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【レビュー】でんぱ組.incは新曲『なんと!世界公認 引きこもり!』でエンタメ業界代表としてメッセージを伝えている(歌詞・感想)

でんぱ組.incにしか歌えない曲

 

『なんと!世界公認 引きこもり!』というでんぱ組.incの新曲を聴いた。

 

でんぱ組の個性が詰まっていて、でんぱ組にしか歌えない曲と思った。いつも通りに作り込まれた楽曲だと思う。しかしこの曲は今までのでんぱ組とは違う制作方法がされている。

 

 

プロデューサーのもふくちゃんのツイートをきっかけに4月6日から制作が始まり、楽曲制作とMV制作を8日間で完成させたのだ。

 

<Music Video>
Director:森本敬大
Choreographer:Yumiko先生
撮影:でんぱ組.inc
背景:ファンのみんな
協力:平山純一(19-juke-)

<Music>
作詞:前山田健一
作曲:浅野尚志
編曲:釣 俊輔

Programming & All Other Instruments:釣 俊輔(agehasprings)
Drums:田中 航
Bass:IKUO
Guitar:板垣祐介
Piano:森本真伊 a.k.a ハヤシ
Harmony Chorus:みきちゅ
ボーカル録音:でんぱ組.inc
Mix Engineer:西 陽仁(ONEly INC.)
Additional Engineer : 石川 翔平(ONEly Inc.), 塩崎 麻帆(ONEly Inc.)
Produce:もふくちゃん
Sound Direction:YGQ
Chorus & Special Thanks to ファンのみんな

 

MVや楽曲制作に関わったのは、過去に何度もでんぱ組と関わっていた人たちばかり。だからこそスムーズに楽曲制作もMV制作もできたのだと思う。

 

作詞ヒャダインで作曲は浅野尚志。2人とも10曲以上もの作品ででんぱ組に関わっている。編曲の釣俊輔も10曲以上の編曲を行なっている。

 

特に多くの曲で関わっていた楽曲提供者の3人だ。今作には参加していないが12曲に参加している玉屋2060%を含めた4人が「でんぱ組の音楽的な個性」を作ってきた重要な音楽作家に思う。

 

しかし彼らが常に「でんぱ組っぽい楽曲」を作っているわけではない。

 

他のアーティストやアイドルに提供する際は違うタイプの歌詞や曲を提供するし、編曲も全く違うものになる。おそらく意識的に「でんぱ組っぽい楽曲」を作っているのではと思う。

 

でんぱ組っぽい楽曲とは?

 

でんぱ組はもともと電子音を多用した高速BPMで高いキーの「電波ソング」を音楽性の基本としていた。

 

J-POPや渋谷系の音楽を得意とするアーティストやバンドマンにも「電波ソング」を軸にした楽曲制作を依頼することで、他とは違う電波ソングを作り上げていた。それが個性的だった。

 

さらには電子音だけでなく楽器の音を前面に出した編曲も増えたことで、J-POPとしてもアイドルソングとしても新しいジャンルを作ったように思う。でんぱ組のような音楽をやろうとするフォロワーのアイドルは続々と登場したし、影響力や衝撃は強かった。

 

メロディと歌詞も特徴的だ。BPMが早くメロディの音符も多いので何を言っているのか聴き取れない。そもそも歌詞カードを読んでも意味不明な表現や言葉も多い。独特な擬音や略語やオタク用語を使っている。

 

例えば代表曲の1つである『でんぱれーどJAPAN』などは何を言っているのか聴き取れない部分も多いし、歌詞を読んでもほとんど意味不明だ。(褒めている)

 

でんぱれーどJAPAN

でんぱれーどJAPAN

  • でんぱ組.inc
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

しかし楽曲に込められたメッセージで重要な部分は、しっかり聴き取れるように工夫されている。

 

例えば『でんぱれーどJAPAN』では〈一緒にしあわせなコトしてほしいの〉というメッセージや〈電波のことはでんぱ組です〉とグループのコンセプトを表す歌詞は、意味もわかるし聴き取ることが容易だ。

 

サクラあっぱれーしょん

サクラあっぱれーしょん

  • でんぱ組.inc
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『サクラあっぱれーしょん』もそうだ。

 

〈青春はそれでいいのだ 勘違いも味方にしちゃうのだ〉〈君の未来を明るく照らすなんてお茶の子さいさいさい〉という前向きなメッセージは聴き取れるし、しっかり伝わる。このメッセージに涙を流した人もいるはずだ。自分は泣いた。

 

W.W.D

W.W.D

  • でんぱ組.inc
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

メンバーのパーソナルな部分が楽曲に反映されている『W.W.D』もメンバーの独白部分の歌詞はきちんと聴き取れるし意味も伝わる。だからこそ〈マイナスからのスタート舐めんな〉というフレーズに胸を打たれて感動したのだ。自分は胸を打たれた。

 

これが他のJ-POPとも洋楽とも違う「でんぱ組っぽい楽曲」の個性に思う。

 

『なんと!世界公認 引きこもり!』に参加した3人は何度もでんぱ組の楽曲を制作してきた。メンバーのことやでんぱ組のコンセプトも理解している。だから短期間で制作されたのにクオリティも高く、でんぱ組の個性を感じるのだ。

 

 

なんと!世界公認 引きこもり!

 

 

『なんと!世界公認!引きこもり!』は「でんぱ組っぽい要素」が詰まっている。

 

歌メロの音符は多く、歌詞は早口で詰め込まれている。BPMは速めでキーも高い。電子音と楽器の音が上手く組み合わさっている。

 

歌詞も「でんぱ組っぽい」個性で溢れている。

 

おうちにいたって 通常運転だい
メキメキ SAN値あがるんだ
ピザ寿司うばいつポテトチップス
世界公認の引きこもり!

 

どうしようもないことばっか
考えもしゃあないから
コントローラー 両手に持って
木植えよ 魚釣ろう

 

現実 入れすぎっと
闇落ちしかねんよ
推しのSSでもググって
ステータス 免疫力 全振り!

 

おうちにいたって 通常運転だい
長編全巻 ジャーンって オトナ読み
ねとふり あまぷら ふーるー あっぽー
世界公認 引きこもり!
ぴくしぶ 絵師 大巡回
ゆうちゅば 更新 ありがとさん
あっちゃこっちゃ コンテンツを 栄養摂取
エンタメの灯は消えへんで〜

 

会えない日は続くけど
いつかはいつかくるんさ
このバトル 独りじゃない
我々はすでにファミリー

 

Stay home! Otaku in the world
See you soon in Japan!
I love my room.
世界公認 引きこもり!
何がどうしよっと でんぱ組
全然 全然 なんも 諦めない
あーだこーだ 知恵絞って 栄養供給
エンタメの灯は消えへんで〜

 

Stay home! うちにいよう
Stay home! Stay home! ここがバトルフィールド
巨悪に立ち向かう 光の戦士たち
「在宅」って名の剣で 世界を照らせ!!!!!!!
天命へ 自宅警備
世界公認 引きこもり!

 

 意味が伝わる表現と意味不明な表現が組み合わさった独特な歌詞。それを速いBPMで早口で歌うので聴き取れない言葉もある。しかしそれが刺激的で印象に残る。

 

しかし重要な言葉は聴き取れるし、しっかり伝わる表現になっている。

 

世界公認 引きこもり!

エンタメの灯は消えへんで

 会えない日は続くけど
いつかはいつかくるんさ
このバトル 独りじゃない
我々はすでにファミリー

 

このタイミングで新曲を早急に作った意味や、それをでんぱ組が歌う意味を感じる歌詞。それは聴き取れる。しっかりと伝わる。

 

このメッセージをアイドルとしてでんぱ組が明るく届けることで多くの人に希望をくれる。でんぱ組にしか歌えない、でんぱ組っぽい楽曲だと思った。このようにでんぱ組っぽい要素が詰まっている。

 

そしてもう一つ「でんぱ組っぽい」と思う部分がある。

 

それは「エモさ」だ。音楽の魅力だけでなく「グループのドラマ」を楽曲から感じるのだ。それが「でんぱ組っぽさ」を最も感じる理由だ。

 

 

部屋に引きこもっていた

 

いじめられ部屋に引きこもっていた

(でんぱ組.inc / W.W.D)

 

でんぱ組.incは『W.W.D』という楽曲でこのように歌っていた。

 

センターの古川未鈴の実体験を歌詞にしている箇所だ。メンバーの暗い過去をあえて音楽によって吐露することで、前向きに未来へ進むきっかけを作っていたようにも思う。

 

――アイドルになったキッカケは?
もともと私は、アイドル活動する前は自分の部屋に引きこもってたりしていて、あんまり明るい生活を送っていなかったんです。それで時間があるときはパソコンをよく見ていて、あるときでんば組.incさんの『W.W.D』(※)という曲を見つけて聴いたんです。

でんぱ組.incのメンバーさんたちも、もともと暗いオタクだったり、ネガティブになるようなエピソードがあって、それでもこんなに頑張れるんだなって思いました。そのとき私は何もしていなかったので、また何か新しく始めてなにかできたらいいなって応募したのがきっかけです。

(引用:根本 凪インタビュー「思い立ったらすぐ行動することが大事」【 アイドルシゴト Vol.9】)

 

2017年に加入した根本凪はアイドルになる前に引きこもっていて、でんぱ組の音楽に力をもらって前へ踏み出せたことを語っている。

 

それは楽曲提供者やプロデューサーによって受け入れる環境を作られていたとも言える。無理矢理やらせていると感じる人もいるかもしれにが、メンバーが前に進むきっかけを作ったようにも思う。マイナスからのスタートだったメンバーが前向きにアイドル活動や音楽活動を行い人気アイドルになった。日本の音楽シーン全体からしても重要なグループになった。そこにドラマがあった。感情を揺さぶられ、共感し、感動した。

 

今のでんぱ組はメンバー自身が目に進むだけでなく、ファンを前に進ませるためのメッセージを届けられるようになった。「引きこもり」という言葉をプラスの言葉として表現し、聴いた人を救う音楽になった。マイナスからのスタートだったでんぱ組が、たくさんのプラスを手にしたからこそ表現できる歌になっている。

 

もしかしたら『なんと!世界公認 引きこもり!』を聴いて根本凪のようにアイドルを目指す人がいるかもしれない。活力をもらってエンタメの力になろうとする人も出てくるかもしれない。

 

今はエンタメ業界にとっては厳しい状況が続いている。業界の人たちは思い通りに活動ができなかったり、やりたいこともできない状況が続いている。

 

しかしでんぱ組は知恵を絞って栄養補給している。他にも頑張っている人がたくさんいるはずだ。そのような人たちがいるならば、エンターテイメントがなくなることはない。そのことをでんぱ組は関わっている仲間と一緒に音楽で宣言しているようにも感じる。

 

エンタメの灯は消えへんで〜

 

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