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back number『MAGIC』の感想➡︎もう少し頑張って作って欲しかった

新曲が少ない

 

back numberにとって約3年半ぶりの新作アルバム。タイトルは『MAGIC』。

 

3年半の間にシングルもリリースしていたし、ライブも行なっていた。活動自体は精力的に行なっていたのだ。ドームツアーを成功させるほどに人気も絶頂。バンドとしても良い雰囲気で活動できていると思う。

 

そんなバンドが新しいアルバムをリリースする。それは期待も大きくなる。

 

しかし、聴いてみて、少しガッカリした。もう少し頑張って作って欲しかったと思ってしまった。

 

新作『MAGIC』のために書き下ろされた新曲はわずが4曲のみ。12曲収録されたアルバムだが、他の曲はシングルの表題曲やカップリング曲。そのため新鮮さはほとんどない。

 

1つの作品としてのアルバムというよりも、3年半で出した曲をまとめただけと思われても仕方がない。

 

back numberは今では日本を代表する超人気バンド。アルバム制作以外にも様々な仕事があって忙しいのかもしれない。

 

それでも、もう少し頑張って新曲を作って欲しかった。

 

頑張っているメロディと歌詞

 

しかし、back numberは新作で頑張っている部分もある。新曲は少ないがクオリティは高い。

 

歌のメロディが全曲良い。アップテンポの曲もスローテンポの曲も同様に。収録曲のどの曲のメロディも印象に残るし心を動かされる。

 

back numberのメロディは音階が大きく上下することが多い。それにより単調にならずに飽きが来ない。メロディの大きな変化に比例して感情も動かされる。

 

瞬き

瞬き

  • back number
  • J-Pop
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  • provided courtesy of iTunes

 

それはJ-Popでは定番のメロディの作り方で、日本人の耳に馴染み心地よさを感じるのだと思う。

 

しかし、それをやりすぎると同じようなメロディになってしまうし、飽きてしまう。back numberはそのさじ加減が絶妙でやりすぎない。同じようなメロディは少ないしアルバムを通して聴いても飽きない。

 

歌のメロディはフレーズの最後が下がっていくと悲しさや切なさを感じ、逆にフレーズの最後の音階が上がると明るさや楽しさを感じる特徴がある。

 

back numberは切ない曲でもフレーズ最後の音階を下げるだけでなく、音階を上げる場合も多い。その割合は1曲の中で同じぐらいの頻度だ。それによって楽曲の魅力がより引き立つことになる。

 

『HAPPY BIRTHDAY』は切ない片思いの曲。しかし聴いていて切なさ以外の様々な感情を感じる。明るさすら感じる。これはフレーズ最後の音階を上昇させているフレーズも多いからだと感じる。

 

 

『大不正解』はアップテンポの楽曲。曲のテンポに合わせるように音階を上げている部分が多い。しかしフレーズ最後の音階を下げている部分がある。

 

前向きだが暗い内容もあるメッセージの歌詞。重みもあるメッセージ。メロディの変化によって、そのメッセージをしっかり伝えようとしているようにも思う。

 

大不正解

大不正解

  • back number
  • J-Pop
  • ¥250
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 歌詞を引き立てるようなメロディ。メロディの変化に合わせた歌詞を当てはめることで、メロディも引き立てているように感じる。つまり、歌詞もメロディも最も魅力的に感じる楽曲作りをしている。back numberは「歌」を大切にしているのだ。その部分での魅力を『MAGIC』では過去作以上に感じる。

 

back numberは頑張っていた。良いメロディと良い歌詞を書くことを頑張っていた。

 

 

演奏を頑張っている

 

「back numberて全然ロックじゃないよね」

 

メンバー以外のミュージシャンが参加していたり、メンバー以外が演奏する楽器の音も使われることが多いback number。そのためか、一部のロック好きには「ぬるいJ-POP」と判断してバカにしている人もいる。

 

個人的に、そのような人は、きちんと聴いてないんだろうなと思う。back numberの演奏を。

 

最深部

最深部

  • back number
  • J-Pop
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きちんと聴けばわかるはずだ。メンバーの楽器の音には存在感がある。

 

『最深部』ではメンバーのギターとベースとドラムが印象的な楽曲。シンプルな演奏ながらバンドの演奏力の高さを感じる。むしろシンプルだからこそバンドの底力が理解できるのかもしれない。

 

雨と僕の話

雨と僕の話

  • back number
  • J-Pop
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ストリングスや打ち込みやピアノの音が加わることも多い。バラードも多い。その音は多くの人がイメージする所謂「ロックバンド的な音」とは違うのかもしれない。それでも最後まできちんと聴いて欲しい。

 

『雨と僕の話』のようなストリングスやピアノがメインの楽曲のようでも、それを支えてるのはメンバーの骨太な演奏だ。ただのJ-POPではなく、バンドとして音楽を作り、曲をより魅力的にするために他の楽器の音を取り入れている。

 

良い音楽を作ることを最優先にしていると思う。しかし、バンドであることも大切にしているように感じる。そのためバンドの演奏を軸に様々な音を取り入れてクオリティを上げるような作品作りをしている。

 

back numberは頑張っていた。良い演奏とクオリティの高い作品を作るために頑張っていた。

 

 

他の頑張って欲しかった部分について

 

冒頭で「もう少し頑張って新曲を作って欲しかった」と書いた。

 

しかし、 back numberは楽曲制作には手を抜かずに頑張っていた。アルバムのための書き下ろし曲は少なかったが、収録されている楽曲はどれも制作に手を抜いていない。名曲ばかりだ。

 

アーティストは魂を込めて楽曲を制作しているはず。リスナーが想像する以上に制作は大変で時間がかかることなのかもしれない。『MAGIC』の収録曲は1曲1曲のクオリティがどれも同じぐらい高い。シングル曲もカップリング曲もアルバム曲も同様のクオリティ。

 

このクオリティを維持してアルバムを制作するには、アルバム用の新曲が少ないことも仕方がないのかもしれない。1曲の制作にかなり時間をかけていたのではと思う。文句を言いつつも、今作は傑作だと思うし、素晴らしい作品だと思う。良い作品だからこそ、よりわがままを言いたくなり、多くを求めてしまうのだ。

 

新曲が少ないことには納得した。しかし、他にも頑張って欲しいことがある。下の写真を見てほしい。

 

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暗い部屋で撮られた写真。目の焦点が定まっていない小島和也。死んだ魚の目で目覚ましくんを大事に抱える清水依与吏。キメ顔の栗原寿。ドームを埋める人気バンドの写真とは思えないような暗い写真。もう少しかっこよく写って欲しかった。

 

友達の尾崎世界観はこんなに写真慣れしているのに。

 

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 しかし、back numberは昔は写真写りも良かった。4年前はとても素敵な写真を撮ってもらっていた。

 

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WANIMAにも負けない笑顔の清水依与吏。ウエンツ瑛士を純日本人にしたような顔の栗原寿。引きつった笑顔で目の焦点が定まっていない小島和也。さわやかさを感じる良い写真だ。

  

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3年前も良い写真だった。ぶりっ子な表情の清水依与吏。キメ顔の栗原寿。目の焦点が定まっている小島和也。back numberの魅力を感じる良い写真だ。

 

それなのに、2019年の写真は暗い。もっと写真写りも頑張って欲しいと思ってしまう。

 

しかし、よく考えてみよう。back numberはバンドだ。音楽は真剣に制作している。手を抜いていないし素晴らしい作品を作っている。頑張っている。新作の『MAGIC』も素晴らしいクオリティだ。

 

もしかしたら、音楽を頑張りすぎて写真写りまで気にする元気がないのかもしれない。「頑張れ」と言うことは酷かもしれない。だからと言って「頑張りすぎないで」と言うことも違うように思う。素晴らしい作品を作るために頑張っているのだから。真剣に音楽をやっていて音楽を愛しているミュージシャンほど頑張ることが当たり前だ。

 

では、ファンや楽曲を聴いて感動したリスナーはback numberにどのような言葉を送ればいいのだろうか。

 

それは「頑張れ」でも「頑張りすぎないで」でもなく「ありがとう」だと思う。音楽で感動した気持ちを表すには、自分はこの言葉以外が思いつかない。

 

back number、『MAGIC』という最高のアルバムを作ってくれて、ありがとう。

 

 

とはいえ・・・・・・

 

実は自分はback numberのことが嫌いだとを記事に書いていたりします・・・・・・。