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【ライブレポ・セットリスト】たかはしほのか(リーガルリリー)『sudeni』at キリスト品川教会 グローリア・チャペル 2025年10月2日(木)

教会でライブを観る経験は、今までなかった。だから会場の厳かな雰囲気に、少しだけ緊張してしまった。

 

とはいえこの空間で聴くリーガルリリーの楽曲やたかはしほのかの歌声とギターは、格別なのだろうなと想像できた。

 

キリスト品川教会 グローリア・チャペルで行われた、リーガルリリーのギターボーカルであるたかはしほのかの弾き語りツアー『sudeni』の東京公演。想像通りに、いや、想像を超えるほどに素晴らしいライブだった。

 

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開演時間を過ぎて会場が暗転すると、たかはしほのかがゆっくりとステージに登場し、椅子に座った。教会だからか暗転しても、ライブハウスやホールよりも少しだけ明るい。それが教会だからこその幻想的な空気を作っている。

 

1曲目は『1977』。リーガルリリーの時々同じリフをアコースティックギターで丁寧に弾き、囁くように歌う。その演奏スタイルはバンドでは見せることがない。曲の後半にはステージ後方の十字架が明るく照らされて、その美しさに息を飲んでしまった。

 

バンドではライブの後半に演奏されることが多い『リッケンバッカー』は、珍しく序盤に演奏された。深紅の証明の中でギターをアルペジオで弾きながら優しく歌う表現は、バンドの時と全く違うので新鮮だ。〈星になるのさ〉というフレーズを歌った瞬間に、煌びやかな白い照明がステージだけでなく客席も含めた全体に散らばる。その景色は満点の星空のようだ。

 

弾き語りライブといえばシンプルなステージを想像するものだが、このライブは演出にも凝っている。特に照明演出は素晴らしく、教会という環境を活かしつつ、楽曲のイメージに合致した光でステージを照らしていた。ライブは音楽を聴きに行くものだが、視覚でもしっかり感動させてくれる。

 

最初の2曲はバンドのイメージとは違う表現だったが、3曲目の『地球をつかまえて』は、楽曲の持つ性質による理由もあるが、バンドでの表現と近い演奏だった。だがアコースティックギターで優しくストロークし歌っているので、歌詞が言葉としてダイレクトに胸に響く。

 

「お越しいただきありがとうございます。最後まで楽しんでください。たかはほのかです」といつも以上に厳かな感じの挨拶をして、すぐに演奏が再開。

 

ギターだけでなく声もチューニングするかのように、繊細な声でマイクチェックしてから演奏されたのは『ぶらんこ』。ゆっくりとギターをストロークして丁寧に歌う。音源よりもゆったりとしたリズムで心地よい。月のようにマルイ円の光を壁面に大きく映す照明は美しかった。

 

ダイヤが散りばめられたような光が会場全体を包んだ『キラキラの灰』の景色も美しかった。演奏も当然に良くて、シンプルなストロークでの弾き語りだからこそ、メロディや歌詞の良さが際立つ。

 

普段はアコースティックギターで曲を作っています。

 

曲を作る時と同じような0から1になる瞬間をこの空間に持ってこれたらいいなと思って、今回のイベントを開催しました。

 

ライブタイトルの『sudeni』は「既に」持っているものと「素手に」持っているもので表現するという意味が込められています。私は素手にあるものと既にあるものとを組み合わせて曲を作っています。

 

絵を描く人は分かるかもしれないですが、闇を描くことで光を表現するという手法があります。私は音楽を作る時、そんな気持ちで作っています。

 

今回のライブに込めた想いやコンセプトについて語るたかはし。そして「10代の頃に作った、そんな想いを込めて作った光の曲をやります」と話してから『蛍狩り』を続ける。

 

ステージに設置されたいくつもの豆電球が蛍を表現するかのように光る。その景色が幻想的で、繊細で優しい歌と演奏の組み合わせによって、音楽の中に吸い込まれるような気持ちになる。演奏を終えた後の拍手を忘れるほどに、観客は感動していたようだ。

 

そこから続く『ムーンライトリバース』も素晴らしかった。音源よりもゆっくりなテンポで、それなのに音源よりも言葉のひとつひとつに魂を込めるように熱がこもった歌唱で歌う。月をイメージしたであろう円形の照明が壁面に大きく映される景色は美しかった。この曲でも観客は拍手をすることを忘れるほどに吸い込まれていた。

 

そんな静寂を切り裂くように激しくギターをストロークして始まったのは『スターノイズ』。弾き語りといえども一本調子にならず幅広い表現をするので、その都度に鳥肌が立つ。この楽曲は激しくギターを弾いたかと思えば次の瞬間には優しくアルペジオを弾いたりもする。1本のライブの中だけでなく、1曲の中にも複数の表現を組み合わせていた。流れ星のような光がゆっくりと壁面を通るような照明演出がロマンティックだ。

 

丁寧なアルペジオのギターから始まった『海月星』では、中盤から段々と演奏が激しくなっていき、弾き語りとは思えない壮大な空気を作り出す。星が夜空一面に散らばる様子を表現しているであろう照明が美しい。たかはしの作る楽曲の傾向もあるとは思うが、今回のライブは夜空をイメージした照明演出が多い。まるで夜空の下で彼女のギターと歌を聴いているかのような感覚になる。

 

曲間なしで始まった『アルケミラ』はかなりのスローテンポだったをだからこそ歌詞のメッセージが響く。緑色や赤色の怪しげな照明で包まれる中での演奏だったが、最後はステージが眩しいほどに明るく照らされた。それが希望を表現しているよう二思えてグッとくる。

 

「カバーをやります。大好きな曲を、自分の声や筋肉や空気を使って、歌おうと思います」と告げてから改めて集中するかのように間を空けてから披露されたのは『幸福のしっぽ』。ハヌマーンのカバーだ。

 

原曲は最初から熱量が高く胸を鷲掴みにするようなサウンドと歌声に思う。だがたかはしのカバーは丁寧で繊細で優しさを感じる。曲の後半には魂を込めるかのように声量も大きくなっていったが、基本的には言葉と音を大切にするような演奏だった。ダイヤの形をした黄色い照明が連なって壁面で重なる景色は幻想的だ。

 

「今の曲はハヌマーンの『幸福のしっぽ』という曲でした。わたしが17歳の頃によく聴いていた曲です」と演奏後にカバー曲の紹介をするたかはし。彼女にとって大切な曲のひとつなのだろう。

 

そんな高橋の17歳の頃へと音楽でタイムスリップするかのように、疾走感ある演奏で『17』を続ける。この日は丁寧なギター演奏が多かったが、この楽曲では荒々しいギターのストロークをしていた。しかしこの曲には衝動的な荒々しさがよく似合う。

 

ラストは『ますように』。まるで祈るかのように感情を込めて歌うたかはし。ギターの音は最小限にした歌を際立たせル演奏だった。弾き語りなので歌が前面に出る楽曲が多かったが、この楽曲は特に歌が前面に出ていて、言葉が強く響くような表現になっていた。

 

盛大な拍手が鳴り響く中、ゆっくりとステージを後にするたかはし。その拍手は自然とアンコールを求める手拍子へと変化していく。

 

アンコールに応えて出てきたたたかはしは、嬉しそうに「私は手拍子が好きなんです。今の手拍子、録音したいぐらいにグッドでした!」と話していた。

 

は赤ちゃんの頃からずっと、色々なことをすぐ忘れちゃうんです。

 

たから忘れたくない出来事があると、わたしの中には1冊の本があって、そこの覚えておきたいページに付箋を貼るよつなイメージをして、忘れないようにしたいと思っています。

 

今日は付箋を貼りたいと思える日でした。

 

この日のライブが特別に素晴らしかったことを実感しているらしい。それは観客も同じ気持ちだ。リーガルリリーのライブも素晴らしいのだが、たかはしの弾き語りはそれとはまた違った魅力や求心力がある。

 

アンコール1曲目は『ホームカミング』。リーガルリリーの新曲だ。アルペジオや優しいストロークを組み合わせた丁寧な演奏に、繊細な歌声が組み合わせた形での披露だった。バンドバージョンの音源だと楽器のアンサンブルが印象的だったが、ギター1本の弾き語りだとメロディや言葉が際立つ。生の弾き語りで聴くからこそ、メロディや歌詞の素晴らしさを強く実感することができた。

 

「今日はありがとうございました。ライブでしかやっていない曲を最後にやります」と最後の挨拶をしてから演奏されたのは『コーンポタージュ』。

 

照明が薄暗くなり、ステージの豆電球だけが点灯する。その中で小さな音でギターをアルペジオて弾きながら、囁くように歌う。〈君の母さんよりも近くで君の寝息を聞きたいな〉という歌詞が音色と重なると、コーンポタージュを飲んだ時と同じように身体も心も温かくなったきもちになる。それはまるで彼女が曲を作っている部屋で、ひっそりと彼女の奏でる音楽を聴いているような感覚だ。

 

序盤のMCで「曲を作る時と同じような、0から1になる瞬間をこの空間に持ってこれたらいいな」と語っていた。最後に演奏された『コーンポタージュ』は、まさにそんな想いを体現していた。

 

観客は最後のギターの音が完全に消えるまで静かに聴き入っていた。その音が消えて静寂になった瞬間。盛大な拍手を贈った。奏でれた音楽自体も素晴らしいことはもちろん、その音を聴くというよりも受け止める感覚でステージに集中していた客席の空気にも感動した。

 

こうしてリーガルリリーの楽曲を弾き語りという歌が際だつ環境で聴くと、メロディや言葉の素晴らしさに改めて気づくことができる。改めて音楽は人を生かすことを実感することができた。

 

たかはしほのか『sudeni』at キリスト品川教会 グローリア・チャペル 2025年10月2日(木)セットリスト

1.1997

2.リッケンバッカー

3.地球でつかまえて

4.ぶらんこ

5.キラキラの灰

6.ホタル狩り

7.ムーンライトリバース

8.スターノイズ

9.海月星

10.アルケミラ

11.幸福のしっぽ ※ハヌマーンのカバー

12.17

13.ますように

 

アンコール
14.ホームカミング

15.コーンポタージュ