2026-03-01 【ライブレポ・セットリスト】kanekoayano『日本武道館 ワンマンショー 2026』at 日本武道館 2026年1月15日(木) 開演時間を10分ほど過ぎた頃。客席の電気が落とされ、会場に流れる客入れのBGMが止まり、無音になった。開演前独特の緊張感ある空気の中、メンバーが1人ずつ登場する。興奮を抑えつつと観客は拍手を贈る。 カネコアヤノとしては過去にも日本武道館でワンマンを行ったことがある。しかしkanekoayanoというバンドを組んで、バンド名義として武道館のステージに立つのは始めてだ。作風も少しずつ変化しているのでファンも多少は入れ替わっているのだろうし、大会場だから初めて来たファンもいると思う。それ故のいつもとは浮き足立った空気が客席には流れていた。 そんな空気を壊すかのように、カネコアヤノがニヤリと笑ってから歪んだサウンドのギターを数回荒々しくストロークしたことを合図にバンドの演奏が開始。 1曲目は『アーケード』。パンクバンドかと思うような激しい演奏と音圧のサウンドに合わせ、カネコアヤノが叫ぶように歌う。落とされた客席の電気も点灯した。客席全体の興奮した様子もライブを構成する一部になってしまうような演出だ。 そういえば2021年の初めての武道館ライブの最後の曲が『アーケード』で、その時も同じように客席の電気が点灯していた。これは初回の武道館のオマージュであり、その時から地続きで続いていることを示す演出だったのかもしれない。 再び客席の電気が落とされると、それを合図にするかのように『光の方へ』が続く。この曲も衝動的な演奏と歌だ。メンバー後方のライトが星のように輝いていて、それが楽曲のイメージと合致していてグッとくる。 序盤から飛ばしすぎに感じるほどに、激しい演奏が立て続けに続く。『恋しい日々』も叫ぶように歌い、メンバーは激しく演奏する。BPMは音源よりもずっと速い。観客もメンバーと同じように熱くなって、カネコアヤノがマイクから離れて煽積また時に〈冷たいレモンと炭酸のやつ〉というフレーズを叫んでいた。武道館に響く観客の叫びも最高だ。 音を確かめるような短いジャムセッションを挟んで演奏された『かみつきたい』も衝動的な演奏だ。しかし序盤の高揚したテンションが少し収まったのか、歌唱は丁寧になり、改めてカネコアヤノの歌唱力の高さを感じる。 またまた曲間なしで『腕の中でしか眠れない猫のように』が続く。音源よりもドラムやベースの重低音が響くサウンドだ。 ドラムとベースがインタールードのように鳴り止まず、そのまま『僕と夕日』へと続く。音源よりもビートが強くなったアレンジで重低音が耳だけでなく身体にまで響いた。これはライブだからこそ体験できる感覚だ。 『車窓より』では歌も演奏も繊細になった。先ほどまでは大きな声で歌っていたカネコアヤノも囁くように歌ったりと、様々な表現で魅せる。演奏も基本的には繊細で優しく心地よいのだが、後半はギターの音が歪みだし、シューゲイザーのような音像になる。そんな音が武道館を包み込み、観客は圧倒されていた。 『月明かり』ではより繊細な表現でしっかりと聴かせる。薄暗く落ち着いた照明が美しい。武道館とは思えないほどに観客は静まり返りステージに集中していた。かと思えばギターソロでは音源とは違う耳をつんざくような音を出したりと、尖った演奏をする。 前半のハイライトは『グレープフルーツ』だ。迫力ある音圧と繊細さが入り交じったような演奏で、今のkanekoayanoの強さを分かりやすく示すような演奏である。カネコアヤノの歌唱は感情表現が特に豊かになっていて、サビで泣き出すかのようなふるえる声で、それでいて力強さを感じる歌唱をしていて、彼女のボーカリストとしての凄みを改めて実感し鳥肌がたった。 あまりにも『グレープフルーツ』が名演だったからか、会場のあちこちからカネコアヤノの名前を呼んだり感想をさけぶ野次が飛び交う。普段のライブで観客が騒ぐことは少ない。これも大会場ならではのお祭り感なのか、いつも以上の名演だったからこそなのだろうか。 客の興奮が収拾つかなくなるほどの状態になってしまったので「次はしっとりする曲だから!でも自由に楽しんでください」と苦笑しながら言って観客を落ち着かせる。しかし苦笑はしていたものの期限は良さそうで、素直に音楽に感動した観客の反応に喜んでいるようにも見える。 しかし続けて演奏された『祝日』は、しっとりというよりも情熱的だった。始まり方は繊細で優しかったものの、曲が進むにつれどんどん演奏は壮大になる。歌声も叫ぶように熱を込めていた。先ほどまで騒いでいた観客が衝撃で傍観してしまうほどの凄さだ。 曲が終わると観客は再び興奮し歓声を上げたり名前を呼んだりと騒いでいた。その中には「今日は平日なのにありがとう!」という『祝日』という曲名をイジったクソオブクソな野次があり一瞬会場が変な空気になりかけたが、すぐにカネコアヤノが「でもライブがある、今日が我々の祝日ということで」と小粋な返しをして空気を戻していた。 気を取り直して『こころとことば』から演奏が再開。サビで楽器の演奏が止まり、カネコアヤノの歌声とバンドメンバーのコーラスだけになる。そのアレンジが心地よくて美しい。 歪んだギターの弾き語りから始まった『退屈な日々にさようならを』は、壮大な演奏で武道館を包み込む。 ギターソロでは大歓声が巻き起こったりと、派手な演出ではなく音楽によって観客を沸かせていた。初期の楽曲でも武道館が似合うサウンドで届けていて、バンドとしての進化を感じる。 そこから続く最近アルバムからの『石と蝶』では、アウトロで激しいジャムセッションを繰り広げた。やはり観客はそんな演奏に大歓声をあげる。武道館なのにライブハウスかのように音がダイレクトに届いている感覚がする名演だ。 曲間なしで『さびしくない』へと続いたが、チューニングがズレていたのか、演奏を一旦止めてやり直しをした。良い意味で緊張感ある演奏が続いたが、ミスがきっかけではあるものの少し空気が砕けて穏やかになった気がする。それはそれで良い空気感だ。やり直した分だけ熱もさらに込めているような歌声と演奏で、長いアウトロの演奏の迫力は圧巻だった。 集中するかのように長い間を空けてから演奏された『気分』も凄まじかった。特に〈理想ばかりじゃ 生きられないな〉というフレーズを声がかすれるほどに叫びながら歌う姿は目に焼き付いた。 そんな熱量ある演奏はアウトロで激しいジャムセッションへと変化する。そのジャムセッションは段々と落ち着いていき、自然と『タオルケットは穏やかな』のイントロへと変化した。その瞬間、客席から再び歓声が響く。 もちろん演奏されたのは『タオルケットは穏やかな』。音源よりも重厚なサウンドではあるが、めろていや歌詞が真っ直ぐ届くような丁寧な演奏と歌声でもあった。 そこから曲間なしで畳み掛けるように『愛のまま』へと続く。良い意味で荒々しい歌唱と演奏で、観客は再び熱気に満ちた歓声をあげる。今回のライブは歓声が多くて大きい。それは武道館の規模も理由のひとつではあるが、歌唱や演奏がいつにも増して熱量が高いことが大きな理由に思う。 『もしも』では先程までの衝動的な演奏とギャップを感じるサイケな演奏を繰り広げた。顔も隠れるほどの薄暗い照明の中で、パーカッションを叩きながら歌うカネコアヤノ。それに合わせるかのように妖艶なサウンドを鳴らすバンド。先ほどまでとは違う音色を響かせ、違う景色を見せて、観客を魅せる。 続く『ラッキー』ではサイケデリックさがさらに際立つ。その独特で怪しげな空気に観客は飲み込まれたのか、ほぼ全員が傍観しながらステージを眺めていた。演奏もサイケデリックなジャムセッションを取り入れたりと、ライブだからこその凄みで圧倒されてしまう。 そこから続く『水の中』では再びロックな演奏へ。オーケストラヒットを連発するアレンジがあったりと、聴いていて楽しい。プログレかのような複雑な演奏になるライブアレンジも最高だ。 ジャムセッションから始まった『太陽を目指してる』は音源よりも速いテンポでの演奏だった。それ故に演奏も歌声も激しく熱量がある。そのためか音源とは違う印象に感じることが新鮮で刺激的だ。 空気が再び変わったのは『難しい』が演奏された瞬間である。こちらも音源よりも速いテンポで、それでいてパンクロックかのように荒々しく激しい歌と演奏だ。この曲では声がかすれるほどに叫んで歌っていたし、叫んだことを合図にするかのように歪んだ音のギターソロが響いた瞬間が最高に痺れた。 興奮に満ちた空気の中、メンバーがドラムに身体を向け、ドラムのカウントから『とがる』を演奏し熱気をさらに高めるイントロが鳴った瞬間の観客の歓声がとても大きい。〈今日は楽しい〉という歌詞でギターを掲げ、歌詞ではなく今の本心を叫ぶかのようにドヤ顔で歌うカネコアヤノの姿と観客の拍手と歓声が忘れられない。 アウトロで激しい轟音を鳴らしたかと思えば、そのまま曲間なしでつぎの曲へとなだれ込む。演奏されたのは『わたしたちへ』。 轟音なのに優しさを感じる不思議だけど心地よい音色の演奏と、力強いのに語りかけるような優しさを感じる歌声。これこそカネコアヤノでありkanekoayanoとしか言いようがない名演だ。アウトロでは音源よりも長いジャムセッションとなり、ライブが終演に近づいたこの瞬間を名残惜しむように、浸っているかのように、長く演奏をしていた。 ラストは『カーステレオから』。音源よりも長いイントロも、やはりライブが終わる前のこの瞬間を噛み締めているように見える。当然ながらに最高の演奏で〈いつでも今が一番いいから〉という歌詞が、歌詞ではなくこの瞬間について言っているように感じる。観客がその歌詞が歌われた瞬間、この日一番の大歓声をあげたことがその証拠だ。 演奏を終え、やり切った表情で「ありがとうございました!」と明るくあいさつしてメンバー紹介をするカネコアヤノ。そして「すごくマジで楽しかったです!武道館をできる人生にしてくれてありがとうございます!」と騙る。その挨拶は過去の武道館の時以上に喜びに溢れていて、本人の心の昂りも最も高かったように見える。過去の武道館と比べても、今回は特に良いライブができたという実感があったのかもしれない。 あくまでファンである自分としても、この日のカネコアヤノ及びkanekoayanoは神がかっていて、過去最高と評しても過言ではないほどに素晴らしかった。極数も恐らく過去最多だ。 間違いなく今のkanekoayanoがいちばんよいけれど、この次のライブではさらに今を更新してくるかもしれない。そんなことを思わされてしまうほどに〈いつでも今が一番いいから〉という歌詞の説得力が強いライブだった。 ■kanekoayano『日本武道館 ワンマンショー 2026』at 日本武道館 2026年1月15日(木) セットリスト 1.アーケード 2.光の方へ 3.恋しい日々 4.かみつきたい 5.腕の中でしか眠れない猫のように 6.僕と夕日 7.車窓より 8.月明かり 9.グレープフルーツ 10.祝日 11.こころとことば 12.退屈な日々にさようならを 13.石と蝶 14.さびしくない 15.気分 16.タオルケットは穏やかな 17.愛のままを 18.もしも 19.ラッキー 20.水の中 21.太陽を目指してる 22.難しい 23.とがる 24.わたしたちへ 25.カーステレオから