2020-01-31 ネクライトーキーのメジャーデビューアルバム『ZOO !!』を聴いたら耳に音がこびりついた(アルバムレビュー・感想・評価) レビュー ネクライトーキー 聴いていて不思議な気持ちになる ネクライトーキーの『ZOO!!』を聴いてると不思議な気持ちになる。 キャッチーなポップスにも感じるけど、正統派ロックンロールにも感じる。実験的に思うけども、王道だとも思う。キャッチーで売れそうな予感もするけど、マニアに評価される知る人ぞ知る作品になりそうな予感もする。 聴いていて矛盾した感情で頭が混乱してしまう。不思議な気持ちになる。変な音楽な気もする。それなのに心地良い。 でも唯一自身を持って言えることがある。それはネクライトーキーの『ZOO!!』はめちゃくちゃ良いアルバムだということだ。これだけは矛盾の気持ちはなく、自信を持って「良い」と言える。 キャッチーで覚えてしまう理由 『ZOO!!』の収録曲は歌詞に同じ言葉が繰り返し出てくることが多い。言葉じゃない擬音もたくさん出てくる。 夢みるドブネズミ ネクライトーキー ロック ¥255 provided courtesy of iTunes ちゅらちゅらちゅらちゅちゅちゅらちゅら鳴いてるようなネズミ、偉そうにそこで立っていたちゅらちゅらちゅらちゅちゅちゅらちゅら叫んでるような (夢みるドブネズミ) 1曲目の『夢みるドブネズミ』から謎の擬音がサビで連発される。ネズミの鳴き声を「ちゅら」で表現する違和感も相まって、これだけ連発されると覚えてしまう。ネズミの鳴き声は「ちゅう」もしくは「ハロー!ボクミッキーダヨ!ヨロシクネ」以外は普通思い浮かばない。 北上のススメ ネクライトーキー ロック ¥255 provided courtesy of iTunes 北へ向かえば 北へ向かえば 北へ向かえば 北へ向かえばえばえばいいよ (北上のススメ) 『北上のススメ』では「北へ向かえば」というフレーズがサビで連発する。「えば」の部分まで繰り返す。洗脳された気分になる。これは覚えちゃう。「薦め」と「進め」のダブルミーニングになった歌詞も印象的。 他にも『虫がいる』や『ぽんぽこ節』でも同じ言葉を繰り返す。フレーズだけを読んだら意味を理解できない内容だが、繰り返されるので印象に残り覚えてしまう。意味を理解できない聴きなれないフレーズだから印象に残るとも言える。 語尾の母音を同じにしているフレーズを繰り返すことで心地よいノリを作っている曲もある。 放課後の記憶 ネクライトーキー ロック ¥255 provided courtesy of iTunes なんかわかりかねる 秋も続く 子供の僕らが何も言わずに見ていた (放課後の記憶) すんでのとこまで来て ちょっとは裏も見てて 抑々しいほど陳腐な 歌を好きになる (放課後の記憶) 放課後の記憶のサビでは「なんかわかりかねる」の次に「秋も続く」で母音を「u」の音で揃えている。Bメロでは「すんでのとこまで来て」と「ちょっとは裏も見てて」では「e」の音で母音を揃えている。 韻を踏むようなフレーズでノリが生まれ心地よく感じる。 しかしそれだけでは印象に残りづらい。その後に「子供の頃の僕らが何も言わずに見ていた」や「抑々しいほど陳腐な歌を好きになる」と韻を全く踏まない違うメロディのフレーズを入れることで違和感を出す。それによって印象に残るよう工夫されている。 これは他の楽曲も同じだ。 『夢みるドブネズミ』でも「ちゅらちゅら」というフレーズを繰り返した後に「ネズミ偉そうにそこにたっていた」と最後の母音は同じだが違うメロディの歌詞を入れる。そこではでバックのリズムパターンや演奏のフレーズも変化させる。 それによって心地よいだけでなく、不思議な違和感も感じて耳の残るのだ。 違和感を感じる理由 ネクライトーキーは素直に演奏してくれない。 不思議な音が鳴っているし、演奏だけ聴くと変わった展開をしている。 『夢みるドブネズミ』では序盤から不思議な音が鳴っている。おそらくシンセサイザーによる音だとは思うが、他のロックバンドでは使わないような音だ。『北上のススメ』では歌の合間にキメやブレイクが頻繁にある。 オーケストラヒットという演奏方法も多くの曲で頻繁に使われている。 これは全ての楽器が短い厚みのある音を同時に出して合わせる演奏方法のことだ。クラシックのオーケストラで使われることが多い。ベートーヴェンの交響曲第5番『運命』のジャジャジャジャーンの部分もオーケストラヒットだ。 『夏の暮れに』『ぽんぽこ節』『涙を拭いて』などでは特に印象的に使われているが、ほぼ全曲で使われている。 夏の暮れに ネクライトーキー ロック ¥255 provided courtesy of iTunes ネクライトーキーのメロディはキャッチーだと思う。大きく上下するメロディは日本人の聴きなれたJ-POPに近いメロディ。しかし演奏は歌を生かすことを目的としたJ-POP的な演奏ではない。かといって邦ロック的なギターを全面に出しした疾走感のある演奏とも少し違う。 歌モノのバンドだが主役は歌ではないように感じる。歌も主役ではあるが、全ての楽器の主張が強い。全ての楽器に見せ場がある。全ての楽器が主役のように聴こえる。 しかしぶつかり合っているわけではない。危ういバランスだが上手く混ざり合っている。 AメロやBメロでは好き放題に演奏しているような演奏だが、サビになるとグッとまとまった演奏になる。シンプルながら一体感のある演奏になる。歌の魅力が引き立つ。 違和感を感じるのにキャッチー。聴いていて不思議な気分になる。心地よくてどこかで聴いたことがあるような気もする音楽なのに、他にこんなバンドはいないとも思う。 ネクライトーキーに魅力を感じる理由 ネクライトーキーは変な演奏をするとと思う。変な歌だとも思う。 でも曲の構成はシンプルで王道のJ-POPや邦ロックと同じ。基本的にはAメロ→Bメロ→サビの構成。歌のメロディも音階が上下するキャッチーなメロディ。 だから馴染みやすいしキャッチーに感じる。むしろ今時ここまで王道な構成の楽曲は珍しいのではと思えるほどに王道。王道ゆえに心地よく聴けても印象に残らない可能性もある構成。 しかしネクライトーキーは「一度聞いたら忘れられない」と思える音楽を作り出している。唯一無二の音楽を届けてくれる。彼らほど印象的な音楽をやるバンドは、若手ではいないとすら思う。 シンプルで良い曲に自分たちの個性を「これでもか」と乗っけてくる。普通に演奏しないし、歌声も変わっているし、歌詞もおかしい。だから印象に残ってしまう。そこに面白みを感じてしまう。でも曲は素直に「良い」と思える。 変わったことや個性的なことをやることは、意外と難しくない。 突拍子もないことや他がやりたがらないことをやれば「変わっている」「個性的」と評価されることもある。でもそれが優れているとは限らないし、求められていることとも限らない。ただの自己満足で終わってしまうこともある。 ネクライトーキーは変わったことをやろうとしているわけではないと思う。ただただ良い音楽を作って、カッコいいロックを演奏してようとしているように思う。 でも個性が滲み出てしまうのだ。だから個性が滲み出ると言うべきかもしれない。 メジャーデビューアルバム『ZOO !!』でも、変わらずに滲み出ている。それが心の底から最高だと思う。 個性は作るものではなく、滲み出るものだのだ。面白さもカッコよさも魅力も、全て滲み出るのだ。それによってバンドは唯一無二の存在になるのだ。 ネクライトーキーの『ZOO!!』は素晴らしいアルバムだと思う。魅力的な音楽だと思う。 「個性的になろう」としているのではなく、良い音楽を作ろうとしていて、それによって結果的に魅力的な音楽を作り出したのだと思う。 このアルバムを聴いたら、音が耳にこびりついて離れなく鳴った。 全ての曲のサビを覚えてしまった。その理由はポップでキャッチーなだけでなく、ネクライトーキーが唯一無二の音楽で刺激的だからだ。 ↓関連記事↓