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【ライブレポ・セットリスト】豊洲サンセット2025 ※出演:スピッツ・THE COLLECTORS・indigo la End・鈴木実貴子ズ・アマイワナ 2025年9月25日(木)

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そういえば豊洲サンセットに参加するのは初めてだった。毎年スピッツが主催し豊洲PITで開催しているイベントだが、毎年チケット取得の倍率がものすごく、落選が続いていたのだ。

 

今年、念願叶いチケットが手に入った。スピッツ以外の出演者は、THE COLLECTORSと鈴木実貴子ズとindigo la Endとアマイワナ。ベテランと超人気者と新進気鋭のアーティストと、バラエティ豊かかつ魅力的なラインナップだ。

 

THE COLLECTORS

 

1組目はTHE COLLECTORS。毎年出演している常連で、毎年トップバッターを務めているという。それもあってか観客のメンバーを迎えいれる拍手も温かい。

 

そんな温かな拍手を強制終了させらかのように、力強いギターリフが印象的な『シルバーヘッドフォン』からライブが開始。サングラスをかけながら圧倒的な声量で観客を煽りながら歌う加藤ひさしは、ロックスターのオーラで溢れている。還暦を超えているとは思えない声量だ。


ドラムのカウントからなだれ込むように『マーブル・フラワー・ギャング団現わる!』が始まると、会場の熱気は急上昇する。

 

盛り上がるフロアを眺めながら「かっこよすぎてごめんなさい!」と冗談めかして言う加藤。だがそれを冗談に感じさせないぐらいにカッコいい。

 

さらに「スピッツさんのオープニングアクトをやらせてもらってありがとうございます!毎年のように呼ばれてやってるんだから、少しはスピッツファンがこっちに流れてきても良いのに!」と冗談を重ねて観客を笑わせる。音楽だけでなくトークもベテラン故の貫禄と凄みがある。

 

加藤から「コータローくん、前座をやる時に38年前からいつも言っていた言葉を行ってあげて」という振りから古市コータローが「最後まで楽しんで帰ってください」と丁寧に言って演奏が再開。

 

点滅する紫の照明の中で『スティーヴン・キングは殺人鬼じゃない』を、ベテランとは思えない勢いある演奏で披露。サングラスを外して歌う加藤は、ここからさらに本気を出すと言っているかのように歌声もさらに伸びやかになっていた。

 

観客がドラムの音に合わせて手拍子をした『TOUGH』は楽しい。メロディアスな歌と前向きな歌詞のメッセージが胸に沁みる。

 

加藤「メジャーデビュー40周年ですが、ファンになるなら今からがオススメです。若い頃はやんちゃで静かに見てる人がいたら他のバンドのファンだとしても恐喝してたけど、今は丸くなったので」

古市「時代もあるよねえ」

加藤「だから好きになるなら今からです!」

 

初見の人に恐怖を与える表現で自らを宣伝する加藤。

 

次に演奏されたのはスピッツのカバーで『恋のうた』。THE COLLECTORSは毎年豊洲サンセットでスピッツの楽曲をカバーしているらしい。

 

原曲よりも渋くて重厚な演奏で、加藤は歌い上げるように歌唱する。編曲自体は原曲から大きく変えているわけではない。それなのにTHE COLLECTORSのオリジナルかと思うようなサウンドになっている。1回限りのライブ披露だけで終わらせてしまうには勿体無い名カバーだ。

 

ライブも後半。疾走感ある演奏の『ノビシロマックス』で加藤は叫ぶように歌う。ベテランバンドが〈可能性のかたまりさ〉と若々しく歌う姿にグッとくる。

 

畳み掛けるように『スイート・シンディ』を続け、圧巻の演奏でライブを締め、颯爽と去っていくメンバー。その佇まいにも惹かれてしまう。

 

序盤で加藤が「かっこよすぎてごめんなさい!」と言っていたが、確かに謝罪が必要なぐらいにカッコよかった。

 

◾️セットリスト

1.シルバーヘッドフォン

2. マーブル・フラワー・ギャング団現わる!

3.スティーヴン・キングは殺人鬼じゃない

4.TOUGH

5.恋のうた ※スピッツのカバー

6.ノビシロマックス

7.スイート・シンディ

 

鈴木実貴子ズ

 

客席の光がまだ灯されている時に、すっと出てきて準備を進める鈴木実貴子ズの2人。リハーサルだろうか。そのまま客席の電気が付いたままで『夕やけ』の演奏を始める。

 

鈴木実貴子の魂を込めすぎたような情熱的な表現の歌唱と激しいアコースティックギターの奏法に鳥肌が立つ。声量も凄まじい。それを支える高橋イサミこと“ズ”と力強いドラムも良い。2人とは思えないほどの迫力だ。


「めちゃくちゃ良い景色や!みんなもこっちに来て見て欲しい!」と興奮した様子で話す鈴木。「緊張するから僕に最初に喋れと言ってたのに、直ぐに予定を勝手に変える......」と話すズ。

 

どうやらリハではなく既に本番だったらしい。明確なスタートを告げずにすっと入り込むような始まり方だった。それで観客の心を一発で掴んでしまうのだから流石だ。

 

僕たちを誰か知らない人がほとんどだと思います。しっかり自覚しています(笑)

 

長く活動してると仲も悪くなってきます。そうなると明るい曲がなくなります。だから暗い曲だけやるので、みなさんには地獄の30分になると思います(笑)

 

でも、スピッツさんが広い心で呼んでくれたので、いつも通りにやらせてもらいます!

 

元夫婦で離婚後もバンドを続けている2人という背景を知っていると、仲も悪くなるという言葉が冗談に聞こえなくなってくる。だが「いつも通りにやらせてもらいます」という言葉には観客が盛大な拍手を鳴らす。2人のありのままの音楽を観客が求めている証拠だ。

 

そんな観客の期待に応えるように、鈴木の激しいギターのカッティングから『正々堂々、死亡』が続く。叫ぶような歌唱に鳥肌が立つ。力強さだけでなく繊細さも感じる『かかってこいよバッドエンド』も素晴らしい。

 

開場する前に少しだけ外に出ていたんですよ。3人ぐらいのお客さんに気づいてもらえました。

 

関係者用の入口近くに立っていたら、すれ違うスタッフやアーティストの方々が、みんなこちらに関係者パスを見せてきたんです。これは警備スタッフと思われているのかと......(笑)

 

今スクリーンに顔が映っていると思うので、顔を覚えてもらえたらと思います(笑)

 

切ないエピソードを語るズ。

 

ドラムのカウントから始まったゆったりとしたリズムの『チャイム』では、繊細ならドラミンラで演奏でも切ない空気を作り出すズ。対する鈴木は情熱的な歌唱をしている。この絶妙なバランスが鈴木実貴子ズの魅力のひとつなのかもしれない。

 

普段は小さいライブハウスで歌っています。  それでも緊張したり自分を大きく見せようとして失敗することもあります。

 

悔しくて対バン相手のライブも見れず、ライブハウスから逃げ出して駐車場の自販機で泣く。時間と歳だけが一方通行で進んでいく。

 

何をしたら自分が納得できるのか。それすら分からないまま人生は進んでいく。

 

鈴木のMCのようなポエムのような、そんな言葉から自然と曲が始まる。演奏されたのは『坂』。ゆったりとしたリズムだが、やはり歌声には魂を込めるような熱さを感じる。〈自動販売機〉〈駐車場〉とMCと繋がる言葉が歌詞に使われていて、鈴木の実体験が歌に込められていることも感じて胸を打たれた。

 

歌い終えて「みんな優しいですね!こんな知らないバンドを真剣に聞いてくださって!」と嬉しそうに話す鈴木。おそらく観客のほとんどが鈴木実貴子ズのことを知らなかったと思う。だがこの30分でしっかりと爪痕を残していた。

 

ラストは『ファッキンミュージック』。やはり2人とは思えない重厚な演奏と熱い歌唱だ。演奏を終えた2人は観客に伝わったことを実感しているかるか、穏やかな笑顔を見せていた。

 

たった30分ではあったが、確実にこの場の観客の心をつかんでいた。この日のライブを終えた後、鈴木は悔しさなど感じず、駐車場の自販機で泣くことはなかったと思う。きっと笑顔でスピッツまでライブを観たのではないだろうか。

 

◾️セットリスト

1.夕やけ

2.正々堂々、死亡

3.かかってこいよバッドエンド

4.チャイム

5.坂

6.ファッキンミュージック

 

indigo la End

 

貫禄すら感じる落ち着いた佇まいでステージに登場したindigo la End。川谷絵音の「indigo la Endです。よろしくお願いします」という落ち着いた挨拶から演奏されたのは『夜汽車は走る』。安定感ある演奏でしっかりバンドの音を聴かせ、一瞬で会場の空気を自分たちの色に染める。初めて聴いた観客も、その演奏力と歌唱力の高さに圧倒されているかのような空気感だ。

 

だが圧倒させるだけでなく、しっかりと観客も巻き込んでこころの距離を縮める演奏もする。ベースの後鳥亮介が手拍子を煽った『名前は片思い』では、観客の盛大な手拍子が響き、サビでは腕を上げて盛り上がっていた。TikTokでバズった曲ということもあり、知っている人も多いのだろう。

 

続く『邦画』では心地よい演奏で観客の身体を揺らす。コーラスワークが美しく、川谷のサビの裏声も裏声とは思えないほどに伸びやかに響く。深紅の照明の中で演奏する姿がクールだ。

 

青い照明の中で演奏された『通り恋』は演奏への没入感が凄まじかった。身動きが取れなくなり防寒してしまうほどに引き込まれてしまった。

 

僕の知らない間に草野さんがindigo la Endのライブに来てくれていて、グッズも並んで買ってくれたらしいです。

 

スピッツのファンクラブ動画でインディゴのTシャツを着ているのを見てびっくりしました。来るなら言ってくれれば良いのに(笑)

 

MCでは草野マサムネがindigo la Endのファンかのように普通にライブに来ているエピソードを語る川谷。彼はスピッツに多大な影響を受けているので、心底嬉しい出来事だったのだと思う。

 

代表曲のひとつ『夏夜のマジック』も、やはり知っている観客が多いのだろう。明らかに会場の空気が変わったし、ワンマンのようにバンドのことを受け入れるような雰囲気になっている。サビで会場全体が腕を上げた景色は圧巻だ。

 

前回スピッツのイベントに呼んでもらった時に打ち上げで草野さんと2人きりになって、緊張して話す言葉が出てこなくて、好きな食べ物とか聞いたりお見合いみたいになってました(笑)

 

緊張しすぎてトイレに行ったらラジオで草野さんがきまづかったのかなって言っていて、それが理由で10年間呼ばれなかったのかもしれません(笑)

 

草野に嫌われたのではと不安になる川谷。自分の記憶が正しければ『草野マサムネのロック大陸漫遊記』で「2人っきりになって気まづくて一緒にいたくなかったのかな?」と不安な想いを吐露していたと思う。お互いに片思いだと思って勘違いしている。この状況こそ“ 名前は片思い”ということなのだろうか?

 

以前スピッツのトリビュートアルバムで『愛の言葉』をカバーさせてもらったんですが、今日はやりません。

 

その代わり他の僕が大好きなスピッツの曲をカバーします。

 

ここでスピッツのカバーを披露することを話す川谷。

 

川谷「ギターから始まるから緊張するでしょ?」

長田「気が気ではないです......」

川谷「緊張するんであまり観ないでください。後ろを向いて聴いてください」

 

貫禄すら感じる完璧な演奏をここまでやってきたとは思えないほどに緊張した様子のメンバー。 

 

ステージが緊張で張り詰める中で演奏されたのは、スピッツの名曲『ホタル』。曲始まりの長田の原曲通りのギターのイントロは完璧で、演奏全体としても原曲から大きく変わらないアレンジに感じた。しかし完全にindigo la Endの音になっていたし、川谷の歌声も楽曲と相性が良い。まるでオリジナル曲かと思うほどにバンドの色に染まって輝く『ホタル』だった。

 

最後に10年前の新木場サンセットでもやった曲をやります。

 

スピッツのイベントに初めて呼ばれた時、ようやく報われた気持ちになりました。

 

僕らのバンド名はスピッツの『インディゴ地平線』というアルバムから取りました。今後もずっとスピッツに、憧れ続けるんだと思います。

 

川谷が感慨深そうな様子で丁寧に語ってから最後に演奏されたのは『幸せが溢れたら』。丁寧に確かめるように歌う川谷と、丁寧に繊細な音を重ねるバンドの演奏。きっと初めて呼ばれた時よりも、さらに良い演奏で観客に届けられたのではと思う。

 

スピッツに憧れたバンドが、スピッツのイベントに呼ばれ、堂々とした演奏で最高のライブを行う。普段から素晴らしいライブをやるバンドではあるが、この日はいつにも増して特別な日になったのかもしれない。

 

セットリスト

1.夜汽車は走る

2.名前は片想い

3.邦画

4.通り恋

5.夏夜のマジック

6.ホタル ※スピッツのカバー

7.幸せが溢れたら

 

アマイワナ

 

ピチカート・ファイヴ『スウィート・ソウル・レヴュー』をSEに登場したアマイワナ。おそらくこの日の出演者で最も知名度は低かったと思う。

 

だが美しい青色の髪の毛やサングラスや90年代の渋谷系を彷彿とさせるファッションや佇まいからは個性が溢れ出していて、演奏前から自分たちの空気を作っていた。

 

1曲目は『無期限のビオラ』。キャッチーなメロディとポップな曲調が聴いていて楽しい。続く『I’m CRAZY』ではエフェクトのかかったボーカルとオルタナティブな演奏で聴かせる。

 

サポートギターにワンダフルボーイズのアツムワンダフル、サポートドラムにリーガルリリーのサポートでもお馴染みのDesire Nealyを招いた3人体制だが、3人とは思えないほどに様々なサウンドで楽しませてくれる。

 

キュートに「サンキュー!」とアマイワナが言うと、観客の「かわいい」という言葉が漏れ聞こえてきた。ステージセットの赤いダイヤル式電話の受話器を耳にあてて「今日は楽しみにしてきたの!みんなもそうよね?」と寸劇チックな煽りをすると、観客は歓声と拍手で応える。

 

それにしてもエンタメ性の高いステージだ。今度はDesireのドラムと音源に合わせてアマイワナとアツムがクールにダンスを踊る。動きにキレがあり観客も手拍子しながら歓声をあげていた。

 

そんなダンスブロックを挟み、アマイワナがサングラスを外したことを合図に『COVER GIRLS』が続く。様々な魅せ方で観客を巻き込んでいたこともあってか、観客の盛り上がりも上々だ。

 

まるで映画のキャラクターかのようなオーラを放っていたアマイワナだが「去年草野さんが気になった曲としてアマイワナを紹介してくれました。それをきっかけにイベントに呼んでもらえて嬉しいです!」とはにかみなが話す彼女の姿は、キャラクターではなく素の部分が出ているように思えた。

 

ライブも後半。音源よりも力強いドラムの音が印象的な『上海少女』でしっかりと盛り上げロックな一面を見せる。

 

空港のアナウンスのオケから続いた『上海逢引』がアマイワナのライブで1番の盛り上がりだった。サビの〈ウォーアイニー〉フレーズでアマイワナが観客にマイクを向けると、観客は拳をあげて「ウォーアイニー!」と叫ぶ。まるでワンマンかのような盛り上がりだ。演奏後の「謝謝」という挨拶も楽曲のイメージと合致していて良い。

 

ラストは『メッセージソング』。疾走感ある演奏と歌でしっかり盛り上げ、颯爽とステージを去っていった。

 

今回の出演者の中で、最も知名度も低くファンは会場に少なかっただろう。だがしっかりと個性を伝えて、最高の音楽を聴かせて、観客の心に残るライブをしていた。観客は甘い罠にハマったかのようにアマイワナの音楽に心を打たれたと思う。

 

セットリスト
1.無期限のビオラ

2.I’m CRAZY

3.COVER GIRLS

4.上海少女

5.上海逢引

6.メッセージソング

 

スピッツ

 

トリは主催のスピッツ。ゆっくりとステージに登場して演奏し1曲目は『夢追い虫』。重厚な音を鳴らしながら、丁寧に演奏をしている。草野マサムネは繊細に言葉を綴るかのような歌唱をしている。

 

自分は仙台で行われた『ロックのほそ道』にも参加していて本編のセットリストは同じで1曲目も同様に『夢追い虫』だったが、『豊洲サンセット』の方が落ち着いていた演奏と歌に感じた。同じセットリストを何度か披露したからこその安定感が出ているようだった。

 

続く『見っけ』では観客は自然とイントロで手拍子を並鳴らす。煌びやかなサウンドが心地良いが、その下には重厚なロックサウンドがあって、これぞスピッツと言いたくなる演奏だ。

 

なだれ込むように『春夏ロケット』が続くと、観客のボルテージは一気に最高潮に。田村明浩のボルテージも最高潮になっているようで、ステージを縦横無尽に駆け回り、サブステージの方まで走っていき飛び跳ねている。『ロックのほそ道』の時よりも暴れ回っていて、思わず笑ってしまうほどの暴れようだ。しかしステージ中央に立ちベースソロを弾く姿はクールである。

 

スピッツは主催イベントの都度にカバー曲を披露しているが、今回のカバー曲は米津玄師『レモン』のカバー。『ロックのほそ道』でも披露していたが、その時は良い意味で緊張をステージから感じて張り詰めた空気があったが、この日は穏やかな空気で安定した演奏で届けていた。数回の披露といえども、演奏が成熟されたということなのだろう。

 

「スピッツは今年のライブ本数は少ないんですけど、やっとライブに慣れてきました(笑)」とベテランとは思えい初々しい発言をする草野。

 

MCの話題は今回の出演者について。THE COLLECTORSについては「みんな若返ってない?50代を境に段々と若返り始めてる」と独特な表現で評価していた。たしかに若手かのような勢いや衝動も感じるライブではあった

 

鈴木実貴子ズについては「」アコギとドラムだけなのにハードロックみたいでカッコイイおれもズになりたい」と評していた。なぜか田村明浩ズになろうかという流れになっていた。

 

indigo la Endについては「繊細なのに力強い。絵音くんは良い声してるし歌も上手い。『ホタル』のカバーインディゴのオリジナルみたいだったし」と高評価をする草野。インディゴのライブにプライベートで足を運びグッズ列に並ぶだけあって、本心から好きなようだ。

 


アマイワナについては「ファッションも音楽も華やかだった」と語る。なぜか対抗意識を持った草野は「俺は福を脱いだら乳首に電球が付いていて光るようにしようかな」と話していた。派手になりたいという気持ちの表れだとは思うが、少しズレている。

 

演奏は『初恋クレイジー』から再開。軽快なピアノの音が印象的でスピッツのポップな部分もしっかりと伝える。観客の手拍子も演奏の一部かのように心地よい。

 

打ち込みのドラムと草野のアコースティックギターと歌から始まるアレンジの『運命の人』も、ライブだからこそ聴ける特別な演奏だ。サビでバンドの生演奏になる瞬間の迫力に鳥肌が立つ。音源の編曲も良いのだが、ライブバージョンこそこの楽曲の完成系に感じる。

 

MCは来年のカバー曲の選曲についての話題に。「最近のヒット曲は歌うのも演奏するのも難しい......。来年は簡単なやつにしたい......」と悩む草野。「『おどるポンポコリン』なら盛り上がりそうだよね」と話し、サビだけ弾き語りで歌う草野。たしかに弾き語りのサビだけでも盛り上がっていた。

 

「もう少しお付き合い下さい」と控えめに観客を煽ってから演奏されたのは『クリスピー』。控えめな煽りとは真逆の疾走感ある演奏だ。田村も控えるつもりがないほどに右に左に上にと暴れ回っている。

 

そこからライブ定番曲の『8823』へ。観客の騒ぎ方も田村の暴れ方もさらにヒートアップする。田村はこの日最も暴れ回りながらベースを弾いていた。なんならベースを床に置いて厚切りジェイソンの「WHY JAPANESE PEOPLE!?」のポーズをしながらサブステージまで駆け寄ったりとエキサイトしている。

 

本編ラストは新たな代表曲といえるヒット曲となった『美しい鰭』。先ほどまで暴れ回っていた田村も穏やかに演奏して、他のメンバーも含めライブの余韻を楽しむかのように穏やかに噛み締めるように歌い演奏している。サビで腕を揺らす観客もおなじ気持ちで楽しんでいるように見えて、会場が多幸感で満たされていた。

 

アンコールはメンバー紹介からスタート。田村は「今年5本目のライブでようやく感覚が戻ってきた。俺はライブ中にベースを床に置いていたことを思い出した」と語る。それ故の暴れ方だったのだろう。

 

クージーは「『クリスピー』を演奏していたら、昔TH COLLECTORSが豊洲サンセットで『クリスピー』をカバーしていたことを思い出した」と話していた。そのカバーも聴いてみたかった。

 

崎山は「昼間は涼しくて嬉しい気持ちになりました」と、まさかの本日の気温について語っていた。

 

三輪は「最近滑舌が悪くなってきて話の最後まで喋ることを諦めることがある。でもメンバーは俺の言おうとしたことを理解してくれる」と老化によってメンバーへの信頼と愛が深まったエピソードを話していた。

 

崎山と三輪はライブの感想ではなかったが、このような話しを聞けるのも、ある意味では貴重かもしれない。

 

アンコール1曲目は『ハニーハニー』。なかなかのレア曲だ。ポップて可愛らしい曲ではあるものの、ライブでは音源よりも力強いサウンドでハードな演奏だ。ポップな中でもロックな1面をしっかりスピッツはライブで表現してくれる。黄色い照明も美しかった。

 

間髪入れずに始まったラストは『幻のドラゴン』。最後に全てを出し切るかのような疾走感あるロックナンバーで締めた。やはりロックバンドであることをしっかりスピッツはライブで示してくれる。

 

スピッツは基本的にはホールで演奏することが多いし、アリーナ規模でもなかなかチケットが取れない。人気者かつ大物ということもあって、JPOPの象徴的なバンドだと思っている人もいるかもしれない。

 

しかしスピッツはゴリゴリのロックバンドで、日本のロックシーンにおいても重要なバンドだ。それはライブハウスで観ると、より強く感じる。

 

問題はライブハウスだとさらに簡単にチケットが取れないことではあるが、それでもライブハウスに若手もベテランも関係なくジャンルレスに良いアーティストを集め、自身もステージに立つスピッツの価値観は指示したい。

 

セットリスト

1.夢追い虫

2.見っけ

3.春夏ロケット

4.Llemon ※米津玄師のカバー

5.初恋クレイジー

6.運命の人

7.クリスピー

8.8823

9.美しい鰭

 

アンコール

10.ハニーハニー

11.幻のドラゴン