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【ライブレポ・セットリスト】でんぱ組.inc 『THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE 〜夏祭り編!!〜』

でんぱ組らしいスタート

 

「イヤモニおかしいです」「あれ?」「聞こえないです」

 

オープニングの映像が流れるが、音楽が全く聞こえてこない。その代わりメンバーがスタッフとしている会話が小さく聞こえる。メンバーも視聴者と同様に音が聴こえないようだ。そして映像が止まった。

 

開始早々にトラブルが発生した。ファンは「大丈夫www?」「1度仕切り直しだねw」「生でやってるからこそって感じw」などとチャット欄にコメントが並ぶ。ファンはトラブルすら楽しんでいるようだ。

 

でんぱ組.incの無観客配信ライブ『THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE 〜夏祭り編!!〜』。

 

この完璧にクールにやれないところも、ファンがそれを受け入れて楽しんでいるところも「でんぱ組っぽいなあ」と思う。

 

これはdisではない。これがでんぱ組の魅力の1つでもあって、自分が親近感を持ってしまう理由でもあるからだ。

 

しばらく経ってから先程と同じ映像が流れる。今度は音も聴こえた。

 

映像に合わせて最新アルバムのインタールード曲『ファミリーワールド』が流れて期待を煽る。仕切り直し成功だ。

 

スタジオに立つメンバーが映る。曲が始まる。ようやくライブスタートだ。

 

そして始まった瞬間にまた「でんぱ組っぽいなあ」と感じる。そんなパフォーマンスからライブが始まったのだ。

 

前半

 

1曲目は『プレシャスサマー』。

 

アップテンポでメロディに言葉が詰め込みまくったアゲ曲。このパフォーマンスも「でんぱ組っぽいなあ」と思った。

 

カッコいいパフォーマンスを目指しているわけでも、可愛らしく表現するのとも違う。でんぱ組は全力で動き回り全身で音楽を表現し、観た人の心を動かすことを目指しているのだ。

 

「お祭りライブ!行くぜ!」と煽る成瀬英美の言葉の通り、お祭り感がありわちゃわちゃしている。楽しそうなメンバーに連れられて、観ているこっちも笑顔になる。

 

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会場は普段はライブを行うことはないであろう音楽スタジオ。通常のライブのようにセットが組まれているわけではない。

 

しかし派手なレーザーや照明の演出や、ARによる映像演出でパフォーマンスを盛り上げるので物足りなさはない。

 

バンドメンバーはでんぱ組と違う場所で演奏しているようだ。しかしバンドメンバーは四角の枠に映っており、そこで演奏の様子を観ることができる。離れていてもバンドとの一体感を感じる映像になっている。

 

バンドメンバーのフリーセッションに合わせて、メンバーが一人ひとり画面の向こうのファンを煽ったりメッセージを送る。ぺろりんが「夏祭り妄想デート、一緒にしてくれるかな?」と言っていたので、ぺろりんとデートしようと思った。

 

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そして『でんぱれーどJAPAN』『NEOJAPONISM』とライブ定番曲のアップテンポナンバーが続く。どちらも普段はファンによる全力のコールが加わり完成する楽曲だ。

 

しかし今日はコールの代わりにARの映像演出によってライブを盛り上げる。配信だからこそできる演出だ。

 

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クライマックスかと思うぐらいのアゲ曲3連発で盛り上げたが、まだまだ盛り上げる。自己紹介とMCを挟み『ギラメタスでんぱスターズ』でさらにアゲ曲を連投した。

 

後半

 

しかしでんぱ組の魅力はアゲ曲で盛り上げることだけでない。個性的な楽曲と高い表現力も魅力だ。

 

『おやすみポラリス、さよならパラレルワールド』では斬新な振り付けのダンスを華麗に踊り表現し、神聖かまってちゃんのボーカルの子が提供した『星降る引きこもりの夜』はエモーショナルに歌い踊り表現する。

 

エフェクトも凝っていて映像演出でパフォーマンスの魅力をさらに引き立てた。

 

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しっかりと歌を聴かせ切ない余韻を残していたが、次のバンドメンバー紹介でその余韻を良い意味でぶち壊す。

 

バックバンドのメンバーを一人づつ紹介していくでんぱ組。紹介されたバンドメンバーはソロ演奏でアピールする。古川未鈴が「これがでんでんバンドだ!」と叫び『いのちのよろこび』へと繋がる。

 

バンドも含めて「でんぱ組の音楽」を作っていることを伝えるかのような叫びとパフォーマンスだ。

 

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熱いパフォーマンスを続けたためか、MC中も座り込んでいる古川未鈴。ピンキーに「立ち上がるんだ!」と怒られる赤色センター。

 

「次の曲はBPM24のでんぱ組史上最も速い曲」と説明してから『破!to the Future』でライブ再開。ライブ定番曲の『Future Diver』とまたもや畳み掛けるようにアゲ曲を続ける。

 

『Future Diver』はファンのコールが重要な楽曲だ。ファンと一緒にライブで育ててきた楽曲で、グループにとって特に大切な楽曲である。

 

しかし今日は無観客でファンの声は届かない。その代わり多くのファンがチャット欄にコメントを残す。いつものライブと同じように間奏になった瞬間に「萌えキュンソング を世界にお届けFuture Diverでんぱ組!」と。

 

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 ARによる映像演出を使用したり、メンバーがカメラを意識したパフォーマンスをしているように、でんぱ組は配信でもライブとして成立する方法を模索して実践している。

 

ファンも配信で離れた距離だからこそのコミュニケーション方法を模索しているのだ。

 

とことん盛り上げてきたセットリストだが、次の『オレンジリウム』でライブの雰囲気が変わる。

 

切ないメロディのミドルテンポの楽曲。歌詞を噛み締めるように笑顔で丁寧に伝えるように歌うメンバー。

 

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ファンが映像がオレンジ色に光るペンライトを振ってパフォーマンスを引き立てた。?でんぱ組のパフォーマンスと重なって1つになる。

 

〈いつも一緒だよありがとう〉の歌詞の後に「今日もみんな、一緒にいてくれてありがとう!」と相沢梨紗が叫ぶ。演奏を終えた後のMCで「みんなのオレンジリウム見えたね」と話涙を目に浮かべる相沢梨紗。

 

でんぱ組のライブはメンバーだけで成り立っているわけではない。

 

今日も一緒に演奏しているバンドも重要な仲間だ。彼らがいるから最高のライブが成立している。それはバンドメンバーを丁寧に紹介し、彼らの演奏を引き立てる演出があることからもわかる。裏で支えているスタッフも大切なでんぱ組の仲間で、スタッフもいなければライブは成立しない。

 

そして応援しているファンも一緒にライブを作っている。

 

ペンライトを振ったり、コールを送ったり、盛大な拍手を贈ったり。それは配信ライブでも同様だ。

 

チャット欄で熱いコメントをして盛り上げ、『オレンジリウム』では映像で共演しいつものライブのようにパフォーマンスを支える。

 

この日の『オレンジリウム』は特に感動的だった。

 

それはでんぱ組とファンは特別な信頼関係で繋がっていて、離れていてもそれは変わらないことへの説得力を感じるパフォーマンスだったからだ。

 

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そして最後は『おつかれサマー』でタオルを振り回す。「もっともっと回せ!」と煽っていた。

 

画面の向こうのファンは見えていないはずなのに、まるで見えているかのように煽る。それはいつものでんぱ組のライブと同じで、いつものでんぱ組のライブと同じぐらいに楽しすぎる空間だ。

 

アンコール 

 

チャット欄に「アンコール!」と何度も何度も書き込まれる。声が届かない変わりに文字で想いを伝えている。

 

その想いはでんぱ組にも届いた。アンコールに応えてメンバーが出てくる。ライブ再開だ。

 

『ユメ射す明日へ』を真っ直ぐな歌声で届ける。他の曲とは違い、映像エフェクトがない。歌を真っ直ぐ届けるためだろうか。だからかいつも以上に歌声が胸に沁みる。

 

アンコールの衣装は浴衣風の甚平。「浴衣だと全部脱げちゃうから」と話す姿を見ると「でんぱ組っぽいなあ」と改めて思う。

 

カッコつけないし、アイドルとして可愛くあろうとしても、少しだけ抜けている部分がある。でも、それが個性的で最高で魅力的なのだ。

 

そして最新アルバムのリード曲の『アイノカタチ』をパフォーマンス。

 

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歌詞がメンバーのパフォーマンスに重なる。映像演出がパフォーマンスも盛り上げる。

 

アイノカタチ アイノカタチ アイノカタチ アイノカタチ
どうすればここにあるって証明できるの神様
アイノカタチ アイノカタチ アイノカタチ アイノカタチ
どうすれば心の奥へたどりつくのかな

(アイノカタチ / でんぱ組.inc)

 

ずっと元気と愛をファンに与えてきたでんぱ組このように歌う。

 

<どうすればここにあるって証明できるの>と歌う。でも、でんぱ組はアイドルとして歌い踊ることでアイノカタチがあることを証明しているはずだ。

 

でんぱ組のライブはいつだって愛があるのだから。

 

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最後の曲を披露する前にケーキが運ばれてくる。

 

相沢梨紗の誕生日会が始まったのだ。彼女の誕生日は8月2日。配信ライブの日程と近い。そのためサプライズでお祝いすることになったのだ。

 

そしてまた涙を流す相沢梨紗。「今日は泣いてばかりなんですけど」と笑ったりして、ほっこりとした雰囲気。

 

そんな余韻を残しながら古川未鈴が「本当の本当に最後の曲です!」と言ってラストソングが始まる。

 

ラストは『愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ』。最新アルバムのタイトル曲で、でんぱ組とファンの関係性を歌っているような楽曲。

 

レーザーを使ったりと派手な照明。メンバーだけでなくバンドメンバーの映像も目立つ。全員でライブを作り上げている。全員めちゃくちゃ楽しそうだ。

 

「最後はみんなで飛びましょう!」と言ってメンバーが全員ジャンプしてライブ終了。最初から最後まで愛に溢れていて、ハッピーで楽しさしかないライブだった。

 

ライブが終わりエンディング映像が流れる。リハーサルの様子を編集した映像だ。映像が終わると、最後にこのような文字が浮かび上がった。

 

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これがでんぱ組の良いところだよなあと思う。

 

愛が地球を救うのかもしれないし、宇宙を救うのはお寿司かもしれないけれど、ファンの心を音楽で救ってくれるのはでんぱ組.incだ。 

 

でんぱ組.inc 『THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE 〜夏祭り編!!〜』2020.7/30

 

▪️セットリスト 

01. プレシャスサマー!
02. でんぱれーどJAPAN
03. NEO JAPONISM
・MC
04. ギラメタスでんぱスターズ
05. おやすみポラリスさよならパラレルワールド
06. 星降る引きこもりの夜
・バンドメンバー紹介
07. いのちのよろこび
・MC
08. 破!to the Future
09. Future Diver
10. ORANGE RIUM

・MC
11. おつかれサマー!

EN1. ユメ射す明日へ

・MC
EN2. アイノカタチ

・相沢梨紗サプライズ誕生日会
EN3. 愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ

 

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