をした 小さなおとこのこ

変身ベルトを身につけて

笑顔に変わるかな

 

おんなのこにもある

付けるタイプの魔法だよ

自信を身につけて

見える世界も変わるかな

(きゃりーぱみゅぱみゅ / つけまつける)

 

『つけまつける』の主人公は自分に自信を持っていない。それをなんとか自信を身につける手段として「つけまつげ」をつけているのだ。

 

それは他の楽曲でも共通している。ただただポジティブで前向きな主人公ではなく、自分に自信がない主人公の楽曲ばかりだ。『スキすぎてキレそう』ではキラキラできな自分に対して自身のない主人公が、彼氏に嫉妬する姿が歌われている。

 

みんなのうた

みんなのうた

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何も考えなくて良いよ

音楽の力で

みんな笑顔になれたら良いね

(きゃりーぱみゅぱみゅ / みんなのうた)

 

『みんなのうた』は一見中身がなさそうで、ただ楽しい内容の歌詞かと思いきや、ここでも自信がなさげな主人公が出てくる。「笑顔になれるよ」と断定するのではななく「笑顔になれたら良いね」と自信なさげだ。希望を持ちたいのに、どことなく諦めているような感じ。そんな主人公の歌ばかりだ。

 

あの交差点で みんながもしスキップをして

もしあの街の真ん中で 手を繋いで空を見上げたら

もしもあの街のどこかで チャンスがつかみたいのなら

まだ泣くのには早いよね ただ前に進むしかないわいやいや

(きゃりーぱみゅぱみゅ / PONPONPON)

 

希望を歌おうとしているのに、夢みがちなわけではなく現実的。自分に自分に自信があるわけでもない。

 

『ぱみゅぱみゅレボリューション』の楽曲はただ明るいポップスが揃っているだけではない。意味のない言葉遊びの歌詞ばかりではない。

 

歌詞の内容には影がある。光と影の真逆なものがうまく合わさっている。だから歌に深みを感じる。様々な捉え方ができる歌だ。だから自分は名曲が揃っている名盤に思う。

 

歌詞は中田ヤスタカが書いていてcapsuleやperfumeとは違う方向性である。おそらく「誰が歌うか」によって歌詞の方向性を変えている。

 

きゃりーぱみゅぱみゅに対する世間のイメージは「明るいポップアイコン」だと思う。そのイメージは今でも変わっていないかもしれない。

 

しかしきゃりーは常に明るいわけでもなく、様々なことを考え悩んでいるかもしれない。それは彼女の過去の発言や発信した言葉を知ることで感じる。著書『あたしアイドルやってぇし‼︎』では「音楽で人は助けられないとは思うけど、少しは元気になるかなと思って、がんばっていくしかないかなと思っています。」と語っている。

 

そのようなきゃりーの性格や価値観を中田ヤスタカは感じ取り、きゃりーのイメージが崩れないようにしつつも、彼女が歌うべき歌詞を書き、彼女が踊るべき曲を書いたのかもしれない。

 

 

 炎上したぐらいできゃりーぱみゅぱみゅを嫌いになるな

 

「紙メディアはネットと打って変わって実に平和な世界が広がっています。コピペができなかったり、買わないと読めないものなので、あまり炎上しないからです。そんなわけで、TV Bros.で連載を続けていくうちに、だんだんいろいろ考えないようになって、好き勝手なことばかりを書いてしまうようになってしまいました。そのまんまの素の私がここにいます」

(引用:きゃりーぱみゅぱみゅ著 / あたしアイドルじゃねぇし!!!)

 

きゃりーぱみゅぱみゅは自身の日常や活動内容を中心にSNSに投稿をしていたが、それ以外の場所では以前から様々なことを発言してきた。

 

それは著書『あたしアイドルじゃねぇし!!!』を読めばわかる。少しだけ気が強くて、少しだけ尖っていて、自身の軸を持っていて、様々なことをを考えていることを感じることができる。

 

今までSNSでは本音を隠しながら、発言を気をつけていただけだ。ネットは平和でないと知っていたから。

 

今回失望したという自称ファンは、本を読んでいるのかが疑問だ。本を読む必要はないかもしれないが、自分勝手な理想をファンという立場を利用して押し付けているだけではないだろうか。そもそも一回の発言が理由で、きゃりーぱみゅぱみゅの存在や音楽に魅力がなくなってしまうのだろうか。

 

自分はきゃりーがどのような発言をしたとしても、中田ヤスタカが何をしようと『ぱみゅぱみゅレボリューション』は素晴らしい作品であることは変わらないと思っている。

 

これはきゃりーぱみゅぱみゅに限らない。

 

最近は様々な著名人がSNSを通じて様々なことを発信するようになった。その都度「ファンなのに失望しました」などと著名人にリプライを送る人がいる。自分の意見と違ったり間違ったことを発信したことを許せないのだろう。

 

 

そのような人もファンだったのかもしれない。しかしそれはファンだから失望したのではなく、「自分のお気に入りの有名人」が自分の理想と違う行動をしたことを許せないだけに感じる。

 

そうやってあたしのこと小動物のように扱いやがって、おめーら人生楽しいだろうな!

(引用:きゃりーぱみゅぱみゅ著 / あたしアイドルじゃねぇし!!!)

 

著書ではこのようにも語っている。

 

まさに自分のペットの小動物のようにタレントや著名人を扱っている人がいるのかもしれない。そのような人の方が、間違った発言をや偏った意見を発信した著名人よりも「もんだいガール」ではないだろうか

 

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