オトニッチ

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すとぷり『すとろべりーねくすとっ!』を聴いたら不覚にも泣いてしまった (感想・アルバムレビュー・評価・歌詞)

すとぷりのことはよく知らない

 

すとぷりが何なのかを、自分はよく理解していない。

 

アニメでもないらしいし、ゲームキャラでもないらしい。Wikipediaで調べたら動画投稿者と書かれていたが、YouTuberでもなさそうだ。

 

何者かは調べてもわからなかったが、どうやら人気はあるようだし、音楽活動も行なっているようだ。CDも売れているらしい。

 

【メーカー特典あり】 すとろべりーねくすと(通常盤)(特典:複製サイン入りアナザージャケット付)

 

自分はSpotifyで最新リリースされたアルバムで目についたものは、とりあえず聴くようにしている。すとぷりは知らなかったが、最新アルバムが目についたので聴いてみた。

 

『すとろべりーねくすとっ!』というアルバム。すとぷりにとって2枚目のアルバムらしい。

 

正直、全然期待せずに聴いた。とりあえず1曲だけ聴いて好みでなければKing Gnuのアルバムを聴こうと思った。

 

それなのに、このアルバム、良かった。1曲目の『ストロベリー☆プラネット』を聴いた瞬間に気に入ってしまった。

 

ヨナ抜き音階

 

日本では「ドレミファソラシド」の音階を「ヒフミヨイムナヒ」と読んでいた時代がある。その中で「ヨ」と「ナ」の音を抜いた音階のことを『ヨナ抜き音階』と呼ぶ。

 

つまり「ドレミソラ」の音階だけで構成された音階のことを『ヨナ抜き音階』と呼んでいる。

 

『すとろべりーねくすとっ!』は「ヨナ抜き音階」の曲が多い。1曲目の『ストロベリー☆プラネット』から3曲目の『アモーレ・ミオ』までヨナ抜き音階が印象的に使われている楽曲が続く。

 

ストロベリー☆プラネット!

ストロベリー☆プラネット!

  • すとぷり
  • J-Pop
  • ¥255
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中盤の『溶解ウォッチ』や『咲かせて恋の1•2•3』でもヨナ抜き音階を使用しているように思う。そのため歌が頭から離れないのだ。印象的で覚えてしまって、ついつい聴いてしまう。

 

咲かせて恋の1・2・3!

咲かせて恋の1・2・3!

  • 莉犬×るぅと×ころん
  • J-Pop
  • ¥255
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全ての楽曲の全ての部分でヨナ抜き音階が使われているわけではないが、サビやAメロで使われている曲が多いように感じる。

 

日本人は「ヨナ抜き音階」を好きな人が多い。頻繁に使われるとしつこくも感じるが、これを上手く取り入れた楽曲は日本人の胸に刺さる音楽になる。

 

 

日本のヒット曲に使われるヨナ抜き音階

 

「ヨナ抜き音階」は童謡に使われることが多い。日本の童謡のほとんどはヨナ抜き音階でメロディが作られていると言っても過言ではない。

 

チューリップ

チューリップ

  • はいだしょうこ
  • J-Pop
  • ¥250
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ヨナ抜き音階は使われている音が5つだけなので覚えやすい。そのため子どもが簡単に歌えるので取り入れられるのだと思う。

 

子どものころから慣れ親しんだ音階なので、耳にも馴染んでいて、大人になってからもヨナ抜き音階の曲を好きになりやすいのだ。

 

J-POPのヒット曲でも様々な楽曲がヨナ抜き音階を取り入れている。多くの人に愛される楽曲やヒット曲にも使われている。

 

JITTERIN'JINNの『夏祭り』もヨナ抜き音階だ。多くのアーティストにカバーされている名曲。

 

夏祭り

夏祭り

  • ジッタリン・ジン
  • J-Pop
  • ¥153
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この音階は懐かしさを感じるメロディになりやすいが、それを取り入れつつも新しいジャンルを作りだすアーティストもいる。

 

日本のテクノ•ニューウェイブのパイオニアであるYMOの代表曲『ライディーン』もヨナ抜き音階だ。

 

RYDEEN

RYDEEN

  • YELLOW MAGIC ORCHESTRA
  • エレクトロニック
  • ¥255
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初音ミクの存在が大衆に知られたきっかけでもある『千本桜』もヨナ抜き音階を取り入れている。この楽曲のヒット以降、ボーカロイドでヨナ抜き音階を使用する楽曲は増えたように感じる。

 

千本桜 (feat. 初音ミク)

千本桜 (feat. 初音ミク)

  • 黒うさP
  • ポップ
  • ¥153
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  • provided courtesy of iTunes

 

 

ヨナ抜き音階を使ってヒットを出した楽曲は、2010年以降の国民的ヒット曲でも多い。AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』もヨナ抜き音階を使っている。

 

星野源が国民的歌手になったきっかけでもある、最大のヒット曲『恋』もヨナ抜き音階だ。

 

恋するフォーチュンクッキー

恋するフォーチュンクッキー

  • AKB48
  • J-Pop
  • ¥255
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恋

  • 星野源
  • J-Pop
  • ¥255
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 楽曲の一部にだけヨナ抜き音階を使用し、惹きつけるためのフックにしている楽曲もある。サカナクションの『夜の踊り子』とくるりの『言葉はさんかく こころは四角』だ。

 

この2曲はAメロのみヨナ抜き音階を使用している。それによって聴いた人を惹きつけているのだ。

 

夜の踊り子

夜の踊り子

  • サカナクション
  • ロック
  • ¥255
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言葉はさんかく こころは四角(Single Ver.)

言葉はさんかく こころは四角(Single Ver.)

  • くるり
  • オルタナティブ
  • ¥250
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 すとぷりの『すとろべりーねくすとっ!』も同じように、ヨナ抜き音階を全面的に使用した楽曲や一部に使用した楽曲が揃っている。日本人のツボをグッと押してくるのだ。そのため好きになってしまう。

 

しかし『すとろべりーねくすとっ!』の楽曲の魅力はそれだけではない。このアルバムは様々な音楽を取り入れている部分も魅力の一つなのだ。

  

細かく作られた楽曲

 

『NEXT STAGE』はヒップホップを取り入れた楽曲。それもただラップを取り入れたわけではない。ヒップホップへ敬意を持った上で取り入れているのだ。

 

Next Stage!!

Next Stage!!

  • すとぷり
  • J-Pop
  • ¥255
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「ライツカメラアクション」とヒップホップのリリックでは定番の言葉も歌詞にある。スチャダラパーが曲名に使ったことでも知られている。

 

ライツカメラアクション

ライツカメラアクション

  • スチャダラパー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
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「原宿生まれタピオカ育ち」という歌詞はDragon Ash featuring Aco, Zeebra『Grateful Days』の「東京生まれヒップホップ育ち」というリリックのオマージュだ。

 

Party Light

Party Light

  • すとぷり
  • J-Pop
  • ¥255
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『Party Light』はR&Bを取り入れた楽曲。コーラスではロボットボイスがあったり、ボーカルにオートチューンをかけている部分があったりと凝っている。

 

最後のサビで転調する展開はJ-POPでよく使われるパターンではあるが、リズムを重視しているダンスミュージックでこの展開が来ると新鮮な気持ちになる。

 

ヒカリユメ

ヒカリユメ

  • すとぷり
  • J-Pop
  • ¥255
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  • provided courtesy of iTunes

 

『ヒカリユメ』はホーンの音が印象的なミドルテンポでジャジーな曲。スカパラの歌モノ楽曲と似た心地よい演奏。

 

『すとろべりーねくすとっ!』の楽曲は打ち込みを多用した曲が多い。しかし『ヒカリユメ』は楽器の演奏が際立つ楽曲。イントロも他の楽曲と比べると長い。演奏に注目してもらうことを目指しているようにも感じる。

 

そんなことを思いながら、心地よくなりながら、聴いていた。

 

そして、気軽に聴いていたことを、後悔した。

 

このアルバムは、ヤバいアルバムだった。特に『ヒカリユメ』はヤバい曲だった。

 

 

今すぐ僕もそっちに行くよ。待ってて・・・・・・

 

このアルバムを聴き始めたのは、深夜0時を回ったころ。楽しくて明るい曲がが続くと思いながら、心地よく聴いていた。

 

アルバムを曲順通りに聴いていた。様々なジャンルの曲があって、バラエティ豊かで良いと思った。『ヒカリユメ』が流れた時「この曲が一番好きだ」と感じた。

 

自分はバンドの演奏が好きなのだ。もともと音楽を好きになった理由はロックがきっかけ。打ち込みのダンスミュージックやポップスも好きだが、やはりバンドの演奏が映えるような曲が好みに合う。

 

この曲は歌詞も面白い。

 

わらしべ長者になりたいと

君はまたそんなめちゃくちゃを言って

だけどそこが好きだ

 

ユーモアがあふれていて可愛らしい歌詞。「わらしべ長者」が歌詞に出てくる曲ははじめて聴いた。

 

シャツが後ろ前なことに夕方まで気づかなかったり

野良猫を見つけたらすぐに近づいて対話を試みたり 

道を聞かれやすいくせに恐ろしく方向音痴だったり

ラーメンを食べるときに上手に啜ることができなかったり

 

 歌詞は主人公から見た「君」の姿をずっと歌っている。少し変わっているけど憎めないから気になってしまうような君。主人公が君のことを好きだということが伝わってくる。聴いていてほっこりする歌詞。

 

そんな歌詞だと思っていた。多幸感に溢れた幸せな曲だと思った。

 

演奏が終わったと思い「良い曲だなあ」と感じ穏やかな気持ちになる。

 

しかし、演奏は終わっていなかった。ボーカルの声が聴こえ始める。キーボードの音に合わせて、しっとりとした歌声で曲を再開させる。

 

その歌詞を聴いて、鳥肌が立つ。

 

そんな君が死んだ

交通事故だった

今すぐ僕もそっちへ行くよ

待ってて

 

 「え・・・・・・?」

 

このフレーズだけ歌い、曲が終わる。びっくりした。怖い。悲しい。深夜に聴くんじゃなかった。

 

なぜこんな展開の歌詞を書いたのだ。トラウマになりそうだ。

 

鳥肌が止まらない。手が震えてくる。怖い。嫌だ。怖い。泣きそうだ。

 

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

 

すとぷりの『すとろべりーねくすとっ!』を聴いたら、不覚にも泣いてしまった。