2020-03-30 Sexy Zoneのレーベル移籍による海外進出は成功するのだろうか? Sexy Zone コラム・エッセイ ユニバーサルミュージックへの移籍は成功すると思う Sexy Zoneのニューシングル「RUN」がジャニーズ事務所とユニバーサルミュージックが設立する新レーベルからリリースされることが決定した。 (中略) Sexy Zoneは今後、国内のみならず本格的な海外進出も視野に入れて活動していくという。 (引用:Sexy Zone、ジャニーズ×ユニバーサルの新レーベルからニューシングル「RUN」発売 ) Sexy Zoneのレーベル移籍が発表された。2011年のデビュー当初から所属していたポニーキャニオンを離れてユニバーサルミュージックとジャニーズ事務所が合同で設立するレーベルに移籍するらしい。 レーベルを移籍するからといって、活動内容が大幅に変わるわけではないと思う。 レーベルはCDやBlu-rayなどを製作することが仕事だ。どのような販売方法にするかを決める権限の大部分を持っているが、グループの活動方針については事務所が権限を持つことが一般的。 そのためグループとしての活動方針を事務所が決めていくことは今までと変わらない。むしろ事務所とレコード会社が合同で設立する新レーベルに移籍するので、CDの販売方法も事務所の意向がより反映されるはずだ。 しかしレーベル移籍の理由で気になる部分がある。 それは〈本格的な海外進出も視野に入れて今後は活動する〉という部分だ。 ユニバーサル移籍は海外進出するにはベストな選択 自分はSexy Zoneのライブを一度観たことがある。 ライブを観て度肝を抜かれた。パフォーマンスのレベルの高さと、演出の凄さに感動した。日本だけでなく世界に通用するライブだと思った。 自分がセクゾのライブを観たのは、ちょうど世界最高峰の音楽フェス『コーチェラ・フェスティバル』にBLAKPINKが出演し世界中に大きな衝撃を与えた頃だ。BLACKPINKのライブはネット中継されていた。自分は中継をを観たのだが、パフォーマンスも演出も素晴らしかった。 世界中に「アジアの音楽も素晴らしい」ということを伝えることができたようなライブだった。 大袈裟な話ではなく、もしもコーチェラでセクシーゾーンのセットや演出をそのままできるのだとしたら、BLACKPINKと同様に「アジア代表のアーティスト」として出演しても恥ずかしくないし、BLACKPINKと同じぐらい爪痕残してたと思う。そう思えるぐらいのライブだった。 — むらたかもめ🌏音楽ブログ (@houroukamome121) 2019年5月3日 そのためSexy Zoneのライブを観た後に興奮して上のツイートをした。それぐらい圧倒された。 セクゾが海外で成功する可能性はあると思う。決して無謀な挑戦ではない。移籍先をユニバーサルを選んだ理由も海外進出を考えたからだろう。 元々SexyZoneが所属していたポニーキャニオンはフジサンケイグループのレーベルだ。 フジテレビやニッポン放送がグループ企業なので、日本でのメディア展開は行いやすくなる。日本での活動についてはメリットが大きかった。しかし海外への影響力は低いレーベルではある。 ユニバーサルミュージックは日本に拠点を置く外資系レコード会社としては最大手だ。MIYAVIやLOUDNESSやRADWIMPSなど海外進出しているアーティストも数多く所属している。 perfumeや【Alexandros】やSEKAI NO OWARIなど海外進出を目指すアーティストに対しても手厚くサポートしている。SHINeeやBLACKPINKなど世界で活躍する韓流グループが所属していることも特徴的だ。 そのため日本人アーティストが海外進出を目指すならば、必然的に選ぶレーベルとも言える。 海外進出で成功した日本の人気アーティストの前例 海外で活躍しているアーティストはたくさんいる。 MONOのように日本よりも海外の知名度が高いアーティストもいる。決して日本の音楽が海外に通用しないわけではない。 しかし日本と海外とで同程度の人気を持つアーティストは少ない。その中でも日本語で歌うアーティストはほぼいない。この条件で成功しているのはBABYMETALぐらいだ。 ベビメタは「日本出身のアーティストでなければできない音楽」によって注目を集めて人気を獲得した。 今の海外の音楽シーンはR&Bやヒップホップが主流。ヒットチャートにロックがランクインすることは滅多にない。 ベビメタの音楽の軸はヘヴィメタル。一定の人気や知名度があるジャンルではなるが、海外どころか日本でも人気は下火。今ではマイナーなジャンルの一つ。トレンドとは真逆の音楽だ。 しかし「メタルとアイドルの融合」というテーマを掲げて活動を続けたことで、唯一無二の音楽を作った。 それは日本人にとっても新鮮な組み合わせではあったが、日本の女性アイドルを知らない海外の人たちには、日本以上に大きなインパクトを感じ、魅力的に観えたのだと思う。 英語圏の国には日本のアイドルのような文化がなかった。ヘヴィメタルは海外でも下火なジャンルだが知名度は高い。それに「アイドル」という異質なものを組み合わせたことで、新しさや面白さが世界中に伝わったのだ。 日本人が海外で成功するためには、海外の音楽の真似をしては駄目だ。日本人だからこそできる個性を取り入れる必要がある。 Sexy ZoneとBABYMETALの音楽性は全く違う。しかし「日本人アーティストにしかできない音楽」という部分では共通しているように思う。 Sexy Zoneは海外進出の準備をしていた 今作は様々なポップソングを『Sexy Zone』というフィルターを通して東京から発信する!をコンセプトに、過去作と比べても更に「ポップス」に言及した作品となります。王道のポップスをはじめ、様々なジャンルのポップソングをSexy Zoneを通してオリジナルのJ-popに消化した彩りの豊かさが特徴の1枚です。 (引用:Sexy Zone Official Site|DISCOGRAPHY) 最新作『POP×STEP!?』のアルバムコンセプトについて、公式サイトにはこのように書かれている。 〈『Sexy Zone』というフィルターを通して東京から発信する〉〈オリジナルのJ-popに消化した〉とう部分がミソに思う。 現在海外でヒットしている音楽と日本のJ-POPは全く違う音楽性だ。 海外のトレンドの音楽ははリズムの心地よさを重視している楽曲が多い。音数も絞ってシンプルな演奏が主流。曲構成もAメロ→サビというシンプルな構成が一般的だ。 しかしJ-POPはメロディを重視した楽曲が多い。曲構成もAメロ→Bメロ→サビとサビに行き着くまでが長い構成が一般的。編曲は音を重ねて華やかにしている曲が多い。様々なジャンルを日本的な曲構成や編曲を当てはめることもJ-POPの個性だ。 『POP×STEP!?』の収録曲はJ-POPの王道とも言える構成と編曲の楽曲が多い。それでいて様々なジャンルを取り入れてJ-POPに変化させている。海外のトレンドを取り入れている楽曲もある。収録曲では『MELODY』かわそれに当てはまるだろう。 この音楽性が海外の音楽に触れている人にとって新鮮に感じるはずだ。日本人アーティストにしかできない方向性で、海外のトレンドも取り入れている。その組み合わせに新鮮さがある。 まさに〈様々なポップソングを『Sexy Zone』というフィルターを通して東京から発信する〉というコンセプトに当てはまっている。東京から世界中に発信できる音楽だ。 しかし”音楽以外の部分”でSexyZoneの音楽が海外に届かない壁があるように思う。 ダウンロード販売とストリーミングサービスが重要 2019年にperfumeが「コーチェラフェスティバル」に出演した。現地でライブを観た人の評判は上々で良いライブをやっていたようだ。 しかし海外ではそれほど話題にならず、海外での活動が活発になったわけでもない。perfumeの音楽やパフォーマンスが素晴らしいとしても、それが生でライブを観た人以外にしっかり伝わらなかった。 コーチェラフェスティバルは合計6日間行われる。ネット配信も行なっていて、多くのライブが配信された。世界中の音楽ファンがライブを観ることができるフェスだ。 perfumeは6日間のうち2回ステージに立った。アリアナ・グランデなど海外の有名アーティストと同じステージだった。 しかし1回目のステージは配信されなかった。 2回目のステージは配信されたものの生放送ではなく録画での配信。生配信ならば現地の客と配信を観た人が同時に話題にするので、SNSでもトレンドに入り注目されることが多い。しかし現地時間では深夜0時過ぎから配信だったためSNSでも大きくは話題にならなかった。 コーチェラ出演時のperfumeはSpotifyやApple Musicなどストリーミングサービスで楽曲が配信されていなかった。そのためコーチェラのライブを観てperfumeに興味を持った人が音源を聴くことのハードルが高かった。 良い曲を良いパフォーマンスで披露したのに、知ってもらうきっかけや、ファンを増やすきっかけを上手く掴めなかったように思う。 この前悲しかったのが、「日本の音楽を聞かせてくれ」って言われて。その人は「ブルースが好きだ」って言うので、なぜか僕はaikoを思い出して、aikoをAppleMusicで探したら1曲もないんですよね。すごい悲しい思いというか、「ああ、またチャンスが……」って思っちゃったんですけど。 (引用:小袋成彬 日本の音楽業界のSpotify・AppleMusic対応を語る) 小袋成彬はラジオ番組でこのように語っていた。 最近は配信やストリーミングを解禁するアーティストが増えているが、解禁されていないアーティストはまだ多い。現在のaikoはストリーミング解禁をしたが、その理由は『音楽と人2020年4月号』のインタビューで小袋成彬の発言をきっかけだと語っている。 日本だけで勝負するならばストリーミング配信は必要ないかもしれない。しかし海外でも勝負するならば、聴いてもらうきっかけや知ってもらうきっかけを作らなければならない。 今のSexy Zoneに足りない部分は、これだと思う。 ジャニーズはストリーミング配信にどのように関わっていくのか? ネットで配信することの重要性はジャニーズ事務所も理解していると思う。わざわざ外部から言われる必要はないのかもしれない。慎重に考えているのだと思う。 現在ダウンロード配信やストリーミング配信を行なっているのは嵐のみ。彼らは海外進出を本格化することを発表したタイミングでネットでの配信を解禁した。もしかしたらSexy Zoneも同じように新曲発売のタイミングで解禁するのかもしれない。 しかしSexy Zoneはレーベルを移籍してしまう。ポニーキャニオン時代の楽曲は配信されないかもしれない。特に最新アルバム『POP×STEP!?』は海外の音楽ファンには新鮮な音楽で、彼らの魅了が伝わるはずだ。それが聴かれるきっかけがつかめないかもしれないのは、勿体ない。 Sexy Zoneの音楽は海外で勝負できるクオリティと個性がある。ライブパフォーマンスも素晴らしい。聴いてもらうきっかけがあれば、必ず多くの人を感動させりる音楽だ。 〈時代を創ろうSexy Zone〉 これを世界中で実現する姿を見てみたい。そのためにも世界中の人に聴いてもらえるきっかけがもっと増えることを願っている。 ↓関連記事↓ POP × STEP!?[初回限定盤A](特典なし) アーティスト:Sexy Zone 発売日: 2020/02/05 メディア: CD