2020-10-14 【ライブレポ・セットリスト】欅坂46『THE LAST LIVE』1日目 @国立代々木競技場第一体育館 2020.10.12 欅坂46 ライブのレポート 欅坂46としての集大成 大きな門の前にいるメンバー。ゆっくりと門が開き、全員がゆっくりと歩いて中に入っていく。 メンバーの向かう先にあるのは、ラストライブを行うためのステージ。後方のスクリーンには欅坂46のロゴが浮かんでいる。日本の音楽シーンに大きな爪痕を残したグループにの最後にふさわしい、壮大なステージだ。 「私は、私たちは欅坂46なのだ」 メンバーがステージに向かって歩く映像に、重なるように綴られていた言葉。活動を終えることによって、より重い意味が加わってしまった。 メンバーがステージにたどり着き『overture』が流れる。メンバーの名前と写真の映像がスクリーンに映る。 欅坂46『THE LAST LIVE』。活動に終止符を打つために2日間行われるラストライブの初日。無観客ということも最後ということも関係なく、今までのライブと同じようにスタートした。 1曲目は『サイレントマジョリティー』。デビュー曲にして一瞬でシーンの中心になるぐらいに求心力のあった楽曲。 サイレントマジョリティー 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 『サイレントマジョリティー』はデビュー当初とは比べ物にならないほどに、鬼気迫るパフォーマンスだった。ライブの1曲目ですでに歴史と進化を感じてしまった。 だから感動的なステージではなく、5年間の集大成を叩きつけるようなヒリヒリしたライブになると思った。それぐらいに引き込まれるパフォーマンスなのだ。 「私たちが欅坂46だ」という言葉に説得力を持たせるような、力強いパフォーマンス。有終の美を飾ろうとしているライブだ。 前半 2曲目の『大人は信じてくれない』も、グループの進化と変化を感じるパフォーマンスである。 センターを務めたのは山﨑天。リリース当初は加入していない二期生メンバーだが、彼女の表現力の高さは圧巻だ。新しくメンバーを迎えたことで、グループが進化したことを改めて感じる。 『エキセントリック』ではステージではなく、本来なら客席があるはずのフロア全体にメンバーが散らばってパフォーマンスをした。 エキセントリック 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 床に歌詞が映像になって映る。無観客配信だからできる演出。 薄暗い照明の中で踊るため、メンバーの表情は見えづらい。それでも縁sy通やパフォーマンスに引き込まれてしまうのは、アイドルとしてはエキセントリックな楽曲を表現することに重きを置いたパフォーマンスであることが理由だ。 散らばっていたメンバーがフロアの中心に集まり『語るなら未来を』をパフォーマンス。あえて広いフロアを小さく使う演出。それによって会場の広さとメンバーの団結力を表現しているようだ。 次の曲は渡邉理佐がセンターの『月曜日の朝、スカートを切られた』。今度は小さな四角い部屋でパフォーマンスを行う。 壁や天井にはプロジェクションマッピングによって、電車の車内をイメージした映像が重なる。メンバーは通勤電車に乗っている様子を演じるようなパフォーマンスをする。 今回のライブはいくつもステージが設置されていて、楽曲のイメージや内容に合わせた場所でパフォーマンスをした。 これは無観客の配信だからこそできる演出だ。ライブでありつつも、映画のような映像作品としても成立している。 特に『Student Dance』は映像作品といえるような演出だ。 Student Dance 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes スマートフォンでメンバーを撮影する森田ひかる。その映像が画面に映る。視聴者が森田の目線でメンバーを観ているような感覚。その場に自分もいるような感覚になる。時折通常のカメラに代わりメンバーの美しく一体感のあるダンスを映すのも良い。 クールな楽曲と魅せるパフォーマンスと演出でライブをスタートしたが、アイドルとしての可愛らしさや明るさもしっかりと持っている。 初披露の『カレイドスコープ』では、歌唱メンバー(上村莉菜・原田葵・井上梨名・武元唯衣・藤吉夏鈴・森田ひかる)がステージに1列に並び可愛らしい振り付けでダンスをする。曲調はポップで明るい。ここまでの流れとは違う一面だ。 ライブの中で良い意味で浮いていた楽曲が、小林由依が1人で歌った『渋谷川』である。 渋谷川 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes ここまで感傷に浸る隙など与えないほどのエンターテイメントでキレのあるパフォーマンスを続けていたが、この曲だけは胸が締め付けられて切なくなった。 『渋谷川』は小林由依と2018年にグループを卒業した今泉佑唯とのユニット曲である。ユニット名をゆいちゃんずと名乗り、2人が盟友のように一緒にアコースティックギターを弾きながら歌う姿が印象的だった。 しかし今泉が卒業してしまったため、この日は小林が1人でギターを弾きながら歌う。 1人で歌う姿は寂しくも力強い。ギターのずれたチューニングも気にさせないほどに感情を込めて歌っていた。卒業したメンバーも含めての「欅坂46」である。そんなことをを感じさせる名演だ。 後半 フェンス越しに激しくダンスする『I'm out』でグループとしてのライブが再開。 曲の後半ではフェンスを倒し、メンバーがステージに散らばってエモーショナルなパフォーマンスをする。その衝動的な姿に鳥肌が立つ。 『東京タワーはどこから見える?』では楽曲の世界観を東京タワーの映像をバックにパフォーマンス。『避雷針』では歌詞がスクリーンに映ったり、水が噴水のようにステージから吹き出たりと、欅坂46にしか作れない世界観で魅せる。 避雷針 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes パソコンやスマホの画面越しではあるが、現実とは違う世界に連れてこられた気分になるほどに、後半は独自の世界観がさらに強まっていく 特に代表曲であり様々な因縁がある『不協和音』は、画面から目を離すことができなかった。 不協和音 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 衣装はMVと同じものに着替え、楽曲の世界観を表現するために徹底していた。フロアで激しく踊るメンバーを大量のレーザーが照らす。 菅井友香と田村保乃が、感情を爆発させるように「僕は嫌だ」と叫んだ。 音源では平手友梨奈と長濱ねるが担当するセリフ。菅井と田村はそれに負けないほどに心をに突き刺さる表現だった。 配信である強みを特に活かしていたのは『キミガイナイ』だ。 自宅をイメージした小さな部屋の中でメンバーが歌い踊っる。それをカメラが部屋の窓から覗くように外から映し、MVのような引き込まれる映像を作り出す。有観客だとしたら客席からメンバーが全く見えないであろう演出。配信だからこそのパフォーマンスだ。 『君をもう探さない』は代々木体育館の広いスペースを最も有効活用していた。これも配信である強みを生かしている。横断歩道や信号、工事現場の柵など街をイメージしたセットや映像が映し出されて、メンバーが会場全体に散らばりパフォーマンス。 君をもう探さない 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes ダンスというよりも演劇に近い方法で楽曲の世界観を表現した。傘を使ったりと歌詞をイメージした演出があることも良い。楽曲のメッセージや世界観を大切にしたパフォーマンスを、アイドルがここまで徹底して行うのは欅坂46ぐらいかもしれない。 『もう森へ帰ろうか』も無観客のアリーナだからこそできる演出だった。 客席のいないフロアの床に映し出された森の映像の中、優美に歌い踊るメンバー。スモークが会場を埋め尽くし、パフォーマンスを魅力的に彩る。 アイドルでありながら音楽を届けることを大切にしているグループなのだと改めて感じる。 メンバーを目立たせるよりも、楽曲の世界観をしっかりと表現することに重きを置いている。それには賛否分かれる部分かもしれないが、それが欅坂46の魅力であり、多くの人の心を掴んだ理由かもしれない。 黒い羊が白い羊になった ラストに披露されたのは『黒い羊』。 黒い羊 欅坂46 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 黒い羊 そうだ僕だけがいなくなればいいんだそうすれば 止まってた針はまた動き出すんだろう? 毎回鬼気迫るパフォーマンスに引き込まれてしまう楽曲だが、暗くて悲しい楽曲でもある。特にサビの歌詞は印象的で、救いのない曲かもしれない。 白い羊になんて僕は絶対になりたくないんだそうなった瞬間に僕は僕じゃなくなってしまうよ 後半の歌詞は「大人や社会への反抗」がいつの間にか世間のイメージになってしまった欅坂46が、自らのイメージに飲み込まれてしまっていった様子を感じてしまい、切なくなる。 しかしこの日の『黒い羊』は今までと違う印象を感じた。楽曲に新しい意味が加わったと思った。 平手友梨奈がいた頃の『黒い羊』は、切なくて悲しいパフォーマンスだった。特に2019年に行われた3rdアニバーサリーライブのパフォーマンスが印象的である。 3rdアニバーサリライブでは、平手友梨奈がメンバーを突き放し、一人だけ別の方向に歩いていくという演出だった。それは楽曲の世界観やグループのイメージを創り上げているし、個性と魅力に溢れたパフォーマンスだとは思う。しかしその演出は切なくて悲しい。 今回センターを務めたのは小林由依。平手がいた頃と同じようにパフォーマンスが続くが、曲終わりの演出によって、楽曲の意味を変えてしまった。 曲が終わるとステージ奥が光で照らされ、光の方向へと次々とメンバーが走って向かっていく。それを立ち尽くしながら眺める小林由依。そんな”黒い羊”の小林の手を渡邉理佐が取り、目を合わせてから一緒に光の方へ走っていく。全員が同じ方向へと向かっていった。 黒い羊が白い羊になっても、”僕が僕じゃなくなる”ことはない。いなくなるのではなく、共に歩むことで”止まっていた針はまた動き出す”ことを表現しているのではと思う。 楽曲の持っていた意味を否定するパフォーマンスによって、楽曲に新しい意味を加え、希望の歌に変えてしまった。 『黒い羊』が初めてハッピーエンドで終わったパフォーマンスであり、様々な出来事があった欅坂46を最後はハッピーエンドで終わらせるということを示唆しているとも思う。 MCは一切行わず、自己紹介も最後の挨拶もなくライブは終わった。歴史を進化を感じる集大成としてのパフォーマンスで、感謝や想いを伝えていた。それにファンは魅了され、感動した。 欅坂46はメンバーが望むような活動をできなかったかもしれない。想像していた姿とは全く違うグループだったのかもしれない。ドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実』でのメンバーの発言や、ラストライブの曲転換の合間に流れた各メンバーの加入当時から現在までを辿る映像で、アイドルになることへの希望を語っていた姿と照らし合わせると、そう思ってしまう。 それでも彼女たちの活動が多くの人に感動を与えたことは確かだし、唯一無二のアイドルグループとして支持されたことも事実だ。 ラストライブ初日は欅坂46の他のアイドルとは違う魅力や凄みを感じるライブでありながら、希望を感じる温かななライブでもあった。 全員が納得する そんな答えなんかあるものか 『黒い羊』はこのフレーズで曲が終わる。 しかし全員が納得する答えも、もしかしたらあるのかもしれない。 最後に披露された『黒い羊』のパフォーマンスには、全員が納得する答えが含まれているように感じた。 2020.10.12 欅坂46『THE LAST LIVE』@国立代々木競技場第一体育館 ■セットリスト SE.Overture 1.サイレントマジョリティー ※センター小林由依 2.大人は信じてくれない ※センター山﨑天 3.エキセントリック ※センター土生瑞穂 4.語るなら未来を ※センター土生瑞穂 5.月曜日の朝、スカートを切られた ※センター渡邉理佐 6.Student Dance ※センター森田ひかる 7.カレイドスコープ 8.渋谷川 ※小林由依ソロ 9.I'm out ※センター齋藤冬優10.Nobody11.東京タワーはどこから見える? 12.避雷針 ※センター渡邉理佐13.不協和音 ※センター菅井友香14.キミガイナイ15.君をもう探さない 新二期参加16.もう森へ帰ろうか? ※センター上村莉菜17.黒い羊 ※センター小林由依 ↓2日目のライブレポはこちら↓ ↓欅坂46の他の記事はこちら↓