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【ライブレポ・セットリスト】欅坂46 無観客生配信ライブ『KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!』(改名を発表したライブ)

活動の終止符を発表したライブ

 

欅坂46にとって初の無観客生配信ライブ『KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!』。

 

大きな話題になっている通り、このライブでグループとして重要な発表を行った。8月にラストシングルをリリースし、10月のラストライブで活動に終止符を打ち、改名し再スタートを切るという。

 

重要な発表があっただけでなく、センターを務め続けた平手友梨奈が脱退し、6人の新メンバーを受け入れてから最初のライブだった。

 

重要な意味がいくつも重なった特別なライブ。それもあってか序盤は緊張感が伝わってくる。

 

定刻通りにライブは始まった。

 

Overture

Overture

  • 欅坂46
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

薄暗い証明に照らされ、シャッターの前に立つメンバー28人の後ろ姿。いつものライブと同じように『overture』が流れ、スクリーンにメンバーの名前が映し出される。大きなシャッターが少しずつ上がっていき、メンバーが会場へ入っていく。ステージへと真っ直ぐ歩いて進む。

 

全員がステージに集まりパフォーマンスが始まる。1曲目は『太陽は見上げるものを選ばない』。

 

太陽は見上げる人を選ばない

太陽は見上げる人を選ばない

  • 欅坂46
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誰かに何かを言われて ここから動きたくなんかない
この場所が好きだから 今 僕は自分の足で立っているんだ

(欅坂46/太陽は見上げるものを選ばない)

 

ライブでも披露することが少ないアルバム曲。人気曲やヒット曲以外を1曲目に選んだ理由は、今のメンバーの覚悟や想いを表現している楽曲だからかもしれない。

 

ステージでいつも通りに落ち着いたパフォーマンスをした後、すぐにMCになった。久々のライブであることや新2期生を迎え入れて初のライブであることなどを話していた。

 

「この後もいろいろな仕掛けがたくさん登場するので楽しんでいただけたら嬉しいです」

 

森田ひかるはいつもとは違うライブになることを伝えた。その言葉通りに無観客だからできるであろう、ありえないことが続いていく。

 

ライブ前半

 

画面が変わり暗闇を映すカメラ。そこにトラックが走ってくる。MCでのほっこりした雰囲気を一瞬で変える。

 

トラックが土生瑞穂を追いかけ、他のメンバーが集まる円形のステージに追い詰めてトラックが止まる。ステージ周辺にはハイエースやミニバンなど他にいくつもの車が止まっていた。

 

集まった車のライトが点滅し、メンバーがその光に照らされる。そのまま『エキセントリック』のパフォーマンスが始まった。

 

エキセントリック

エキセントリック

  • 欅坂46
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車のライトもステージ照明として機能している。これは客席があったら不可能な演出であり、無観客であることを利用した演出だ。

 

この曲をきっかけに「配信だからできるライブ」へ変化していく。

 

『エキセントリック』が終わり画面が切り替わった。渋谷など東京の夜景の映像がスクリーンにいくつも映し出される様子をカメラが映す。

 

映像に東京タワーが映った瞬間に曲が始まる。『東京タワーはどこから見える?』だ。工事現場にあるような3階建の足場に乗り、薄暗い照明に照らされながらメンバーが歌い踊る。

 

東京タワーはどこから見える?

東京タワーはどこから見える?

  • 欅坂46
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『Student Dance』は舞台芸術を観ている気分にさせパフォーマンスだった。

 

懐中電灯を持ったメンバーが暗闇の中を歩き移動し、過去作の教室や校庭をイメージしたセットへと移動する。

 

Student Dance

Student Dance

  • 欅坂46
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  • ¥255
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真夜中のハイスクール
フェンスを乗り越えて
忍び込んだ校庭
照らすのはフラッシュライト

(Student Dance / 欅坂46)

 

歌詞の内容を再現するかのように、校庭に忍び込んだ様子を表現するようなパフォーマンス。

 

教室の机や椅子をぐちゃぐちゃにを重ねたり、ピアノに寝転がったりと自由に動く。椅子を投げ捨て壊し、校庭の花壇の花をもぎ取り、プリントを撒き散らしながら踊る。

 

森田ひかるはiPhoneを使いメンバーを動画撮影する。以前は平手友梨奈が担当していたパフォーマンスを森田が引き継いだのだ。それらの動作は狂気と美しさが同居していた。

 

配信ライブである意味を考えると『Student Dance』が最も配信でやる意味を感じるパフォーマンスである。パフォーマンスや演出だけでなく、カメラの切り替わりやカット割りでも魅せる映像になっていたから。

 

Nobody

Nobody

  • 欅坂46
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『Nobady』では額縁をイメージしたセットにメンバーが入り、絵画に書かれた人物が動いているかのようなパフォーマンスをした。メンバーの後ろの映像やセットは曲やダンスに合わせて変化する。異世界に引き込まれた気分だ。

 

独創的で引き込まれる演出が続くが、演出以外も魅力的なライブだ。メンバーのパフォーマンスや表情でも視聴者を惹きつけている。

 

アンビバレント

アンビバレント

  • 欅坂46
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『アンビバレント』では平手友梨奈から小池美波がセンターを引き継いでいた。

 

彼女の表情や動きの表現量に圧倒させられた。自身に表現力があるだけでなく、他のメンバーも引っ張って一つのパフォーマンスにしている。楽曲の魅力をより引き出すようなパフォーマンスにも感じる。

 

欅坂46は平手友梨奈ばかりが注目されるグループだった。しかし他のメンバーも欅坂46のメンバーとして活動しグループと共に成長してきた。

 

思い返すと平手友梨奈が体調不良の時は平手を他のメンバーで支えていたし、平手の居ないライブも何度も経験している。そこでも良いライブを作っていた。

 

 

ライブ後半

 

「換気タイム」としての休憩とMCを挟んで後半戦が始まる。

 

後半も凝った演出が多かった。しかし前半の『アンビバレント』で小池美波が魅せたように、メンバーの表現力に引き込まれるパフォーマンスが続く。

 

前半ではスタッフやクリエイターチームによる演出やライブ構成、ステージセット完成度などに圧倒させられたが、後半ではメンバーのパフォーマンスに凄みを感じた。

 

大人は信じてくれない

大人は信じてくれない

  • 欅坂46
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後半戦1曲目『大人は信じてくれない』も素晴らしかった。

 

派手な演出は前半と比べると控えめ。赤い照明に照らされ炎が吹き出る演出の中、メンバーが踊り歌う。

 

センターを務めたのは2期生の山﨑天。曲終わりの鋭い眼光のままニヤリと笑う表情に鳥肌が立つ。

 

避雷針

避雷針

  • 欅坂46
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『避雷針』ではセンターに立った渡邉理佐の表現力だけでなく、全員が独創的なフォーメーションで踊る様子が印象的だった。

 

雨のように水が上から降り頻る中でエモーショナルにパフォーマンスをした。プロジェクションマッピングで歌詞が映し出される演出がパフォーマンスを引き立てる。

 

楽曲ごとにガラッと雰囲気を変えてしまうことも魅力だ。

 

風に吹かれても

風に吹かれても

  • 欅坂46
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『風に吹かれて』では先ほどまでのクールでダウナーな雰囲気を明るく変えた。鋭い眼光でクールな表情をしていたメンバーは笑顔で歌い踊っている。

 

メンバーがジャケットを羽織りパフォーマンスを始めた『ガラスを割れ』では最も広々と会場全体を有効に使っていた。会場全体を動き回り、全員が激しくパフォーマンスをする。センターに立ち赤いジャケットを纏った小林由依は特に激しく動き盛り上げる。

 

ガラスを割れ!

ガラスを割れ!

  • 欅坂46
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曲の後半ではより激しさが増す。

 

このライブでは複数のステージを使ってパフォーマンスをしていた。『ガラスを割れ』の後半でメンバーは会場全体にばらけ、ここまでのライブで使ったいくつものステージへとバラバラに移動して暴れ回る。

 

感情のままに暴れ回っているようにも見えるが、最終的には全員が中心のステージに集まり一つにまとまる。クライマックスにふさわしいステージングだ。

 

 

最後の挨拶

 

『ガラスを割れ』のパフォーマンスが終わり、長い間が空いた。時間にして30秒ほど経った頃だろうか。メンバーが集まって立っている姿が映る。

 

そして激しいパフォーマンスの余韻を感じるように息を切らしながら、キャプテンの菅井友香が話し始めた。

 

いつも欅坂46を応援していただきありがとうございます。そして配信ライブをここまで観ていただき本当にありがとうございます。

 

久しぶりのライブですし、いつも支えてくださる皆さんに、久しぶりに私たちの元気な姿と、そして楽曲のメッセージ、パワーをお届けしたいという一心でパフォーマンさせていただきました。皆さんには届いていますでしょうか。

ここで私たちから皆様にお伝えしたいことがあります。

 

私たち欅坂46はこの5年間の歴史に、幕を閉じます。そして欅坂46とは前向きなお別れをします。10月に予定している欅坂46のラストライブにて欅坂46としての活動に区切りをつけさせていただき、新しいグループ名となり、生まれ変わります。

もちろんこの決断をすぐに受け入れられるメンバーばかりではありませんでした。私たち自身も欅坂46に対する思い入れがすごく強いですし、ここまで半端な気持ちでこのグループとして続けさせていただいてきたわけではありません。私自身も大好きな欅坂46をずっとずっと守ることができたらなと思って活動してきました。でも、このグループとしてもっともっと強くなるための決断だと、今日までスタッフの皆さん、そしてメンバーみんなと話し合った結果、今は前を向いています。

 欅坂46だからこそ叶えられた夢がたくさんありました。今ここにいないメンバーを含めて、みんなで叶えられたこと、そして応援してくださる皆さまがいてくださったからこそ叶えられたことがたくさんあります。心強いメンバーやスタッフの皆さん、そしてすてきな楽曲、そして本当にすてきなクリエーターチームの皆さま、そして数え切れないぐらいの応援してくださる皆さまと出会えたことはことは本当に誇りです。

 本当に今まで欅坂46に出会ってくださって、欅坂46を好きになってくださって、欅坂46を支えてくださって、本当にありがとうございました。

 たくさん楽しい思い出があった一方で、正直悔しい思いもたくさんしてきました。この2年は特に出口の見えないトンネルをさまよっていたような状態だったと思います。予測できないことがたくさん起きて、思うように活動できない日もありました。応援してくださってる皆さまの期待に応えられないんじゃないかなって思う日もありました。

 

そしてメンバーの卒業、脱退も続きました。グループの名前が一人歩きして、耳をふさぎたくなるようなことに悩まされた日もありました。欅坂46を好きだと思えば思うほど、苦しくなり、もっとこうしなければならないと考えれば考えるほど執着が生まれたような気がします。

 

今、グループとして強くなるために、新しく入ってきてくれた2期生、新2期生、そして1期生の28名でここから新たなスタートを切り、もう一度皆さまとたくさんの夢を叶えていけるように頑張りたいと思っています。そしてここから強くなるために、今まで大切にしてきたことを今一度手放すことで、空いたスペースには本当に大事なものでまた満たされるんじゃないかなと思っています。

 

ここからのリスタートになるので、相当な茨の道が待っていると思います。でもまだ色のない真っ白なグループを皆さんと一緒に染めていけたらいいなと思っています。欅坂46で培った経験がきっと私たちを鍛えてくれています。ですのでこの経験を信じて、また新たに強く、強いグループになることを約束いたします。ですので、これからも私たちに期待していてください。これからも私たちの応援どうぞよろしくお願いいたします。

 

目に涙を溜めながら、途中で言葉につまりながら、真っ直ぐな目で語っていた。

 

「強いグループになることを約束いたします」と話す言葉は、とても力強かった。

 

世間では「欅坂46=平手友梨奈」と思っている人も多い。彼女が脱退した時は「欅坂は終わりだ」「落ち目だ」と無責任に話す人もいた。

 

もしかしたら欅坂46の運営もそう思っていたのかもしれない。

 

平手友梨奈の存在は大きかったし、良くも悪くもそこに頼って活動していた部分もある。ここまでの活動を考えると、それによって平手を含むメンバーも傷ついたこともあったように見える。それによって思うように活動できなかった部分もあると感じる。

 

それをメンバーも理解しているかもしれない。好き勝手に言う人たちを見返し、偏ったイメージを見返そうとしていると思うぐらいにパフォーマンスから気迫を感じた。

 

そして無くなってしまう欅坂46を最高の状態でファンの記憶に残そうとするような気迫も感じた。

 

その姿に感動した。素晴らしかった。心の底からカッコいいと思った。

 

 

最後の曲

 

活動の終止符と改名を発表した後、次の曲が最後だと視聴者に伝える。

 

デビューしてから現在までのアーティスト写真が、今までの歴史を振り返るかのように順番にステージ上のスクリーンに映されていく。そして現在の写真に変わってからパフォーマンスが始まる。

 

8月にリリースされる欅坂46として最後のシングル曲『誰がその鐘を鳴らすのか』だ。

 

全体的に派手な演出や独創的な演出が多いライブだった。しかし最後の曲はほぼ演出がない。照明でメンバーを照らす程度の演出しかない。カメラも引きの絵が多く、全体を映すカットが多かった。

 

まるで「この28人が欅坂46だ」「今の欅坂46を目に焼き付けろ」と伝えるかようにメンバーを映していた。

 

無観客だからこそ出来るアリーナ級会場の全エリアを使ったステージング演出、配信だからこそ出来るメンバーの息遣いさえも感じられるようなカメラワーク、など、メンバーはもちろん、ライブに関わるスタッフ全員が全ての時間において綿密な連携を取りながら進んでいく、新しいライブの形に挑戦します。

(引用:欅坂46 初の無観客・完全生配信ライブ「KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!」 | ニュース | 欅坂46公式サイト)

 

ライブ内容について公式サイトでは上記の説明がされていた。

 

しかし最終的にはシンプルな演出でシンプルなカメラワークになった。それでも十分にパフォーマンスの凄さが伝わる。

 

この配信ライブは新しいライブの形への挑戦でもあったが、新しい欅坂46の魅力を伝えるライブでもあった。

 

そして最後に向かって突き進み、新しい道へ向かおうとする欅坂46へのメンバーの想いや今後も突き進むことへの覚悟を伝えるライブでもあった。

 

最高のパフォーマンスを名残惜しむように、アウトロで少しづつカメラがステージから離れフレームアウトする。メンバーが開始前にいたシャッターの前にカメラがたどり着き、オープニングと同じカメラワークになる。

 

そして少しづつシャッターが閉まり「欅坂46」のロゴが浮かび上がった。

 

「これが欅坂46だ」と伝えるかのようにくっきりとロゴが浮かび上がってから、配信が途切れライブが終わった。

 

私達も新しく生まれ変わるという決断は、受け入れるのに理解するのに時間がかかりました。
でも過去は捨てるわけではありません。これからも欅坂46が大好きだしその培ってきた事は大切にしていきたい。背負っていきたいです。
けど前に進むためには、時には過去を忘れないといけないこともあります。

改名して新たに出発する時はきっとひとまわり大きくなった私たちをおみせします。
このメンバーなら乗り越えられると思います。
もうこれからはチャンスをものにして絶対に応援してきてよかったとそう思って頂けるグループになります!!

(引用:守屋 茜公式ブログ )

 

ライブを終えてすぐに守屋茜がブログを更新した。

 

そこにはグループへの想いと、今後への意気込みが書かれていた。きっと改名はマイナスな出来事にはならず、さらにグループが強くなるきっかけになるだろう。自分はそう確信した。

 

欅坂46は「笑わないアイドル」と言われることが多かった。キャッチコピーのように使われていた。それほど『サイレントマジョリティー』のMVはインパクトが強く、音楽シーンに大きな影響があったのだろう。

 

しかし配信ライブをやりきり、新しい道へ進む覚悟を決めた彼女たちは笑顔で写真に写っている。クールなパフォーマンスをする姿も魅力的だが、それ以上に彼女たちは笑顔も素敵で魅力的だ。

 

 

改名は菅井友香が話していた通り前向きな決断だと思う。悲しいことではなく、これからグループがより強くなるためであり、ファンとしても期待して待つべきことかもしれない。

 

「笑わないアイドル」と評された彼女たちが、改名後は笑顔で溢れるような幸せな活動ができますようにと心から思う。

 

真っ白なものは汚さずに、真っ白で綺麗なままでいて欲しい。

 

欅坂46『KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!』2020.7/16

▪️セットリスト

0.overture
1.太陽は見上げる人を選ばない
MC
2.エキセントリック (センター:土生瑞穂)
3.東京タワーはどこから見える?
4.Student Dance (センター:森田ひかる)
5.Nobady (センター:小林由依)
6.アンビバレント (センター:小池美波)
換気タイム
MC
7:大人は信じてくれない (センター:山﨑天)
8:避雷針 (センター:渡邉理佐)
9:風に吹かれても (センター:小林由依)
10:ガラスを割れ! (センター:小林由依)
MC※活動の終止符と改名、ラストシングル、ラストライブの発表
11:誰がその鐘を鳴らすのか (センター:小林由依)

 

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